公開中
今日も明日も、君の隣で #2
———-大河にだけは絶対知られたくない。
私がクラスで「いじめられてる」ということを。
小学校高学年の頃までは割と「頼れるリーダー」だった私が、こんなにも醜く、脆く弱っているところを。
***
始業の時間が近くなってきたので、とりあえず私は教室に行くことにした。
ほんとはこのままサボりたいけど、「あいつら」に「逃げた」と思われるほど嫌なことはない。
誰も私を見ませんように。誰も私を認識しませんように。そう願いながら俯き気味に下を向いて廊下を歩く。
「消えたい」「幽霊になりたい」
こう思うのはいつものことだけど、今日は大河に見られたかもしれない恥ずかしさから、強く、そう思う。
2-Aの看板の前に立ち、軽く深呼吸する。
大丈夫。大丈夫。今日までちゃんと生きてやってこれたんだから。人生80年くらいの中で、たったの3年間辛かったってなんてことないんだから。
————カラカラカラ
そう思い、静かを心がけながら、教室のドアを開ける。
———ザワザワザワ
教室のざわめきがより一層強くなったように感じたけど、それ以上の攻撃はなかった
……かのように、感じられた。
自分の椅子に座った私は、机の中に、ある紙が入っていることに気がついた。
『休み時間、二階階段の踊り場に来て』
ノートの切れ端には、これと言って特徴のない字でそう書かれていた。
また呼び出されて忠告されるのだろう。
"これ以上皇くんに近づくな"と。
***
それから特に大した攻撃もなく、昼休み私は踊り場に向かった。
まだ呼び出した本人らしき人は来ていなかったので、何をするでもなく、私は窓の外をずっと見ていた。
電線に止まっている、燕の親子が目に入る。
「いいなぁ、自由で。」
その時だった。
「……っ!!!」
背中にドンッと重い衝撃がかかった。
やけに周りがスローモーションな気がする。
————ドサッ
「|痛《つぅ》……」
気がついた時にはもう遅く、私は床に倒れ込んでいた。
「階段から突き落とされた」。そう気づくまでに、少なくとも丸5秒はかかったと思う。
「幼馴染だからって、皇くんに媚び売ってんじゃねーよ!!」
「いい気味。そのまま死ねばいいのに!ww」
「「「「www」」」」
悪意に塗れた言葉たち。
今日は、大丈夫だと思ってた。朝から靴箱以外は特に何もなかったし、これでもう終わるのかと。
でも、甘かった。
全ては「これ」のために組まれていた台本だったのだ。
「ねぇ、ナホ、うちら大丈夫かな?こいつ、血流してたよ。」
「大丈夫っしょ。なんか担任に聞かれたら、こいつが勝手に落ちたんですって言えば良いんだよ。とりま急ごうぜ。」
「「「「おけー」」」」
頭がとてもくらくらする。
突き落とした人たちの会話する声だけが、薄れていく意識の中、やけに鮮明に残っていた。
「ほのか!!!」