公開中
第2話
❃虹色うさぎ❃
…信じられない。それが率直な本音だった。だって、小学3年生のときに仲の良かった親友…いや、引越するときに告白してきてくれた初恋の相手と、大好きな姉を盗られると沈んだ気持ちで挑んでいた姉の結婚式で再会できるなんて、まさか夢にも思っていなかったから。向こうは最初は忘れていたみたいだったけど、すぐに思い出してくれた。告白の返事は結局離れ離れになってしまうのだからと出来ずじまいだ。もし、次に会える機会があるのならそこで絶対にしようと思っていた。…が、よくよく考えると7年も前の告白なんてもう時効じゃないだろうか???しかも小学生なんて子供の戯言かもしれない…。実際向こうも今の今まで忘れていたようだし、恋人がいたとしても何らおかしくはない。それにこれからは家族ぐるみの付き合いになるのだ。もしもここで僕が告白をして振られようものならこれからの親戚の集まりなんかが地獄の空気になりかねない。…姉のためにもそれは何とかして避けたい。そんな風に僕がやらない言い訳を作り出していると、輝綱くんの手が僕の肩に触れた。
「…ひゃい!?」
思わず変な声が出てしまって顔が火照る。…穴があったら入りたいとは、まさにこのことだろうな。「うぅ…。」と唸り声を上げていると
「あ…わ、悪い!まさかそんなに驚くとは思わなくて…。」
とあたふたとした表情でこちらの様子を窺ってくる。そんな風に慌てている様子が可愛くって愛おしく思え、もっと眺めていたいが、流石に悪いので「大丈夫だよ。」と返答をし、用件を聞こうとする。
「で、なぁに?」
こてんと首を傾げる。
「いや、その、今ってどこの学校通ってんの?あと、連絡先交換しよ!また、結大と仲良くしたい…!」
その言葉の破壊力は凄まじく、僕は3秒ほどフリーズした後、満面の笑顔を咲かせてみせる。
「…ほんと!?…嬉しいな。学校は|笹が崎《ささがざき》高校だよ。」
「え!?マジで?オレは|七星《ななほし》高校!!最寄り駅一緒じゃん!時間合うとき一緒に帰ろうぜ!」
にかっと輝綱くんが僕のとは比べ物にならない程眩しい笑顔を向けてくる。頬が思わず熱を帯びていくのを感じながらも何とか返答をする。
「凄い偶然だね!うん、一緒に帰れるの楽しみにしてる。」
その後、お互いにスマホを取り出して連絡先を追加する。7年間ずっと喉から手が出る程欲しかった連絡先がいきなり追加されて心臓はバクバクいっていたけど、こっそり深呼吸をして自らを律する。ふと輝綱くんな方に目を向けると、そこには唇を噛んでにやけている輝綱がいた。
(…え?見間違いじゃないよね?そんなに喜んでくれるってことはやっぱり僕のことまだ好きなんじゃ…。だとしたら今もまだ返事を待ってる???じゃあ答えないと僕ただの酷いやつでは…?)
頭の中をぐるぐるとかき混ぜられているかのように思考が纏まらない。すると、頭が少し熱を帯びていることに気がつく。
(…あれ?なんか目眩がしてきたな。)
そのまま僕は床へと倒れた。
---
目が覚めたのは、控え室のソファーの上だった。…そこまでは何らおかしくない。しかし、身体に掛かった父さん以外の男物の上着(当然僕のものでもない)、そして僕の頭を膝枕してくれている輝綱くんの心配そうな顔と目が合って一気に脳がパンクした。…いや、今日だけで色々起きすぎでしょ!?
「目が覚めたのか!…良かったぁ!さっきからなんかほっぺが赤いなと思ってたんだよ!…熱のせいだったんだな。」
それだけではない気がするが、そういう事にしておきたいので「う、うん。」と相槌を打つ。すると、輝綱くんは少し唇を尖らせて頭を撫でてきた。
「ふぇ…!?な、何してるの?」
「いや、相変わらず髪綺麗だなって思ってさ…。」
…そうだった。昔から輝綱は僕の髪を褒めてくれたっけ。心地の良い感覚に思わず目を閉じてしまう。猫とかってこんな感覚なのかもしれないな…。
「そろそろ式場に戻るか?お義姉さん達も心配してたぞ。」
その言葉を聞いてガバっと飛び起きる。そうじゃん!折角の姉さんの晴れ舞台なんだ。余計な心配はかけたくない!「ありがとう!早く戻ろ!」と輝綱くんの手を引きながら式場へと向かった。
---
式場へ戻ると姉さんとお義姉さんが駆け寄ってきてくれた。
「よかったぁ…!お母さん達から結大が体調崩してるらしいって聞いて心配してたんだよ?」
「折角の晴れ舞台なのに心配かけてごめんね…。でも輝綱くんが暫く安静にさせてくれたからもう大丈夫だよ。」
それを聞くと姉さんとお義姉さん顔を見合わせて、
「アンタ達随分仲が良さそうだけどもしかして知り合いだった?」
とお義姉さんが輝綱くんと僕の手を指差して尋ねる。一瞬意味が分からなかったがすぐに合点がいった。手を引いたときに無意識に恋人繋ぎをしてしまっていた。
(…何やってるんだよ、僕!?)
顔が一気に熱くなるのを感じて、すぐに手を離す。苦笑しながら
「姉さんが心配してるって聞いたから急いで来て、それでつい…!」
と返事をする。…が、質問は「知り合いだったのか」だ。これだと余計意識していると思われてしまいそうである。慌てて輝綱くんの方に視線を向けるも、そこには唇を噛み締めてそっぽを向き、頬を赤く染めている輝綱くんがいた。
(…え!?もうこれ絶対向こうも意識してるよね…!?)
どうしようと、下を向いて黙っていると輝綱くんが
「小学生のときに仲良かったんだよ。途中で結大は引越ししちゃったけど、高校も近いみたい!」
と上手く返答をしてくれた。それを聞いた姉さん達は、「凄い偶然!二人とも良かったね〜!」とニコニコとしていた。
---
その後式が終わり、互いに自宅へと解散した。
姉さん達は元々二人暮らしをしていたのでいつもと特段変わったことはない。いつも通り寝る準備をしてベッドへと横になる。…しかし、ここからがいつもと少し違った。スマホを触っていると一件の通知が届いた。開いてみると、
<「まだ起きてる?」
輝綱くんからだった。その一言を見るだけで胸がドクンと跳ね上がる。
「うん。起きてるよ」>
「どうかした?」>
と平静を装って返事をする。
<「折角だからもっと話したいなって思ってさ」
<「まだ眠くなかったら話そ!」
「ホント!?嬉しいな〜(*´艸`*)」>
「何の話する?」>
<「やっぱり離れてからどんな生活送ってたかとか気になるな!」
「おー!いいね(≧∇≦)b」>
それから僕達は2時間ほど雑談を続けた。
--- ---
「そろそろ寝ようかな」>
<「りょうか〜い!明日は一緒に登校しようなー!」
「うん!」>
電源を一度切ったがすぐに通知が鳴る。
<「あ、待って一つだけ」
なんだろう?と次のメッセージを待っていると、
<「また会えて良かった!すげー嬉しい!」
顔が一気に熱くなった。そんなの、そんなの
「僕もだよ」>
そのまま悶えて電源を切り、眠りについてしまうのだった…。