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シックス・ラバーズ 第2話
「……げっ、アンタ…」
その子が、俺に向けて指を指しながらそう言う。
面倒くさいことになってしまった。
だいいち、俺は彼女の名前が思い出せない。だが、確かにどこかで会ったような記憶はあるのだ。
俺「ご、ごめん、名前なんだっけ?」
「えっ、覚えてないの……まあ、それもそうか。ちょっとの間しかいなかったし。―――|麻野《まや》。覚えてる?」
――――――マヤ?
その名前を聞いて、やっと思い出した。
中学の頃――――二年生だっただろうか?
数ヶ月間だけ同じクラスにいた子がいた。
それが、彼女だ。
しかし、中学の頃と大分変わってしまっていた。
思い出せなかったのもそのせいだろう。
なぜなら、中学時代の彼女は茶髪だったのに、髪は白髪に染めた青メッシュの派手な髪色をしている………
一応、校則では染めるのは別にOKなのだが、そんなに派手な染め方をしているのは、彼女くらいだろう。
クラスの他の者も染めている者はちらほらいるが、どれも金髪だったり髪の一部がピンク色だったりと、可愛い程度だ。
俺「ど、どうしてここに……」
麻野「どうしてって、たまたま同じ高校に入学しただけ。それだけでしょ。そして、たまたま同じクラスになった。まあ、同じクラスになったなら仕方ない。これからよろしく。」
俺「あ、ああ。よろしく……」
そう言って、俺は彼女を後にし、指定された自席に座る。
席に座り、考えた。
俺は、中学でも目立たない方だった。ずっと席に座って一人で本を読んでいた。
だれも、俺のことは覚えていないだろうと思っていたのに………
彼女は覚えていた。数ヶ月しかいなかったのに。
何故だろう。しかし、考えても仕方がないよな。
つづく