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目次
タンジーの草原の中で、私と君は息をする。
人は一人では生きていけない。
人は平凡ではつまらない。
平坦な道があると凹凸をつけたくなる。
それを平気でやってのけ、自分こそが正しいと言い張っている。
それが、人間。
そしてそれもまた、揺るがない事実である。
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小学生の頃男とのこに、
「何してるの?」と聞くと、「人間活動〜」とイキったような口調で言われたのは、今でもよく覚えてる。
言われた当初はすごくイライラしたし、何いってんだこの人達は。とか冷めたような感じで見ていたけど、今考えてみればこの状況を作り出したのもその一言が原因なのかもしれない。
その男の子たちは、人間活動って詳細には何をしてるの?と聞いても答えてくれなかっただろう。
それは、人間活動の詳細がよくわからなかったからだ。
私達人間は、詳細がわからないほど膨大な人間活動を無意識のうちにやってのけている。
寝ること、息をすること、心臓を動かすこと、脳で考えること、歩くこと、聞くこと、見ること、消化...そういうふうに体ができているからだと言ってしまえばそこまでだが、その分体が疲れることも間違えではない。
だからストレスというものは何もせずにいても溜まっていくし、もっと疲労が加われば大きくなる。
そのストレスを吐き出すために、平坦な道に凹凸をつけるのだと私は思っている。
そして凹凸をつけられなければ人は衰弱し、だんだん弱っていくのではないか。
そんな事を考えている者は私だけではないだろう。子供では少なくても、大人には、心理学者には数人はいるはずだ。
でも、それをどうすることもできていないの現状であり、残念な事実なのだ。
だから私はしょうがなくこの道を選んだ。
苦しい思いをするのは私だけでいい。私もこの、人にいつか聞かせてやれるような日々を嫌いではなかった。
「あれ〜乃々ちゃん!元気〜?」
乃々とは私の名前だ。上岩乃々。中学3年生。ある県内の公立中学校に登校しており、高校受験はほぼ推薦が決まった状態である。
そして話しかけてきた少女こそ、今の私の「敵」のような存在だった。
別にけなされたり暴力を振るわれたりしているわけではない。悪質な嫌がらせ。物を隠されたりなどを繰り返されているだけだ。
でも、それで平坦な道が凹凸に近づくなら。そう思うと何も言えない。抵抗できないのだ。
その敵は、少し暑く心地用風が少々、そんな初夏の中、白昼堂々と私に話しかけてくる。
バレる可能性があるはずなのに堂々としている。
それは、彼女がいわゆる「主人公ポジション」の人間だからだ。
足塚優華。黄色髪で黄緑色の目をした、純粋そうな外見の少女。
そこらの男子からは、陰キャに気をかけてあげるやさしい女子に見えているのだろう。
元気です、と雑に返事をしてすぐ近くから離れる。
たくさんの視線が痛いが、致し方ない。その場の勢いで色々されてたまるものか。
そんなこんなで私の一日は始まるのだ。
一限目、二限目。どんどん時間は過ぎていく。そして三限目、理科。私の教室は二階の端。理科室はその反対側の端。
階段もないから足音で沈黙をごまかせない。周りが友達と喋りこむのを横目に見ながら、私は一人であるき続けた。クラスメイトは総勢40人。法律で定められているキツキツの人数。
それが、4クラス。そんなにクラス数が少ないならもうちょっと増やせばいいのにと思うが、どうやら教室が足りないらしい。
もともとあまり人気がなかった街に、突然子育て環境がいいと話題になり人口が急増したのだから、それは当然なのかもしれないが。
小学校には手は回っているものの、中学校は私立受験する子供もいるだろうと考えているのか再開発が進められていない。無論、のびのびとした環境で育てたいなどとという考えを持つ親が、戦争のような私立受験を子供に進めるわけもない。今現在、そのような状況なのだ。
40人が細い廊下を一気に移動するのだ。それはまあ大渋滞。私は最後尾に少しずつ移動しながら、ゆっくりと理科室へ向かった。
最後尾とは有意義な場所である。クラスメイトの顔を見なくていい。
まあクラスメイトの名前や顔は八割以上把握していないが、嫌でも見えてしまう顔というものもあるのだ。
しかしそれと同時に少し見放された気分になる場所でもある。
「....あっ」
その時、ボーッとしていたツケが回ったのかうっかり手からペンケースを落としてしまった。
コロコロと大きい音を立てて転がっていくシャーペンや蛍光ペン。最近買い替えたペンケースがキラキラと光って足元にコツンと当たった。
「....」
誰一人、拾うのを手伝ってくれるものはいない。
これが、見放された気分になる要因の一つだ。
(...まあいいけど..)
いつものこと、そう思いながら一人でペンを拾っていた。
とき、だった。
「あちゃ〜結構いっぱい落としてるね」
すこし高いが耳障りの良い、そんな声が聞こえた。
どうせ他のことだろうと顔を下に向けたまま作業を続けると、今度は
「これもあなたのでしょ?」
と、耳元であの声が聞こえてきた。
「え?」
うっかり変な声が出てしまいながらも上へ向くと、そこには金髪青眼、まるでハーフの美女がいた。
前髪をピンで止め、右側にまとめている。
そして頭の後ろでなびくひとつ結びにまとめた髪が、窓から入ってくる心地の良い風に振られ、見惚れるほどに色気を出して揺れていた。
これが、私と福下星羅の出会いである。
かき...すぎ............................た。