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過去編
ブラックなとこあり。
そして、少し危険描写あり。
1. 幼少期
アカツキ、元・黒川渚は、幼少期を人々に捨てられた孤独な存在だった。
彼の記憶には、冷たい夜の街路でひとり座っていたことが鮮明に残っている。
施設に拾われ、少しだけの温かさを感じた日々。
それでも、周りの子どもたちとの違いに苦しみながら成長していった。
「どうして俺だけ…」
小さな体で思う。
けれど、答えはなかった。ただ、現実として孤独に生きるしかなかった。
その頃、彼を引き取った施設の職員が一度だけ、無言で耳打ちしたことがあった。
「お前の親は、お前を捨てた。だが、誰かが迎えに来るだろう。」
その言葉が、アカツキの胸に深く刻まれた。自分が必要とされていないのは当然だと。
そうした現実を受け入れつつも、心の奥底で誰かが自分を見つけてくれることを、わずかな希望に変えていた。
2. スパイ組織との出会い
中学生になった頃、アカツキは運命的に一人の人物と出会う。その人物は、静かで冷徹な眼差しを持つ男だった。
アカツキが廊下で一人、机に向かって勉強していると、その男が突然声をかけてきた。
「お前、数学が得意だな。」
振り返った先に立っていたのは、スーツ姿の男性だった。
どこか非現実的な雰囲気を漂わせているその男は、すぐにアカツキに気づく。
男の名前は青木。
スパイ組織の一員だった。
「君は、この場所では特別だ。お前に必要な能力がある。」そう告げられ、アカツキの世界は一変した。
青木は、アカツキを引き取り、スパイ育成施設へと導いた。そこは、普通の学校とは全く異なり、暗い訓練が繰り広げられている場所だった。
アカツキは、ただの学校のように見えるその場所で、スパイとしての基礎を学び始めた。
訓練の日々は過酷だった。武器の使い方、暗号の解読、心理戦。どれもアカツキの心に無意識に刻み込まれていった。
だが、それだけでは終わらなかった。スパイとしての技術を磨くため、アカツキは徐々に「冷徹な判断」を学び、心を閉ざしていった。
3. 初めての任務
数ヶ月後、アカツキに初めて与えられた任務が降りかかる。
その任務は、ターゲットを排除するというものだった。
まだ少年だったアカツキにとって、その命令は信じられないほど重かった。
「これは試練だ。お前の選択を見守る。」
青木の冷徹な言葉がアカツキの耳に響く。
ターゲットは、かつてスパイ組織に所属していた裏切り者で、その情報を売り渡したために命を狙われていた。
アカツキは命を奪うことを選ばなかった。
まだ心のどこかに残る人間らしさが彼を躊躇させたからだ。
しかし、組織の命令に背くことは許されなかった。
最終的にアカツキは、ターゲットを麻酔で眠らせ、その場を去った。
命を奪うことはなかったが、彼の心には重い後悔が残った。
「俺は、これでよかったのか?」
その後もアカツキは、何度も任務をこなしていったが、どんな任務でも「冷徹に」こなすことが求められた。しかし、彼はどこかで 感情を持たないこと の恐怖を抱えていた。
それが次第に彼の心の中で、冷徹さと葛藤し続ける日々を作り上げていった。
4. 最後の任務
アカツキが最も印象に残った任務は、スパイとして活動して数年後に与えられた「最後の任務」だった。
その任務のターゲットは、実はアカツキ自身の師匠であり、組織の上層部にとって邪魔な存在だった。
師匠である青木が裏切り者だと告げられ、アカツキは自らの手で師を排除するか、あるいはその命令に従うべきかという難しい選択を迫られる。青木の冷徹な眼差しを思い出し、アカツキは悩む。
「君には、もう迷う暇はない。」
青木は、アカツキに冷たい言葉を放つ。
彼の目の中には、もはや感情などない。
ただ任務だけが存在している。
最終的に、アカツキは青木を麻酔で眠らせ、その後組織に対して裏切り行為を防ぐために告発するという選択をする。
青木はその後、処刑されることになった。
その出来事が、アカツキの中で大きな転機となった。
彼はもう、完全にスパイとしての冷徹さと、心の中の人間らしさの葛藤を乗り越えることを決意したのだった。
5. 新たな道へ
スパイとしての活動を終え、アカツキはある夜、静かな決断を下す。
「もう、あの世界には戻らない。」
彼は姿を消し、新しい人生を歩むことを決意した。
過去を捨てるために、遺体を自作し、警察に死亡届を提出して、自らの存在を消すことにした。
そして、アカツキは寺に住むことを選ぶ。
かつて冷徹だった自分を取り戻し、また一歩、新たな人生を歩み始めることを決めたのだった。