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たぶんチューハイのせい
期末前にあげたよ!!!!!、
やくそくどーりにね?
とーじょじんぶちゅ
ノア
ヒロキ
「ノア、明日のダンス会準備できてる?」
いつものあほ面をしてお皿を洗う彼が大声を出して言う。
「言ったよね、私はダンス会なんて行かない」
指に力を込めてチューハイの蓋を開ける。
チューハイの缶がプシッと音を立てた。
「夫婦参加なんだよ。地区の行事だし、俺の仕事をアピールして収入が増えるチャンスの場なんだ。頼むよ」
そんなこと、知ったこっちゃないわ。
私は地区の人と仲良しこよしする気なんて全くないし、ヒロキの仕事なんてどうでもいい。
収入が入ったって、酒とご飯を買うだけじゃない。
お互い趣味もない、子供もペットも欲してないんだからお金なんて生活出来るくらいだけでいいんだし。
本音を口から出さないようにレモン味のチューハイで流し込む。
胃のなかに私の言いたいことがぎっしり詰まっている。
「私は行かないから」
私は冷蔵庫を開けてチューハイの缶をもう1つ取った。
また指を蓋にねじ込んで開けようとする。
「もうやめろ、ノア」
彼はあからさまに疲れた目をして言った。
水がバシャバシャ言って聞こえないフリをして私は4杯目を飲む。
彼は私の手を叩いた。
缶が床に転がって中身がこぼれている。
カーペットにかかった。
カーペットにかかった!!
「ねえ、カーペットにかかったじゃん。家汚さないでよ」
私は机の上にグチャっと置いてあるタオルを取って床を拭いた。
「お前は変わったね」
ヒロキは私を見下ろしてつぶやいた。
酷いくらいに震えて弱々しい声だった。
「ヒロキは変わんないね、そういうグズなとことか」
私はヒロキに目もくれない。
床を拭くのに精一杯。
カーペットを洗濯機のほうへ持っていく。
「この家…、不幸せだよ!」
うしろでヒロキが叫ぶ。
ほんとだね。
私は洗面所に向かった。
鏡に映った自分と目が合った。
マネキンくらい、無表情だった。
「お前は変わったね」という言葉が頭の中で繰り返される。
いつから、こうなったんだろ。
ヒロキに指輪を渡された時、頭の奥深くで安っぽいと思ったこと。
幸せだった?あのとき。
なんだか記憶が遠のく。
いつもお酒強いはずなのになんかクラクラ。
たぶん、チューハイのせい。
違うね、違うわ。
あたしのせいだわ。
目頭と鼻の先が変に熱くなった。
叩かれた左手の甲を見た。
全然、赤くなってない。
優しかった。
ヒロキ優しいよね。
変わんないね。
汚い嗚咽が洗面所に響いた。
ドアを開けるとヒロキはベランダでタバコを吸っていた。
私は窓を開けてベランダに出た。
頬に秋の割に冷たい風が当たる。
「1本、ちょうだい」
ヒロキは何も言わずに火をつけて渡してくれた。
「私は、ダンス会行かないよ。ヒロキはおばさんと踊って自分の会社宣伝し終わったらコンビニ寄ってチューハイ買ってきて」
ヒロキはふふと笑った。
「なんで俺、おばさんと踊る前提なの」
「ヒロキには近所のおばさんがお似合いだよ、こんなアルコール依存症のヒキニート女よりね」
私は夜中2時の夜景を長いまつ毛を伏せて言った。
ヒロキの顔が見れない。
「寒い、もう私部屋入るから。窓の鍵閉めとくね」
「おい!俺が入れないだろ」
ヒロキは笑いながら言った。
部屋に入った。
喧嘩なんかしてないけど、仲直りなんて絶対しないから。
許すのは私、ヒロキは許される側。
うちらがジジイババアになってもそれは変わらないからね。
ぜったいノアちゃんINFPだよねWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWWW