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神聖な儀式
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「神聖」
外から騒がしい声が聞こえてくる。
私が何だろうと窓を覗くと人々が行列を作ってどこかへ歩いていく姿があった。
何故だろうかと考えると、今日が私の住む国で最も大事で神聖な儀式の日「成人の日」だということを思い出した。
成人したものを祝うため、20歳以上の住民全てが出席しなければいけない大切な儀式なのだ。
だが、24歳である私は出席しない。
いや、出席できないのだ。
何故なら私が寝たきりで動けないから。
親も他界し、友達はゼロ。
神殿の者も忙しく、誰も私を送り迎えできない。
神殿まで行けるわけがない。
もう儀式はあきらめるしかないのだ。
しかし、どうしても出席したいのだ。
19歳の時から寝たきりになり一度も言ったことのない、神殿へ少しでも入ってみたいのだ。
私の人生の夢が「神殿へ入ること」になっているぐらい入ってみたいぐらい。
いっそのこと気合で歩いていけないだろうか?
いや、無理だ。歩いたら確実に転んで頭を強打して死ぬ。
じゃあ、車いすは?
それも無理。そもそも車いす無いし、買いに行くこともできない。
♪キーンキーン
私が頭の中で論争を繰り広げているとき、教会の鐘が鳴った。
儀式の始まりだ。
遠くで、神殿長が話している声がかすかに聞こえる。
何を言っているかまではわからない。
せめて、その声がしっかり聞ければ誰が成人して合計何人成人したのかがわかるのに。
ああ、この足が憎い。
動かなくなったこの足がとても憎い。
せめて今日だけでいいから動くようになってほしい……。
今日から日替わりお題の小説作ってきます!