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天国の落としもの係
いちごりら
天国の入り口にあるプレハブ小屋。そこには、背中に不動明王を背負った男、**○○**が鎮座していた。
○○「……おい、小僧。これ以上泣くと、そのツラ、地獄の釜に叩き込むぞ」
○○がドスのきいた声で凄むと、目の前の小さな少年幽霊は「ヒッ」と息を呑んだ。
少年は、現世に「あるもの」を忘れてきたという。
少年「……あのね、パパと約束したの。誕生日に、赤いランドセルを買ってもらうって。
でも、僕が死んじゃったから、パパ、ずっと泣いてて……」
○○は、指の関節をボキボキッと鳴らした。
○○ 「……へっ。約束か。極道の世界じゃ、約束を破った奴は指が飛ぶんだぜ」
○○は立ち上がり、デスクの引き出しから「特例干渉許可証」という名の、
ただの白い紙を取り出した。そこにマジックで大きく**『○○参上』**と書き殴る。
○○「おい、小僧。目ェ瞑ってろ」
数分後。地上では、少年の父親が仏壇の前で力なく座り込んでいた。
そこへ、突如として窓ガラスが割れんばかりの轟音とともに、猛烈な突風が吹き込んだ。
父親「うわっ!」
父親が驚いて目を開けると、畳の上に、真っ赤なランドセルがドスンと置かれていた。
それは、生前に少年が欲しがっていた、一番かっこいいモデルだ。
そこには、およそ天使とは思えない、力強すぎて紙を突き破りそうな筆跡のメモが添えられていた。
**『約束は果たされた。泣くのはヤメだ。次は、お前が笑う番だ。』**
父親は、そのメモを震える手で取り、ランドセルを抱きしめて声を上げて泣いた。
それは、絶望の涙ではなく、一歩踏み出すための涙だった。
天国のプレハブ小屋。戻ってきた○○は、始末書の山を前にして舌打ちをした。
○○「……あーあ。また『神様』たちにガミガミ言われるぜ」
少年「ありがとう! 僕、パパが笑ってるの、初めて見たよ!」
少年が満面の笑みで抱きつくと、照れ隠しに少年の頭を大きな手でワシワシと撫でた。
○○「勘違いすんな。俺は、約束を破る奴が嫌いなだけだ。
……さあ、行くぞ。天国にだって、お子様ランチの一皿くらいはあるだろ」
白いスーツをなびかせ、は少年の手を引いて、黄金に輝く門の向こうへと歩いていった。