公開中
虚珀の夜 #1
「虚珀(こはく)」中学2年。美術部で、透明感のある神秘的な絵を描く。
余命宣告されていて余命は「1年」
〈澄玲(すみれ)〉美術部の部長。3年生で、水彩画専門で暖かみのある絵を描く。
無口だが、思いやりのある素敵な先輩。
【きはだ】琥珀の同級生。バスケ部で、明るい性格。
たまにふざけすぎて女子にうざがられる。
『時生(とき)』ソフトテニス部。元気いっぱいで、きはだに突っ込みを入れる役
ショートボブで肌も白いためモテる。
――――君の夜は何色?
夢の中で誰かが私に問う。
「色…?」
⦅そう、"色"⦆
「夜に色なんて無い…でしょ?」
そう答えると誰かは悲しそうな顔をしてすうっと消えていく。
楝色(おうちいろ)と桔梗色(ききょういろ)を混ぜ合わせたような
胸がきゅっとなるほど奇麗な夜の背景とともに霞んでいく。
「おはよう」
誰の会話も邪魔しない、出来る限り控えめな声で挨拶をする。
そういえば課題があったな と急いで取り掛かっていると大きな声が教室に響いた。
【おはよーっす!】
皆それぞれに挨拶をし返す。
『きー、課題やってる?』
【え、んなのあった?】
『そんなこったろうと思ったー(笑)』
【写させてくれんの!?】
『なわけ』
【おいっ!】
そのとたん教室に笑い声が充満する。
あぁ、今日も平和だ。 そんな独り言を漏らしそうになり、慌てて拾い上げる。
――――――――――――
「失礼します。」
『……』
「先輩、何の絵描いてるんですか?」
『たんぽぽ。』
何色でも先輩が使えば魔法にかかったようにキャンバスに染み込み暖かい作品がまた一つ生まれる。
「私、何描こうかな」
『……』
「ぁ、先輩」
『…』
「夜に、色ってあると思いますか?」
『……』
少し悩んだあと、先輩が口を開いた。
『あるよ、きっと』
先輩は続けた。
『多分ね寂しかったり、怒っていたり、嬉しかったり。色んな感情を混ぜ合わせた色だよ』
「素敵ですね」
『わからない。そんな色、全世界探してもないんじゃないかな』
先輩はそうつぶやいた後、いつもの様にキャンバスに向かって綺麗なたんぽぽを描いていた。
――――――――――――
「夜の…色」
どんな色だろう、と考えながらまたベッドに沈んだ。
――――――――――――
⦅君の夜は何色?⦆
「私の夜は…」
そこで思考が停止した。
私の夜は?先輩が言ったのは、私の夜の色じゃない。
⦅急がないで⦆
そう言って誰かはまた夜の背景に溶け込んでいった。
あなたの、読者の皆さんの夜は何色ですか?