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目次
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_1
今日は、夏の暑さが身に染みる、空の青く澄んだ日だった。
空高くから見下ろす海はきらきらと輝いているし、沢山の人が街を行き交っているし、
今まで見た事ないくらいに慌てているボスがいるし________...え?
「…何やってるの...ボス...?」
もはや笑えてしまうほどにオロオロしているボス。
あんなに狼狽えてる姿は今までに数回しか見たことがないと思う。
もう少しその様子を観察したいとも思ったけれど、何があったのかも気になった。
結局任務終わりの私は、青龍から飛び降りてボスの背後に忍び寄ったのだった。
「わあっ」
「はぁあ!!?」
あからさまに肩をびくつかせてこちらを振り向いたボス。
「おはよーっ!何でそんなに挙動不審なの?何かあった...?」
尋ねてもふい、とそっぽを向くボス。
後ろめたそうな顔してるなぁ…
ふと、その手に携帯が握られているのを見付けた。
不自然な握り方。どうやら先程迄誰かと通話していたみたいで。
「…誰と電話してたの?」
「は、っ誰でも良いだろ、」
ボスは尚も此方を見ようとしない。
全く、何をそんなに隠したいのかな。
「…ないとは思うけど敵組織に情報売ったりして」
「そんな事してた訳ないだろ!!...」
「えっ待って冷や汗凄いんだけど本当に大丈夫ボス?」
明らかにおかしい。
...あのボスに限ってないとは思うけど、...こんなに挙動不審じゃ、幹部権限使うしかないかなぁ…
「…正直に云って。幹部として」
「あぁもう分かった、云う。但し、”幹部に”じゃなく、”泉桜月に”だ。分かったか?」
上から目線なのは気になるけれど、続いた言葉に少し違和感を覚える。
幹部には言わないのに私には話す?
...つまり、そこ迄重要ではないけれど...私には話しておかないといけない案件。
「、判った。此処で話すのもだし、私の管轄内のカフェにでも行こ?」
「そうだな、その方がいい...」
「お客さんと店員さんなら、今日は定休日だから大丈夫」
今度こそ、完全に安心した表情で頷くボス。
カフェの座標の位置を伝え、異能で転移して貰った。
暗い店内。
外はあんなに明るいのに、と思いながら電気をつける。
「…そこのテーブル席にでも座ってて、今コーヒーとお菓子」
「いい」
唐突に遮られた言葉にパチリと瞬きをする。
ボスの表情を伺った。
不安と、恐怖と、そして怒りを少し覚えるような、そんな顔。
「そんなに早く話さないといけなかったなら、どうしてもっと早く言わなかったの...」
「うるさい」
呆れながらも、ボスの向かいのテーブル席のソファに腰掛けた。
素早く淹れていたハーブティーをボスの前に置きながら。
「…おま、いいって言っただろ」
「そのハーブにはリラックス効果があるから、取り敢えず落ち着いてから話そう...?」
「そんな時間はないんだよ!」
急に立ち上がったボスに驚いて仰け反る。
両手はきつく、握られていた。
やっぱり、何かに不安を覚えてるんだ。
「…まず飲んで!飲まなかったら私話聞かないからっ!」
「はあっ!?」
酷な話かもしれないけれど、この状態じゃボスの気も落ち着けない。
安定した状態じゃないと、話は真面にできない。
「…わかったよ...」
ティーカップを以て、カップに口を付けて、喉が一度、動いたのをしっかり見届けて。
「これでいいだろ」
「うん、今はね」
少なくとも、これ”だけ”で終わらせるつもりはないけれど。
「…まず、俺がさっき通話してた相手は___俺の”元仲間”だ」
「、っえ、!?」
予想の斜め上を言った答えに思わず素っ頓狂な声が出た。
「…アイツらが、ヨコハマに来るらしい」
その暗い声色からして、いい理由じゃないのは簡単に推測できる。
その瞳は、まるで初めましての頃の、敵対していた頃のもの。
「目的は、俺が失敗した”このヨコハマを手に入れること”だそうだ。上手く行けば俺も連れ戻すと」
予想の斜め上の答えpart2。
いや、予想は出来た。
けれど、ボスのこのヨコハマに来た理由もそう云えばそんな物だったなぁ、なんて。
「…ボスの元仲間、って」
「…簡単な組織構成はトップ、そしてその隣に並ぶのが俺とあと三人...その下は、ポートマフィアの数をも凌駕するかもしれない兵士と異能力者だ」
「ボスってお偉いさんだったんだ」
「其処かよ」
失礼な、と此方を睨むボス。けれど、いつもの勢いはない。
「…あれ、ボスって組織のトップだから”ボス”なんじゃなかったっけ」
「組織でも俺くらいの立場になったら別で組織を持ってる奴もいる。前動いていたのはそっちだから俺が”ボス”だったんだよ」
「なるほど、だから今回の件の人達の、直接的な支援がなかったの?」
「あいつら、というより彼奴、自分が命令したくせに自分で如何にかしろとかふざけてるだろ」
「あ、はは…ねぇ、そういえば前から思ってたんだけど、どうしてそんなに横浜に執着して」
「それと、ドストエフスキーとやり取りしていたのはトップだ」
遮られた事よりも、その妙なもの云いに、突然ひらめくものがあった。
「もしかしてボスの異能に、”私かルイスさんどちらかが死なないと元の世界に戻れない”の条件を付けたのは、」
「そう。トップの異能は__
【|不幸な選択遊び《Unhappy Choice Game》】
「自らが選択した二人の人物に、特定の選択条件を課すことができる異能だ」
「…なんか、名前が物騒、だね__どちらかが死なないとダメだったのは、トップの仕業だったんだ」
「ついでに云っておくとトップと俺の異能をこうやって上手く混合させたのも俺と同じ立場の奴__面倒だから説明は後だ」
「面倒って」
「…とにかく、話を進めるぞ__落ち着いて聞け。俺と同じ立場の奴に、自分を除いた同じ立場の3人の異能を強制発動させられる奴がいる。ソイツが____」
--- 「俺の異能を使って、ルイス・キャロルを強制的にこの世界に連れて来た」 ---
「…え、っそれ、本当、⁉大変な事になるんじゃ、」
「その通りだ。トップがもしも同じ条件を課したなら、今度はここ、泉桜月の本来の世界で、あの悪夢が__俺が引き起こしたあの事件が繰り返される」
「、でも同じ条件は多分課さないよね?云い方よくないかもだけど、っルイスさんがもしその選択を選んだなら、そのままルイスさんは元の世界に直帰コースだから」
「ね、その話…僕も混ぜてくれない?」
その懐かしい声。
優しいけれど、話の内容からピリリと張り詰めた雰囲気。
--- 「お久しぶりです、ルイスさん...っ!」 ---
そして巻き込んでごめんなさい。
ボスを見ると、向こうも珍しく素直に申し訳なさそうにしている。
「…勝手に押しかけちゃって申し訳ないね」
「トップの男はどうした?」
「強そうだったからなんとか逃げてきた」
「だろうな。状況がはっきりするまでは下手に動かない方がいい」
何かルイスさんの表情が物問いたげなのは、気のせいだろうか。
でも、彼の無事が分かったことに、今は何より安堵を覚えた。
というわけでっ!!
まさかのコラボ第三弾――――――!!!!
嬉しすぎる――――!!!!
今回は私の方の世界線にルイスさんとアリスさんをお呼びさせていただきました!
やだもう嬉しすぎて死んじゃう...((
投稿頻度は私のせいで遅くなってしまったりするとは思いますが、最後まで見届けて下されば幸いです!
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_2
「それで...君はどこまで分かっているのかな」
ボスの方を向いてそう問いかけるルイスさん。
とりあえず紅茶とお菓子をお出ししたところで。
「…彼奴らが今、このヨコハマに来ている事、それからこのヨコハマを手に入れ、俺を連れ戻そうとしている事、トップの異能でまた何らかの形で___」
--- 「最悪、お前たちの生死に関わってくること」 ---
「前のことがあるから分かると思うが、ヨコハマを手に入れる計画の中で、いろいろあったから俺は泉...妹の方...を殺そうとして、それに適任だったのが、俺の異能で世界を超えた所にいた、ルイス・キャロルという人物だった」
「なら…今回も桜月ちゃんは計画に邪魔だろうから消される可能性があるし、それに適任である僕にも何が起こるか分からない、ってことだね__おまけに、桜月ちゃんの本当の、本来の世界だから...どちらかが死んで元の世界に、っていうのは僕が簡単にクリアしてしまう」
「つまり前回よりもダントツで複雑な選択が課される…」
「さっきテニエルが言ったとおり、本当に最悪の事態も考えられるね…」
顎に手をやりながら、考え込むように首を傾げるルイスさん。
...かわいい(
「うーん...なんか...凄い事になってるし…でも前はボス、あんな大っぴらに来てたのに、(おまけにあんなハイテンションで)、なのに今回は隠密作戦なんですね…?」
不思議に思い、誰にともなく問いかけた。
前回はマフィアとも敵対してる状況だからよかったけれど、今回はそうではない。
ただ元仲間で、今からこういう行動をするよっていう連絡をしただけ...
宣言、って言うか、奮戦布告、というか…。
でも、誰でも、良かった。この質問に答えてくれる人なら。
誰かに、このやけに頭に引っかかる疑問を解き明かしてほしかった。
「当り前だ、そこの莫迦とは違って計画的なんだ、俺たちは」
「そうだよ、ソイツと僕等を一緒にしないでほしい」
「まぁまぁ、二人とも落ち着きましょうっ!」
「テニエルー!早く会いたいわ~!Wait for me, my captive princess~♡」
「おい言葉が英語に戻ってるぞ」
「…ぇ、誰」
突拍子もなく聞こえてきた声に、突拍子もない会話の内容。
聞こえてくるのは、ボスの服の胸ポケットから__。
「…最初の男、さっき僕がすれ違った奴だ」
途端にルイスさんの気配がぴしりと張りつめたものに変わった。
「只ならぬ気配だったよ...目の前から歩いてきた筈なのに、ぶつかるまで気づかなかった」
本能が警鐘を鳴らす程、彼奴は危険でやばい奴だ、って、そう感じた、と。
ルイスさんがこの世界に来た時、見覚えのない建物の中で、突然銃を向けられて戦闘になったらしい。
その後、それほどかからずに其処を脱出した後__一人の男と擦れ違ったと言っていた。
その男が、そんな人だったなんて。
それに、そんな人が…突然声を、?
「っていうかボス携帯電話っ!?」
「まさかジョージおま、っ」
「よく気が付いたね、流石テニエルだ...僕にかかればそんな携帯、簡単にハッキングできるし、起動もできるよ」
ジョージ、と呼ばれたその人は、楽しげにそう語る。
けれど、その声色に反して、内容は私達のような職業からしたら恐ろしい物。
...いや、一般人でも恐ろしいけれど。
「ねえ、ボス...ジョージ、って誰?」
「あはは、初めまして…僕はそこのテニエルの仲間...組織の一員で、ハッキングを得意としているんだ、よかったら仲良くしてよ」
隣を見ると、ルイスさんも引き気味の表情。
いや、この関係性で仲良くしてよとか無理がある...
...に反して、ボスは顔色が酷く悪そうだった。
なのに、笑っている。
「…ついでだし、他3人も自己紹介してくれないかな?」
そう、ボスが手に持つ携帯に向かって云ったのはルイスさん。
「私も…気になってました」
「仕方ないな…まぁいいか、俺はフランシス。戦闘でもなんでも遠隔系の方が得意だからジョージの援護をしている__それと嗜む程度だが、精神的な分野にも精通している」
「ふふ、私はハリエット__!人と人の間の仲を取り持つことが得意だから、基本は商談や取引系の仕事をしてるのよ!」
「私はメアリー!仕事は全般を補助する係が多いわ!...ね、テニエル~♡」
この四人、もしかして、。...いやもしかしなくても、
「ボスの元仲間の...トップと、ボスと同じ立場の3人…!」
「…誰がトップなのかな」
「誰だと思う?」
そう、少し悪戯っぽく聞き返すフランシス、。
その名前にはいい思い出がない。
同じ名前なだけ、だけど。
「…でも、フランシスが一番落ち着いて大人っぽい」
「だよね、僕もそう思う、けど…ハリエット、彼女も侮れないと思うよ」
うふふ、と携帯越しに笑った声が聞こえた。
「違う」
突然に呟いたボスに一瞬吃驚してから、ハッと気が付く。
「あ、!元仲間だから知って…!」
「本当は誰がトップなの?」
少し焦らされてムッとしているルイスさん。
「一番ふざけてる...そのジョージって阿保だよ」
「阿保って...全く、上司に向かって失礼だよ、年上には敬意を払ってもらわなくちゃ」
「ねーぇテニエル、さっきからそこの人達”元仲間””元仲間”ってうるさいわ…」
「まぁまぁメアリー落ち着きなさい、折角の可愛いお顔が歪んでるわよ?」
「はぁ…テニエル、____。」
--- 「”兄弟”じゃなく、敵を選ぶのか?」 ---
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_3
思わぬ言葉に、その場がしん、と静まり返った。
「…兄弟、って云った、かな…」
口を開いたのは、ルイスさん。
「…もう少し詳しく説明してくれない?」
その言葉遣いからは、驚きと、戸惑いと、それと__何だろう、読み取れない、…。
「言葉の通り、出会って少しの”敵”さんとは違って、私達は血の繋がりっていう深い絆で繋がってるわ、ねぇ、テニエル~♡」
甘い香りのしそうなそのメアリーの声。
血の繋がり、何て云ったって…それで縛り付けるのは、一寸違うんじゃないか、と思いながらも、話が最後終わるまでは口を挟まない様にしようと思った。
ちらり、とルイスさんの方を見ると、同じ事を考えていたようで...こくり、と小さく頷いたルイスさんに、私も頷いて返した。
「あら、疑うなら血液証明書を送ってあげるわよ?」
ハリエットの明るい、饒舌な話し方。
下手したらこっちが飲み込まれそうで、少し怖い。
...電話越しでも。
「…大丈夫です」
何とか、その一言を発することはできた。
けれど、これ以上この人たちのペースでの会話に口を挟めそうな気がしない。
「__別に血のつながりがあるから絆が結ばれていると言いたい訳ではないからな...まぁ、」
「テニエルー、次この形態に僕からの着信がある時迄には、そこの二人とのお別れを済ませておいて、ねっ?」
「あっおい、俺の台詞取るなっ」
「あははっ」
そこでプツリ、と通話は途絶えた。
ボスは、あの人達との直接的な会話を、全然しなかった。
「…ねぇボス、あの人たちホントに」
「桜月ちゃん、...今回は__ちょっと、ややこしい事になっているかもしれないね」
「ぇ、ルイスさん、『なる』じゃなくて『なっている』って…?」
「…その前にまだ話せていない部分を伝えるのが先じゃないか?」
そういうボスに、確かにと納得して、今までに起きた事、分かっていることを説明する事にした。
始まりは少し様子がおかしいボスを見つけた事から。
その原因は”誰か”と通話していた事で、詳細はこの私の管轄内のカフェで話す事になったこと。
あまりに焦りが募っていたような、ボスの様子。
そして、先程通話していた相手が、ボスの元仲間であった事。
その彼らがヨコハマに来る、といっていたこと。
目的は、ボスが失敗した”このヨコハマを手に入れること”。
上手く行けばボスも連れ戻すこと。
簡単な組織構成は、トップ、そしてその隣に並ぶのがボスとあと三人_フランシス、ハリエット、メアリー...その下は、ポートマフィアの数をも凌駕するかもしれない兵士と異能力者。
”ボス”という組織の頭領の呼び名は、ボスが別で持っている組織で、前動いていたのはそっちだから彼が”ボス”だった、ということ。
それが理由で今回の「彼ら」の、直接的な支援がなかったこと。
ドストエフスキーと直接やり取りしていたのは、トップだったこと。
ずっと静かに耳を傾けていたルイスさんが、ここで声を発した。
「…なんとなく話の流れで勘付いてはいたけれど…」
「…はい。前回私達の何方かが死なないといけない、という条件を課したのはトップの異能、」
【|不幸な選択遊び《Unhappy Choice Game》】
「…そして、そのトップの異能をボスの異能に組み合わせたのも」
「テニエルと同等の立場の彼らの内の誰か、ということだね…」
流石ルイスさん、話の呑み込みが途轍もないスピード。
「その異能の詳細としては、自らが選択した二人の人物に、特定の選択条件を課すことができる異能...らしいです」
「成程ね、前回姿すら現さなかった彼らの異能だから、あの時どうにもならなかったわけだ」
真剣な表情で考え込むルイスさん。
反して、ボスの顔色は未だに悪い。
大丈夫、と声を掛けようとして、少し思いとどまる。
大丈夫なわけ、ないか。
「…あの」
「どうしたの?」
どこからの辺りは聞いていたのかルイスさんに聞いたら、ボスが「俺の異能を使って、ルイス・キャロルを強制的にこの世界に連れて来た」と言った処からは聞いていたとのこと。
全部全部、省略できない重要な情報ばかり。
多分、ボスから聞いている部分は全部伝えられた。
...でも、やっぱり気にかかること。
「…ボス、本当に一旦休んだ方がいい、と思う、」
「テニエル、今は休むべき時だよ…これから忙しくなるだろうから、尚更ね」
本当に、酷い顔色。
「…あぁ、悪い…少し自分の部屋に戻って休む。お前たちは取り敢えず首領の所に…」
「たしかに、出来るだけ早くこの件についての報告も…したほうがいいだろうね」
「ぁ、私先にルイスさんが来てること携帯で連絡しておきます!」
そう云って取り出した携帯に、文章を打ち込んでいく。
「…”分かった、詳しい話は帰ってから聞くよ”だって」
「…俺の異能でいいか?」
「勿論だよ__ごめんね、突然にお邪魔することになっちゃって」
「いえっ、今回の件は私達に原因がありますから…」
ボスの顔に影が差す。
元から悪かった顔色が余計に悪くなっているように見えた。
「…取り敢えず戻るか」
「そうだね」
「じゃあ、ボス、お願い…!」
ひゅん、と。
少しのふら付きと共に周囲の景色が一瞬で変わった。
「…ポートマフィア、本部___着いたぞ」
--- 「…あ、手前ら、今まで何して…ッルイスさん!?」 ---
着いた先には丁度中也と、その手にあった数枚の書類が、中也の驚いた拍子に散らばった、そんな惨状が広がっていた。
...わぁ、新入り黒服さんの身元情報じゃん中也駄目だよ情報漏洩なんてっ(
などとのんきなことを考えながらも、これから先の動きを真剣に考えていた。
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_4.
「それで、ボスは暫く医務室に籠りますと」
「…なるほど」
困った様に苦笑いするルイスさん。
本当、すみませんうちのボスが(?)
「にしても...あの四人、なんか変じゃないですか?」
「たしかに...色々違和感はあったね」
お互い感じるその違和感の正体。
はっきりと何とはわからないけれど、何処か感じる矛盾点。
感覚が捕らえた違和感。
「...絶対に、彼奴らは捕まえよう」
突然に、そう言ったルイスさんの声は、私達がいる会議室によく響いた。
声が大きかったわけじゃない。
声の、深みが違っていた。
重く、響くような声。
心の奥に、まっすぐ届いた声。
「…勿論です」
そう返して、彼の方を真っすぐ向く。
すると、ルイスさんは柔らかく微笑んだ。
「彼らの目的はなんにせよ、このヨコハマを手に入れようとしているなら、やっぱりどう足掻いても探偵社やポートマフィア、それに異能特務課との衝突は避けられないはずだから、多分彼らの協力も仰げると」
「お待たせしました、ルイスさん」
ガチャリ。
ドアを開いたのは、中也だった。
「…突っ込まないよ、私はお待たせしてないの?とか、私は突っ込まないよ」
「桜月ちゃん、それを云ってる時点で多分突っ込んでると思う」
「えっ、そうなんですか!?」
「…桜月、手前は後で覚えてろよ、それとルイスさん、」
--- 「首領との面会許可が下りたので一緒に着いて来て貰えますか?」 ---
「…ありがとう、勿論着いて行くよ」
..私は激怒した。
必ず、かの部下想いで重力使いのポートマフィア幹部を問い詰めなければならぬと決意した。
私には彼の心はわからぬ。
私は、ただのポートマフィア幹部である。
任務を遂行し、奇獣と遊んで(?)暮らして来た。
けれども人の心には人一倍敏感であった。
「ねぇ何でさっきから私の事スルーするの⁉扱いが太宰さん並みな気がしてすっごく嫌」
「その前に今の文章軍は何なんだよ」
「何か凄い走りだしそうな雰囲気があったよ?」
ほんわかしてるルイスさん可愛い、じゃなくて…。
「今のの元ネタはこの前太宰さんが云ってた寝言らしいもの...です。敦君から聞きました」
「…あ、あァ、そうか、」
「…なんか、思ってた以上に、うん、凄い理由だったね」
「じゃなくて!!中也、何でさっきから私の事完全スルーしようとしてたの⁉流石におかしいと思うんですけど」
「慥かに、呼びかけの名前にはずっと桜月ちゃんが入ってなかった」
「…そう云えば、慥かに…」
ジト、と中也を見つめると、観念したように溜息を吐いて、そして云った。
「手前は後で首領から話があるそうだ、あとボスのことについて少し聞きたいことがあるらしい」
「ぇ、?じゃあ今から首領室に行くのはルイスさんと中也だけで、私は居残りってこと?」
流石のルイスさんも顔が引きつっている。
五大幹部がお話という名目で尋問を受けるなど前代未聞どころか、処刑の噂が立ち上るんじゃないかレベルのことだ。
「…桜月ちゃん、頼んだよ」
「…ルイスさん、頼みました」
お互い若干顔を青ざめながら、これまた身の危険を感じている様な笑顔を浮かべたルイスさんと中也は会議室を後にしていった。
多分、首領は二人との面会を先にするから、暫く私は時間があるだろう。
...もしも、ボスの件で...私がもしも、彼らが来ることを事前に知っていたと思われたら。
組織に、ヨコハマに危険が迫っているのを知っていたにも拘らず、それを知らせなかったと思われたら。
……それこそ、背信行為として処刑される。
いや、まだある、何か、私が見落としてしまっている、穴が…
「うぅん、首領のことだから、何も話を聞かずに処刑なんて不合理なんて事はない筈...」
なのに、なのに。
嫌な予感が、拭えない。
私は咄嗟に、呼び出していた。
『__異能力...奇獣、白虎...っ!!』
「っ…はは、やっぱ俺らには不適任だよ、この案件」
「仕方あるまい、首領の命令だ」
「…」
「泉桜月幹部、貴女を…首領の命令で捕縛します!」
「…あは、やっぱりこれ何かの異能だよね、精神錯乱系の、かな?」
黙って此方を睨む彼ら。
...つい数日前に笑って話してたばかりなのに。
「ねぇ、銀、ひぐっちゃん、立原、広津さん、」
でも、その挙動には不自然な所がない。
異能で精神錯乱にかかったならどこか不自然な所はある筈。
「それがないってことは…本当、なの?」
「なぁ、...なんでんな事したんだよ」
「桜月、貴女は誰よりもこの組織に貢献してきたはずです。なのに…っどうして!」
「泉幹部、抵抗すれば余計立場が悪くなる...今は《《それ》》は適切ではないのでは?」
背後に向けられた視線に、白虎をチラリと見る。
白虎も此方を見返している。
答えは…一つ。
この状況じゃ、命令は本物らしいし、この状況じゃ多分...私がしでかしたらしいことは相当なものなのだろう。
それで捕まれば......命の保証すらない。
覚悟していた事でも、私は納得いかない。
私は…今までも、これからも、マフィアだ。
「ごめん、みんなっ」
謝った瞬間に、皆の首元に手刀を叩きこむ。
流石に戦闘部隊だから一秒で、とは行かなかったけれど、手古摺りはしなかった。
「…取り敢えず逃げなきゃ」
此処は17階。
奇獣がいれば余裕の高さだ。
鍵はおそらく首領室で操作できる。鍵を開けて下手に連絡が行くよりも、突き破った方が速い。
思考を回転させながら、私の手は携帯の文字を打っていた。
...ルイスさんに。
__其方はどういう状況ですか?私はここから出ます。詳しい話はあとで。
「奇獣、玄武...!窓を割って、朱雀は私を乗せて此処から飛び出して!向かう先は…」
--- 「武装探偵社___!!」 ---
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_5.
「っまだ追ってきてる…!」
朱雀から降りて自分の脚で街の中を駆ける。
一般人は巻き込みたくないから、裏路地を。
時折飛んでくる銃弾は全て奇獣が弾く。
勿論、跳弾には注意した上で、凡て叩き落としている。
…何をされたって、追ってきている黒服さん達が仲間であることには変わらないから。
まだ追ってきているのか確認しようとした時、
パァン、と鳴って一発の銃声が頭すれすれを通る。
「…っと、...しょうがない、今は人影が全くないし__」
ごめんなさい、と心の中で呟いて、追手の人達を失神させた。
銃を持って武装している相手とはいえ、幹部にかかれば簡単なこと。
「却説、と」
全て済ませてぱたぱたと服に付いた土埃を払う。
「…それで、マフィアの幹部さんがこんな処で何の用かな?」
「…、っ!」
身構えながら突然の声に背後を振り向く。
「、慥かに貴方なら気配を勘付かれずに近づくのも頷けますね、__太宰さん」
うふふ、と笑うその顔に、憎たらしい程殺意が沸く。
けれど、だ。今はそんな場合じゃない。
「…太宰さん、手を貸して下さい」
「勿論だよ、君のお願いを私が断る訳が無いじゃないか」
きらり、と云う効果音をつけ乍ら私の手を取る太宰さんを無視し、ポケットの中で震えた携帯を取り出す。
...ルイスさんからの連絡、!
その内容はこうだった。
__いきなり警報が鳴ったから驚いた、それと中也君は何が起こったのかの確認に部屋を出ていったわ。
その後こっちの|あの人《森鴎外》から、
「トラブルが起きたらしいから、少し失礼するよ」
って云われて、その間にマフィア本部を抜けたところよ。
ルイスも桜月ちゃんに襲撃があったんじゃないかって睨んでるから、何処かで合流しましょう。
...でもまぁ、武装探偵社よね。
先に向かってるわ。
健闘を祈る、アリス、と締めくくられたそのメールにめちゃくちゃ感動しながら、硬直状態の太宰さんを見遣る。
...ルイスさんにアリスさん、云いたいことが全部伝わってて嬉しいけど推察能力が恐ろしくもある。
「太宰さん、私を少しの間探偵社に置いてもらえませんか?」
「ふふ、状況は既に大体聞いている。__勿論だよ」
そう云われてパァ、と顔を輝かせる。
厳重に布を何枚も重ねてから、太宰さんは天馬の上に座ってもらった。
...異能断絶の効果のある布。一応マフィアの保管庫の重要機密だけど。
直接、とはいかなくても、数重にしたら流石に無効化は通らないようだった。
「…ねぇ桜月ちゃん、彼らに如何してこうなったのか聞いてもらえないかな」
「…すみません、私が訊きたいです。あと___」
--- 「なんでボス迄探偵社にいるんですかっ!?」 ---
状況を説明しよう。
私と太宰さんが探偵社について、その扉を開いた時。
中からは歓声と数度のシャッター音が聞こえて来たのだ。
何事かと思い、慌てて中に入ると___ルイスさんのファッションショーと、敵の陣地(?)で深く眠るボスの姿が目に入った。
「…もう一度言わせてください。如何してこうなったのか私も知りたいんですけど何事ですか⁉」
「えっとね、本部を出る直前にボスを引っ張っていこうとしたら、彼は彼で状況を何となく把握してるみたいで、探偵社に移転してくれて」
「来たら名探偵が推理して待っていたからお茶と茶菓子で持て成されたルイス・キャロルに反して、超警戒されまくりで一人眠りこけていた俺」
「…桜月、この御方は何を着ても似合っていらっしゃるのですわ、それが例え女性の物でも」
ナオミ、真顔で恐ろしい事云わないで。
...無言でずいずいと近づいてくるナオミさん。怖いです。
「…兎のぬいぐるみあげる、...えっと、」
「僕はルイス・キャロルだよ、よろしくね」
「…うん、よろしく...ルイスさん、これあげる」
此方は此方で何ともほのぼのとしたやり取りを繰り広げる二人に、おじいちゃんが胸を押さえていたとか。
...孫娘設定、未だあるみたい。
「…ルイスさん、あの、私達の状況の説明は」
「それなら僕が凡て推理しているから大丈夫だよ」
ずい、とラムネの瓶を持ちながら話している間に割り込んでくる乱歩さん。
流石か。
「…取り敢えずそろそろ僕着替えてきていいかな」
「あら、残念ですわ!」
「でも、その恰好の儘でも違和感はなさそうですね!やっぱり都会って凄いです…!!」
賢治くん、、それは関係ないと思う、多分。
そして脳内ツッコミを入れている間に速攻で着替えてきたルイスさん。
私にも出されたお茶と茶菓子を頂きながら、真剣な表情に切り替わったその姿を見る。
見ながら、そして私は真っすぐに声を発するのだった。
__武装探偵社の社員の人々に向けて。
「…単刀直入に云います。私達の置かれた状況は途轍もなく崖っぷち...相手は3人で張り合えるような相手ではない____”私達3人からの”依頼です」
--- 「力を貸して下さい」 ---
正面のソファに座っているルイスさんも、そしてその隣に寝ていた筈のボスも、社員の方を見ている。
「今回の依頼については、私が報酬をお支払いします。__お願い、です…所属する組織からして、私やボスが信頼ならないのは分かります、それに、ルイスさんのことも、突然”別の世界”なんて云われても信じがたいのも分かります、それでも、っだけど、...!」
俯いて、ぎゅう、と膝に爪を立てる。
私に何かあるのは構わない。
それでも、
私達の所為で、ルイスさんに迷惑がかかるのも、このヨコハマに何か危害が加わるのも、どちらも許せない。
それを見かねたのか、ルイスさんが向かいのソファから手を伸ばして、爪を立てる手を優しく私の膝からおろした。
「…僕は友達を、この世界のヨコハマを、見殺しにはできない。その為に、戦い抜く覚悟を持っています___探偵社の皆がそうであるように」
その真っ直ぐな瞳は、誰を貫いていたのだろう。
私には知り得ない、何か。
其れでも…探偵社の人達には、間違いなく届いていた。
彼の心にある、”灯”が。
「…その依頼、承った」
流石に一大事として、社の長として出てきていた社長がそう云った瞬間、肩の力が抜けたような感覚が私を襲った。
それはルイスさんもボスも、同じようだった。
「はぁ…流石に緊張したね」
「でもルイスさんのお陰で探偵社の力が借りれることになったし、本当にありがとうございます…!」
「そう云ってもらえるなら嬉しいな」
わっとお姉ちゃんや敦くんを始めとしたみんなにも沢山の声を掛けられた。
やっぱり皆、優しい。
__この時点で、彼の様子がおかしいと気付けていた筈だった。
この時、気付いていれば、。
………ボスの「違和感」に。
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス! 3rd.ep_6.
Tenniel side.
「…それで、僕だけ呼び出して何の用かな?」
「その笑顔普通に怖ぇからやめろ」
喫茶うずまきのテーブル席。
向かい合わせて目の前に座るのは、ルイス・キャロル__他でもない、俺が呼び出した。
脳裏にチラリと泉桜月の「ボスまで私を無視してルイスさんを呼び出ししてー!」という叫びが浮かんだ。
かぶりを振って打ち消すと、目の前のルイスも同じ事を考えていたようで、苦笑いを浮かべている。
「…いいか、今から云う事は誰にも云うなよ。誰か…特に泉、に漏らしたら最悪...死人が出る」
突然にそう零すと、流石に驚いたのか目を見開いてから、それから一つ溜息を吐くと、まっすぐこちらを見据えた。
「わかった。聞くよ」
「…あまり深く追及されても今は答えられない。が、お前には云っておかないとダメだと思った」
「それで、僕意外に聞かれて困ること、って?」
「…俺は一番最初のあいつらとの通話の内容で、隠していることがある」
ずっと、悩んでいたこと。
頭の中にモヤモヤを残したまま消えなかったものの正体。
「彼奴等に、”テニエル、泉桜月を殺して、もしくは気絶させて、ルイス・キャロルを生きたまま連れて戻ってきて、”と云われた」
「いや待って、流石にそんなことしないよね?」
「わかってる。でもそれが__”そしたら、「ヨコハマを手に入れる」ための計画の実行を少し遅らせることを考えてあげる”と、そう云われたら...如何する?」
苦い顔をするルイス。
思いきり顔を顰めている。
「君の兄弟、ホントいい性格してるね」
「全くだ」
「その提案に乗らずにヨコハマに何かあったら泉も…お前も、俺も、間違いなく後から自分自身を責める事になる」
「おまけに彼らは、あくまで”考える”だけであって、本当にそうしてくれるとは限らない、か」
目の前で唸り声を上げながら頭を抱える姿を見ながら、用意していた言葉を口にする。
「…今云った事は、全く知らないふりをしてほしい。それで__俺はあいつらの言う通りに指示に従ったふりをして、お前と泉を連れてアイツらの居場所に行く」
「いや、でもそれだったら桜月ちゃんにも云ったほうがいいんじゃないかな」
「…行った後、何のために|そんな状態《死または気絶》であいつを連れて行かせたのかが分からない...それに、フランシスは相手の考えていることが読み取れる」
面白い事にこれは異能ではなく自身の勉学の賜物だと、そう告げるとさらに驚いたようだった。
「…そう云えば精神分野に通じていると云っていたね、」
泉はまだこういう社会に来てから若い。
故に、考えを完全に心の奥に閉ざすことは出来ていない。
「だから桜月ちゃんには云ったらダメ、か」
「それと、ここから戻ったら会話の途中でさり気無く俺に対して糾弾してほしい。喧嘩を装って探偵社の奴らには仲間割れだと誤魔化す...俺がずっと不自然だとかそんな事でいい」
「わかった、」
「それとさっきも云った通り、これから一度裏切るような行為に及ぶ。
…ルイス、お前に証言を頼む」
「…勿論だよ、安心して」
「…ありがとな」
ほっ、とする胸中に反して、出た感謝の言葉はそっけなかった。
...今回の件が終わったら、もっとちゃんとした感謝の言葉を、伝えたい__。
そう思っていた。
---
Satsuki side.
「っ社長、それで依頼額はどのくらいに」
「待って桜月ちゃん、僕も払うよ」
そう申し出てくれたルイスさんにきっぱりと断る。
なんだかこれはこれで申し訳ない気もするけれど、
「…今回の件は私達の所為で起こった事ですから。それに...前にクレープを買ってもらったので!」
「え、いや、額が全然違うと思うんだけど」
「此処は泉に払わせとけって、ルイス・キャロル。それに抑々此処、別世界だし」
その言葉に、あ、と声を零すルイスさん。
やっぱり世界が違うってあんまりその、感覚としてはそんなに変わりはしないから、お金を普通に持ってきているように感じるけれど__
実際はお財布が無い事に気付くことから始まる。
「と言う訳で私がお支払いします」
「…否、その事だが」
来賓用ソファで向かい合って話している社長と私達。
探偵社員は興味津々といった様子で社長の後ろからひょっこりと顔をのぞかせている。
「緊急案件が故、後払いで善い__ポートマフィアとは云え、...孫......信頼は置ける」
「…っ…!ありがとうおじいちゃん!おじいちゃん大好きっ」
ぎゅう、とテーブルから体を乗り出して社長に抱き着く私。
「社長ってさー、孫設定の二人に甘いよね」
と乱歩さん。
「仕方ないんじゃないかねェ。あの子が大切な存在なのは妾達も同じさ」
と与謝野先生。
「でも桜月ちゃんと社長ってあんまり似ていないような...」
と敦くん。確かにそれはそう思う。
「ふっふっふ、敦くん分かってないねぇ、社長のちょーっとほころんだ顔と桜月ちゃんの微笑み方、姉の鏡花ちゃんと同じなんだよ」
と太宰さん。決め顔で言う台詞ではない。絶対。
「えっ、そうなんですか!?」
「敦まさか気付いてなかったのか⁉」
驚いて眼鏡がズレ落ちた国木田さん。
探偵社、やっぱり平和だなぁ…
それでも、刻一刻と、迫っている時間。
あの人達が次に取る行動は大体予想がつく。
「乱歩さん、与謝野先生、社長…それと事務員さん達は、探偵社で作戦の指示役、その補助、そして乱歩さんや事務員さんの護衛を...、」
「そうだね、奴らのことだから何をするか分からない。指示役の人達も勿論、探偵社をも護らないといけないから…谷崎君あたりもここの守りに徹した方がいいと思うな……事務員の人達の為にも」
「うん、僕もそれでいいと思う」
あいすくりんを食べながら頷く乱歩さん。
思い出すのは組合とのこと。
事務員を人質にとろうとする彼ら二人の…伸びる葡萄の木と、得体の知れない人外の触手。
あの時は…谷崎さんと国木田さんのお陰で助かった。
それでも__同じ轍は踏まない。
ひぐっちゃんが言っていたように、私もそれを実行する。
「慥かにそうですね…、じゃあ外部で行動するのは太宰さん、敦くん、賢治くん、国木田さん、そして私たち依頼者三人、で...。」
「でも…僕達、だけで...今回、桜月ちゃん達の味方のポートマフィアはいないんですか、?」
敦くんの疑問も尤も。
幾ら乱歩さんに説明を受けたとはいえ、俄に信じがたいと思う。
「…私は味方だったはずのポートマフィアに追われて逃げ出して来たし、中也も首領も......私は皆がおかしいのは敵方の精神錯乱、操作系の異能だと思ってるから、多分もう味方はいないと思う」
「じゃあ余計僕達が頑張らなくちゃ」
そう意気込むルイスさん。
私の世界のヨコハマの為だけに、こんなに危険なことに協力してくれるんだ、。
分かっていた事だけど、やっぱり胸にはじわりと暖かいものが広がる。
「この唐変木が同伴して大丈夫なのか?」
「えぇ、酷いなぁ国木田君、私も武装探偵社員の身、やる時はやぐへッ」
「黙れ!!ふらふらとほっつきまわり、ご婦人を難破してまわり、川があれば入水し、俺の手帳の計画を乱し、それの何処が理想的な武装探偵社員たる姿なのだ!!」
一息で言い切った国木田さん。
すごい。
「国木田君...!私、理想的な武装探偵社員とか云ってないけど」
「ぬわぁああああああああああああ!!!!」
「まぁまぁ、太宰君も頭脳派だし、まぁ僕達と探偵社員のこの四人で大丈夫だと思うけど」
首を捻り捻りルイスさんは云う。
にわかに心配そうに目を細めていた。
「…待て、__俺は今回の件...泉とルイスが関わるのは反対だ、」
ボスに唐突にそう云われて一瞬何を云われたのか分からなかった。
え、ルイスさんの名前いつの間に呼び捨てに、っていうか突然当事者が何を云い出すのか。
私たち以外でどうやって動くというんだろう。
「ボス、流石に其れは私達が無責任になっちゃうし」
「一応理由を聞いてもいい?」
尋ねたのはルイスさん。
その顔も私と同じく理解ができないという疑問の表情、そして、若干の…怒り、?
「…未だ云えない」
少し俯き気味にそう云ったボスは、気まずそうで、何処か後ろめたそうな顔をしていた。
「…ねぇテニエル、この間とは立場が逆転したね___」
--- 「君は何を隠している?」 ---
微笑みがすべて消えた。
真剣で、冷酷にすら見える表情で、ボスの瞳を貫く。
「不自然だと思ってたんだ、君の体調や突然の睡眠...不自然にも程があるけれど、何か後ろめたい事があるならもっと綺麗に隠すと思った」
「…ルイスさん、」
名前を呼んでも、ルイスさんの瞳はボスから動かない。
当のボスと云えば、しきりに何かを考えている。
何かをずっと気にして、頭に据えている様だった。
...不自然。
たしかに、ルイスさんの言う通り、ボスはずっと、不自然だった。
「…少し、出る」
「僕も少し頭を冷やしてくるよ」
二人が相次いで外に出て行った。
「っす、すみません!失礼します」
「桜月ちゃん、待つンだ__!」
「あの二人はすぐ戻ってくると思うけれどねェ」
「この状況で出歩くのは危険ですわ…!」
困惑し、私を引き留めようとする探偵社の人達に一度ぺこりと頭を下げてから、二人の後を追って建物の外へと走った。
それは突然のことだった。
二人を見失って、近くの通りを見て回ろうと思って、路地裏を覗き込む。
その瞬間、すとん、と軽く、そして重い衝撃が首に走って___視界がブラックアウトした。
英国出身の迷い犬×文豪ストレイドッグス!!3rd.ep_7
Tenniel side.
探偵社の建物から出て、少し歩く。
適当なビル群の間に入り、少し離れたところを別人のふりをして歩くルイス・キャロルを視認する。
泉は近くにはいない、か。
少し考えて、小さく手招きをする。
「…もういい」
よく見ないと分からないほどの大きさで、口を動かす。
すぐに気が付いたようで、周囲を気にしながらも小走りで駆け寄ってきた。
「…これ、大丈夫なの?」
「ああ、...一応俺にも打算はある、だが今はまず...泉を気絶した状態にすること、それを達成しないことには話が始まらない」
勿論気は進まない。
でも駄々を捏ねてはいられない。
「俺がやる」
「いや、僕が」
「俺がやる」
「ダメ、僕がやる」
...優しい此奴のことだから、人にその役目をさせようとしないことは判っていた。
それでも。
これは俺の所為で起こったこと。
自分の後始末を他の奴にさせる訳にはいかない。
それに、何となく。
向こうの人間関係をずっと見てきて、偶に穴を通って見てきて、何となく気が付いていた。
過去に何かあったこと。
だから、何と云おうとこの汚れ役だけは、喩えあの時の様に後から泉に罵られようが、何だろうが、
「…俺がやる」
もしそれでも引かないと云うなら、"こんないい役を人に譲れるか"とでも云ってやろうかと思っていた。
「…わかったよ」
だから、この男が案外あっさり引いた事に、正直驚いた。
「何を考えてるんだよ」
「別にー?君だって色々隠し事してたわけなんだから、それを暴こうとする権利は君にないんだけれど...わかってるよね?」
__やっぱり此奴の方が一枚上手だった。
「…にしても、桜月ちゃんのことだからきっと探偵社を飛び出した僕たちを追いかけて来るだろうと思っていたけれど…見当たらないね」
「意外とのんびり探偵社で待っていたりしないのか」
「だって桜月ちゃんだよ?」
...其処まで信頼されているのか、泉。
「あとこの際だから聞くけど、何でさっき僕のこと下の名前で呼んだの?」
「は、......は!?よ、呼び捨てにしてなんかなッ、無い!」
「…呼び捨てとは云ってない…それに、証言者なら探偵社に複数人いるよ」
__やっぱり此奴の方が一枚どころか数枚上手だった。
「だ、誰をどう呼べばいいのかわかんないんだよ!!」
「意外と理由が可愛かったね」
「うるさい!!」
わあぎゃあと二人で小声でやり取りしながら歩くも、互いに視線は自然と泉に近い身長の女性に向く。
...嫌な予感がどうしても拭い切れない。
探偵社から歩いて来て、また探偵社方向へとゆっくり歩く。
...探偵社の奴らに見つかったら色々面倒な事になりそうだとも思って。
「歩いてきた中ではここが最後のビルの列と路地裏、だ」
「…この世界も土地的には僕と同じ立地だし、此処は粗直線道路」
つまり、とその先の言葉は、俺と此奴の声が綺麗に被った。
--- 『|泉《桜月ちゃん》が消えた』 ---
---
Satsuki side.
あー、と声を出してみる。
誰も来ない。
うーん、と考え込む素振りをしてみる。
誰も来ない。
ガチャガチャ、と手錠を外そうと暴れるような動きをしてみる。
後ろ手に手錠で固定されていはするけど、ただ椅子に座っているだけ。
…足が椅子の脚に縛られているのも桜で簡単に抜けられそうだった。
ここまでバタバタと暴れてみる。
「誰も来ない…!?」
此処は何処なのか、何があったのか、何も分からない。
「…誰もいないなら、脱出していいよね…?」
態と声に出してみる。
運が良いことに、この手錠は異能迄防ぐことはできないようだった。
「あのー……覗き見なんて趣味が悪くないですか?」
「あれ、バレていたんだ…まぁ、気配を気取ることができるのは流石ポートマフィアの幹部、と云ったところかな」
「…ジョージ」
目の前で不敵に微笑んでいるその男。
初めて見たはずだけれど、ボスと矢張り血が繋がっているからなのか、変な見覚えだけがあった。
ボスと似た、橙に近い瞳の色。
けれど、その雰囲気はボスとは全く似通わない。
「…それで、如何云う心算ですか」
「おー怖い怖い、そんなに睨まないでおくれよ」
大げさなジェスチャーをして見せて、それから溜息を吐くジョージ。
…今此処にいるのは彼一人。
けれど下手に動いて刺激したくはないから、取り敢えず話せるだけ話してみることにした。
「…っとにかくチョーカー、返してください」
「あぁ、ごめん、あの路地裏に置いて来てしまったね…」
「…、え、っ…」
あれは中也がくれた、唯一無二のチョーカーなのに。
お揃いの、この世に二つだけの、しるし、
「何を、云って、っ」
「まぁ別に、彼ら二人が回収してくれているだろうから大丈夫さ」
「そういう問題じゃない...!」
「そうかっかしない!冷静に考えてもご覧よ、別に木っ端みじんになった訳じゃあないんだから」
「っ…き、らい…」
「そっかー、うんうん、そうだよね__そうだ、余興にクイズでもしよう!僕達はどうやって君を此処に連れて来たと思う?」
知人に似たようなノリに既視感を覚えるも、怒りを抑えて乗ってみる。
…許されるなら、今すぐにでも此奴を切り刻んでやりたい。
「私を此処に拉致した手口は何となく予想できます。ジョージ…貴方の異能と、四方の内の何方かの異能である、仲間内の異能を発動させることができると云う物を応用した、ですよね?」
「うん、大方そんな感じかな…僕の異能、【|不幸な選択遊び《Unhappy Choice Game》】で、君と僕に条件を課したんだ。前提条件は、僕達には未だ面識がないこと」
「初めて会った瞬間である、先程の路地裏のところで異能を発動したんですね、?」
「その通りさ、選択は…僕が君に気配を勘付かれずに近づくことができる…つまり君が僕に手刀を叩きこまれて失神するか、君が先に僕に気がつくか、その二択。あとはハリエットの異能で転移の異能を借り、君を連れてくる」
「…そんなの殆どジョージに傾いた条件じゃないですか」
「君に先に気付かれる可能性だってあったんだ、そこは僕も賭けだったけれど…」
--- 「その心配も無用だったみたいだね」 ---
…腹が立つ。
神経を逆撫でするようなその声が、口調が。
物云いが。
「…慥かに私の力不足もあるかもしれない、それでもっ」
「端的に云うよ、僕達は君を殺す心算だ」
突然の死刑宣告。
うん…別に、驚かない。
「…その位、私達も予測してた...ボスが遂げられなかった計画を、今度こそ成し遂げるために貴方達はこの横浜に来た」
「そうだよ、にしても…殺すと云われて怖くはない?」
「その手の死刑宣告は幾度も受け取ってるから」
「うーん、この国、思ったより物騒だったんだね」
「なら帰って出直してきたほうがいい、軟弱」
「毒舌?」
「それ弟に云ったら?」
あはははは、と双方から思ってもいないような乾いた笑いが漏れ出ている。
普通の人が見れば、顔が引き攣ると思う。
「…勘違いしている様だけど、ボスはもう毒には染まらない」
「毒?僕達は正当な兄弟さ、それを云うなら偽の光を見せる君たちが毒じゃないか」
「違う!本当に弟のことを想っているなら、ボスが計画を失敗した時に貴方達は助けに来た筈!それをしなかった貴方達が、ボスの思いを語らないでっ!」
ガタン、と目の前でジョージが傾く。
遅れてやって来た鈍い痛みに、椅子ごと倒れたのは私だったのかと認識した。
「…何も知らないのは君さ、花姫。__もういい。君は思ったよりも莫迦だったみたいだ…興冷めだよ」
「っまずは…私を…起こしてから…話しかけなさいよ…!!」
椅子ごと倒れた所為で、椅子の下敷きになっている右腕が痛い。
上から目線に拍車がかかったジョージの態度も腹が立つ。
「…フランシス」
「なんだ?」
部屋にある唯一の扉を開いて、さらっと入ってきたフランシス。
いや、ずっといたなら入ってきたらよかったよね。
そんなフランシスの姿はボスと似ている。けれど、髪の色は似ていても瞳の色は少し違っていた。
ジョージは瞳の色が同じで髪の色は少し違う。
「錯乱させておいて貰ってもいい?」
「ああ、わかった」
異能力_|小瓶の中の真実《Turtle soup》
…やっぱり、迷惑をかけてしまう。
心の中でルイスさんとボスに謝っていると、眩しい光で視界がいっぱいになった。
__そういえば、ハリエットとメアリーには会ってないな、ぁ…___。
---
Tenniel side.
嫌な予感も伊達では無かったな、何て考える間もない。
「…テニエル、これ」
しゃがみ込んでいたルイス・キャロルに何かを差し出されて反射で受け取った。
「…この、チョーカー、」
「…不自然な所で切られているから、争ってはいないだろうけれど...態とだろうね、此処にこれを残したのも」
何時も身に着けていた黒いチョーカー。
いつか、"中也に貰ったのーっ!"と嬉しそうに俺に話して聞かせたその顔が浮かんだ。
そんな大切なものを取られて壊されて、気が付かない程泉は莫迦じゃない。
「…既に、彼奴らに...捕まっている、ってことか?」
「…そう考えるのが、一番妥当だね」
全部読まれていた。
ただその一言だった。
...泉の生死が、不明。
目の前のルイス・キャロルの顔色も、何所と無く悪いように見える。
如何したらいいのか、考えるのは正直俺の頭脳だけじゃ既に限界だった。
「…どうす、る_____は、?」
「っテニエル、君まさか__!!」
"一筋の光"。
最後に見たのは、混乱と怒りの入り混じった視線が俺を貫いて。
その視線諸共、姿が穴に吸い込まれて行ったところだった。
「…っは、あ...!?」
数秒、ぽつんと一人、路地裏で呆然と立っていた。
「はああああ!!?」
数秒後、どうしたらいいのか分からずに、もう一度叫んだ。
何が起こったんだ、
今の異能、俺のだよな?
いやでも俺何もやってないんだが、
絶対最後のあの視線俺を疑っただろ、
ルイス・キャロルだけは敵に回したくない、
絶対無理...
---
Satsuki side.
「…ったぁ…」
揺さぶられるような感覚に、目を開いた。
と、視界にルイスさんが映る。
部屋は先程と変わっていないようで、すでにあの二人はいなかった。
「…えっ、ルイスさん?」
「うん、僕だよ」
「……えっ、ルイスさん!?」
「うん、僕だよ?」
「なんでですか!?」
「何が!?」
いや、だって...と首を傾げる。
私はさっき、慥かに錯乱の異能を掛けられた。
なのに、違和感はないしルイスさんも至って普通…ルイスさんが私を見ておかしいと感じるところもなさそうだし。
「…その、ルイスさん、何が…あったんですか?」
「…彼が、…うぅん、でも__」
何かに悩んでいる様で、幾度も首を傾げては頷いてを繰り返している。
「…うん、取り敢えず落ち着いて最後まで聞いてほしい__テニエルの異能で、多分桜月ちゃんが最後にいた場所、らしきところから此処に連れてこられたんだ」
「…えへへ、大丈夫ですよ、今回は仲間内で異能を発動させることができるハリエットがいるんですから」
「あ、その異能はハリエットだったんだね」
そうみたいです、と頷く。
「…桜月ちゃん、その姿勢しんどくない?」
「…右腕が痺れてます」
「うん、直ぐ解くから一寸待ってね」
数刻前だろうか、縛られた椅子ごと横倒しにされた状態から動いていなかった上についさっき目覚めたところで縄たちの存在すら忘れていた。
「……お手数をお掛けしてごめんなさい…」
「いやいや、大丈夫だよ…よし、これで動けるかな」
「はいっ…!それじゃあ、この部屋から早く出て…」
「いや、もう少し状況を見てからの方がいいと思う、外がどういう状況なのか、此処が何所なのかもわかっていないから」
「そ、れもそうですね…わかりましたっ」
---
Tenniel side.
何を考えていようが、周囲にその内容は予想できない。
路地裏を少し抜けたところでは、不審そうに此方を見る幾つかの人影があった。
...やっベ。
咄嗟に転移した先は武装探偵社の屋上。
運が良いことに其処には誰も__
「居なくはないよ」
「うわあああ!?ってお前か!!驚かせるなよ!?」
さっきから叫んでばかりの為か、そろそろ喉が死んできた。
「…その様子じゃ、乱歩さんの仰ったとおりになったみたいだね」
飄々とそう云ってのけるその人影__太宰を、俺は睨みつける。
その言葉。つまり。
「…何が起こるか、予測できていたのか」
「まあ、ね。此方には宇宙一の名探偵がいるから」
「それなのに忠告一つ寄越さなかったのか、不親切なものだな」
「そうかっかしないでくれ給えよ、テニエル君」
その様子に、態度に、何かが切れた。
「泉が消えた!生死すら不明!おまけに今度は目の前で…目の前で、!目の前でルイス・キャロルが...俺には、っ何もできずに...」
「でも君はわかっているだろう?」
「…何が、だ」
「自分が何をすべきか。何処に行くべきか…さ」
休憩しながら。
ポートマフィア本部の医務室で横になりながら。
探偵社で目を閉じながら。
「…その間もずっと、考えていた。今、その時どう動けばいいのか」
「なら其れに従う迄だ。それが君に出来る事なのだから」
じっ、と太宰を見つめて。
「…何故助言しに来た?」
「別に、ただの気まぐれだよ」
それが本心か、虚心か。それは、本人にしか分からない。
「…助かった」
もう一度太宰をチラリと見て、小さく呟いた。
そのまま、何も云わずにとある場所へ自らを転移した。
__横浜の、あの場所に。
うわぁぁめちゃくちゃ私情で遅くなってごめんなさい天泣さん!!
しかもコラボ、楽しすぎて調子に乗って約6000字書いてしまいました…
それでも楽しみと言ってくださるのはやっぱり神様ですよね(
というわけで。次回分を書いてきます。
いや早すぎだろと思ったそこのあなた。
楽しすぎて筆が乗るんです。
…うん。
誰得の話だこれ。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
英国出身の迷い犬×文豪ストレイドッグス!!3rd.ep_8
「…少し使いすぎたか」
穴の中で考え込む癖があるのは如何もよくない。
目にかかった、若干白くなっている髪をはらりと払いながら目の前を睨みつけた。
「まぁ、此処だろうな」
---
「…ルイスさん」
「なんだい?」
「どうしてルイスさんが、態々縄を解いてくださったんですか?」
「どうして、って…当然のことだよ」
「ならもう一つ聞かせてください。図々しいかも知れないけれど…どうしてルイスさんの異能空間で待とう、ということにしないんですか?」
「それはさっき云った通り、外がどういう状況なのか、此処が何所なのかもわかっていないから、」
「ルイスさんならアリスさんに頼むことだって、それにもしもの事があったって対処する事だって、可能ですよね」
明らかに、核心をついた。
やっぱり。
このルイスさんは、フランシスの。
ルイスさんなら、私が桜で刻んだ方が速いと知っている。
…それを知らない、から。
そこに違和感を覚えて正解だった。
「未だフランシスの異能がかけ続けられていたなんて、思いもしなかった」
目の前のルイスさんを、じっと見据えて。
「貴方は、偽物ですよね?」
はっきりとそう問いかける。
答えを返す事もなく、静かに一瞬で消えてしまった。
ああ、やっぱり。
「偽物だった...ってことは、フランシスの異能の解除条件は、”偽物”だと見抜くこと、?」
一瞬、思案する為に立ち止まりかけた。
…うぅん、今は、止まれない。
とにかく、進まなきゃ。
「__異能力...四季 桜__!!」
キィィン、と私の周囲が光を発すのと、扉が木っ端みじんに刻まれるのは同時のことだった。
---
Tenniel side.
「…で、如何云う心算だ」
--- 「フランシス」 ---
「…テニエル。きっと此処に来ると思っていた」
「当り前だろ、此処は…此処が、この場所なんだから」
「ま、此処に来たってことはそう云うことだろ__早く行こう」
差し出されたその手を、少し見つめる。
この手を取れば、また此奴らと...兄弟に戻ることができるのだろう。
莫迦みたいに笑って、それで、もう一度__彼奴に、。
「…どうした?テニエル、早く行こう」
「ああ、わかってる、けど…」
どうしても、その手を取るのを躊躇ってしまう自分がいた。
ルイス・キャロルの、あの最後の視線に、どうしても後ろ髪をひかれるように。
黙って此奴らに着いて行けば、泉はルイス・キャロルと孰れ闘い、そして泉が死ぬ。
でないと、計画は完遂されないからだ。
そして、それを止められるのも__
「俺、だけ...」
「…テニエル?__ぁ…泉に異能を破られた、他の奴らに伝えに急ぐ…ほら、テニエル早く」
…泉が異能を破った?
つまりフランシスは異能を掛け続けているところだった、。
でも、今此処で戦闘になるのは良策ではない。
…今は黙って着いて行く。
「何でもない、行こう」
そう云うと、フランシスの顔が綻んだ。
頷いて俺の手をしっかり握りながら歩き出すその兄の背に、少し後ろめたさを感じる。
…どちらか、なんて___選べない、如何しても選べないんだよ…。
俺は…如何したらいい、?
---
あちらこちらの扉を開いては閉じて。
偶に鍵がかかっていると、桜で刻んだり氷で凍らせてから旋風で吹き飛ばしたり。
「…広い、」
でも、何所かしらに必ず居るはず。
時折轟音が聞こえる。
耳を澄ますと、どうやらそれ程離れてはいないようだった。
アイツらとばったり出会ってしまってもいい。
きっと、フランシスが”ルイスさんが自分と同じ場所に来た”という幻影、というか記憶を見せた時点で、ルイスさんもこの建物の何処かしらにはいるのだろう。
なら、私は彼らを探し、見つけ、そして倒すだけ。
私が死ぬのはいい。
でも。
「ルイスさんを…ボスを苦しめたのだけは、どうしても許せない」
鬼さん此方、|鈴《音》のなる方へ。
「一刻も早くジョージ達を見つけ出さなくちゃ...」
また一つ、轟音が建物に響く。
「…もしかして、ルイスさんとジョージ達が交戦中、?…っ早く見つけなきゃ...」
早く。早く。早く。
--- 「見つけた___っ!!」 ---
焔龍がその吐息で扉を吹き飛ばすのと、中にいた彼らと目が合うのは殆ど同時だった。
「ルイスさん…っ!!」
「っ桜月ちゃん⁉無事でよかった…君が無事で、本当に…」
流石、と云うか。
ジョージやハリエット、メアリーもところどころ怪我はしているものの、普通に今の今まで異能力を展開して武器を構えていたらしい。
その状況で、ルイスさんは少し息が上がっているだけで殆ど傷が見当たらない。
…流石、?
あんなに、あんなに恐ろしいと云われたジョージと、その仲間も一緒に戦っていて、?
「…はは、やっぱりフランシスの異能は破られたね、腐ってもポートマフィアだ」
「もうっ、早くテニエルに会いたいのに…ねぇハリエット、もう計画より時間が伸びてるような気がするわ」
「ほら落ち着きなさい、もう少しなんだから…これで次の段階に入れるでしょう?」
…そっか、この人たちはルイスさんと私を戦わせ、まずは私を殺す事が目的。
そんなルイスさんに怪我を負わせるなんてできないか、。
突然現れた私に流石に虚を突かれたらしく、わぁわぁとテニエルに会いたいと繰り返すメアリー。
そんな妹をなだめつつジョージと目くばせをしあっているハリエット。
顎に手を当て、何かを考えているジョージ。
そして未だ剣を構えたままの__ルイスさんその剣重くないのかな__戦闘態勢は崩さないルイスさん。
勿論私も焔龍は呼んだまま。
謎の五角形の静止の均衡が出来上がった一室に、二つの足音が近づいて来ていた。
「っおい、泉に異能力が破られ__」
「フランシス!」
「テニエルーっ」
「ぐぇ」
…勢いよく顔を上げてフランシスの名前を呼んだジョージ。
フランシスと共に部屋に入ってきた...ボス。
そしてそんなボスに勢い良く飛びつくメアリー。
「…そういえば、なんですけど」
ごたごたに乗じてルイスさんの隣迄行った。
「…気になってることがあって」
「奇遇だね、僕もだよ」
「…ルイスさんの気になること、って…?」
「…名前と苗字と呼称について、。同じかな?」
「は、はい…テニエル、って…苗字じゃないですか」
『どうして兄妹の間柄なのに、なぜジョン・テニエルだけ苗字で呼ばれているのか』
「…ふと、気が付きました」
「僕も序盤のテニエルに電話がかかって来た時から気になっていたかなぁ」
よかった。私の認識がおかしいのかと思った。
でも其処で安堵を覚えるのは違う。
この理由、を知りたい。知らなきゃ。
此処に、何か大切な__それもとてつもなく__ものが隠されているような気がする。
谷崎さんとナオミの姿に若干重なるような、仲睦まじい、というかメアリーがめちゃくちゃハートを飛ばしているような様子のボスとメアリー。
ハリエットとジョージ、そしてフランシスは何かを話し合っている。
「君達は僕らを戦わせ、殺し合わせようと目論んでいる、だよね。…その先に、何を見ている?」
直球に聞いたルイスさん。
此処で回りくどい云い方をするのは確かに得策ではない。メアリーが不機嫌になりそうだし。
折角の兄妹の再会を邪魔しないでよー的な。
「さあ、ね。僕達はただ僕達兄妹が幸せに居られる方法を探しているだけさ」
「その為なら犠牲を厭わない、とでも云うのかな」
「当然だろう、情も湧かない者の犠牲を如何して顧みなければならない?」
「…大切な者の、自らの幸せを願うことの何が悪いのかしら」
「その兄妹を縛り付けておいて、何を云ってるの…っ」
--- 「縛り付けてなんか、ないわ」 ---
ジョージと、フランシスと、ハリエット。
この三人を場外に押しやるかのように、メアリーの艶やかな、それでいて末子らしいあどけなさに似たような声が全員を凍りつかせた。
ボスに未だに抱き着いたまま、綺麗な微笑を浮かべて。
「私達は、あの子と再会したいと願っているだけ…テニエルだって、同じだもの。同じ願いを持っているのに、何故縛り付けていることになるの?」
「おい、メアリー…!」
「メアリー、それ以上云っては駄目よ」
明らかに何か焦っている兄妹を横目に、ルイスさんは静かに口を開いた。
「…なら、先ず答えてくれ。君達は何故、テニエルを"ジョン"と呼ばず、"テニエル"と...そう呼ぶ?」
誰かがはっと息を呑んだ、ような音がした。
「ねぇ、もういいでしょ?」
メアリーが、そっとそう尋ねる。
「ねえ」
駄々を捏ねる、幼い妹。
そんな雰囲気がぴったりな、メアリーの声色。
「…”あの子”のこと…もう、云っていいでしょ?」
ハリエットが唇を噛みながら、そっとメアリーの頭を撫でた。
ジョージもフランシスも、何も云わない。
「私達ね、もう一回あの子に会いたいの」
「皆、それだけ。あの子に会いたいだけで、それだけなの」
「…それに、許せない」
「あの子を奪ったこの横浜にのうのうと生きる人全員が、許せない__許せない…!!」
とてもあの先程迄駄々を捏ねていたようなメアリーと同一人物に思えない、その雰囲気。
「あの子はね、ジョンのこと…ずっとふざけて、"テニエル"って云ってた」
「だから如何しても、それを離れたくなかった…なかったことにするみたいで、嫌だった」
「あの子が戻って来るまで__私、私達、テニエル以外の名前で呼ぶなんて、できなかった」
…そういえば。
初めてルイスさんに会ったときのボス。
あの時のボス。
"世界を超えた繋がりだから、特異点になり得る私の招猫に対策を討てる"。
…莫迦みたいにテンションの高かったボスも、そういうことだったんだ。
「…あの時、ボスはもう少しで”その子”に会えると…?」
「…そうだよ。ずっと、この機会を狙ってた...これが、俺達の異能を全部活用して、それでようやく辿り着けた唯一の|機会《チャンス》だった」
「なら、テニエルは初めから僕達のことはただ利用していただけだった__そう云うこと?」
普段の彼からは想像もつかないような...いや、最後に逢ったときの。探偵社で口論していたときの、恐ろしい程に冷たいルイスさんの声。
ボスを見遣ると、目を見開いて口を震わせていた。
ここで詰めなきゃ。
…たとえ、ボスが其方に行ってしまうとしても。
「…そんな、心算は…」
「なら君はどっちの味方だったのかな」
はっきり、させなくちゃ。
「もしも僕と君達兄弟が争う中に君が放り込まれたら、君はどちらの味方をしていた?」
メアリーがボスを抱きしめる力が強まった、気がした。
「僕達側につく…当然だろう、テニエルは僕達の兄弟なんだから」
「そうよハリエット、もうこの人たち早く殺してしまいましょうよっ、テニエルにずっと可笑しなことを吹き込んで…漸くあの子に会えるっていうのに、私、嫌な気分だわ」
「ええ、メアリー、私もそう思う。でも…花姫を手に掛けれるのは私達じゃない。__戦神よ…その後に戦神を皆で倒すの。踏み違えれば、計画が狂ってしまう」
ルイスさんの表情が歪む。
その名前。前にボスも云っていた。
「…そうか、前に云っていたね…テニエル、君は僕の世界で、僕の過去もちらりと知っていると」
えっ、そうなんだ。
私が此処に連れてこられた後の話だろうか。
「ああ。俺は色々な世界をこの異能で見てきた。初めはただ異能を使いこなそうと数を見て来ただけだった、けれどいつの間にかその目的は、…凡ては、…凡ては」
--- 『…もう一度、イライザに逢うため』 ---
「…それだけになっていた」
イライザ。それが、"その子"の名前。
だけれど…
「イライザの身には、何があったの?」
思わず、そう聞いてしまった。
…ジョージが表情を失ったのが目に入る。
「…死んだ」
あくまで静かに。
それはまるで、優しい春の光のような。
静かに降り積もる、柔い雪の様な。
聞く人に全く以て何も感じさせないような、言葉の告げ方だった。
「…この、横浜で?」
「…そうよ、数年前の抗争に巻き込まれて」
「それ、もしかして、」
「きっとマフィアに籍を置いた経験のある貴方達二人なら知っているでしょう」
それは、龍頭抗争?それとも、ミミックとの...?はたまた、もっと前のあの...
羊と高瀬會、そしてゲルハルト・セキユリテヰ・サアビスの…4つの組織が絡んだ、あの時のこと?
「…否、龍頭抗争、だね」
「流石は戦神、御名答。あの抗争のとき、僕達は横浜に来ていたんだ…此処には、すごく綺麗な景色を見られるところがあるって、そう聞いたからね」
「イライザはね、とっても夕日が好きだったのよ!」
ボスの腕から離れないまま嬉しそうにそう云うメアリー。
「だから、今度はあんなことにならないで、私達だけで誰にも邪魔されずに景色を見るの…またこの中の誰かが死ぬだなんて、考えたくもないもの」
ふるふると被を振りながらゾッとすると云いたげに顔を顰めていた。
「…わからない」
「何が?」
「…僕も、わからないね」
「何かおかしいことがあったかしら?」
「…結局貴方が何をしたいのか、全く分からない」
「君が何を望んでいるのかが分からない」
--- 『ねぇ、テニエル』 ---
いつの間にか、誰も武器を手にしていなかった。
苦し気な呼吸の音と、誰かの今にも泣きそうな、そんな声。
それだけが、耳に音として飛び込んでくる。
ルイスさんと全く同じに被った自分の声は、やけに上擦っていたように聞こえた。
えもうなんでこんな悲しくしたの私!?
いや展開早くしたのはですねちゃんと理由があって!!
めちゃくちゃやりたい事があるんです。
コラボならではのちょっと…うん。
やってみたいことを見つけたので。
そして天泣さんの方ではルイスさん視点...冒頭の合流前のシーンを見ることもできちゃいます!
ぜひぜひご覧ください!
英国出身の迷い犬×文豪ストレイドッグス!!3rd.ep_9
「…君は莫迦だよ」
「は、ぁ…?」
「大莫迦だ」
何処か聞き覚えのあるようなフレーズが聞こえて、顔を見上げる。
…ルイスさん。
「君だって、本当は何が正しいのか分かっているだろう?僕達の信じたジョン・テニエルなら…もう、気付いている、違う?」
「正しさ、なんて…っ俺は…!」
揺らぐようなボスの瞳に、思わず叫んだ。
「っボス!自分がしていることを理解していないとは云わない!でも、私達はボスに何を差し出した!?ボスは私達に何をくれたと思う!?それを...ちゃんとよく考えてよ…!!」
最後の方は声が裏返ってしまいそうだった。
気を抜けば、数日前の様に涙が溢れてしまいそうで。
必死に刃を食いしばって、もう一度ボスの方を見た_
「違う!テニエルは、テニエルは私達とまたあの子と再会して、それから私達とまた平和に暮らすのよ!貴方達みたいな人達にはわからないでしょう!」
…私と同じように叫んだハリエットのその声が、いやに胸にずきりと響いた。
ボスから聞いているはずなのに。
私は知らない、ルイスさんの過去を。
きっと、ルイスさんだってたくさん辛いことを経験してきている。
それこそ、この兄弟姉妹と同じように。
私に想像のつかないくらいのことを経験してきているであろうルイスさん。
そんなルイスさんに_
___ ハ リ エ ッ ト は 何 を 云 っ て い る ?
「…もういい…メアリー、ハリエット、もういいよ…早く終わらせよう」
静かなジョージの声にハッとする。
…ふと気が付いた。
彼らはどうやって私とルイスさんを戦わせようとして___
--- 『小瓶の中の真実』 ---
Turtle soup、と呟いたフランシスを最後に、突然景色がガラリと変わった。
---
Tenniel side.
ぱたりと倒れた二人を横目に見ながら痺れてきた右手を動かそうとする。
ずっとメアリーに抱き着かれている状態だからか、流石にじんじんと痛くなってきた。
「…メアリー、そろそろ離せ」
「あっ、ごめんなさい!やっとテニエルに逢えたから嬉しくって、つい♡」
溜息を吐きながらも、依然と寸分変わらない妹の姿に苦笑した。
「で、もうこの二人が今気を失っている間に殺してしまえばいい話ではないのかしら」
「それほど単純ではないんだよ、最初に"彼女"を生き返らせるための選択を課したのを覚えているだろう?あの時から戦神を呼ぶ事は決まっていたし、花姫をそこで消すことも決まっていた。」
「変えれば選択を失敗した事になって計画が凡て崩れる、ねぇ…」
「面倒だけれどそこは変えてはいけないのね」
「当然だろう、まぁ…まずこの二人が記憶から抜け出せるかどうか…其処がまず定かではないからな」
ははは、と部屋に笑い声が響いているというのに。
今までと同じ笑い声なのに。
俺は、心の底から笑えなかった。
---
「…どうかした?」
「…えっ、お姉ちゃん、」
「ほら、早く行こ」
「…」
--- 『うん…行こっ!』 ---
お母さんも、お父さんも、にこにこと笑んでいる。
庭でお揃いの着物を着乍ら毬をついていると、ちりんと鈴のような音が鳴った。
…気の所為だろうか。
「お姉ちゃん、今…鈴みたいな音が」
「…耳鳴り?」
「違う、ほんとに音が…気の所為かな、っ」
「きっと…気の所為、」
そうだよね、だってそんな音が聞こえるはずがないもの。
"ああ、これはきっとフランシスの異能だ"
「それでね、っそれからね、!...」
「ふふ、それは楽しそう」
「二人で一緒に毬をついて…」
「本当に二人は仲がいいなぁ」
楽しい。
隣で笑っているお姉ちゃんも、お母さんもお父さんも、幸せそう。
みんなでこうしていられるのが、何よりの幸せ。
"違う、これは嘘、毬で遊んでいたときにお父さんもお母さんも死んだ、のに"
「えへへ、楽しみだねっ」
「私も待ち遠しい」
「もう明日のことを考えているのかい?」
「うん!」
「明日も沢山遊ぶの」
「それは素敵ねぇ」
お母さんが優しく頭を撫でる。
お姉ちゃんと目配せし合いながらくすくすと笑った。
この暖かい手が、私は大好き。
"実際は明日なんて来なかった…私達家族に、幸せな明日なんて、来なかった、のに"
--- 「お姉ちゃん、また明日ね!」 ---
--- 「また明日…おやすみなさい」 ---
"平和に、一日が終わった…?"
と云うか、私は何、?
あそこですやすやと眠っているのは過去の私?
ちがう、騙されない、これはフランシスの…っ
でも、この世界の私は幸せそう、。
私とは違って、”明日”が存在した、
…そう云えば何故、異能だと見破ったのに此処から出られないの…?
もしかしてジョージの選択が課されて…。
そう、だとしたら__
--- 最悪だ、。 ---
「おはよう」
「おはようございますっ」
くぁ、と小さく欠伸するお姉ちゃんを横目に、私ものびをした。
…今起きたばかりなのに、何か大切なものを忘れている気がする、。
__きっと気のせい、だ…
「ああっ!」
「どうしたの?」
「お姉ちゃん、今日…」
"何が起きてるの…?"
"突然、視界が暗くなってる、…"
ぐるぐると渦を巻く視界にぐらりと体が揺れた。
『…鏡花』
「お母さん、お父さん…!」
「髪を結ってあげるから、いらっしゃい」
「うん…!」
こくり、と頷く__”一人”の少女。
これ、お姉ちゃん、
先ほど見ていたのとまったく同じ、なのに、
私だけが存在していない、
つまり、私がいなかった本来の世界、
『お姉ちゃん...』
「それで…それから…」
「鏡花は本当に聡いなぁ」
「ええ、本当に…!」
『お父さん、お母さん、』
「今日もきっと素敵な日になるよ」
「夕餉は鏡花の好きな湯豆腐のお店に行きましょう」
『…わたし、がいなければ、お姉ちゃんは…』
『__11歳の頃まで、お父さんとお母さんと一緒にいられた』
『二年間との辻褄が合う、…っお姉ちゃん...ごめんなさい...っ本当に、ごめん、なさ...ッ』
幸せそうに見えた笑顔は、見れば見るほど恐ろしく感じるようになって。
まるでお前がいなければこれだけ幸せを噛みしめていられたのにと云われているように感じて。
『い、や...助けて、やだ、ッ...ごめ、なさぁっ…謝る、から許して…っいや、ぁ…』
もういっそのこと、自分の手で消えてしまえば。
私の嗚咽も、涙も、彼らには届かない。
幸せそうに笑っているお母さんとお父さんと、今よりも幼い…三年前のお姉ちゃん。
その横で、三年後の私に小刀を向ける。
...にゃあ、と小さな猫の声が聞こえた。
その声にハッと正気に戻る。
違う、これはフランシスの見せた幻覚…私が此処で今死んでも、もうない命は戻らない…!
「…ありがとう、招き猫ちゃん」
「みゃぁ」
でも、異能の解除条件は結局___うぅん、待って、
「フランシスは、わかってる…私が絶対に成し得ないこと」
私自身は触れられなくても
「奇獣達ならば、異能の中で異能を発生させる特異点の彼らならば」
...私の大切な人たちを、殺す事は可能。
「私にそんなことはできないと知っている」
だから私より先にルイスさんが異能を解除して元の世界に戻ると踏んだ
「その間に、いとも簡単に私を殺す、そんな計画...?」
まるでそれは、
「…まるで...夜叉の代わりに、奇獣が両親を…殺すと、」
たしかにこの世界線では、この歳のお姉ちゃんはまだ両親を失わない、
「それを無理矢理私にさせる、つもり...?」
私の所為でまた、お姉ちゃんを不幸に陥れるの、?
...できない。
『できない、よぉ…っもう、やだ…』
泣き虫になっている自分が弱々しくて、被害者のような顔をしているのが腹立たしい。
......やらなきゃ、。
私のいる世界で、少しでもお姉ちゃんに贖罪をしていかなければならないから。
何より、ルイスさんがきっと。
「…待っていてくれているから」
くっ、と歯を食いしばった。
そうでもしなければ、できそうにもなかった。
「…奇獣」
--- 「白虎」 ---
せめて、一思いに眠らせて。
「…夜叉白雪__!!」
「っえ、どうして、」
「貴女は…誰か知らないけれど、敵襲なのは間違いないと思ってもいい?」
「っちが、どうして...私、見えて、」
「君は鏡花を…!僕が彼女の相手をする!」
「わかりました__」
目を見開いて此方を見ているお姉ちゃん__鏡花ちゃんを庇う様に抱きながら部屋を飛び出て行ったお母さん__。
「…急に出て来たみたいだから、何かの異能力者かな」
「…そう、っだけど、私…わたしは、!」
「先程の白虎も君の異能か」
「っ、そう…だよ、」
小刀と銃弾のぶつかり合う音。
...お父さんと、戦う事になるなんて。
「っフランシスは絶対...絶対、殺す...ッ」
「君が誰だか知らないけれど、僕達の過去の暗殺に恨みを持つ者には思えない、何が目的で襲撃をかけた?」
「…っ、もう、殺して…お願い、殺してよ…!」
発狂するように叫び泣く私に、途轍もない戸惑いを見せるお父さん。
違う、私は貴方達の生活を脅かしたかったわけじゃないの、
「お姉ちゃんにもう一度...会わなくちゃいけないから…だから貴方達を殺さなければならない!」
お父さんが持つ銃をはじいた瞬間、銃弾が私の手に喰い込んだ。…もう一つ持ってたんだ、
何とか小刀を持つ手を左に切り替えたけれど、時すでに遅し。
両手をしっかり掴まれて、身動きが取れない。
...力、強い。いつも肩車や高い高いをしてくれたお父さんは、やっぱり力が強かった。
「…君の姉について聞かせてほしい」
「、え…?どうして、」
「若しくは、君の名前」
...もしかして、気付かれてる?
「…」
「苗字は?」
「…っ云えない、」
「云わない選択肢はない」
「__桜月、。」
「苗字は」
ああ__やっぱり、この人は聡く、鋭い…。
「…泉、桜月」
「…そうか」
...なんで。
どうして。
「ッどうして、っなんで...!」
「…ほら、僕はもう武器を持っていない」
「なんで、ッお父さんは…貴方は、!二人を守らなきゃ、なのに...ッ」
判ってしまった。
どんな異能にも、抜け穴や弱点はある。
...この異能は___
__私の…
わたしの、
「想いに…捻じ曲げられた...想いが異能に押し勝った...」
目の前のお父さんは動かない。
両腕を広げて、微笑んで此方を見ている。
...なんて、残酷な異能。
「…ジョージと組み合わさったら、途轍もなくたちが悪い…」
お父さんは何も云わない。
ただ、此方を見ているだけ。
微笑んで、その腕を広げて。
「…おとうさ、っ…ごめ、なさいッ」
その中に、飛び込んで。
束の間の温かさを感じて。
「…ありがとう、一瞬の夢を__地獄を見せてくれて」
---
「…私は戻ってきました__それで、遺言は?」
英国出身の迷い犬×文豪ストレイドッグス!!3rd.ep_10
「…な、っ花姫が先に目覚めて、」
「……遺言を云わないならすぐにでも殺してあげる」
__それも、とびっっきり苦しいやり方で__!!
「こんな拷問より拷問じみたことをするんだから、それをし返される覚悟もありますよね__!?」
エミリーの真ん丸な目がさらに丸くなる。
ジョージがそんなエミリ-を庇う様に銃のセーフティを外した。
ハリエットがくっと唇を噛むと、両手に短刀を構えた。
フランシスはまだルイスさんに異能を掛け続けているのか、姿が見当たらない。
...ボスの姿、も。
「私達が眠っている間に拘束しておけばよかったのに」
「どうせ戦神も花姫も容易く抜け出してしまうわ、なら無駄手間を増やすのは得策じゃないと判断したのよ」
「ハリエット、もう私達で花姫を殺してしまいましょうよ、」
「エミリー、それはダメだよ…僕が異能で課した条件を達成できなければイライザが戻ってこれない!」
...どうやら、イライザが戻ってくるためのジョージの異能の条件が「ルイスさんが私を殺す」らしい。
「私はイライザが戻ってきて欲しくないわけじゃないし、貴方達兄弟の幸せを邪魔したいわけでもない、」
「ならそこを動かないで頂戴よ」
「ハリエット、私にそんな事はできない__貴方達はこの横浜を、私の仲間を害そうとしているのだから」
「でもそうしなければイライザが…!」
「エミリー、貴方達の失敗の原因はね、私達__ルイスさんと私の大切なものを、人を、場所を…」
--- 「標的にしてしまったこと」 ---
「…ですよね、ルイスさん」
「あれ、気付かれてたんだ」
「もうっ、起きてたなら早く云ってくださいよー!」
「ごめんね、君の台詞のいいところだったから邪魔しちゃうかなぁって」
まあ、そんなルイスさんが大好きだけど。
...これで、役者はもう揃う。
「っフランシス...!もっと僕の条件をきつくしておけばよかったね、すまない…僕のミスだ」
「いいや、お前の所為じゃない…俺がしくじったんだ、ジョージ」
集中するために別室にいたのか、部屋に戻ってきたフランシス。
そして、その横に無表情で立っているボス。
「…なあ、ジョージ」
「テニエル?」
「…俺さ」
ボスは、ふっと息を吐いて思いきり目を開いた。
その瞳の輝きに、途轍もなく胸が高まるのを感じる。
「やっぱお前らのやろうとしてる事は間違ってると思うんだわ」
「テニエル...!」
ルイスさんが目を見開いてその状況を見つめていた。
「私達を舐め腐った態度をとっている何処ぞの|外国《とつくに》の客人がいるのは此処かい?」
「探偵社の皆!」
「ボスが転移してくれたんだ…っ!」
希望と安堵に綻ぶ表情。
ルイスさんを見ると、同じように緊張が少し和らいだような表情で此方を見ていた。
「…っもぉ__!!折角イライザに逢えるからここまで来たのに!!どうしてこんなに邪魔されなくちゃならないの!?」
「君達は僕らを怒らせたんだ、…相応の返礼を受け取ってよ」
その言葉と同時に、また新たな人影が空から降ってきた。
「...え?」
「ちょ、テニエルやりすぎ!」
ルイスさんのその叫びの意味がわからず、首をひねった。
…刹那。
「よっ、久しぶりだな! 何か分からないけど穴に飛び込んでみたら、ルイスがいるなんて──」
幾つかの人影が空から降りてきた。
よく通るその声に、ルイスさんの表情は…
「どうもコナンさん変わりなさそうで何よりです。──じゃなくて、テニエル!? 君は莫迦なのか、いや莫迦だわやっぱりお前!!!」
「やりすぎぐらいが丁度いいだろ」
えっ、………えっ……………???
「えっと、ルイスさんのお知り合いですか……?」
「うん、僕達の大先輩だよ」
その聞き覚えのある声。
「その声──!」
「ひっさしぶり~! ねぇねぇ、桜月ちゃん元気にしてたぁ?」
|マッドハッター《アーサー》さんに|三月ウサギ《エマ》ちゃん…!!
なんとなくの推測だけれど………
大先輩、って………
英国の異能者の方々……!?
…はい、とてつもなく遅くなりました。
申し訳ございません……
まだ投稿ペースもどせないかもですがお許しくださいっ…
天泣さんの小説ではルイスさん視点で読むことができます!
ルイスさんアリスさんにとっては既知の方々が多くなるのでぜひぜひ!!
というか絶対読んでくださいね(
英国出身の迷ヰ犬×文豪ストレイドッグス!3rd.ep_11
「……よくわかんないけど、ルイスはこの人達のこと嫌いそうだから遊んでいいよねぇ♪」
「ちょっ、待っ、だから、引っ張っ」
エマちゃんに引っ張られるアーサーさんと、それを見てポカンとするテニエル兄弟姉妹の図の完成。
………いやいやいやいやいや
「ルイスさん説明Pleaseください!!」
「ごめん僕もちょっとよくわかんない」
「ルイスさぁぁぁん!!!」
混乱して発狂する私と色々考えてから疲れたようにため息をついたルイスさん。
探偵社はというと、持ち前のマイペースさを発揮して各々自由だった。
……………なんだこれ。
そんな私達の横でいつの間にか苦笑しているアリスさん。
「…あの……」
「どうしたのかしら?」
「お久しぶりです…?」
「一言目がそれなのね」
私はてっきり、といいかけてアリスさんはちらりと轟音の音源を見やった。
それに習って同じ方向を見ると、ルイスさんの先輩…?方がテニエル兄弟と戦っているところだった。
何あれ怖い。
ルイスさんの先輩方怖い。
赤髪の男性はちょっとはっきりとは見えないけれど、何かきらりきらりと光るものが周囲に舞っているし…
あれ、芥川みたいな人いる…じゃなくて。
というかそんなことを云っている暇もないほどにあっという間にテニエル兄弟が押されている。
ひええ、先輩方にエマちゃんもアーサーさんも怖い……
しかもよく聞いてみるとかなり物騒なことを云っている。
「…てっきりあっちを先に聞くと思ったわ」
「…なんか……ルイスさんもアリスさんも既に意味わからないくらい強いので……英国軍の方はみなさんそういうものなのかなって………」
「そんな化け物みたいな」
からりと笑うと、でも、と云いかけて祭囃子の方に向き直ったアリスさん。
「…でも、彼が気がついてくれて良かった」
何のことかは聞かなくても分かった。
…ボス。
「…本当、その通りです」
「けれど…この先どうするつもりなのかしら」
「この先?」
「…何があろうと血のつながった兄弟姉妹というものは他にない存在だもの」
「…たしかに、そうですね…」
私もきっと、お姉ちゃんとこんなふうになったら__それが間違っていることだったとしても、裏切れない。
何をしようとも、お姉ちゃんと一緒にいる…
そんな選択をしてしまうだろうから、ボスはすごい。
ボスは__ジョン・テニエルという人は、強い。
「…私が心配する幕、なかったなぁ」
独り言のようにそう呟く。
「私から、ひとつ聞いていいかしら?」
顎に手を当てながらアリスさんが私に問いかける。
「もちろんです_私にわかることなら、」
「貴女は__これから彼はどうすべきと思う?」
食い気味にそう尋ねた彼女は、初めてルイスさんと会った時の表情にそっくりだった。
---
「此処は…」
「ぽ、ポートマフィアの、、」
「成程、君は_?」
--- 「わ、私は泉桜月。貴方は、、?」 ---
--- 「ルイス。ルイス・キャロル。_26歳だ」 ---
---
ああ、懐かしい。
あれから、本当に色々なことがあって。
信じられないくらい、色々なことがあって…。
「…彼、っていうのは_ボスのことですよね」
「ええ…あくまで貴女の考えでいいから」
「__それは」
気がつくと、いつの間にか探偵社の人たちは異能を持たない一般兵や異能を持つ構成員と交戦している。
単体での強さではきっと探偵社側が圧勝なのだろうけれど、如何せん人数が多い。
「私は」
呻き声に混じって探偵社の皆の声が聞こえる。
どうやら重傷を負っている人はまだいないらしい。
「…ボスはきっと、完全に彼らから解放されることなんて、一生ないと思うんです」
「…ええ、そうね」
「それを引きずって、ぐだぐだとしてしまうくらいなら__ポートマフィアとして、これからも生き続けるべきだと、そう思います」
「…ふふ、桜月ちゃんならそう云うと思ったわ」
「半分くらいはもはや私の願いですけど…」
苦笑していると、与謝野先生が一人の男性を引きずって出てきた。
「コイツがポートマフィアに精神錯乱の異能をかけた張本人さ、煮るも焼くも好きにしな」
「ありがとうございます、与謝野せんせ__えっ!?」
「あら、彼って…」
半泣きでひぃひぃ云っているのは、確かに見覚えのある顔。
「…確か、こちらの世界のポートマフィアビルに入ろうとした時、中也くんが書類をばら撒いていたわよね」
「…その人です」
あの時情報漏洩だなんて思っていたけれど、真坂諜報員だったなんて。
「黒服さーん」
改め、
「…本名は?」
「いっ、云えない、云えないんだっ、うぅ…」
めちゃくちゃ泣いてるじゃん、この人。与謝野先生に何されたの一体。
いや、だいたい予想はつくけれど。
「…まぁ、自業自得ね」
「ですよね」
「けれど、何故あのポートマフィアが異能をかけられてしまったのか、もこれで謎が解けたわ」
「た、確かに…」
諜報員がいたということなら異能をかけられたことも合点がいくし、彼らの異能があればいくらでも方法があるだろう。
「…取り敢えずポートマフィアにかけた異能を解除して」
「で、できない…」
「えっ?」
呆気に取られた表情のアリスさんと目配せをする。
嫌な予感に頬には冷や汗が伝った。
「…なるほど、異能を解除するのにもジョージは条件をかけたのね」
「なっ!?な、なんでわかったんだっ」
「貴方が分かり易いのよ、それでよくマフィアに潜入できたわね」
「そっ、それは…幹部の異能で…」
「めっちゃ重要なこと話して大丈夫!?」
思わず突っ込んでしまったけれど。
呆気に取られるを超えてもはや呆れているアリスさん。
「とにかく、彼らには加勢も必要ないだろうから…私達は残党や周囲の一般兵たちを潰しましょう」
「分かりました!」
本当、怖い。
ルイスさんの先輩方、怖い。
そしてその中にいるエマちゃんやアーサーさんも怖い。
あんなに異様な強そうなテニエル兄弟を…
取り敢えず諜報員の人は奇獣に見張って置いてもらった。
「…大丈夫だとは思うけれど、気をつけてね」
「ありがとうございます、アリスさんも…!」
微笑みを交わしてゆっくりとすれ違って__そして、反対方向へ同時に飛び出していく。
やっぱり人数だけは多い。
今ならわかる。なぜこれほど大規模な組織が全く名も知れていなかった理由が。
目的が『これ』だったから。
彼らの異能の特性上、多くに知られて仕舞えば必ずあちらこちらから様々な目的で近づく輩が現れるだろう。
自分たちの邪魔をされないように消すため、自分達に協力してもらうために勧誘するため__。
それらは全てきっと邪魔だった。
だから初めから、何もかもに於いて隠密で動いた。
それが無名有実がすぎる彼らの存在を生み出したんだ。
まるで__まるで、何時かの亡霊のような、幽霊のような。
「…今から大切な話をするの、だから__邪魔しないで」
一般兵を次々に気絶させていると、反対側でもアリスさんが華麗に舞っているのが見えた。
たまにルイスさんが現れてはアリスさんが現れて、ずっと前からわかっていたことではあるけれど__やっぱり、強いなぁと思うし、それに__綺麗で、まるで戦っているように見えなくて。
その時一瞬、本当に一瞬__全く見覚えのない女性が__というか少女がチラリと覗いたように思った。
「__え、」
彼女は小さく微笑んで、またふっと消えてしまったけれど__気、というか、風というか__そんなものが二人の周囲にはずっと残っているように思えてならなかった。
誰、だったのだろうか。
「っと__あぶなっ、」
すれすれで振り下ろされた剣をよけ、銃弾を避け、刃の裏側で落とす。
ギリギリ、セーフだと思った瞬間…アリスさんの鋭い叫び声が聞こえた。
それが私に向けられたものだと気がついた時には既に_私は、
--- 地面にめり込んでいた ---
衝撃でクラクラする中、見上げたそこには__まるで冷たい表情だけを浮かべた中也がいて。
何かをアリスさんが呟くのが見えた。
「あ__」
やばい、と思った時にはアリスさんの姿は土埃で見えず、私の体は宙を舞っていた。
「あはは、勝ったと思った?」
「イライザだけは、っあの子だけは絶対に取り返すのっ、邪魔なんて誰にもさせないのよ!!」
「テニエルが裏切るなんて思ってもいなかったわけじゃないわ、だから…もういい」
「教えてやるよ、ポートマフィアにかけられた異能を解くには__ルイス・キャロルが泉桜月を殺す、それが二者択一の異能のこの選択だよ!」
本当に____本当に、不味い。
うわぁぁぁあほんとに遅くなってすみません!!!
コラボ第3弾、ようやく十話……
1話1話が長いとはいえ、余計に面倒なことにしてしまって…
本当に申し訳ない……
というかこんな展開にしてどう収拾つけるの(
ヤバすぎる。
頑張る。
ちなみに物騒な会話というのは天泣さんのほうで見ることができます!!
ぜひ、というか絶対見に行ってください!!
それではっ