編集者:脳裏
神崎小春ちゃんのちょっと変わった学校生活です。
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目次
あの子が気になっちゃうんです!
「ううん……」
宿題の区切りがついたので、私、神崎小春はグッと背筋を伸ばした。チラリと壁掛け時計に目をやると、……もう朝の四時じゃん!昨日はピアノのレッスンがあってすぐに寝てしまったのだ。今日は居眠り確定だな……。……よし!残りの宿題も頑張ろ!………今日も会えるかな………山口誠くん……。……そう、私絶賛片思い中なのです。今日ちょっと呼び出してみようかな………。早く殺したいな……。……っていきなり何言ってんだこいつはっ!思うかもしれないけど。私、誠くんを殺したい!………そうだ!手紙を書いて渡してみよ!私はささっと手紙を書いた。………ふふ、我ながらいい出来だ。……なんか眠くなってきたからちょっと寝ようかな……。………ぐうぐう……………。私は寝るのが早かった。
はい!めっちゃ短いですけど、頑張っていきます。
あの子が気になっちゃうんです!
「小春ー!おーきーろー!」
大きな声に私はハッと目を覚ました。時計を見ると………!やばいご飯食べてる時間ない!窓の外では、私の幼馴染大山恵が声を張り上げていた。
「ごめーん!先行ってて!」
「はーい」
顔を洗い、制服に袖を通し、髪を結ぶと、私はカバンを引っ掴み家を飛び出した。
(ガラガラッ)
「はあはあはあ」
「遅刻だぞー神崎ー」
教室に入るや否や体育の先生花丸にやんわり注意された。私には両親がいないので、ちょっと気を遣っているのだ。教室を見渡すと、あ、誠いた!……どうやって手紙渡そうかな………。私の席は一番前、その右隣が誠くん、左隣が恵。
「小春遅いよ〜」
「えへへ、ごめーん」
私は先生に見られないように、そうっと彼に手紙を渡した。彼はびっくりしたような顔で手紙を読み始めた。手紙を読み終えると、彼はチラリとこっちを見て、それからふわっと笑った。………ほんとかわいいな。殺したらどうなるんだろ……。
放課後、体育館裏に行ってみると、誠くんがそわそわとした様子で待っていた。
「ごめん。待った?」
「ううん、いまきたとこ。」
さあ殺すぞ!………そう思ってナイフを取り出そうとしたけど、……そこで手が止まった。彼がキラッキラの瞳で、こちらを見てくるのだ。……その時、まだ殺したくないと思った。ケーキのイチゴをとっておくような感じ。
「どうしたの?」
かわいい声で聞かれた。
「………えっと。」
「?」
「な……なんでもないです!」
「え?」
「じゃ、じゃあこれで!ばいば〜い」
彼はポカンとしていて、とても可愛かった。息を切らせながら私は家へと急いだ。家に帰り、自室に入ると私は考えた。ああ〜、なんでさっき殺さなかってんだろう………。あの時、彼を守りたいと思ってしまったのだ。あ〜、なんかイライラする。………よし!こういう時こそ人を殺そう。私はナイフを持って家を飛び出した。外はまだ明るく、公園には子供がたくさんいた。どこかで時間を潰そうと思い、私は近くのショッピングモールへ足を運んだ。中に入ると、私はいく当てもなくふらふらと歩いた。美味しそうなカフェがあったので私は中に入った。コーヒーを飲みながらスマホで『YOUTYAーPU』をなんとなく見ていると、キラッキラのアイドルのCMが流れ始めた。なんと今、このショッピングモールでライブをしているらしい。見に行ってみよう、そしてあわよくば殺そうと考えながら、私は会計を済ませ、店を後にした。
一階の大きなフロアへ行くと、いた。CMで見たあの子達だ。誰にしようかなーと考えていると、ふと、1人の子に目が止まった。栗色のボブで、髪がすごくふわふわだ。よし、あの子にしよう。私は一気に距離を詰めると、その子の脳天に………。かわされた。な……、なんで!
「よっと!……も〜、いきなりおそってこないでよ〜」
賑やかだった会場が静まり返った。や、やばい!逃げないと!私は猛ダッシュで会場を後にした。
あの子が気になっちゃうんです!
「はあはあはあ」
私は近くにあった細い路地裏で息を整える。
「なーにしてるの〜?」
「!」
声の主を見ると、そこには、私が殺そうと思ったあの子がいた!
「な、なんでついてきたの!?……殺す気!?」
………さっきのみのかわし方は只者じゃなかった。
「……ふふ、そんなに焦らないで、私はあなたに興味があるの。………さっき少しでも気付くのが遅れていたらやられてたわ。………あなた、何者?」
「それはこっちのセリフよ。」
「ああ、言い忘れてたわね、………私はアイドルの、森岡早苗。早苗でいいわよ。」
「………私は神崎小春。」
「単刀直入だけど、あなたって人殺したことある?」
「……………ある。」
「……そう。私もあるわ。」
………やっぱり…。身のこなしがすごく綺麗だったし、足が速い私についてこれてるからね。
「ね〜ね〜『Rain』交換しよ!」
………やけに馴れ馴れしいな?
「あ…うん、まあ…いいけど。」
「やった〜!これからよろしくね!こはるん!」
「ここここはるん!?」
「じゃあばいば〜い!困ったことがあったらいつでも頼ってね!」
「あ………」
早苗はヒョイっと姿を消した。人殺し同士仲良くしよ〜ぜ!的な?
「こっちで目撃情報があったらしいぞ!」
遠くから警察の声が聞こえてきた。私は急いで裏道を使い、家へ走った。
(カチャ)私は鍵を捻ってドアを開けた………はずなのに、ドアが開かない。考えられる可能性は一つ、鍵を閉めずに家を出た。もともとドアは空いてたということ。うーん、泥棒入ってないかな………。再び鍵を回し、ドアを開けると………もうそこはゴミ地獄かってぐらいぐっちゃぐちゃだった。花瓶は割れてるし、床は泥まみれだし……。ど、どうしよう………。!そうだ、早速早苗に連絡だ。人殺し同士というのもあり、妙な親近感が湧いてしまっている。(早苗っ!緊急事態!家に泥棒が入って、まだ中にいるかも!)そう送ると、すぐに返信があった。(すぐに行く!それまで中には入らないで!)(了解です)そう送ったけれど、私は入る気満々だ!返り討ちにしてやるっ!
「………もう帰ってきたのか」
背筋が凍りついた。………背後から聞こえてきたのは低くて渋い男の声だった。パッと振り返るとそこには、黒いマントを羽織った、やけに背が低い男がいた……………いや、女にも見える。
「あ、えっと……ごめんなさーい!」
そう言って私はその男?の懐に飛び込み、(ズブリ)ナイフで刺した。………はずなのに、なぜか血が出てこない。それどころか、男?はナイフを自分で抜き、逃げていった。
「な、なんで?」
床にも全く血は溢れていなかった。
あの子が気になっちゃうんです!
(ピーンポーン)
あ、早苗かな?さっきRainで家の場所を教えておいたんだ。
「はいるよ〜!」
「はーい」
私は玄関で早苗を迎え入れた。
「あちゃー、派手に荒らされちゃったね。泥棒はいなそう?」
「さっきナイフで刺したけど、逃げられた。」
「待っててって言ったじゃん!」
「ごめん。」
「でも、無事でよかった。」
早苗が心配してくれて嬉しいと思った。
「あ、そうだ。せっかくきてくれたんだし夜ご飯一緒に食べよ!」
「え!いいの?」
「うん!2人で食べた方が楽しいしね。」
「…………ありがとう」
早苗が照れ臭そうにそう言ったのが可愛かった。
「冷凍のたこ焼きでもいい?」
「うん、わたしも手伝おうか?」
「大丈夫だよ。そこの椅子に座ってて。」
そう言うと早苗は素直に、ちょこんと椅子に座った。
「はい、できたよ。」
「わあ、美味しそう………いただきます。…………………あちっ。」
「ふふ、ゆっくり食べなよ。」
「う、ん」
すごく幸せな時間だった。
あの子が気になっちゃうんです!
「小春ー!おーきーろー!」
ハッと目を覚ますと、うーん今日は朝ごはん食べれそうかな、とぼんやり考えた。顔を洗い、制服を着て、パンを食べ、歯を磨き、髪を整えると、家を飛び出す。………戸締りも忘れずに。外では恵が、スマホをいじって待っていた。
「も〜遅いよ〜」
「ごめん!早く行こ。」
「………そういえば、今日転校生来るって。うちのクラスに。」
「え!そ、その子ってどんな子?」
「うーんと、なんかちょーかわいい、アイドルらしいよ。」
嫌な予感しかない。
(ガラガラッ)
「………神崎、今日はギリギリセーフだな。」
席に着くと、隣の誠くんから、
「放課後、体育館裏に来て。」
と言われた。ここここれはもしや!ここここ告白!?…………いやしかし、期待しすぎるのは良くないな。なんか前までは、彼を殺したいと思っていたけど、今はむしろ、彼を守りたいと思ってしまう自分がいる。あの天使の笑みは反則だよ……。
「みんな!今日からこのクラスに新しい仲間が加わる!」
先生がそう言うや否や、(バシーン!)とドアが壊れる勢いで開け放たれた。そこから、やはりあの、早苗が、堂々とアイドルのように入ってきた。………まあ実際アイドルなんだけど。教室全体がざわついて、「すげえ」とか「かわいい」とか言う声が聞こえてくる。
「みんなおはよう!森岡早苗です!よろしくね。」
そう言うと彼女はにっこりと笑った。誠くんとは一味違う、女の子らしい、キャピっとした笑顔だ。再び教室はざわついた。みんなを鎮めるように、
「じゃあ……、森岡の席は、神崎の後ろだ。
「はーい」
そう言って早苗は席についた。
「ねえねえ〜こはる〜ん。」
「え、あ……何?」
「わからないこととかいっぱい教えてね!」
周りの子達は、わたしと早苗が仲良くしていて驚いている。
「う、うん」
うーん、なるべく目立ちたくないなあ。でも早苗は、さすがアイドルって感じで、みんなの質問の嵐にも余裕で対処している。わたしはそんな彼女を尊敬の眼差しで見つめたのであった。
放課後、あの場所に行こうとすると、
「待って、一緒に帰ろ〜」
と早苗に誘われてしまった。
「あ、ごめん、実は用事が、」
「え、なになに〜?」
「じ、実はその、…………誠くんに呼び出されてて、」
「えええ!それって、こ、告白?」
「あ、それはまだわかんないんだけど、」
「じゃあわたしがこっそり見守ってるから、こはるん、ファイト!」
と言うことで、私たちは体育館裏へ向かった。
あの子が気になっちゃうんです。
体育館裏に行くと、誠くんがいた。わたしを見つけると、パッと花が咲いたように笑って、倒れそうになった。まあ、本人には恋愛感情とか、全くなさそうだけど。
「ごめん待った?」
「ううん、大丈夫。」
「それで、なんで呼んだの?」
「………ごめんなさい。」
かわいい声で、超うるうるの目でそう言うもんだからわたしは、再び倒れそうになった。
「えっと、な、、んで謝るの?」
「じ、実は、………昨日の、泥棒は、…………僕なんです。」
「………………………え………」
「ごめんなさい!………理由は言えないんですけど、………今から片付けに行っても、いいですか?」
えええええ、てことは、………お家で………ふ、ふふふ2人!?
「ああああもももちろん最高大歓迎!」
「あ、嫌だった?」
「ううん、めちゃくちゃ大歓迎だよ!」
わたしは、チャンスを逃すまいと、必死に彼を引き止めた。
「じゃ、じゃあ早速行こうか!」
「あ、うん」
わたしが歩き始めると、彼は素直に後ろをついてきた。ひよこみたいでほんとに、かわいいな。
「わたしもついていっていい?」
あ、早苗のことすっかり忘れてた。2人きりになれないのはちょっと残念だけど、人手が多い方が助かる。
「あ!転校生の………」
「早苗だよっ!」
「あの、よろしくお願いします。」
「もうっ、こはるんに変なことしたらただじゃ済まないんだからねっ。」
「もうっ、大丈夫だってば!」
「ふふ、冗談よ。」
「じゃあ、行こっか。」
「うん!」
「はい」
(ガチャ)
「うわー、昨日と変わってないねー」
誠くんは申し訳なさそうに目を伏せてる。
「そう言えば、なんで誠くん血が出なかったの?」
「ああ……それは、僕が…………不死身だからです。」
「??????????」
「ええ!すごいねえ!ねえねえ!わたしめちゃくちゃ面白いこと、思いついちゃったんだけど!」
「何?」
「この三人でチーム作って、殺し屋をやるのはどう?」
「え!」
「殺しもできるし、お金ももらえるしで、一石二鳥じゃない!?」
「え……あの、お二人って、人殺したことあるんですか………?」
「うん。」
「もちろん」
「えええ!」
誠くんがビクッと体を震わせた。
「あ、大丈夫。あなたを殺しはしないから。」
「あ、はい………」
「それで、どうする?」
「でも、…………人を殺すのは、ちょっと………」
「うーん、じゃあ、それ以外のこと手伝ってよ!……そう言えば、不死身って言ってたけど、歳はとるの?」
「歳は普通に取ります。」
…………でも普通、人殺しって分かったら逃げ出しそうなものだけど、何か理由があるのかな?わたし、まだまだ誠くんのこと全然知らないんだな………。もっと知りたいと思ってしまう。
片付け終わった頃には、もう6時だった。
「ねえねえ、ご飯食べてかない?」
「えっ、いいの?」
「うん」
「やった〜」
「ぼ、僕はそろそろ家に帰らないと……………。」
「……そっか、じゃあまた明日………。」
「待って!Rainで三人のグループ作ろ!」
「いいね」
「はい」
早苗が帰り、ベッドに寝転んだ時も、ワクワクが止まらなかった。………そうだ!早速Rain送ってみよ!
(これからよろしく!)
すぐに返信があった。
(はい!一緒に頑張りましょう。)
嬉しくてほおが緩んでしまう。
(みんなで頑張ろ〜!)
「ふふっ」それから夜遅くまで、みんなとやりとりをしていた。
あの子が気になっちゃうんです!
「ねえねえ、2人ともっ!」
「ん?」
ここは、わたしの家、今は、早苗と、誠くんがきてるんだ!誠くんと世間話をしていたら、早苗に話しかけられた。
「何ー?」
「これ見てっ!」
そう言って早苗はスマホを私たちに見せてきた。………なになに?そこにはなんだか、怪しげなサイトの掲示板がある。(なんでも掲示板)……?
「これが何?」
「これに、『誰でも殺します!』って書くんだよっ!」
「なるほど!」
「そ……そんなこと書いて、大丈夫かな?」
「大丈夫だって!」
そう言って早苗は(誰でも殺します)と、掲示板に書いた。
「まあ、そんなにすぐ依頼が来るわけないよね……。」
そう言って、早苗はもぐもぐと、ドーナツを頬張る。その後、みんなで宿題をして、2人は家に帰った。
あの子が気になっちゃうんです
(超重大発表!)
自室でスマホをいじっていると、早苗から着信があった。早速返信する。
(何〜?)
(気になります!)
(実はね………、殺人の依頼が来たんだよ!)
(おおお!)
(………まさか本当に来るなんて、)
(明日は土曜日だから、早速やろうよ!)
(うん!)
(オッケー)
(場所は、南水族館で、殺すのは、イルカショーの稲村正樹。)
南水族館は、あの大型ショッピングモールの近くにある、これまた大きな、水族館だ!
(いつ集合する?僕はいつでもいいけど。)
(同じく。)
(じゃあ、9時に現地集合でいい?)
(オッケー)
(了解)
………楽しみだなあ。
あの子が気になっちゃうんです!
(ピピピピピ!)
「うーん……」
目覚ましの音で目が覚めたけど、まだ眠いや。ガシャン、と勢いよく時計を止めると、わたしは再び眠りについた。
(ピーンポーン!ピーンポーン!ピーンポーン!)
うるさく鳴り響く、チャイムの音で目が覚めた。
「ふわあ」
と、あくびをすると、
(ピーンポーン!)
と、再びチャイムがなった。おぼつかない足取りで、玄関へ行き、ドアを開けると、
「こーはーるーんっ!」
早苗がいた。
「ど、どうしたの?」
「今日、水族館行く日でしょ!」
「……………あ」
早苗はムウッとほおを膨らませている。
「わっ忘れてた!すぐ準備するから、先行ってて!」
「わかった」
素早く準備を済ませると、わたしはドアを、(バシーン!)と、勢いよく開けたら………
(ゴツン)
「うっ」
「あっ」
そこには、頭を抱えている、誠くんがいた。
「あっご、ごめん!」
「う、ん、大丈夫」
「なんでここに?」
「水族館に、2人とも全然来ないから迎えにきた。」
あれ、早苗に会わなかったのかな?………もしかしたらすれ違っちゃったのかも。
「あ、あの………、迎えにきてくれて、………その、………嬉しい…………かも………。」
「うっん、全然、大したことないし………。」
も、もしかして………、照れてる?か、可愛すぎだろおおおお!
「…………行こっか」
「うん」
どきどきしすぎて、声が小さくなってしまった。
(タッタッタッタ)
「はあはあ」
ようやく、水族館に着いた。
「もう!遅いよー!………あれ?2人できたの?」
「あ、うん。誠くんが迎えにきてくれて。」
「へー。……2人って付き合ってるの?」
「???????……………ち、違うよっ!」
「フーン、お似合いだと思うけど。」
恥ずかしさと、嬉しさが混ざり合って、顔が真っ赤になってしまった。
誠くんを見ると、彼も、恥ずかしそうにもじもじしてる。……………かわいい。
「そう言えば!わたし、食べたいクレープがあるんだよね!」
「え、いいね。ちょっとお腹すいちゃった。」
「僕も賛成。」
私たちはクレープ屋へ向かった。
「……そう言えば、誠くんの、不死身ってどういうこと?」
「うーんと、簡単にいうと、怪我をしないし、死なない、ってこと。」
クレープを食べながらわたしは聞いた。
「じゃあ、もうそれって無敵じゃん!」
「あはは、そんなに褒められると、照れちゃうよ。」
…………なんか、楽しそう。さっき2人で話した時は、なんかそっけなかったし。わたしのこと嫌いなのかな………。胸がちくりといたんだ。