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〖221B室のシャーロック・ネトゲ廃人。そして、事件〗
どうも、ABC探偵です。
本話を書く前にある方の戦国小説を読みました。
完成度がとても高くて非常に面白かったです。
感想をここで言っても何も変わりませんので、本編へ。
...怒号。ああ、喧しい。いつもの3分でクレーマーを片すとかいう店員がまたやってる。
和戸涼。精悍な顔つきに美しい黒髪、俗に言う美少年...いや、普通の青年。怒ると口が先に出るのか、いつもの受付で厄介な客を請け負って論破というか、対応をしているところを耳にする。それが、とても喧しい。だからといって私が手を貸す気にはなれない。まぁ、その彼を振り回すのはとても好きなので良いとしよう。
ネカフェの一室ではパソコンの光が唯一の太陽のようなもの。灯りは眩しくて、平穏の部屋を保つには似つかわしくない。そんな部屋の中で上体を起こし、昨日、ドリンクサービスの所で持ってきた紅茶を啜る。このネカフェに住み着い......入って何日経つか。家には顔を暫く見せていない。あの家に帰る気にはならない。しかし、いつまでもここにいても仕方ないという考えが頭に過る。なら、どうするべきか。幸いお金には困っていない。
だが、
「...面倒くさい」
そう、面倒くさい。思わず口に出してしまったが、わざわざここを離れて活動するなど面倒ではないか。だったらここで過ごすのが最善策では?
そうだ、それがいい。それが一番だ。流石、私。良い選択をした。
そう物思いにふけっているとなにやら扉のノブに手をかけるような音がして、
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俺は決心して、221B室の扉のノブに手をかけ、思いっきり開けた。
バンッと景気の良い音がして見れば、ややクリーム色に薄い緑の瞳、かなり顔の整った若い男性が驚いたような顔をして突っ立っていた。
日村修(ヒムラ オサム)。この客の顔はかなりの美形で風貌だけはどこぞの英国紳士的な顔つきをしている。しかしこの男、イケメンだが、ものすごく面倒な性格だ。
「......なぁ、なんだ、急に!ノックぐらいしたって...!」
「すみません、お客様。料金の受け取りがまだでして」
「料金?ああ...後で持っていくよ」
今欲しいんですけど。...本当に手間がかかる。
俺は呆れて扉を閉めようとしたが、充電のついているパソコンのデスクトップに載ったある記事が目についた。
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〖赤髪続出!?赤城駅周辺にて謎の集団発生〗
今日日、3月14日に赤城駅周辺に赤い髪の人々が老若男女問わず集団の行列として滞在している。
昨日も滞在していたと近隣住民は駅に問い合わせており、現状は謎に包まれている。
記者は例の集団と接触し、調査を試みた。下記はその取材から得た情報である。
・集団は赤城駅周辺付近のある事務所の儲け話を目的としている。
・集団は意図してできたものではなく、赤髪が地毛である人々が集まって自然に発生した。
・その儲け話は赤髪が地毛である者限定で行うことができるが、とても簡単な儲け話で一年続ければ何百万も儲けることができるらしい。
・例の事務所は〖Lie〗という事務所名。
記者は事務所に取材を試みたが、不可能であった。事務所は赤髪が地毛であることに非常に重点を置いているとのことだ。
また、近隣には金融関係の施設が多く、渋滞や騒動が広がる可能性が高い。警察には迅速な対応を願うところである。
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「赤、髪......?」
「なんだ、気になるのか」
「あ、いえ...」
「気になるんだろう?」
なんだ、コイツは。
「気になるよな」
............。
「...はい」
「無理もない。赤髪と聞くと赤毛連合を思い出すよな。良い着眼点だ、涼くん」
この客はそういう客だ。シャーロック・ホームズが好きなのかこういった話をよくする。赤髪と聞いて赤毛連合を思い出すのは理解しがたいが、まだ良い。まだ、いつもよりはマシだ。
「そりゃ、どうも。それでは、料金の方をお待ちしておりますね」
「...?......何言ってるんだ?行くんだろう?」
行く?
「どこへです?受付ですか?」
「現場」
......なるほど。これは逃げた方が良い。この客の最も厄介な点が始まった。
この客はシャーロック・ネトゲ廃人と言われるほどシャーロック・ホームズが好きで、よく死体ごっこだとかミステリーゲームだとか、そういうミステリーものに惹かれやすい。死体ごっこがそれに分類されるかは別として、そのせいかシャーロック・ホームズなりな行動をして助手のワトスンのように人を連れていく。そこが、かなり厄介だ。正直、扉を開けて実際の事件の死体の真似をしているより質が悪い。断れば良いとは思うが、押しが強い。逃げた方がいいのか大人しく付き添うのがいいのか...。
「......分かりました、行きます。その代わり、後でしっかり料金を支払って下さい」
「それは払うよ。じゃあ、行こうか」
中々勝手な人間だとはつくづく思う。だが、下手に刺激してとやかく言われるよりはマシだろう。
俺は今日はこの厄介客の気が済むまで付き合おうと心に決めた。
お疲れ様です。
例の死体ごっこが登場しませんが、いずれ登場します。ええ、きっとね。
ひとまず、お読みいただき有り難うございました。