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音のまま演じ切れ #7
**第七話 ちょっとだけ可愛いっす**
昼休みに、綾瀬さんが来た。
「やっほーオカルン」
「あっ、綾瀬さん!」
「__と、こないだの子」
「こ、んにちは」
声は聞こえない前提で、会釈する。
というか、凄い後付けだったな。別にいいけど。
「そーいや、名前なんて言うの? 聞き忘れてた」
尋ねられたので、「広瀬#名前#っす」と名乗る。
「#名前#ね! よろしく〜」
「よ、よろしくっす」
パーにした手をかざす綾瀬さん。
数秒経って、ようやくハイタッチをしようとしているのだと気づく。
おずおずと手を合わせると、小さく音が鳴った。
(ハイタッチ、初めて親と以外でやったっす……)
感慨に耽っていると、綾瀬さんが可笑しそうに口元を押さえた。
「これでハイタッチだって気づかない人いるんだ……ふははっ」
「っちょ、酷くないすか?! 仕方ないでしょ、友達いないんすからぁ!」
必死に抗議するが、それすらも面白いらしく笑い声が大きくなっていっている。
「だって、高倉さんが初めての友達なんすもん! どうしようもないっす、これは!」
「えっ、そうなんですか?」
高倉さんが、おれの言葉に心底不思議そうにする。
「広瀬さん、結構話しやすいですよ」
「え、そうっすか?」
問い返すと、頷かれた。
(自分だとよくわからないっすね……)
綾瀬さんに「前の学校には友達、いなかったの?」と問われ、「あ、はい」と答える。
「話しかけてくれる人はいたんすけど……うわべだけというか、ただのクラスメイトとして、って感じだったっす」
一度、言葉を区切る。
「その点、お2人は話しやすいっす。ちゃんと、友達として扱ってくれている気がして。特に高倉さんとは、話も合うし」
へへっ、とはにかんでみせる。
(ちょ、やっばい羞恥エグ……!!)
ちらっと反応をうかがう。
「……あれ? 高倉さんの顔、なんか赤くないすか?」
綾瀬さんは当然とでも言うようにドヤっているが、高倉さんは無言で赤面している。
「もしかして、高倉さん……照れてます?」
「いやっ、別にっ! そんなことはっ」
声がやけに裏返っている。
「……ふふっ」
「ちょっと広瀬さん?!」
一度笑ってしまうと、止まらない。
「だ、だって……っふ……なんか、可愛いなぁって……ふはっ、いやっすんません……でも、高倉さんはピュア過ぎだと思うっす……っふふ」
「笑い過ぎですよっ!」
更に顔を赤くする高倉さんを見ていると、もっと笑いが込み上げてきた。
睨んでくる彼を気にせず、抱腹絶倒する。
しばらく笑いが止まらなくて、道ゆく人になんだコイツ、みたいな目で見られてしまった。
えっと、意味不&ほのぼの回!
いつの間にか文字数めちゃくちゃいってたので区切りました。
ほんとは下校シーンまで持っていこうと思ってたんだけどなぁ……w