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ノロイ ノ ムラ ③ムラビト
朝。その日は快晴。奈々は日記をつけていた。
奈々はルール尊重しちゃうよタイプのため、
夜のお手洗いも耐えたし騒音を立てないようにスマホはマナーモードにした。
(スマホ持ってたんだから電話すればよかったな……)
しかし、電波が繋がらない場所らしく、電話が繋がらない。
「……。」
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その日の朝食は、味噌汁とご飯と卵焼きとほうれん草のおひたしであった。
「全部好きなものだ〜!」
「それはよかったです」
仲居さんは昨日よりキラーっとしている。
どうやら寝たら疲労回復したっぽい。
ご飯をもぐもぐ食べると、元気が出てくる。
甘めの卵焼きを食べて、合わせ味噌の味噌汁を飲んで、醤油が沁みたお浸しを食べて。
「今日はムラをご案内いたします」
仲居さんが言う。
「ここは伝統工芸品がらわ人形と言います。
古くからここで生産が盛んで、らわと言う素材を使っているのです。らわは方言です」
へー。なんか聞いたことある。そう思いながらも旅館を出る。
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外を出ると畑がたくさんあった。
コンビニ等はもちろんなし。
小川や用水路、ため池や森が小さい敷地にたくさんある。
「あらあら、お客さんは久しぶりね。みんなお客さんはいなくなっちゃうから」
ムラビトは嬉しそうにニコニコ笑っている。ムラビトはほとんどがお年寄りだった。
奈々は最初危機感を持っていたがすっかり打ち解けた。
「みんな滞在時間はどれくらいなんですか?」
「そうねえ…1週間くらいかしら?」
結構長いじゃん、と思いながら奈々は散歩をしてみる。
ルールが厳しいのもあって、川は魚が見えるくらい透き通ってるし、木は元気そうでゴミもなし。
奈々はその景色に圧巻された。紅葉も遭難する時の山より鮮やかだ。
2時間後………
「この村、すごいですね!私はそろそろおいとまいたします」
「いやいやいや、観光客さんのおかげで私たちは食っていけるんです。ぜひ滞在を」
ムラビトは焦ったようにあたふた言う。
「でも、無料で滞在しているのですからお金は……」
「いえいえ。私たちは若い子が来てくれるのが嬉しいんですよ。ね、ね?」
「そうだぞ。滞在を検討してくれたまえ」
「頼む。ムラの希望なんだ」
いつのまにか、**“年寄りの言うことが聞けねえのか”**と言う空気になっている。
「わ、わかりました。滞在いたします」
奈々はそう言ったが、なにかモヤモヤした。
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__私タチ ノ ムラ ノ 希望 絶対ニ ウバウ__