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冬桜異変ノ章
「ふふふっ、今日も咲いてるわ」
「ぬあ…」
嬉しそうに、ぬあが桜をまじまじと見入っていた。わたしの家の近くには桜があって、ぬあが見物してくる。そして見物料といってお金をくれるのでありがたい存在。
「…それにしても、おかしいな」
「何がおかしいのかしら?」
冬なのに、桜のつぼみがつき、早いところは咲いている。異変?
「冬なのに桜が咲いてる。あなたが元凶?」
「いいえ?」
わたしは久々に1人で出向くことにした。
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「李子ぉー」
「…由有」
「ねえ、この冬に桜が咲いている異変、何か知らない?」
李子に聞いてみる。
「何も知らない。でも、草花といえばぬあさんじゃない?あと、顔の広いムーンに聞けば…」
「なるほどねぇ。情報提供ありがと」
ぬあじゃない、じゃあムーンに聞けばいっか。
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「只今、お嬢様は外出中でございます」
新しい顔が出てきた。
「あんた…メイド?」
「はい。スター・サファイア・ムーン姫様のメイドをさせております、空踏星羅と申します。サニー姫様の姉様です」
「様様うるさいわね。で、この異変のことについて知らない?」
「知らないです」
個性が強いのか、弱いのか。
「さて、わたしは屋敷の掃除がありますので」
「あのねぇ、一軒家を屋敷って…」
「わたしは一応、秘技も習得しているのですが」
「あーあー分かった!じゃあね!」
ったく、ちょっと手こずっちゃった。
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「2人目の座敷わらし発見ーっと」
空を飛んでると、また座敷わらし。今度は座敷堂李子。
「…由有」
「この異変の元凶でも知らない?」
「…ぬあは?」
やっぱり、花のことだとぬあが疑われる。
「ちがう」
「…ぬあの親しい人あたりを探してみたらどう?」
「なるほどねぇ。あんたはいいヒントをくれるわ。じゃあね」
李子は本当に、いいヒントをくれる。なのになんで異変を解決しようとしないのかが、不思議でたまらない。
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「ぬあの親しい人はあんただけよね、草花?」
シュッと、草花が消えそうになる。植物と会話できる彼女が、咲かせたのだろうと睨む。
「消えても無駄だから!消えるなら、攻撃するわよっ!!」
いいもん、というように草花の姿が薄れゆき、きえる。
「そうなのね?ふー。飛符『天空裂斬』!」
ゴゴゴゴゴッと、凄まじい音が聞こえる。
「きゃーっ!」
「そこねっ!飛符『天駆ける一撃』!」
「うっ!」
秘技を撃ち抜くと、草花が現れた。
「さあ、観念しなさい!あなたがこの異変の元凶でしょう?」
「…そっ、そうよ」
観念したように、草花が言った。
「でも、早く桜が咲いて何が悪いの?なんの害もないじゃない」
「…」
論破されちゃった…
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今年は、桜が長く咲いた。
そのせいで、宴が始まって、後片付けが大変になったけど…
ぬあと草花は、満足そうに、桜を眺めていた。