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#3
期末テストが終わった放課後。誰もいない教室で、はじめは九郎の机の前に立っていた。
「ねえ九郎くん、テストどうだった? 私、数学が壊滅的で……」
「……お前、万年壊滅的だろ。バカが移るから近寄んな」
九郎はカバンを肩にかけ、帰ろうと立ち上がる。でも、はじめは通せんぼするように両手を広げた。
「ひどい! でもね、九郎くんに教えてもらえたら、私きっと頑張れると思うんだ!」
いつもの元気すぎる笑顔。でも、その瞳は少しだけ震えている。
はじめは今日、ずっと決めていたことがあった。
「……あのね、九郎くん。私、九郎くんのこと——」
「知ってる」
食い気味に遮られて、はじめはポカンと口を開けた。
「え、あ、ええっ!? 何を!?」
「お前が俺のこと、死ぬほど好きなことくらい。隠せてると思ってたのか? どんだけめでたい頭してんだよ」
九郎は一歩、はじめに詰め寄る。はじめは思わず後ずさりして、後ろの黒板に背中がついた。
九郎は逃げられないように、はじめの耳元の黒板にトン、と手を置く。
「……っ、九郎くん、顔、近い……」
「……嫌か?」
九郎の低い声。ツンとしてるけど、どこか熱を帯びた視線。
はじめは顔を真っ赤にして、ぶんぶんと首を横に振った。
「き、嫌じゃない……。大好き、だもん……っ」
消え入るような声で、はじめがやっと本音をこぼした。
すると、九郎の口元が意地悪く、でも優しく緩んだ。
「合格。……お前、俺がいないと何もできないだろ。一生俺が面倒見てやるよ」
九郎は空いた方の手ではじめの頬をむにゅっとつねる。
「痛い……。でも、それって……」
「付き合ってやるって言ってんだよ。……一回しか言わないからな。俺も、お前じゃないとダメなんだわ」
最後の方は、そっぽを向いてボソッと言った九郎。耳の先まで真っ赤なのは隠せていない。
「……えへへ。九郎くん、大好き!!」
「……うっせ。……離せよ、抱きつくな」
突き放すような言葉とは裏腹に、九郎の手ははじめの背中に、そっと回されていた。