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6人目の猟犬は元組合 第弍話
多分ここからが本編です。三人称視点で進めようかな。
「賛成しないね」
『!!』
乱歩から作戦を聞いたアヤカのストレート言葉に、全員の顔が強張った。
「っ……でもっ……福地桜痴を……神威を倒すには、貴女の協力が不可欠なんです!賛成しないとなると……」
「うるさいなあ」
必死な敦の叫びを聞いても、アヤカは動じる様子がない。それどころか、呑気に欠伸をしている。
「いつまで協力とかほざいてんの?アンタらは」
「理由を聞かせてもらえるかな」
静かな声で乱歩は問い掛けるが、その声には少しの焦燥が混じっていた。
「あのなあ……大っ体、アンタらの考えが弱いの。できるだけ被害を減らす、とかそんな平和ボケ思想で生きてるから今こんなことになってるんじゃないの?」
「無辜の民が死ぬ事で平和が訪れたとして、それは俺の理想ではない」
間髪入れずに、国木田が反論する。
「そんなの猟犬の私の知ったことじゃない。理想論だけではナントカカントカって、アンタ、指名手配されてすぐに言ってた気がするけど」
「何故それを……」
「それは今はどうでもいい。ともかく、何故アンタらは排他的な思想にならない?悪は潰す。善は得する。簡単な話じゃん。犠牲が出たところで、失われた命が戻ってくることは無い。アンタらが一番知っているはずだと思うけど?」
全員が黙り込んだ。極端だし、言い方も悪いが、アヤカの言っていることは間違っていないからだ。
「はあーー。こういう静寂、私嫌いなんだよなー。しかたないな、クイズでもしようか」
「そんな呑気な……」
「虎のお前、焦りすぎ。やろうと思えば福地なんて私がいつでも殺せるっつーの」
衝撃的な宣告に、敦は固まった。
「じゃ、問題出すからちゃんと答えてよ?問題です。私の異能『創造』と『空間移動』のどちらかは、元から持っている異能ではない。さて、どちらが生まれた時には持っていなかった異能でしょうか?」
「えーと……」
敦や、他の面々も真剣に考え始めた。
「創造という異能は、異能の中でもかなりの異端だ。そんな強い能力、生まれながらに持っているはずがない」
国木田は言った。だが、アヤカは何も言わない。
「はい!わかりません!」
賢治は勢い良く手を挙げた。アヤカは、呆れたように笑う。
「正直だなw 正解発表しようか。正解は……『空間移動 』でした!」
『!?』
その場にいたルーシーとアヤカ以外の全員が、迚も驚いた顔をした。
「実はね、私の異能『創造』は、異能自体を作ることもできる。『空間移動』は異能から生まれた異能なんだ。自分で言うのもアレだけど、多分、私は世界一の異能者だね」
「いや、それは違う。世界一の異能者は僕だ。何せ僕の『超推理』はひと目で真相を見抜いちゃうもんね!」
乱歩が反応する。
「戦闘能力は皆無じゃん。アンタの『超推理』ってやつも、私なんか一瞬で作れるよ」
「ええー!」
もはや本題が何かわからない。頬を膨らませた乱歩のことを笑っていたアヤカは、ふと真顔になった。
「でもね、そんな私にも作れないものが一つだけある」
「それは……何なんですか?」
敦が問いかける。
「『世界』だ。例えばこの事件だったら、『探偵社が無実の世界』。『犯罪のない世界』、『異能者がいない世界』………そもそも、世界という言葉が抽象的すぎるんだ。『世界』とはなんだ?この地球という惑星か?太陽系も宇宙も全て含めて世界か?」
アヤカは、真顔のまま語り続ける。
「惑星なんか、作ろうと思ったら作れる。宇宙にだって、行こうと思えば行ける。異能を作れば、なんでも分かる。でも世界だけは、この世界だけは、私が解明できない大きな謎なんだ」
アヤカは先程とは違い、静かなトーンで話していた。
「あのーすみません」
あまり話していない、谷崎が手を挙げて発言した。
「貴女のようなそこまですごい異能者が、なんで全然世に知られてないんですか?」
「あー、それは多分、私が組合に居たからだな。組合は一応追われる立場だから、外で簡単に異能を使わない方がいいんだ。私は組合の団員であり、猟犬隊員だ。そこまで公にしてられないだろ」
「あのー、アヤカさんはこれまで何を見て何を抱えて生きてきたんですか?」
敦が唐突にそんなことを聞いた。
「どうした急に」
「いやなんか、アヤカさんは僕と同い年なのに大人な感じがして……きっと僕とは違うものを見て生きて来たのかなーって……」
「ははっ。そうかそうか。いいよ、要するに私の過去が知りたいんだな。話すよ」
そう言ってアヤカは、態勢を整えて話し始めた。
どうもどうもぱるしいです。このお話実は6月ぐらいから書いてました……二次創作がほぼ初挑戦のためめっちゃ時間かかっちゃって……w 良ければ感想ください。頑張ったので。