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小望の商品 番外編 第八話
私、気づいたんですけど。番外編、八話じゃないですか。
番外編じゃないお話、確か五話しかないんですよ。
普通のお話より番外編の方が多いって……いいんですかね……?
そうそう、あと、今回は長編です。だいぶ長いので……すいません。
ほんとですよ、すーーーーーっごく長いですから。(5500くらい?)
本読み慣れてる人ならいけるかもしれませんけど……終わり見えませんから!気をつけてください!😅
光が消えた時。
隣に、りおんは居なかった。
「……あれ?りおん、みんな!」
りおんはいない。もなも、匠も、みーんないない!
「え、どういうこと……」
私だけが、城の中のままだ。
「……城よ、役目を終えよ。私を元の場所に戻したまえ。」
城が、ゆっくりと消えていく。
城が完全に消えると同時に、私の意識は無くなった。
---
「……っ!」
起きた先。そこは、ただただ真っ白な場所だった。
『愛菜』
「私は愛菜ではありません。小望と申します。あなたはどなたですか?」
『我は神である。愛菜はどうした。殺したのか?』
「死にました」
『そうか、やはり……保たなかったか。なら、小望、お前が新しい店主だ。』
「いきなりですか?」
『ああ。これが店主の印だ。渡しておこう。愛菜のやつめ、これを渡さないまま死んで……!
小望、いいか、別のものに店主を変わる時は、この印を譲渡することだ。わかったな?』
「はい……神様、一つ質問があります。」
『なんだ?』
「りおん達はどうなったのですか?」
『見にいくか?』
「……!はい!」
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一瞬でパッと景色が変わった。
『まず、匠を見ようか。』
「匠は死んだのではないのですか?』
『死んだな。ただし、魂のかけらが少し残っているのだ。あの城が壊れて、行き場をなくした魂が。』
「それは、どこに宿ったのですか?」
『おそらく、あの心は憎しみだ。学校に宿っている。そして、いじめっ子に自分のやられたことを全て仕返しして、やっと成仏するだろう。きっと、学校の怪談になるだろうな。』
「それは、止めた方がいいのでしょうか?」
『それは、お前がどう思うかだ。止めたいなら止めればいいし、止めたくないなら止めなければいい。』
「……そうですか。それじゃあ、私は止めることにします。」
『そうか。』
とても静かで落ち着いていて、けれど、何か怖さと、とても強い憎しみを秘めている匠。
もしその“憎しみの心”単体だったら、匠は加減ができるのだろうか?憎しみのままにやり続ける気がする。
だから、止めておきたい。
『そうだ、小望、おまえは店主となったことで、魔法を手に入れた。好きに使えばいい。使いたい時には思い浮かぶだろう。』
「……はい。」
私は、匠のいた学校にいた。
「Soul-searching Magic(魂を探す魔法)」
一つの、授業中の教室が光った。
「……あそこですか。見られると厄介ですね……
!Invisibility magic(透明になる魔法)」
私は足音を立てないように、ゆっくりとその教室に近づき、入り込んだ。
「__見えていない。」
カンっ、と、つい大きな音を鳴らしてしまった。
__まずいっ!
と思ったけれど、皆の視線は私の体を素通りした。
……匠の魂は?
すぐに見つかっていた。でもそれが、匠の魂だと思えなかった。
真っ黒に怖いほど美しい赤。それが混じった、血のような赤黒い魂。
こんなのが、匠の魂だなんて__
目を疑った。でも、やっぱり本当だった。
「……た、匠?」
“がああああああああああああああ!”
耳をつんざく大音量で匠の“魂”が叫んだ。
「……」
匠は、こんなものを、心の中にしまい込んでいたのか。
匠の“魂”はふくれあがり、大きな怪獣と化していた。
こんな、こんな怪物を、匠はずっとねじ伏せていたんだ。
辛かったんだろう。苦しかったんだろう。だから死ぬ選択をしたんだろう。
それはきっと、他の人を傷つけないためでもあったはずで。
「……匠は、えらいね。すごいね。」
そんな、ありきたりな言葉しか出てこなかったけど。
匠には、きっと届いたはずだ。
その怪物の顔が、少し緩んだ気がした。
私はその怪物に、思いっきり抱きついてやった。
徐々にその体は薄くなっていき、最後は、ニコッと笑った匠だった。
「__匠」
匠の魂のかけらでさえも、もうこの世界からは消えたのか。
寂しく思った。匠は、いい子だった。匠は、偉い子だった。
でも、すごく惨めだった。
だから、嫌になったんだろうなあ、と私は思った。
『……成功したな。お前には、とても素質があるようだ……』
「そんなこと、ありませんよ、神様。……もなは?」
『鴨足 もなのことか?』
「そうです。」
『ふむ……弌島第四。弌島第四中学3-Aの教室にいるはずだ。」
「もなの、助けたかった人というのは?」
『玖丹代 香無。』
「はい?」
『玖丹代 香無|《くにしろかな》だ。』
「それは……?」
『鴨足もなの、幼馴染だ。保育園の頃からずっと一緒の、とても仲良しな友達だったらしい。
だが、去年の12月、交通事故で死亡したんだ。車に乗っていた運転手は逮捕された。』
「玖丹代香無さんは、生き返ったのですか?」
『生き返ったな。確かに生き返った。しかし、意識は戻っていない。生きてはいるが、もなの思っていた通りにことは進まなかった。いつのまにか玖丹代 香無という病室ができていて、そこに僅かに生きている。
そんな状態で、決して喋れないし、歩いたりすることもできない。ずっと寝たっきりだ。』
「……そうですか。それは、どうして助ければいいのでしょう……」
『お前の力があれば、玖丹代 香無を完全に生き返らせることも可能だろう。やってみればいい。
時間を戻すことだってできる。失敗すれば時間を戻せ。まあ、お前ならそんな必要もないだろう』
「……はい。」
一瞬で、弌島第四中学についていた。
「3-A……」
そこには、他のクラスメイトがグループを組んでいる中、1人っきりで暗い顔をしているもながいた。
体は透明にしてある。
__中に入ろう。
どうも、もなはずっとロケットペンダントの写真を見ているらしい。
こっそり写真を覗き込んで……気づいた。
片方はもなだ。もう1人は、おとなしそうな頭の良さそうな女の子。
おそらく、もなじゃないほうは玖丹代香無さんだ。
「Take her to the hospital where kana-san is!(カナさんのいる病院へ連れて行って!)」
そこは、見たことのない名前の病院だった。
「玖丹代 香無……玖丹代 香無……あった!」
私はすぐにその病室の中に入った。
ずっと目を閉じて、繋がれている機械も、ずっと細かく動き続けるばかりで、顔色も良くない。
僅かに生きているだけ。その意味がよくわかった。
「……やってみますか。
Restore kana-san to her original,healthy self and bring her back to life!(かなさんを元の元気な姿に戻し、完全に生き返らせなさい!)」
すぐに効き目は現れた。
ゆっくり、ゆっくりと、香無さんは目を開けていく。
そして、機械の数値も大きく動き始めた。
私はこのまま、もなが来るまで待つことにした。
__1時間くらいして。もなが現れた。
「……」
下を向いて、もなが現れた。
「……!?香無!?」
「__もな?ねえ、私、死んだはずじゃ……」
「よかった___!」
「え……?ちょっと、やめてよ……」
2人とも、涙声だった。
これ以上は見ない方がいいと思い、私は神の元へ戻った。
『……まさか、ここまでとは……』
「はい?」
『__いや。次のやつのところへ行くんだろう?』
「はい、樹くんです。」
『樹は、だいぶ遠くに住んでいるぞ。瞬間移動の魔法を__いや、行くか。』
「どうしてですか?」
『どうして__こっちにも、事情というものがあるのだ。私は有望な者を死なせる気はないからな。』
よくわかったわけではないが、私は察して、このまま神と進むことにした。
『__あそこが、樹の家だ。樹の部屋は、あそこを曲がって__』
位置の説明を受け、私はすぐにそこへ飛んでいった。
透明になって、さらにドアをすり抜けたりすることができるようにした。
そっと、妹さんの様子を見る。
妹さんは、温かい笑顔で人形を動かしていた。
次に、私は樹くんの部屋へ向かった。
樹くんは、辛そうにしていた。
__なにか、機械のようなものをつけている。
わたしはそれに気づいて、それに何か見覚えがあるような気がした。
ドラマとかの、能力を奪う系のナニカにも見えるけど__それじゃない気がする。
考えて、考えて、たどり着いた時。
樹くんが、いっそう顔を歪めて倒れてしまった。
「___発作だ!」
病気の発作が起こったことを知らせる装置。
ブーブーブー、と警報音が鳴る。
妹さんが部屋から飛び出してきて悲鳴を上げた。
お母さんがすぐにきて、救急車を呼ぶ。
相当切羽詰まった顔をしていたので、きっと酷い発作なんだろう。
すぐに、救急隊員が来た。
そして、お母さんと妹さんは一緒について行った。
妹さんは小さいから、1人だけ残していくわけにはいかないからだ。
私も、気づかれずに入ることに成功した。
「__酷い発作ですね。これは__」
樹くんは病院に連れて行かれた。
この辺りで一番近くて大きな病院だ。
「容体が悪いです。3ヶ月保たないかもしれませんね……。」
お母さんは目を真っ赤にし、妹さんは泣きじゃくった。
「わたしが……わたしが、樹兄に願いを叶えてもらわなかったら……」
そう言って、妹さんは泣いていた。
それで、はっきりとわかったんだ。
きっと、妹さんが願いを叶える代償として、樹くんは……
私は神の元へ戻った。
「私は、何をすればいいのですか!?」
『何もするな。樹は、これを覚悟していたんだ。心残りはない。見守ってやれ。』
3ヶ月、と言っていたにも関わらず、発作が全く良くならず、そのまま樹くんは息を引き取った。
『……しょぼくれるんじゃない。次のやつのところへ行くんだろう?』
「そう、なんでしょうけど……」
『お前は、次のところへ行くんだ。さあ、行くぞ。』
「……りおんくんです」
『わかっている。りおんはススキ町にある自分の家にいる。さあ、行くぞ。』
ビュウっとすごい風が吹いて、目を開けた時はススキ町と思われる場所だった。
「あそこだ。」
りおんは、これまでみたことがないほどキラキラと笑っていた。
「よかったわぁ、りおんが笑うようになってくれて。」
「この前まで、いじめられているなんて嘘をついて、学校を休んでたっていうのになあ。
まだ学校にはいけないが、だいぶ笑うようになったよなあ。」
「そうねえ……」
「なんでりおんは、いじめられているなんて嘘をついたんだろうなぁ。」
「……お父さん、きっと、やっぱり莉恩は本当のことを言っていると思うの。」
「なんでだ。いじめられてるなんて嘘に決まってるだろう!」
「……ねえ、お父さん。莉恩は、ウソをついてあんな__苦しそうな顔をできる子じゃないわ。
信じてあげなかったら、ますます表情を暗くして、体調も悪くなっていった。
あれが、ウソだと思うの?」
「ああ、もちろんだ!いじめなんてものはこの世には存在しない!」
「__あなたのみている世界は、現実世界よりずっとずっと平和なのね」
「なんだと!」
「本当のことよ。言ったってわかってくれないでしょう?時間の無駄だもの、説明する気はないわよ。」
「なっ……」
ばしっ!
痛そうな音が響き、莉恩のお母さんが倒れ込んだ。
「なんだとっ、なんだと……おまえ、お前は……」
「お父さんっ、やめて!」
莉恩が飛び出し、もう一発、と振るったお父さんの手が、莉恩に当たった。
「か、神様」
『なんだ』
「どうすれば__」
『このままじゃ、2人死ぬな。警察に連絡すればいいんじゃないか。』
私はすぐに連絡したが、来る間に、何発も何発もお父さんが手を振るった。
もう2人とも、いつ死んでもおかしくないほどボロボロだった。
さらにもう一発__と手を挙げた時。
「__警察だ!」
「__誰が呼びやがった!おい!」
莉恩の父が、2人を殴ろうとする。
「やめなさい!殺すつもりですか!」
「殺すつもりだ!こいつらは、そういうことをした__」
「__ストレッチャー!2人を病院へ」
「はいっ!」
「やめろ、こいつらは、俺が__」
『……相当なクズだな、あいつ。
まあ、あれで運んでくれれば莉恩は生きられるだろう。あいつは牢屋行きだ。
気分が悪い。行くぞ』
「はい。」
『最後だろう。』
「はい、純です。」
『あいつは__花梨を戻すことだったな。花梨はもどったが、その代わりに……純の容体が悪い。
樹のような感じだな。』
「そ、そんな__」
『お前はそういうのが嫌いだろう?みない方がいい。とりあえず、これだけ伝えておく。
__愛菜は、みんなが幸せになることを望んでいたが、結局、あの子の思う通りに願いは叶わなかった。
お前は、そうならないように、立て直すんだな。小望』
「はい……。」
『__これからは、なるべく魔法を使わないようにしろ。』
「はい?」
次の日、私はそう言われた。
「なぜですか?」
『お前はあまりにも魔法が使えすぎるんだ。何度も使ってれば、その分__死期が近づくぞ。
我は、素質がある者を殺したくはないのだ。だから、あまり使うな。』
「……はい。」
『何かあれば、神のところへ行きたいと思えば来れるだろう。
__頑張れよ、新しい店主。』
「……はい……はい!」
こうして、私・望は不思議な店の店主・『小望』となったのだ。
や、やっと終わりました__5457文字。最大1800文字くらいだから、今までの最高の3倍__
毎日ちょっとずつ書いていって__やっと終わりました!
次からは、番外編じゃなくなるのでっ!
そっちもよろしくお願いします!