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2.到着
ファンレターありがとう!やる気出てきた!
果たして、その先にあったのは出口だった。
(やったぁ。これで今の道を戻らないで済む!!)
ただ、この判断は早計だっただろう。
何はともあれ、響は洞窟からの脱出を果たした。
そこは、森の中だった。見覚えは……ない。
だが、響は気にしなかった。
(ごめんなさい。今だけ許して。)
周りにトイレがないことを悟ったのか、その場で用を済ませることにした。もちろん、目につかれにくい所を探して、だが。
そして、急ぎの用を済ませた響は改めて周りを見渡した。
(これは、何の植物だろう?)
小さな村で今まで過ごしてきたのだ。基本的な植物は親から聞いて、覚えさせられている。
だけど、それでも分からなかった。
こうなってくると、響の理解の先の出来事である。響には、やりようはなかった。
ぐぎゅるるるるるるる
響のお腹が鳴った。そういえば、おやつの時間はとっくに過ぎている。さらに、日も沈みそうだ。
(時間が少しずれてしまった……。)
響は時間間隔には幼い時から自信があった。だが、今、その自信は崩れ落ちた。
(とりあえず、植物の名前は分からないけれど、いったん下に降りよう。同じ村なはずだから。)
そう考え、響は下へと向かう。だんだん日は暗くなっていき……。
グルルルルッ。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
……響は、男勝りな言動であるが、れっきとした女であった。
そして、そんな響の前に、おぞましい見た目の生き物がいた。
(逃げないと……だけど、背中を見せたくない……。)
響は一歩下がった。
それは、一歩近づいてきた。
(噓でしょ?私、狙われているの?本当に人を食べる生き物がいたの?)
響は、怖くなった。そして……
「いやああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」
声を出して逃げ出した。
……先ほどの、背中を見せない、という覚悟は、簡単に消え去っていった。
(一体何なの!?人を食う生き物って本当にいたの!?あんな生き物、今まで一回も見たことがないよ……しかも洞窟の外だし!!)
「大丈夫か!?」
男の人があらわれた。
「大丈夫じゃないよ!?何か変な生き物もいるし。」
響はつい八つ当たりしてしまった。響の叫び声を聞いて、助けに来てくれたであろう人に。その後、響には自己嫌悪がやってきた。
(あり得ない!!!なんで、私は恩人に八つ当たりしているわけ!この人はただの親切な人でしょ!)
そんなことが、何度も何度も頭をよぎった。
「ん?あぁ。これか。分かった。倒してやろう。」
「え?」
(この生き物、人が倒すことができるの? あ!銃を使ったら殺せるか。)
だけど、その人は銃を持っている様子ではない。
……と、その時、響の目に剣が映り込んだ。
その人は、剣を抜いた。そして、その人が剣を薙いだだけで、その生き物はこと切れた。
(かっこいい……!)
そう思った。だけど、しばらくすると、
(ううぅ……。臭い。)
両親の狩りには何回か付き添ったことがあった。だから、においに関しても慣れたと思っていた。だけど、臭かった。
(お礼……言わないと……)
意識を手放しそうになるが、何とかこらえた。
「ありがとう……ござい……まし……た……。」
途切れ途切れになってしまった。
「どういたしまして。」
その人のほほえみは、とてもきれいだった。
だけど、今の響の中には、この瞬間を見たことによるショックがあった。
そして、響は意識を手放してしまった。
その時、温かいものにふれたかもしれない。