公開中
友達作り⑱いつだって友達
星
李央くんが新しく仲間に加わり、私たちのグループはさらに賑やかになった。放課後はみんなで教室に集まって、トランプをしたり、新しく付き合い始めた李央くんと空ちゃんをみんなでからかったり、本当に楽しい毎日を送っていた。はずだった。「ねえ、最近、佐藤くん全然うちらと遊んでくれなくない……?」ある日の放課後、ゆいが心配そうに呟いた。言われてみれば、ここ数日、放課後になると佐藤くんは「あ、用事あるから」とぶっきらぼうに言って、誰よりも早く教室を出て行ってしまう。お昼休みに奈々が「今日の福神漬け、交換する?」と話しかけても、「いや、今日はいいわ」と目を合わせずにそっけなく断られてしまった。(私、何か佐藤くんの嫌がることをしちゃったのかな……?)あのとき「全部、全部、最初からやり直そう」って、笑顔で手を握り合って、特別な親友になれたはずなのに。どうして急に、みんなのことを、私のことを避けるようになってしまったんだろう。奈々の胸の奥が、あの日直の朝のように、またツンと痛み始めた。「奈々ちゃん。佐藤のやつ、なんか隠してるよ」李央くんが真面目な顔をして奈々を見た。「俺、あいつと同じ2組の男子から聞いたんだけど……最近、佐藤が放課後に別のグループのやつらに呼び出されてるのを見たって」「えっ……⁉」奈々はガタッと椅子を鳴らして立ち上がった。(呼び出されてる……? もしかして、また誰かにいじめられたり、困ったことに巻き込まれてるの!?)あの小学校のときの、上靴を隠されて一人で寂しそうに探していた佐藤くんの姿が頭をよぎる。不器用で、人見知りで、誰にも助けを求められない佐藤くん。今度は、私が助ける番だ。「みんな、佐藤くんを探そう!」奈々の言葉に、ゆいたちも、空ちゃんも、李央くんも力強くうなずいた。みんなで手分けして学校中を探し回り、奈々が息を切らせてたどり着いたのは、あの薄暗い、みんなの秘密基地の廊下だった。奥の陰に、ポツンと立つ人影が見える。「……佐藤くん!」奈々が叫ぶと、その人影がハッと肩を震わせて振り返った。やっぱり、佐藤くんだ。その顔はどこか酷く疲れていて、寂しそうだった。「奈々……? なんでここに……」「佐藤くん、どうして最近みんなを避けるの? 用事って何? 何か困ってることがあるなら、どうして言ってくれないの!?」奈々が真っ直ぐに問い詰めると、佐藤くんはきまずそうに視線を泳がせ、やがて諦めたようにぽつりと言った。「……お前らといると、楽しすぎるんだよ」「え……?」「楽しすぎて、忘れてたんだ。俺、親の仕事の都合で……来月、遠くの街に転校することが決まったんだよ」佐藤くんの声が、小さく震えていた。「どうせすぐいなくなるのに、これ以上お前らと仲良くなったら、離れるのが辛くなるだけだろ。だから、今のうちに離れておこうと思ったんだ。……お前らの邪魔になりたくねえし」「そんなの、間違ってるよ……!」奈々の目から、ポロポロと涙がこぼれ落ちた。「離れちゃうからって、今避けるなんて寂しいこと言わないでよ! 出会えたことも、一緒に笑い合えたことも、全部、全部本物なんだよ!? 遠くに行ったって関係ない!」そのとき、廊下の向こうから「そうだぞ!」と李央くんの声が響いた。振り返ると、ゆいたちも、空ちゃんも、みんなが息を切らせて走ってきて、佐藤くんの周りを取り囲んだ。「佐藤くん、うちらを置いていこうとしないでよ!」「そうよ、そんなの水臭いわ!」みんなの温かい言葉に、佐藤くんは目を見開いて立ち尽くしている。奈々は涙を拭い、佐藤くんの目を真っ直ぐに見つめて、一番伝えたかった言葉を叫んだ。「佐藤くんとは、いつだって友達だよ! 離れたって、今まで通り楽しく過ごせばいいじゃん! 最後まで、みんなでいっぱい笑おうよ!」「奈々……みんな……」佐藤くんの瞳が、みるみるうちに潤んでいく。「いつだって友達」という奈々の言葉が、彼の頑なな心の寂しさを、綺麗に溶かしていった――。