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#5 消失
「…まあ、田菜様が生きているとは、限りませんが。何しろ、強制書き換えです。こんなに人数がいるのなら、1人ぐらいいいだろうと思うかもしれません」
ライトはそう付け加えた。
「…田菜?誰?」
そう言ったのは小鳥。
「何言ってるんや、うちの…」
うちの…
四葉の…
何?姉なのか?妹なのか?髪色は?髪型は?服装は?性格は___
「…嘘やろ…」
思い出せない。
「…ああ、ミゼラ様は田菜様をいなかったことにしたんですか…」
ライトは遠くを見つめて、そう言う。
「これが強制書き換えってことなんですか?」
「そうです、紅葉様」
「ってことは、下手したら、わたしもいなかったことに…」
「そういうことですね、七葉様。あの能力に立ち向かえる神などおりません」
…あれ、何を話してたんやったっけ。誰について…話してた?名前が思い出せない。記憶が吹っ飛んでしまったみたいだ。
「いるよ、立ち向かえる、戦える奴」
紫音は小さく、強く言った。
「だから、紫桜、いなかったことになってもらえる?《《この物語上で》》」
「…は?」
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紫桜の髪を切って、ポニーテールにする。髪を黒く染め、みすぼらしい服を着せる。目の色はごまかせないが、どこからどう見ても、もう紫桜ではない。
〝ミゼラ様にタメ口を使うと、彼女は怒ってなかったことにするでしょうけど…〟
ライトはそう言っていた。
紫桜はミゼラのいる城へ向かった。かげで紫桜のことを見守る。
「ミゼラ!」
紫桜はそう叫ぶと、粉々になって消えた。
「あれが、ミゼラ様の能力・強制書換です」
「誰が消えたんだっけ…?」
あれ、誰だっけ?まあいいや。
「んで、紫音、誰なの?戦える奴ってのは」
「《《あいつ》》だよ、*****。あいつなら、|台本《シナリオ》を書き換えることができるはずだ」
「ふふ、さすがやな、《《わーし》》の代理」
振り向くと、また*****がいた。8番出口の奴だ。
「わかっとるよ。書いてる奴が理解してなくてどうするんや。あの子をいなかったことにしたのも、わーしが2人おるってならんように、やろ?」
「いいから、さっさとやってよっ」
「せっかちやなぁ」
*****は笑いながらそう言う。
「あの独裁者を、ちょっとやってみようや。楽しみやわ、対等に戦えるんやろ?しかも、あっちはちょっと不完全で、こっちは作者で完全なんや。登場人物が作者に勝つなんて展開、聞いたことないからな」