公開中
絶対零度 #2
#2 「星林商店街」
「‥誰だよ。」
この目を見られたら嫌だから目を瞑りながら振り返る。
「いや、それこっちの台詞なんだけど。アンタこの辺の人間じゃないでしょ。」
「‥だったらんだよ。」
「別になんでもないけど?見た事ないから聞いただけ。‥てか、なんで目瞑ってんの?」
「なんでもいいだろ、別に。」
「まぁなんでもいいけど‥もしかして目、見えない?」
「は?」
目が見えないとか思ってた返答じゃなかった事に驚いて目を開いてしまった。目の前にアイツがいるのに。人がいるのに目を見開いてしまった。
「アンタ、その目‥」
「文句とか言うんじゃ__」
「すごい綺麗じゃん!!」
「‥は、」
また驚いた。この目が綺麗なんて、言われたことが無かったから。距離がグッと近づいて鼻と鼻が近付きそうなほどの距離になる。
「〜〜ッ!!!」
「両目で色が黄色と青なの凄‥って、なんで顔赤くなってんの。」
「べべべ別に、なんだっていいだろうがよ!!」
距離が離れたがさっきから顔が熱い。絶対に真っ赤という自信だけはある。
「まぁなんでもいいけど‥あ、それであんた何してた訳?こんなところで。」
「‥商店街に行こうとした。」
「‥商店街真反対だけど?」
「は?マジ?」
「マジよ、マジ。私が来た方向に商店街あるんだから。」
「‥」
恥ずい。この三文字が俺の気持ち。
距離近づいただけで顔赤くなって商店街の方向も間違えてたとか恥ずすぎるだろ‥!
「‥まぁ、私も少しここの花に水やり来ただけだから商店街連れてこうか?」
「!本当‥か?」
「ここで嘘ついて私に何の得があんのよ。水やり終わったから連れてってあげる。ほらおいで。」
「‥」
なんか犬みたいな扱いされて腹立つ。
でも女だし手出したら問題か?いや、そんな雑魚みたいな考えがある訳じゃなくて道に迷ったら困るからって理由で‥ってこれもダセェな‥
「__グルルルル‥__」
「何犬みたいに敵意剥き出しにしてんのよ、やめて。周りに変な目で見られるから!」
「__プイッ__別にお前がどう見られようが俺には関係ない。」
「最っ悪‥商店街に連れてってあげてるのは誰だと思ってるんだか‥」
「お前。」
「わかってんじゃんアンタ‥__イライラ__」
歩幅のほぼ同じ二つの足がコンクリートを踏み歩く。アイツも俺もスニーカー、足音は平坦な音。
「‥はい、我らが《《星林商店街》》!」
上に|星林《せいりん》商店街の看板があり、その下には風鈴が吊るされている。
「‥なんで風鈴が。」
「あぁ、あれ?あれね、よぉ〜く見ると星の風鈴なのよね。」
「星?‥あぁ、確かに。」
「昔は風船飾ってたんだけど、そしたら鳥とかに壊されちゃってさ。それで他に星のやつって探したら、あの風鈴があったって話。」
商店街内に入りながらアイツが話す。風が吹き、風鈴の音が聞こえる。
「ほ〜‥いや、星なんて風鈴以外にもあるくね?」
「確かにあった。だけど量がそこまで多く作れない物ばかりだったの。この辺じゃね、店なんてこの商店街以外ないのよ。」
「‥っそ。」
「ったく、聞いて来たのアンタでしょうが‥」
やれやれと口に出しながらアイツがまた喋る。
「アンタ、まだ学校まで時間ある?」
「は?んで学生だって‥」
「いやアンタね、自分が今どんな服装してるかも覚えてないわけ?怖いんだけど。」
「あ」
「はぁ‥まぁ、学生だってわかった理由は伝わったとして。時間、あるの?」
「‥いま何時か知らねぇ。」
「今は7時10分。8時登校だから間に合う。」
「間に合うってわかってんじゃねぇか‥」
「学校には間に合うけど、アンタがその前に予定あったら困るでしょ?だからこの優しい《《ことは》》ちゃんが態々聞いてあげたというのに‥」
「‥ことはちゃん?」
「え?あぁ、ことはってのは私の名前。|鳴海《なるみ》|琴葉《ことは》!案内してあげたお礼に覚えといてよね!」
「‥」
んだこいつ。して“あげた”て。
勝手に言い出したのお前だろ‥
「‥まぁ、覚えられたらな。」
「うわ最低。そこは嘘でも『覚えとくに決まってるじゃん』って言うところじゃん!」
「そんなの知らねぇし。」
「うっわ〜‥ったく、私だけ名前教え損じゃん‥__ブツブツ‥__」
「‥」
別に、感謝とかじゃない。ただフェアじゃないのは確かになと、思っただけで。
「‥篠原真。」
「‥え?」
「俺の名前、そっちこそ覚えとけよ‥琴葉。」
「!ふふふっ、アンタ人の名前覚えれるじゃん!」
「覚えれるに決まってんだろ!馬鹿にすんな!」
「アンタが『覚えられたらな』とか言うからでしょ!」
「あ゛ー!!だからそれは___!」
「おや琴葉ちゃん‥荒々しいボーイフレンドが出来たのかな?」
「違います!こんな奴が彼氏だなんて、死んでも嫌!」
「勝手にか、かかか彼氏とか言うんじゃねぇ!」
「さっきからアンタ照れやすすぎな。もうちゃい落ち着け落ち着け。」
「〜!!!__イライラ__」
「ほっほっほ‥琴葉ちゃん、今から《《カフェ》》に戻るのかい?」
「えぇ。もう開店してるし、お客さんが注文あったら大変だから今すぐにでも。」
「じゃあ、ワシもいこうかな‥」
「カフェまで歩けます?支えましょうか?」
「年寄り扱いすんじゃないよ(笑)でもそうだねぇ‥そこの男!」
「はっ!?俺!?」
「ここにアンタ以外、何処に男がいるんさ。」
「‥」
「という事で力持ちそうな少年、ワシをカフェまで運んでおくれ。」
「絶対に嫌だ。」
琴葉ちゃん好きです。自分の好みつめつめ。