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8話〜空狂〜
―奏龍視点―
奏龍「はぁ~···最高だよ···。」
久々のニンゲンは、最高だった。
そんな優越感に浸りながら、放送室に戻る。
何やら騒がしい声がするが···。
中に入った瞬間、騒がしい声が止み、視線が一斉に私の方に向く。
蒼羅「うわァァァァァ!!!!」
直ぐ側に立っていた蒼羅くんが悲鳴をあげて翡翠ちゃんの後ろに隠れた。
黎夜君も警戒しているし、零桜君にも威嚇された。
作者「いや、蒼羅さん怖がってる!!」
ダイス「まずその返り血なんとかしてよ···。」
そして宴のメンバーからも散々言われるが···。そんな事はどうでもいい。
奏龍「···それより、何で騒がしかったのかな。」
私が聞くと、クレンが何も言わずに画面を指差した。
―そこに映っていたのは、からくるに狂わされたライと黄詠璃ちゃんだった。
―`やりやがったな?`
`《《もう救いが無い様に》》プログラムしておかなければ。`
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―奏者視点―
藍生『······え······?ち、ちょっと!?ライ!?黄詠璃!?』
藍生君が困惑し、2人に声をかける。
しかし、反応が無い。
一体音楽室で何が···。
火炎竜『何が何だかもう分からないよぉ···。』
ガルーダが泣きそうな声で呟いた。
こっちだって泣きたいよ、音楽室の近くにいるんだもん(泣)。
胡橙音「あれ······?奏者···さん······?」
奏者「あっ!?胡橙音ちゃん!?」
偶然にも、胡橙音ちゃんと会う。
しかし、なんでだか知らんが、誰かに会って生きて帰ってきた人は1人もいない。
胡橙音ちゃんには少々申し訳無い気がするが、ちょっとだけ不安になった。
······なんで誰かに出会った途端そうなるのかな、これは。
堕天使『再会の所悪いが···バラバラになった方がいいからな···。』
ルシィが言う。
そりゃそうだ。
ここで2人またお陀仏だなんて嫌過ぎる。
でも······。
胡橙音「音楽室のカラダ······何とかして取れないのかな······。」
音信不通になったライと黄詠璃ちゃんが(多分)いるであろう音楽室にはカラダがあるのだ。
ここで放置してまた別の場所に隠されたら困る。
タイミングを見計らって取っていこうと考えていると。
カラカラカラ·························
後ろから、金属製の何かを引き摺る様な音が聞こえてきた。
私達は咄嗟に振り返る。
―そこには、鉄パイプを持ち、俯き具合で立っている黄詠璃ちゃんがいた。
何だか、すっごく嫌な予感がするんだけど···。
胡橙音「······黄詠璃······?」
胡橙音ちゃんが声をかけると、顔を上げて私達の方を見た。
奏者「ね···ねぇ、胡橙音ちゃん······。黄詠璃ちゃんって、目、ダークターコイズ色してたっけ······?」
次の瞬間、黄詠璃ちゃんは、鉄パイプを振り翳し、私達に飛びかかってきた。
胡橙音「キャァァァァッ!!」
奏者「危ないッ!!」
私は素早くマントの内側に隠していたナイフを2本取り出し、鉄パイプを受け流す。
ガキィッ!!
金属同士がぶつかり合う音が響き、ナイフと鉄パイプの間に火花が散った。
黄詠璃ちゃんは、直ぐに体勢を直すと、再び私に飛びかかる。
私は直ぐにそれを躱し、黄詠璃ちゃんを押さえつけ、鉄パイプを弾き飛ばす。
すると今度は、私の首を掴んできた。
このくらいだったら直ぐに振り解け
バチバチバチッ!!!
奏者「がっ······あ“あ“あ“あ“あ“······っ!?」
そうだ······。
黄詠璃ちゃんの能力······電気を操る能力だった······!!
マズい、このままじゃ······死······???
奏者「胡··············橙音······ッ······そこ·········の········カラダ········持って·······行っ·······て!!私······大丈······夫·········だか········ら·······!!」
胡橙音ちゃんは、涙目で頷くと、側に落ちていたカラダ(頭)を抱え、背を向けて走り出した。
よかった···これで後は邪魔が入らなければいいけど。
私も黄詠璃ちゃんのこの手を振り解きたいけど、力が強く、中々離せない。
奏者「そろそろ············離し······て······!!」
無駄だとは思うが、声をかけてみる。
勿論離してはくれない。
······あれ、力強くなって···
バチバチバチバチバチバチッッッ!!
奏者「あ“············や·····ァ··········ッ······!?」
更に電圧が強くなり、目の前に青白い火花が飛び散る。
全身がガクガクと痙攣して、思う様に動けない。
その上ナイフも落としてしまった。
これは······本当にヤバい。
黄詠璃「あハ·······あッははハはハ!!!」
黄詠璃ちゃんは狂った様に笑いながら、首を掴む手に、更に力を入れる。
奏者「がはっ··········ァ·········や··············め··········」
気付けば床に押し倒されていた。
黄詠璃ちゃんは、私の上に乗っかって、電流を流し続けている。
クッ···········こうなったら、もう無理矢理にでも振り解くしか無い。
ちょっと痛いかも知れないけど······っ!!
首を絞める腕に手をかけ、力尽くで引き剥がした。
奏者「かはぁっ······あ······あぁ······はぁ······ッ············!!」
引き剥がした時に、若干引っ掛かって首から血が少し流れたが、どうって事は無い。
首絞められた挙句高電圧を流されていたさっきまでよりは全然マシだ。
呼吸を整えながら、黄詠璃ちゃんの方を見る。
彼女は、側に落ちていた私のナイフを拾って立ち上がる所だった。
マズい。
体勢整えないと、今度こそ本当に死ぬ···!!
しかし、彼女は、ナイフの刃先を私には向けず、《《自分の方に向けた》》。
··········え。
黄詠璃「あは······アははハはッ!!」
奏者「黄詠璃ッ!!駄目―ッ!!」
未だに痺れる身体を無理矢理動かして手をのばすが、間に合わなかった。
ザシュッ!!
ナイフを突き立て、思いっ切り引っ掻いた。
首から鮮血が吹き上がり、黄詠璃ちゃんの身体がグラリと傾く。
奏者「黄詠璃ちゃんッッッ!!」
駆け寄って抱き留めるが、彼女はもう既に息絶えていた。
依然として首から血が流れ続け、床や私の服を赤黒く染めていく。
···急に狂い出す仲間、ダークターコイズ色になった黄詠璃ちゃんの目···。
まさか。
いや、でも、そんな事だったら最悪過ぎる···。
だとしたら、赤い人は···。
奏者「······。」
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―胡橙音視点―
胡橙音「ハァッ······ハァ······ァ······ッ······!!」
涙で視界がぼやけ、思う様に走れない。
さっき見た光景がフラッシュバックした。
―狂った様に笑う黄詠璃···。
―必死に私の事を庇ってくれた奏者さん···。
―黄詠璃の能力の電流にやられて、身体を痙攣させて···泡を吹いて······
駄目だ、もうこれ以上思い出したくない。
奏者さんが、逃がしてくれた···だから、絶対に、このカラダを棺桶に入れなきゃいけない···!!
暫く走っていると、体育館が見えてきた。
奇跡的に、赤い人も、奏龍さんも、誰もいない。
胡橙音「ハァ······ッ······やっ······た·····。みんな···っ。カラダ、納めたよ···っ。」
息も途切れ途切れの状態で報告する。
すると、他の生き残っているメンバーから、次々に称賛の声が贈られてきた。
奏者『······胡橙音ちゃん······ありがとう······。』
胡橙音「そ、奏者さん!?」
よかった···生きてて···。
一呼吸おいて、奏者さんは続ける。
奏者『ライと黄詠璃ちゃんを狂わせた犯人、そして赤い人の正体が分かった。』
うんうん、成る程······ってえ?
ALL『『ええええええええ!?!?!?』』
色んなピーポー「どういう「それ詳「分かりや「誰なの「たい!!」」」」」
奏者『1人ずつ喋れや。』
色んなピーポー『『『············。』』』
奏者『全員で譲り合うなや。』
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―火炎竜視点―
ボカロファンの話を纏めるとこうだった。
まず、2人を狂わせたのは「からくる」と呼ばれる狂気の支配者である事。
そして、赤い人の正体は、からくるの友達である「しえる」という人物かも知れないという事。
赤い人は勝手な予想だけど、黄詠璃ちゃんのダークターコイズの目はからくる君で間違い無いと思う。そして、声からして狐さんの目の前に現れた人物はからくる君なのでは?どっちにしろ、私達の世界線と、八色星団の世界線双方の主軍が首謀者である事に変わりは無いね、奏龍はやり過ぎだけど。と言って締め括った。
奏者『あの奏龍とかいうアバズレいなけりゃ少しは楽だったのに。』
堕天使『言い過ぎ、言い過ぎ。』
奏者『ドスメロの方がよかった?』
堕天使『········。』
溜息を吐きながら暴言を吐くボカロファンを宥めるルシファー。
でも、確かに奏龍はやり過ぎてる。
何の為にみんなを殺して廻るのか···。
奏者『あ、そうだ。』
ボカロファンは、思い付いた様に言った。
奏者『結構始めの時から思ってたけど、|残響《リフレイン》使えばカラダの位置分かるかな?』
火炎竜「いや、なんでそれ早く使わなかったの!?」
奏者『使えなかったら|魔力《マナ》減って無駄なるし···(´・ω・`)』
ボカロファンが言う能力「|残響《リフレイン》」。
これは、使うと、探している人や物の場所が分かる、探査能力。
これさえあれば、一気にカラダの位置が分かってスムーズにできるのだが···。
奏者『······ん···?あ、あれ···能力規制かかってるのかな···カラダしか見えない···。』
どうやら、人の居場所が分からなくなっているみたい。
でも、仮にカラダの部位も分からなくても、場所さえ分かればこっちのものだ。
奏者『カラダ······えっと、プール···美術室······あとは···3-H!!私近いから3-H行くね。』
美術室か···ちょっといけばすぐだし、赤い人がいなければ取りに行こう。
火炎竜「美術室行く!」
堕天使『プール近いな···プールは私が行こう。』
藍生『1人ずつじゃ心配だから、俺らは近い所行くわ。』
みんなそれぞれ探す場所を分担する。
これで効率的に見つかればいいけど···。
奏者『もしかしたらライが狂って襲い掛かるかも知れないから、気を付けてね。』
そうだった。
赤い人、奏龍に加えて、からくるに狂わされたライもいるんだった。
···敵多過ぎるよ···(泣)。
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―奏者視点―
奏者「えっと···どこに隠れてるかな···っていだあっ!?」
ガゴン!!
奏者「〜〜〜ッッッ!!」
校内が薄暗いせいもあり、中々足元が見えない。
思いっ切り足をぶつけてしまった。
慎重に行動しないとな···。
奏者「あ···あった!!」
ロッカーを開けると、そこには左足があった。
···すんごいリアルだなぁ···。
あと持ち運ぶの大変···。
奏者「···えっと···|弱小音叉―改《pianissimo》っと。」
私が魔術をかけると、カラダはポケットサイズに小さくなった。
|弱小音叉―改《pianissimo》。
それは、ステータスや物体の縮小化が出来る能力。
本来であれば|弱小音叉《piano》くらいでいいんだけど、能力規制がかかってるから今は|弱小音叉―改《pianissimo》にしないといけない。
···面倒。
まぁでも、カラダの場所分かってるし後はこっちのモンだ。
早くカラダ入れてこんな薄気味悪い所から脱出しよう。
そう思って教室のドアを開けた時だった。
奏者「······え。」
目の前に、赤い人が···しえるちゃんが、立っていた。
しえる「`···見つけた。`」
彼女は、ゆっくりと近づいて来る。
奏者「3-Hに···赤い人。私が時間稼ぐから···その間にカラダ探して。」
無線でそう呼び掛け、私はしえるちゃんと向き合う。
しえる「ねぇ、___さん。」
しえるちゃんは、私に呼び掛ける。
しかも、本名で。
次の瞬間、飛び掛かってきて···
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奏者「っはぁ······ァ··········ッ···!!」
あれからどれだけ時間が経っただろう。
赤い人の攻撃を必死に受け止め、なんとか逃げる事が出来た。
カラダも···納めれた。
だけど···。
奏者「······ッ!!」
赤い人との戦いで致命傷を負ってしまった。
多分、もう······。
奏者「ぅあ······っ······。」
必死に壁に手をついて、倒れそうな身体を支える。
裂かれたお腹から、ズルズルと内臓が零れ落ちるのが分かった。
それでも、もう一歩、踏み出そうとする。
奏者「······ッ······!!」
でも、視界がグラリと傾いて、ビチャッ···という音と共に、血溜まりの中に倒れ込んだ。
奏者「ゔっ······!?···············ゲホッ···カハァッ···········ァ··············ゴポッ·························。」
口から大量の血が吹き出る。
もう、立つ気力も無いし、痛みも感じない。
自分の命がここまでだと、分かっていた。
その時。
視界に、見た事のない人物が映った。
奏者「だ···········れ······」
その人は、奏龍じゃない。
奏龍みたいな圧を感じなかった。
消え入りそうな声で問いかける。
その人は、こう、言った。
???「···あんま無理しない方がよかったのに。こーんなボロボロなっちゃって。ってか、奏龍も奏龍でやり過ぎ。散々な目ェ遭ったでしょ、ごめんね。」
奏者「そ············りゅ················知っ··········てる·······の······?」
???「そりゃあね。奏龍は《《最高傑作》》だから。奏ちゃんあんま喋んない方いいんじゃない?めっちゃ吐血してるし···喋れば喋る程、血吹き出るから。」
その人は、私の頭を優しく撫でる。
なんだか、不思議な感覚がした。
???「後で花ちゃんに伝えて奏龍の事制裁加えとくからさ。安心して。ホント、君頑張ったよ。偉い偉い。だから···今はゆっくりおやすみ。」
私の頭を撫でながら、優しく語り掛ける。
その声は、赤子をあやす子守唄の様に、優しく、安心出来る声だった。
段々視界がぼやけていく。
―みんな、後は任せたよ。
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―???視点―
もう、こんなにも人減っちゃった。
流石にちょっとやり過ぎたかな?とも思うが、それは奏龍が乱入して来たせいだからな···。
何とも言えない。
でも流石に奏龍はやり過ぎ。
花ちゃんに連絡して、制裁加えて貰おうかな。
あと···今花ちゃんと話してるけど、「まだ物足りない」というので、第2フェーズ(?)の件も考えてる。
勿論許可取ったから、私はやりたい放題出来るし。
その時はからくる君にも協力して···
「っ···おいっ······!は、早くこの縄を解いてくれ!!」
あちゃ、次の物語の想像に夢中でこっちを放ったらかしにしていた。
???「ん〜、解けって言われてもね。そもそもこうなったのは君が悪いんじゃん。」
そう言いながら持っているものをチラつかせると、ソイツはビクッと肩を震わせた。
無理もない。
今私が手にしているのは···`溶かした銀が入った、先端から熱気を放つ鉛のスプリンクラーなのだから。`
???「フェーズ移る前に、練習しとかないとね〜♪使い方間違って自分が痛い目見たら困るし。」
そう言いながら、軽くそれを振る。
先端から溶けた銀が飛び散り、ソイツの身体にかかった。
皮膚についた瞬間、ジュッと音を立てる。
「あっ·····ぎゃぁぁぁぁぁッッッ!?」
悲鳴を上げて身を捩らせ、逃げようとするが、逃げれるわけがない。
私はソイツの髪を掴んで持ち上げ、耳元で囁いた。
???「···この程度で終わったと思うなよ?まだ篠揉みと氷点下での野うさぎ責め待ってんだからな?」
まだ···終わらせねぇよ···。
恐怖はまだ始まったばかりなんだ···。
今に"本当の恐怖"がやってくるさ······。
続く···。
最後にフルボッコにされてたヤツはmob(出来損なった&違反ばかり犯してたオリキャラの成れの果て)ですのでご安心を。
さて、そろそろ···いやこれを言うのはまだ早いかな。