吹かなかった風に乗って降らなかった雨に濡れた。振り下ろされなかった拳に傷んで回らない風車に見惚れた。
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目次
Let me see your face.
光った。
目の前が白く歪む。眩しさに目を閉じれば“アレ”が蘇ってきた。
戦った。
人を斬った?蜃気楼に騙されて転ぶ。
吐いた。
洗いざらい、、、何も知らない。
取り違えた。
あなたが欲しかったものはこれ。
強要した。
私が欲しがったものは“アレ”なのか。
No flowers bloomed.
聞き慣れた目覚ましの音で身を起こした。雨の音響く閑静な道路は今日もそこにいる。まだ覚束ない足取りで洗面所まで歩く。|秘色色《ひそくいろ》のかわいい髪の毛を手櫛で整えて顔を洗う。サーっと何かが取れて軽い気分。特に意味合いがある訳ではないが。そのまま台所へ行き朝食を用意する。“なにか”の肉とパン。
「おい、飯だ」
檻の前にあの肉とパンを置いた。奥から嘴が出てきた。
食べ始めた。あの生物は俺と“契約”した《契約魔獣》。名はツヴェルフォス。|原型《モチーフ》はカラス。可愛げがない。他のやつはライオンやらうさぎやらと人気の高い原型と契約している。羨ましい訳でもないが、カラスとは。
仕事に行くためにスーツを着る。
「いってくる。」
---
会社はシュタオロイマーの中心街にあるIT関係のものだ。|聳《そび》え立つ威圧感を放つあのビル。自動ドアをくぐり抜ける。
「おはようございます」
とりあえずの挨拶。とりあえずなので声は小さめでも問題ない。
「なんだよ冷てぇな」
同僚のフリューゲルが声をかけてきた。奴はなにかと絡んでくる。
「邪魔だ」
「あんだよまだ時間あるじゃねぇくァッッとッッ!!」
絡んできたフリューゲルに肘打ちが当たる寸前、避けられた。
「なんだよ急に殴りかかって!平和に行こうぜ??」
「じゃあテメェが絡んでくるな」
「んだよ寂しーやつだなぁ」
「おい、お前らそこで戯れてないで仕事しろ」
遠くから上司であるルフトスリアに怒られた。
「先輩、こいつが絡んできました」
「やっぱりか、、、フリューゲル、後で第三会議室来い」
「は?!?!」
第三会議室は普段はあまり使われないことから説教部屋として使われる。とは言ってもここは会社だ。連れて行かれるのはフリューゲルしかいない。中で何が起きているかは分からないが出てくるフリューゲルのボロボロさを見ると物凄い説教が行われているのだろう。おそらく先輩ではなくヘルシャフトルが担当なのだろうか。
「頑張って来い」
「てめぇ!!裏切り者が!!!」
「俺は別に裏切ってねぇよ」
「うるさい行くぞ」
そのままフリューゲルはズルズルと連れて行かれた。
【用語説明】
-主人公
ラーベルトライゼ・ヴェス
今作の主人公。シュタオロイマーに住む|契約者《エンツェル》。秘色色の髪を持つ年齢、種族不詳の青年。契約魔獣のツヴェルフォスと契約をした。契約者は何かと因縁をつけられ職につくにも困難なことが多いため契約者も雇ってくれる会社に勤めている。
-同僚
フリューゲル・エル
主人公が働く会社の同僚。契約者としては主人公の先輩。種族はエルフ。年齢は183歳くらいらしい。黒髪でセンター分けのロング。右目が赤くて左目が白く普段は左目を覆うような眼帯をつけている。エルフにとって白い目は死の瞳と呼ばれているため。
エルヒアという契約魔獣と契約した。原型は猫。
-先輩
ルフトスリア・ゼス
主人公の上司。種族は人間と狼男のハーフ。オレンジ色の明るい髪色で左側の前髪を上げている。少し女性らしい顔立ちのためよくフリューゲルに揶揄われる。