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潮風の片想い
高校二年の夏。
私にはどうしても苦手な人がいた。
同じクラスの瀬名海斗。
背が高くて、顔も良くて、誰とでも仲良くなれる。
なのに私には、会うたびに意地悪だった。
「また図書室?」
「悪い?」
「青春を本棚に置いてきたのかと思った。」
「うるさい。」
「怒ると眉毛下がるよな。」
本当に最悪だった。
だから最初は好きになるなんて思ってもいなかった。
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海斗の父親は漁師だった。
学校帰りになると、よく港を手伝っている。
ある日、私は図書室で借りた本を落としてしまった。
拾おうとした瞬間、風に飛ばされる。
「あっ!」
本は坂道を転がり、そのまま海へ。
終わった。
弁償だ。
絶望していたら、海斗が制服のまま防波堤から飛び降りた。
「えっ!?」
数秒後。
びしょ濡れで本を抱えて戻ってくる。
「ほら。」
「馬鹿なの!?」
「そんな怒るなよ。」
「風邪引くじゃん!」
「泣きそうだったから。」
海斗はそう言って笑った。
その時初めて知った。
この人は、誰にも見えないところで優しい人なんだと。
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それから少しずつ距離が縮まった。
放課後の海。
港のベンチ。
自販機の炭酸。
海斗はいつも夢を語っていた。
「東京に行く。」
「大学?」
「いや。」
「じゃあ?」
「俳優。」
私は思わず吹き出した。
「何その反応。」
「だって急に俳優。」
「笑ったな?」
「笑った。」
「覚えとけ。」
海斗は本気で悔しそうな顔をした。
その顔が可愛くて、私はまた笑った。
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気づけば毎日が特別になっていた。
海斗がいるだけで楽しかった。
LINEが来るだけで嬉しかった。
教室で目が合うだけで幸せだった。
完全に恋だった。
でも告白はできなかった。
海斗は夢を追っていたから。
私は応援する側でいたかったから。
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高校三年の夏。
海斗の上京が決まった。
出発の前日。
私たちはいつもの海へ行った。
夕日が海に溶けている。
海斗は珍しく静かだった。
「なあ。」
「何?」
「俺さ。」
そこで言葉が止まる。
珍しく緊張している。
私は少し期待してしまった。
だけど。
「好きな人いるんだ。」
心臓が沈んだ。
音もなく。
ゆっくりと。
「そっか。」
精一杯笑った。
海斗は続ける。
「でも言えなかった。」
「なんで?」
「振られるの怖かったから。」
私は泣きそうになった。
私も同じだったから。
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その夜。
海斗から最後のメッセージが届いた。
『明日から頑張る。』
私は返信した。
『応援してる。』
本当は違う。
応援なんかしたくなかった。
行かないでほしかった。
隣にいてほしかった。
でも送れなかった。
結局、私は最後まで「好き」の二文字を言えなかった。
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十年後。
テレビをつける。
そこには人気俳優になった海斗がいた。
ドラマのインタビューで司会者が聞く。
「俳優を目指した原点は?」
海斗は少し考えてから笑った。
「高校の時、好きな子がいたんです。」
私は思わず画面を見つめた。
「その子、俺の夢を笑ったんですよ。」
スタジオが笑う。
海斗も笑う。
でも次の瞬間。
少しだけ目を細めた。
「あの子がいたから、意地でも叶えたかった。」
胸が苦しくなった。
懐かしくて。
愛おしくて。
そしてもう戻れなくて。
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窓を開けると潮風が入ってきた。
故郷から遠く離れた街なのに、不思議とあの日の海の匂いがした。
人生には叶う恋もある。
叶わない恋もある。
だけど本当に人を好きになった記憶は、失恋しても消えない。
海が何度波を返しても。
砂浜の足跡が消えても。
あの夏の恋だけは、ずっと心の中に残り続けるのだ。
かのらぶ失恋ストーリー好き説浮上中((
では!