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見てるよ
※此方の作品には「ストーカー・執着・監視」といった表現が含まれます。
▽ 東雲彰人 ➵ 23歳 177cm 。 冬弥の強火同担拒否オタク(ストーカー)。オドオドしているタイプの陰キャ。
△ 青柳冬弥 ➵ 24歳 183cm 。 人気アイドルグループのメンバー。ファンの顔は覚えているつもり。
▽▽▽
『みんな、まだまだこれからだよな!?』
そう客席を煽りながらモニターに映るのは淡い水色とダークグレーの特徴的な髪色をした青柳冬弥という名のアイドル。クールで何事にも熱心で少し天然な、まるで王子様のような人。そんな彼を追って、””見続けて””いるファンが1人。
「は〜、やっぱ何度観ても冬弥くんが一番カッコイイ、♡」
パソコンのライブ映像だけが光り続ける部屋の中、それを食い入るように見つめる、メガネに重い髪の毛のいかにも陰キャなオレ、東雲彰人だ。一番冬弥くんを知っていて、他の誰よりも冬弥くんが好き。ベッド周りのタペストリーにポスターはもちろん、痛バも3つ持っててちょっと誇れるくらいの祭壇に、飾りきれない程沢山のグッズを持ってる。机の上にはお気に入りのアクスタとぬいぐるみが飾ってあるし、それに壁にもオレが撮った冬弥くんのオフショットがたっくさん。コンビニに居る姿、ご飯を食べる姿、家に帰る姿、どれもカッコよくて宝物。
「あ、そうだ、冬弥くん何か呟いてないかな〜………」
ライブ映像を見つつ冬弥くんの色んなSNSの個人垢を見て回る、最低でも30分おきには見なくちゃ見逃してしまう。周回していると5分前に『明日明後日はショートドラマの撮影をするから張り切らないと』という投稿がされていた。実はその撮影の見学権がたまたま当選したから撮影風景を__いや、冬弥くんを見に行ける。勿論それをリプライし『張り切ってる冬弥くん可愛い!どっちも見に行くからね』と投稿をした。
スマホを置き、写真立てに入る1番お気に入りの写真に向かって
「会いに行くから待っててね、冬弥くん」
そう微笑み、まだ終わる気配のないライブ映像へと意識が戻る。
1度だけスマホが明転しいいねの通知が表示されたが、気が付かないまま暗くなった。
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翌朝、最初から冬弥くんを見ていたくて早めに現場に来ている。冬弥くんの「向かってます」って投稿は今来たし、最初から姿を見れる事については問題ないだろう。だが、撮影場所に来てみたら同じ考えをしていたのか同担のやつがチラホラ席に座っていた。冬弥くんを見ていいのはオレだけなのに。分かってはいるけど許せない。
気持ち睨みつけながら最前を確保しバッグから一眼レフカメラを取り出した。「なにあれガチすぎ」なんて声が聞こえたが、スマホとか実物見てキャーキャー騒ぐだけのヤツが言わないでほしい。目障りだし。
胸の前でカメラ構え、時々冬弥くんの垢を確認しながら待機する。そうして待っていると黒いワゴン車が入ってきた。周りが誰だ誰だとザワザワしはじめると同時に扉が開き…………
「態々車でありがとうございました」
そう言って爽やかな笑顔を振りまく冬弥くんが降りてくるではないか、!!すかさずカメラを構えて降りてくる姿、その国宝級の笑顔を収めていく。
「っ、かわ…、いや、カッコイイ!!神だろ、こんな、、」
独り言が絶えないが周りもキャーだのギャーだの騒いでいるから誰も気にしないだろう。
軽く会釈する姿を見せ、冬弥くんは挨拶回りに行ってしまったが””車から降りてくる””なんて貴重なシーンを納めさせてもらったから無問題だ。なんなら冬弥くん本人がこんな近くに居るっていう事実だけで………、、とこんな調子で写真を見ながらニタニタしていると、真後ろから
『ねぇ!今見た?冬弥様こっち向いたよね!?』
『見たに決まってるでしょ!!遠くにいるのにこっち向かって微笑んでて最っ高………。絶対私達へのファンサでしょ』
『間違いない!!』
なんて会話が聞こえてきた。
は?ファンサ?最悪見逃した、写真にも収め忘れた。いやでも、この女達の勘違いだ、絶対に。そもそも目の前で冬弥くんを拝める機会を設けさせていただいてる時点で最高のファンサービスだから。
でも ………
「__ちょっと、悲しいな__」
そう零してカメラをバッグに片付ける。
そろそろ撮影が始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
_____メッチャクチャ良かった!!
冬弥くんは本当に表情管理と視線の動線が完璧で心情がよく伝わってくる演技をしてるし、共演者さんとの絡みとか、掛け合いとかが本当に元々友人なんじゃないかってくらいの距離感で………。たまに出しちゃうNGが可愛いんだけど本人はすっごく申し訳なさそうで苦い顔してて、本気でやってるんだって伝わってきて、もう最高だった。
早速SNSに感想を書き込んで投稿。内容はあまり覚えてないけど冬弥くん沢山見れたから別にいいかな。
『皆様、本日はありがとうございました。明日の撮影は時間帯と場所が違う為、見学に来られる方は____』
その場でファン同士の会話が広がる前にスタッフが見学者全体に挨拶をし、現場の離れまで誘導してくれて解散。「帰るの勿体ない!」って話し込むヤツが居るけど気持ちは分かる。けど、さっき冬弥くんが『撮影メンバーと一緒に行きつけの焼肉に行くことになりました!楽しんできます』って投稿をしていたのを知っているんだ。
そして、
「行きつけって………絶対あそこだよな」
オレはその””行きつけの焼肉””に心当たりがある。バッグを持ち直し、少し小走りで駅へ向かっていく。まだ沢山見ていたいんだから。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
電車に揺られて、冬弥くんの示していた焼肉の店に来た。アイドルの行きつけと言えば個室があるとかお高いとか想像するだろうが冬弥くんはそんなんじゃない、素朴な感じでとてもいい。中に入って注文をし、時々SNSをチェックしながら気ままに冬弥くんを待ち始める。
「早く来ないかな♩」
って 、浮かれすぎかな。
お肉を食べていると冬弥くん達が店に来た。スマホで自らの顔面を隠しながらその顔をガン見。持ち上げた時にスマホの時計が見えたがどうやら1時間も経っていたらしい。いやそれよりやばい、ラフな感じの冬弥くんカッコイイ。周りの客も突然の有名人にそれぞれ驚き、声をかける者もいた。それに笑顔で軽く手を振って答える撮影メンバーと冬弥くん、、!なんてファンサービス精神なんだ。
「オレも話しかけたい、けど無理だな………」
冬弥くんならきっと笑顔で返してくれるだろうが、他と同じファンサなのが少し嫌だ。オレは他より愛を持ってるんだから特別がいいな。
そのまま御一行は奥の席に座りわちゃわちゃし始めた。この席だからか冬弥くんが他メンバーを優先して最後に座ったからか、運がいいことに冬弥くんがハッキリと見える。座る前に一瞬こっちを見た気がするけど、周りを警戒するのはアイドルらしい。
暫くはご飯を食べる事も忘れて夢中で冬弥くんを見続ける。箸を持ってお行儀よく笑う姿、暑いのか手でパタパタと仰ぐ姿、お肉を頬張る姿、その他諸々の行動全てが愛おしいとスマホで写真を撮りまくっていたら冬弥くんとガッツリ目が合ってしまった。
「っ、やべ……」
撮ってるのを勘づかれたかもしれないのとシンプルな照れで慌てて目を逸らし、もそもそとお肉を口に運ぶ。次に視線を戻した時はもうこっちを見ていなかったが、今の出来事は二度と忘れられなそうだ。視線が合うのはほぼファンサと一緒だろ。
ご飯を食べ終わって、お開きにしそうな雰囲気が出るまで机の下で今日撮った写真を1つ1つじっくりと眺めつつ、明日の事を考える。
「やっぱどれもカッコイイ。明日も、見に行くから」
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△△△
お開きになってからの帰り道、最寄り駅で降りてマンションへ向かっている。撮影の疲れのせいか、はたまた別の理由でか、到底ファンには見せられないような顔をしている気がするが、遭遇してしまった時に表情を作ればいいか。
ふと、今日も居るかもしれないと後ろを振り返り、案の定電柱に隠れる人影を視認して目を細める。
「……また居る」
視認こそしたがマンションが直ぐそこだったのでエントランスのロックを解除し先に入ることにした。
「明日、ようやく__」
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正午を過ぎた頃、撮影場所へ向かう車の中で昨日の投稿を見返している。
『やっぱり演技が上手い。声も動きも完璧で惹き込まれる』
『美味しそうにご飯食べてて堪らない』
『明日の撮影も頑張ってほしい』
………何度でも見れてしまうな。
この投稿を見ていると頬が緩んでしまう、現場に着く前に直さないとと思い最後にもう一度読み返してからスマホを裏向きでそっと置いた。
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車がゆっくりと現場へ入っていく。ここからはアイドルの顔だ、ボロを見せてはいけない。昨日と同じように運転手に向かって「ありがとうございました」と微笑むとそれだけでキャーキャーと声が聞こえてきた。
「__挨拶なんてマナーだからそんな騒ぐことないだろう……__」
席の方へ向いた意識を戻し昨日と同じメンバーへ「本日もよろしくお願いします」と挨拶をする。一通り回り終わって改めて席を見る。今日も最前でカメラを構えているあの子、覚えているぞ。今日は手でも振ってみようと思い少しだけ微笑んで小さく振ってみせた。しっかり見えていればいいな。
役者さんに呼ばれて席を離れ、暫く談笑を楽しんでいると昨夜の話になった。
『冬弥くんたちさー昨日ご飯行ったんだって?羨ましいよ~、俺も連れてってほしかった!』
『あ!その投稿わたしも見ましたよ!ズルいですーわたしだって行きたかったのにー!』
「はは、すみません、、流石にアポ無しなのに大人数で行くのはと思ってしまって、」
『アポ有りなら皆で行ったんだな?よし、なら撮影終わり打ち上げも兼ねて全員……はムズイけど飯行くぞ!』
「その、、すみませんが今日は人に会う用が___」
『えー?!ってことは冬弥さん来れないんですか!一緒にご飯行けるチャンスだと思ったのに…』
被せ気味に共演の女性アイドルが口にしてくる。この言い方はなんだか狙っていたようにしか聞こえない。
「今日は無理ですけど、また今度行きましょう?」
『うぅ〜、そうですよねぇ、、是非今度行きましょう!それはそうと打ち上げはちゃんと開催してくださいね』
『えぇマジで?!w言ったからにはやるけどさぁ、w』
いい感じに話が纏まったみたいで良かった。準備が終わったのか遠くで「撮影始めるのでスタンバイお願いしまーす!」と声が掛かる。
「呼ばれましたね、今日の撮影頑張りましょう」
『はーい!一緒に頑張りましょうね♩』
そう言って肩をぽんと叩いてくる。あの子に見られているからなるべく接触は辞めて欲しいが、それを言うような場ではないから今は我慢しよう。
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撮影は難なく進み、先程ラストのシーンを撮り終え機材の片付け等をしているところだ。時刻はもう夜七時半を過ぎて辺りは暗くなっている。
撮影の内容?覚えている訳が無い、今はどうでもいいのだ、この後あの人に会えるのだから、あの人の口から感想でもなんでも聞けばいい。
『お疲れ様でした〜!いやー、良かったですよ皆さん!二日間本当にありがとうございました』
『打ち上げ企画してるんで!行く人何人居ますかー!』
……なんて、和やかな空気が浸透しはじめた。良いものが撮れて、緊張も解け、リラックスモードになっているんだ。ファンの方もスタッフに誘導されてもう居ない。
八時近くなって挨拶をし、ようやく解散となった。
「俺は人と会う予定がありますので…俺の分も皆さんで打ち上げ楽しんできてください。」
そう役者さん達へ伝えて車に乗り込み現場を後にする。車の中で打ち上げ関連の投稿をRT、引用して概ね口頭と同じ内容を添えて投稿する。すぐにファン達から『お疲れ様でした』等の反応がつく。今日の反応を見る為に直近の投稿を見てみると
『感動した、流石冬弥くん』
『打ち上げ行かないのか…会う人って誰?』
なんて言われていた。堪らず笑みが零れてしまいさりげなく「お気に入りのカフェで待ち合わせしてるので、早めに行かないと」なんて投稿をしてみる。すぐに反応があり『え?!まさか好きな人?!』『メンバーかもしれないよ??』『えーー!誰なんだろー!』と沢山返信がついた。俺のファンは変に騒がなくて助かる。ファンはアイドルに似る、なんて言葉があるが、実際はどうなんだか。
待ち合わせの人の反応通知が来たので、運転手に「少し急ぎで」と伝えておいた。
『冬弥くんあのカフェ好きだもんね』と投稿が。
あぁ、早く会いたい。
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結局着いたのは九時近く、待たせていないといいなと思つつ上機嫌な足取りでカフェへ向かっていく。途中あの子の垢を見て、10分程前に『来たけど、何処居るんだろう』という投稿がされていたことに気がついた。早く行かないと。
ようやくカフェが見えてくると、店の前でウロウロしている人影が目に入った。
「……居た」
健気に待っていて可愛い、今行くから。
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▽▽▽
「……何処、だろう。奥かな、それともまだ来てない?」
冬弥くんが来るなら絶対にここなのに、オレが間違える筈なんてないのに。場所を間違えたかもという少しの不安が胸を締め付ける。店内の人全員が待ち合わせ相手に見えてしまって息苦しい。スマホに『やっぱり演技が上手い』とか『会う人って誰?』とか冬弥くんの事ばかりを呟いている自分の垢を開きっぱなしに胸に抱え、店の光に照らされながらもう一回、もう一回と中を視線が往復する。
すると突然背後から「人探しですか?実は俺もなんです」と声が掛かった。
え、と振り返る前に後ろにピッタリとくっつかれて前を向くよう顎を手で支えられ、動けなくなってしまった。
「探してましたよ、東雲彰人さん」
「な………オレの名前……」
覗き込んできたのか影がかかり、恐る恐る見上げるとそこにはあの、憧れの、大好きな冬弥くんが居た。
「とう、や、くん……?」
「そうですよ、青柳冬弥だ。待たせて、不安にさせてすまなかった」
「それと、二日間カメラを構えながら俺を見てくれてありがとう。カッコよく見えてくれていて嬉しい」
ぇ、?
「そうだ、今日手を振って微笑んだ姿はしっかり見て、撮ってくれたか?」
なん、で
「昨夜のご飯の時、こっち見ていたのに顔を赤くして逸らしてしまったの凄く可愛かったぞ」
なんで
「あぁ、混乱させる真似をしてしまってすまない。確実に彰人と二人で会いたかったんだ」
なんで、知ってるんだ
その言葉が零れていたのか、冬弥くんは優しく笑って「俺もずっと、見ていたんだ。お互い様だな」と口にする。
その言葉が堪らなく嬉しいはずなのに、堪らなく怖く感じた。彼への大好きが麻薬のように機能する。
同じ方向を見ているはずの冬弥くんの顔には、俺と違って店の光が当たらず、夜闇の中に生きていた。
オレが何か言おうと口を動かすと、冬弥くんはオレの言葉なんて必要ないかのように話を続ける。
「呼び出した理由なんだが、アイドルとファンなんて上下関係もう要らないんだ」
「もっと俺を知って、もっと俺に堕ちて生きてほしい。」
「彰人なら着いてきてくれるよな?」