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てるてる。
※一部グロテスクな描写があります。
彼らは一週間の内に、敵であるボクらを全員追い出すか、ひとりひとりカプセル型の有人宇宙船を作り、|此処《ここ》から脱出できれば勝利。
一方ボクらは、彼らの勝利を妨害しながら一人残らず`食べる`ことができれば勝利。
仲間はみんな、|躊躇《ちゅうちょ》なく彼らを騙し食べ尽くす。だって彼らへの感情なんてないから。ただの食料だと思ってる。
でもボクは、彼らが好きだ。
仲良く素でお話していたり、みんなで協力して助け合ってるところも羨ましい。
ボクはずっと彼らとお話ししていたい。
だからボクは、一人の彼女の宇宙船を作るために必要な部品を隠した。
彼女が悲しむのをわかっていながら。こんなことはしちゃだめだと思っていても、幸せな時間がずっと続いていてほしいから。
数日が経って、彼らは次々と此処から脱出していった。
あと彼女だけが残った。
彼女が必死に部品を探しているのを見ていると、すごく悲しくなった。
だからボクは、部品を渡して全部話した。
「じゃあ、キミが私を殺さないと約束してくれたら、最終日まで一緒いてあげる」
彼女がそう言ってくれたから、ボクがすぐに頷いて彼女の小指とボクの小指を交わした。
約束した通り、ボクは彼女を殺さなかった。
彼女は色んなことを教えてくれた。
たこ焼きが好きな事、絵を描く事が好きな事、きのこが苦手な事、友達が面白い事、兄妹がいる事、初めて色んなヒトを知った。
すごく楽しかった。まるで、ボクは元から村人だったような気持だった。
ヒトじゃないボクが、ヒトの彼女に初めての気持ちを抱きそうになった。
ある時、ボクが一人で居るときに相方が近づいてきてこう言った。
「ちゃんと役割を果たさないと、お前を俺らが追い出すことになるからな」
ボクの本当の役割は彼女を食べること。
でも役割を捨ててでも、ボクは彼女と話したかったら、黙って彼から離れて彼女の方に向かった。
振り返って相方の顔なんて見なかった。
最終日の一日前、ボクらは完成した宇宙船の近くで話していた。
少し寂しい気持ちが増えつつも、飽きることのないずっと続く会話をしていた時だった。
あれからずっと姿を隠していた|彼《相方》が来て、彼女の首と胴体を切り割いた。
断面から赤く綺麗な食欲のそそる液体が垂れ流れる。
その液体がボクの手に付いたけど、いつもよりさらに食べれなかった。なんでだろう。
それでも相方は美味しそう舐めた。
そして、骨すら残ることなく彼は彼女を食べ尽くした。
ボクは跡形もなくなった、彼女が居た場所をジッと眺めていたら、なんだか悲しくなった。
今回のは村人たちが勝って終わり、ボクら家に帰った。
帰り道の相方の顔は、何というか、睨んでいるのか悲しんでるのか、それとも失望してるのか、そんな顔だった。
家に帰ったけど、ボクはちゃんと人狼の役割を果たさなかったから、仲間冷たい目で見られながら家から追い出された。
ボクの帰る場所はなくなった。
ボクの友達もいなくなった。
ボクの生きる意味ってなんだろう。
折角彼女の事を沢山知れたのに、彼女が居なきゃ意味ないじゃん。
嗚呼、なんか、わからなくなってきちゃった。
もう何でもいい。村人が勝ったって、人狼が勝ったって、僕には関係ない。
ただ、死にたい。
家も友達もいないのなら、この世界に居る意味がない。
早く死んで、彼女の元へ逝きたい。
逝ったって誰にも悲しまれないし、害もないし。
もしかしたら、逝っても彼女は死んじゃったから、嫌われてしまっているかもしれないけど。
ボクは村人でも、人狼でも、何でもなくなった。
ボクは村人でも、人狼でもない役職として生きていく。
仲間の居ない、独りぼっちで死にたがりの「`てるてる`」として。
お風呂でふと思いついた小説です笑
なので変なところがあるかも。