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14.
__「3人とも。木の陰に誰かがいる。」__
美音にそう言われ、気づく。あからさまに殺気立つ人影に。
今まで気づかなかったことに驚くほどの、殺気。
「気づかれてしまったか、意外と早いな。」
「そうっすね、でも勝利は揺るぎませんよ。」
暗い紫の長い髪を持つ女と、薄い茶色の髪を持つ男。
「二人だけじゃないのはバレてますよ、魔力の流れでわかる。」
美音が当然かのように言う。 ・・・・・二人だけじゃないの!?
「今はまだいないんだと思うよ、多分ポータルかな。」
心を読まないで。
「お嬢様、顔に出てます。」
そんなに!?
「あと、もう一つ。美咲、何があっても絶対に動揺しないで。落ち着いて。」
__「僕みたいに、過去の傷をえぐられるかもしれないけど・・・・。」__
声が小さかったから、後半はよく聞き取れなかった。
でも、肝に銘じておくよ。
「僕と美和さんで、女性を相手する。男の方は、2人に任せる。」
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「シャルム、後ろ!」
私がシャルムに注意を呼びかけると、シャルムは男の拳を受け止める。
普段のシャルムなら、避けることは出来ても受け止めるのは難しい。
だが、そこは支援の|熟練者《スペシャリスト》。自身の能力を底上げするのは難しくない。
同じく、シャルムの支援を受けた私は、刀を男に向かって振り下ろす。
ガンッ
棍棒だ。男が背負っていた棍棒に刀を受け止められた。
棍棒などただの棒だと思っていたが、違うようで。
__「・・・・隙がない。」__
近づけば、突かれる。離れると、私の刀よりもリーチが長いので不利になる。
こっちは2人だ、なのに隙が全く生まれない。
男は、棍棒だけでなく拳や脚も使って攻撃してくる。
武器に戦闘を頼るつもりはないようだ。
・・・少し悔しい。実力の差が圧倒的だ。
私も戦闘経験は少ないから、下手なことは言えない。
でも、この目の前の男について一つだけわかることがある。
こいつ、かなりの実力者だ。きっと|向こう《魔王軍》でも上位の人物。
「猛者・・・・、か。」
「今更気づいたんすか。やっぱり大した事ないっすね。」
**「冥土の土産に一つ教えてやりますよ。**
**オレの名前は|紫薇《しい》。武を極めるものだ。」**
**「そっちが名乗るなら。私の名前は美咲。戦闘を好むものだ。」**
「ただの戦闘好きじゃないすか、勝つのはオレだ。」