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愛は、時代を越えて。 3話
「とりあえず、ここで降ります。」
と言い、列車を降りる和音。
「どこ行くの?」
「言わずもがな、家に帰るだけです。多分、困っていると話せば泊めてくれるでしょう。」
「家族と暮らしてるの?」
「ええ。両親と僕と、あとは弟2人妹1人です。」
うっわ、大家族だ。
「着いてきてください。絶対に違う方向に行かないでくださいね。」
「うん。」
ここではぐれたら私一生の迷子になるからね。
*
「ここです。」
10分ほど歩き、茅葺き屋根で木造二階建ての家の前で和音は足を止めた。ザ・大正って感じ。現代と全然違うな。
「ただいま帰りましたー。」
「和兄、おかえり!」
「おかえりー。そこのお嬢さんは誰なの?」
玄関に入ると、小学校高学年ぐらいの女の子と40代後半ぐらいの女の人が私たちを出迎えた。
「遠いところから来たらしいんですけど、泊まるところが無くて困っていたところに丁度会ったんです。しばらくの間、我が家に泊まってもらえないかと。」
「は、はいそうなんです。」
こんなスラスラとナチュラルに嘘つける和音すごい。頭良いな。
「お名前は?」
「二藤かぐやです。かぐやって呼んでください。」
「かぐやか……へえ、可愛い名前だね。」
今で言うリビング的なところまで進むと、中学生ぐらいの男の子がいた。和音にはあんまり似てなくて、ちょっとチャラい感じ。
「和音、おかえり。おや、可愛い子じゃないか。名前はなんていうんだ?」
畳敷きの床の上で、何かを書いていた男の人がこっちを見た。多分この人がお父さん……だよね。
「こっちが母親の|和子《かずこ》で、こっちが妹の|和実《かずみ》です。父親の|和彦《かずひこ》と、弟の|和樹《かずき》。もう1人の弟、|和佐《かずさ》っていうんですけど今多分奥で着替えてますね。」
「皆、和のつく名前なんだね。」
面白い家庭だな〜。
「人の和を大事に、が家訓ですので。それよりお腹空いてません?何か食べます?」
「今は胡瓜のお漬物と、あとはさっき焼いた煎餅ぐらいしか無いよ?」
え、煎餅って家庭で作れるんだ。
「だそうです。どうします?」
「えーっとじゃあ……お煎餅をいただけますか?」
「はーい。醤油のやつと、海苔のやつどっちがいい?」
「うーん……海苔の方で。」
うわー、楽しみだな〜。こういう時代の人が作るやつってすごい美味しそうだし。
「はい、どうぞ。」
「いただきまーす。」
私は出てきたお煎餅をかじった。
「美味しい!」
「喜んでもらえてよかったわ。」
*
「かぐやさん。」
「なに?」
お風呂も借り、夜は和音の部屋で寝させてもらうことになった。
「かぐやさんは、いつか現代に戻らないとなんですよね。」
「うん、多分ね。」
戻り方わからんけど。
「戻るとしたら、いつなのでしょうか。」
「………あんま考えたくないな。」
会って間もないけど、私和音と仲良くなれてる気がするし。
「かぐやさんが言っていた地震のこと……どうなってしまうんでしょうか。大災害は人の手じゃ止められないし、逃げるにしても家族や大切なものを置いて逃げるなんて僕にはできませんから。」
「和音は優しいんだねえ。」
急にやって来た眠気に抗えず、私はそのまま眠りに落ちた。
どうも遅れて申し訳ございませんぱるしいです。なんか週一投稿が限界みたいになってて申し訳ないです。好きなだけ殴ってください。和音の家族の名前考えるの楽しい。