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脱獄王の余計な置き土産(続き)
嬢/姫宮
「……ハァ、ハァ……。ったく、あいつ……今度見かけたら本当に串刺しにしてやる……」
雪の中で白石をボコボコ(愛の鞭?)にして戻ってきた杉元は、肩で息をしながらチセの床にどっかりと座り込んだ。
せっかくの甘い雰囲気を台無しにされ、軍帽を目深に被り直して不機嫌を隠さない。
「杉元さん、お疲れ様です……。あ、何か落ちてますよ?」
楓が指差した先。白石が引きずり出される際に懐からこぼれ落ちたらしい、小さな紙包みが転がっていた。
「あ? なんだこれ……白石の野郎、ガラクタばっかり持ち歩きやがって」
杉元が忌々しげにその包みを拾い上げ、中身を確認する。
そこに入っていたのは、透き通った琥珀色の、なんの変哲もない数粒の**「飴」**だった。
「……飴? なんだ、あいつにしては普通なもん持って……」
だが、包み紙の裏に殴り書きされた文字を見た瞬間、杉元の動きが止まった。
『樺太の薬売り直伝! 情熱が止まらない “夜の御守り” 飴。一粒でヒンナヒンナ(意味深)』
「…………っ!?」
杉元の顔が、一瞬で茹で上がったように真っ赤になった。
彼は慌ててその紙を握りつぶし、背後の雪の中へ放り投げようとする。
「杉元さん? 何て書いてあったんですか?」
「な、なんでもねぇ! ただの……ただの、体に悪い毒飴だ! 捨ててくる!」
「えっ、でも白石さんが持ってたなら、美味しいものかも……」
楓が純粋な好奇心でその飴に手を伸ばそうとした時。
杉元がガシッと彼女の手首を掴み、そのまま床へと押し倒した。
「……ダメだ。これ以上、俺を煽るなよ、楓」
その瞳は、白石を追いかけていた時の怒りではなく、もっと濃密で、逃げ場のない熱を孕んでいる。
「白石の野郎のせいで、俺の我慢はもう限界なんだ。……こんな『薬』に頼らなくたって、俺はお前を離すつもりねぇからな」
握りつぶされた飴の包みが、床に虚しく転がる。
杉元は楓の首筋に顔を埋め、深く、熱い吐息を吹きかけた。
「……今度こそ、誰も来ねぇよ。……いいな?」