公開中
〖赤毛連盟と赤毛連合の行列〗
桜も芽吹き始めた昼下がり。そろそろ、お腹が空いてくる頃だろう。
しかし、そんな中でも嬉々として歩くのが日村修、厄介客だ。
「和戸くん、何睨んでるんだ。腹でも減ったのか?」
「...いいえ?何にも?...和戸って呼ばなくて良いので、涼で良いですよ」
「えぇ?私は君の苗字、好きだがね」
......ホームズの助手のワトソン(訳者によってはワトスン)の文字が入ってるからだろ。
「そうですか、ならどっちでもかまいませんよ」
「そうかい?お、見えてきたぞ」
目をやれば、確かに赤毛の集団がある。老若男女様々だが、共通しているのは確かに赤毛。
銀行や百貨店などが建ち並び人通りの多い区画の為、かなり迷惑になっているし端から見ればかなり異様な光景だ。
そんな中でも気にせず日村は例の集団へ話を聞きに行っている。まるで子供だ。
「すみません、ちょっとお話を聞いても?」
「なんだ、君は......」
「まぁ、そう言わずに。この行列は何なんです?見たところ、皆さん赤毛ばっかりですけれど」
「ああ、何か赤毛が地毛のやつの儲け話があるそうだ。なんでも赤毛連盟?と赤毛連合?の二つの団体が別れて同じところでやってるもんだからこんなに大量にいるわけだな」
「へぇ、どこの団体なんです?」
「俺が見たチラシだと、Lieとかいう聞いたことないところだったな。ま、儲け話らしいし聞くのはタダだろ?そんなわけで並んでんだよ、律儀にな」
「なるほど。ところで、どこで働いていらしてるんです?」
「近くで骨董屋をやってる。店はバイトに任してるよ」
「ふむ、そのバイトさん、膝とか土で汚れてたりします?」
「変な事聞くね?汚れてないよ、私は軽度の潔癖症でね。バイトの度に身なりチェックしてるんだ。
それに、バイトに任してるって言っても他にいるからね」
「はぁ、そうなんですね。ありがとうございました」
日村が戻ってきた。少し怪訝そうな顔をして、しかし、その瞳には好奇心を抑えきれない子供のような輝きをたたえていた。
「和戸くん、ちょっと道を叩いてみてくれよ」
「道を叩く?良いですけれど...」
俺は軽めにアスファルトで舗装された道を叩いた。特に、何もない。
「音がやけに響いたりしないか?」
「...しませんよ」
「そうか、つまらないね」
少し、目を伏せて考え込む。そして、次の言葉を発そうとした瞬間、物凄い爆発音が木霊した。