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第2話 対立
「順調ね」
今は1番、わたし・紫音はどことなく不吉な予感がしていた。三葉さんのその一言さえ、なんだかフラグな感じがする。
「異変…なんか、ありそうじゃない?」と紫桜が言ったのをはじめ、
「わたしもそう思う」「わたしも…」と、わたしと椿はそう言った。
必ずある、じゃなくて、あるかもしれない。見落としが絶対ある、と確信できないのが厄介だった。
「じゃあ、引き返す?」
そう田菜さんが言った。
「うーん、やめといた方がええんちゃう?だって、まだ異変は見つかってないんやし。異変が見つかったら、にしようや」
「み、見つかんなかったら、ただ時間を浪費するだけ…とは思うよ?」
四葉と七葉で、意見が対立する。今、時間はただただ過ぎてゆく。時計の針が動く、カチカチという音が脳内に響くような気もする。
「これ、絶対全員で行かなあかんのか?」
「はい、皆さんで行ってください」
唐突に聞こえた声は、呆気なく終わった。
「…わかった、引き返すか」
そう四葉が折れて、わたしたちは引き返した。
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『0番』
そう書かれたポスターを睨みつけ、これも異変の一つなのかと無理やり思う。
「誤りです。誰か一人、選んでください」
感情なんて何らない、ただプロンプトを読み上げただけのような声が、わたしたちを絶望させる。
沈黙が流れていた。何を話せばいいのか、誰を犠牲にすればいいのか、全然わからない。わたしにだって、責任はある。
「……わたし、行きましょうか…?」
そう声を上げたのは、椿だった。
「椿はダメ…!!」
声を荒げるのは、わかりきっていた。
「なら我がいくのじゃ」
「いや、お姉ちゃんはダメだよ。お姉ちゃんは強いから。わたしは弱いし、いちばん年が低いから…」
「なら、僕が行こうか?僕だって、能力も弱いし、年も2番目に低いから。それに、僕は一人っ子だから、悲しむ人もいない」
小鳥はそう言って、「それでいいよね」といらない確認をとった。
「僕・あおいろことりを選びます」
小鳥は天井を見上げて言った。灰色のタイルが、ただただ広がっている天井に。
「わかりました。皆さん、目を瞑っていてください。目を瞑らなかった人は、 小鳥 さんとともにワタクシの味方になります」
そんな事言わなくても、目を瞑る。
音は一切なかった。「もういいです」という声が聞こえてから、わたしは目を上げた。
一人、減っている。青色髪で、ニットを着ていて、ズボンを履いている人は、見渡してもどこにもいない。