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グラデーションの終わり、恋の始まり
文章変なとこないかなぁ
あと登場人物のセリフとかって本人たち言いそうかな()
カラン、と鳴るベルの音が、今日ばかりはやけに寂しく響いた。
店内のアンティークな時計は、閉店まであと一時間を刻んでいる。
カウンターの隅、いつもの席に座る西畑大吾のポケットには、小さな紙切れが入っていた。
「連絡先、教えてください」
昨日の夜、何度も書き直しては丸め、ようやく完成させた一枚だ。
「……大吾、手震えすぎや。コーヒーこぼすど」
隣で小声で囁くのは、なぜか付いてきた藤原丈一郎だ。
「静かにせえ。……はっすんは?」
「あっちで『最後のプリンや!』って泣きながら食うてるわ」
視線の先では、大橋和也が本当に涙目でおかわりのプリンを頬張っていた。
「……ったく。あいつら……」
でも、その騒がしさが、今の僕の「ハッとなって」しまいそうな緊張を少しだけ和らげてくれていた。
「西畑さん」
聞き馴染んだ、少し低くて甘い声。
道枝駿佑が、最後の一杯をトレイに乗せてやってきた。
「これ、僕からのサービスです。……一番、心を込めて淹れました」
差し出されたのは、いつものカフェオレ。
でも、表面の泡にはラテアートで小さな「星」が描かれていた。
「……ありがとう、みっちー」
自然と、呼んでみたかったあだ名が口をついた。
道枝は一瞬驚いたように目を見開いた後、今までで一番綺麗な、とろけるような笑顔を見せた。
「……あ、あの!」
大吾は意を決して、ポケットの紙を握りしめた。
「これ……! 迷惑じゃなかったら、読んで……!」
磁石に引き寄せられるように差し出したその手から、道枝がそっと紙を受け取る。
丈くんが「行けぇ!」と小声でガッツポーズし、はっすんがスプーンを止めて見守る。
道枝は、その場でさらりと内容に目を通すと、少しだけ頬を赤らめた。
そして、トレイの下から自分のスマートフォンを取り出し、大吾の目の前に置いた。
「……紙じゃなくて、今、登録してもいいですか?」
「……えっ?」
「辞めてしまうのは、このお店だけですから。……ねえ、これからは『店員と客』じゃなくて、一人の男として、会いたいです」
大吾の顔が一瞬で真っ赤に染まる。「初心(うぶ)な俺のこと、笑わないで」なんて思う余裕すらなかった。
「ヒュ〜〜! やるやん道枝くん!」
「大吾、おめでとう! プリンもう一個追加や!」
外野の二人が立ち上がって拍手する中、二人の視線だけが熱く絡み合う。
「……明日から、毎日連絡してええ?」
大吾が震える声で聞くと、道枝は「当たり前ですよ」と笑って、大吾の端末に自分のIDを打ち込んだ。
外は、燃えるような夕焼けが街を包み込んでいる。
カフェの仕事はこれで終わり。でも、二人の「グラデーション」は、ここからもっと鮮やかな色に混ざり合っていく。
「……じゃあ、また明日。……大吾くん」
初めて名前で呼ばれた瞬間、大吾の心臓は今日一番の音を立てた。
それは、切ないお別れの音ではなく、新しい恋が走り出すファンファーレだった。