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呪い屋
殺したいほど憎い相手っている?えぇ、やっぱりいるわよね。だったら私の店まで来てみてよ。そいつを殺せる道具があるよ。え、そんなことできるわけないって?大丈夫。お客さんのこと裏切りはしないよ。
〈side 杏子〉
「杏子、お夕飯はどうする?」
「いらない。」
「杏子は元々可愛いんだからダイエットしなくてもいいんじゃないかしら。」
「うるさい‼」
あぁうざい。死んだらいいのに…
私は可愛い。そんなことはわかっている。だってそうなるように努力してきたから。だけど最近、神崎 るかという転校生が来てから変わってしまった。クラスで一番可愛い、という称号を持っていたのは私だった。なのに、神崎は私の頑張りをすべて無駄にした。テストが満点だから、少し可愛いから、なんて理由で簡単に上に上がっていった。
あいつのことを考えていたらむしゃくしゃしてきた。
「出かけてくる。」
「こんな遅い時間にどこ行くの。危ないじゃない。」
「関係ない‼」
神崎も苛つくけどお母さんも苛つく。二人とも殺せやしないかな。
「殺したいほど憎い相手がいるんですね。」
「は?」
声のした方を見ると少女がいた。身長は低く、長い長い金髪を二つ結びにしてゴシックロリータを着た女の子だった。フランス人形みたいだなと思った。
「そいつらのことが殺したいほど憎いんでしょう。」
「うん。」
心の声が出ていたかな。
「だったら殺しませんか?」
「そんなことできるの?」
できるわけないっておもった。
「できますよ。」
だったら、
「だったら、殺したい。」
少女はニッコリと笑うと
「じゃあ、私の店まで来てみませんか。」
といった。
特に行く宛もなく飛び出してきたから行こうと思った。
「行く。」
すると夜でもわかるような真っ暗闇が私達を飲み込んだ。
思わず目を瞑ってしまった。
「いらっしゃいませ、私の店へ。」
目を開くと、緑の多い少しログハウスに似た場所にいた。だけれども、それはフランス人形のような少女に合わない不思議な組み合わせだった。
「この店は私が切り盛りしているの。改めて、私の名前はアリス・ロペスです。」
多分普通だったら、こんな不思議なことに頭がついていかないだろう。でも、今私は動転していた。だから、
「殺したい相手が何人もいるんだよね?」
「うん、2人。」
だから、こんなふうに答えたんだと思う。
「だったら、これがいいんじゃないかしら。」
そう言って差し出されたものは、袋に入った人形に切られた紙だった。
これが人殺しの道具?馬鹿げてる。
そう伝えるとアリスは、
「大丈夫、これがあれば完全犯罪だよ。」
といった。
「これは“死神代行人形”だよ。この紙に殺したい場所と日時を書いて相手に持たせればその通りに死ぬの。」
アリスのいったことは現実にはおこらないはずのことなのに何故か信じることができた。
「それ売ってるの?」
「えぇ、100円でいいわ。」
そんなに安くてもいいのか、と一瞬思ったが今の自分の手持ちはそこまで多くなかったのでありがたかった。
「はい。」
「まいどありがとうございます。説明書入っているからちゃんと読んでくださいね。」
そこから家に帰るまでの記憶はなく、いつの間にか家にいた。だけれど、ちゃんと私の手の中に“死神代行人形”はあった。
ふと見ると、カレンダーが目に入った。
「明後日…」
明後日は、お母さんの誕生日だ。誕生日だったら、なんの疑いもなく物が渡せる。
なんの疑いもなく、人を殺せる
絶好のチャンスじゃないか
明日、ポーチか何かを買いに行かないと…
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「お母さん、お誕生日おめでとう。」
「まぁ!」
私がお母さんに渡したのはスノードロップの柄のポーチ。死刑宣告。
「ありがとう!」
中に死神が入っているなんて考えもせずに喜んでいる。
「行ってきます。」
その日の学校は2限目までで帰った。母親が死んだからっつって…大騒ぎし過ぎなんだよ。
でも、母親は死んだ。
このやり方で
神崎 るかを
殺してやる
--- ---
「るかちゃん、これあげる。」
そう言って渡したのは私の購読している漫画についていた小さめのバックだった。
「ありがとう、杏子ちゃん!大事にするね!」
やたらとハイテンションな神崎 るか。それは死刑宣告なのに…無様に死ね。
「えっ…」
「どうしたの?」
神崎 るかが、急にびっくりした声をだした。
気付いたの?いや、そんなわけない。これは完全犯罪なんだから。
「なんでもないよ。そんなことより、これありがとう。」
よかった。気付いていない。
こうすれば、私はまたクラスの頂点に立つ。
〈side ???〉
アリスの店に行ったんだ、杏子ちゃん。一人殺してるし、それが母親っと。私に危害加えないようにアリスにまたいっとかなきゃ。どうせ、「使うのはあの子達なんだから。」とか言うんだろうけど…
〈side 杏子〉
神崎 るかはそろそろ死ぬだろう。ふふふ
そんなことを思いながら、横断歩道を渡る。
あいつは車に引かれて死ぬんだ。だって、死ぬ場所は横断歩道と書いた。いや、後ろからさされるとかもなくはないのか。
その時、私の視界が反転した。
えっ
右側からすごい勢いで押されるような衝撃を覚えた。
ドスン!
「大丈夫か⁉」
アスファルトの上に仰向けになった私の顔を覗き込んでいた。
私の最後に見たものは少しずつ消えていく人形の紙、私が神崎 るかに渡したはずのものだった。
〈side るか〉
「あぁ〜、今回もだめだったね。」
私の隣にいるアリス・ロペス、アリスがいった。
「私のところに呪いこさせないでよ。」
今回の“死神代行人形”以外にも私がとばっちりを受けたことは何回もある。
「売るのは私だけど、実際に使うのは買った子だから無理だよ。」
その後、アリスは「でも、」といった。
「盛大な呪い返しだったね。それにクラスの子にもあんなに恨まれて。」
「人を呪うってことは、それが自分に帰ってきても文句は言えないよ。」
すると、アリスはお上品に笑ってからこう言った。
「じゃあ、今日も開店しましょうか。」
アリスが吸い込まれるように入っていく見慣れた店。
そこの看板には
“呪い屋”
と書かれていた。
初めての少しホラー系です!
どうだったか気が向いたらご感想ください。