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理解不能
初ユイナ視点
感情ってなんだろう?私はずっと考えていた。考えるってなんだろう?分からないのが怖い。怖いってなんだろう?自分は何者にもなれない。自分ってなんだろう?なんで生きてるのかな。生きるってなんだろう?毎回毎回、ずっと思う。思うってなんだろう?心ってなに?分かんない。理解不能理解不能理解不能理解不能。
「ユイナ」
呼ばれてる。優しい声で。優しいってなんだろう?温度の少し高い風が吹く。レイはユイナの手を掴む。なぜか、その手を振り払ってしまった。レイは驚く。あれ?なんで振り払ったんだろう?全てが分からなかった。でも、理解不能って文字で片づけてしまってはダメな気がした。分からないと、いけないような…………。ねぇ、私って、なに?水が、自分の頬を伝って、地面に落ちた。私はそっと、自分の頬を触ろうとするが、レイが手を伸ばしたのが先だった。レイは私の目元の水をそっと拭う。
「大丈夫?」
大丈夫とは、心配されてる。心配とは、気を使うこと。気とは……違う。もっと温かいもの。温かいって、なにが?分からない。知らない。知らない、怖い……怖い……怖い……。
「怖い………。」
唇を噛む。何で、噛んだの?怖いって?なんなの?胸の中が空っぽで、胸の中が空っぽ?さっきからなんなの?ずっと考えてた。自分が|造られた《生まれた》日から。ねぇ、空っぽだよ。虚しいよ。虚しいってなに?分かってるつもりだった。なんも分かってないのに。
「ねぇ、ユイナ」
私は真っ直ぐにレイの方を見る。レイは微笑む。
「大丈夫」
さっきとはいえ違って、力強いものだった。分かる。
「私は……私は……誰……?」
途切れ途切れのかすれた声で精一杯聞く。
「君は、君。君は、ユイナ」
「なんのために、|造られた《生まれてきた》の……?」
「それはさ、幸せに、なるためだよ」
その言葉を聞いた途端に、私の胸の欠けたピースが一つ、はまった気がした。
「私は、幸せに、なるために?」
「そう」
幸せって、なに?と聞こうとした。でも、聞かなかった。それは、自分で見つけなければならないと思ったからだ。幸せ。私の幸せってなんだろう?疑問の一つ一つでさえ、今は私の心の隙間を埋めている気がした。
「行こう」
次の町は____
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学習感情:怖い