自己満足のショートをまとめた。リクエストも一応募集してます(書くのは一ヶ月後とかになっちゃうかもだけど)
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目次
夜明け前
いつもより早く目が覚めた。
「……」
時刻はまだ4時半。……こういうのを夜明け前、っていうのかな。
わたしは、カーディガンを羽織って外に出た。
*
すっと息を吸う。
誰も歩いていない外の空気って、ちょっと好き。空気の独り占め、できるから。
その代償みたいに、後ろ向きなこと考えちゃうけど。
授業で当てられてうまく答えられなかったこととか。
昨日も1人きりで学校に行って、1人きりで帰ったこととか。
お母さんに、昨日も迷惑かけちゃったこととか。
うまく話せない。うまく生きれない。
正直、そんな自分が嫌で。
正直、なんで生まれちゃったんだろうって。
正直、今すぐにでも消えちゃいたくて。
……なんて。
わたしは、暗い気持ちを振り切るように歩みを進めた。
*
金木犀が、道を彩っていることに気づいた。
……いつもは咲くの、10月頃じゃなかったっけ?
顔を近づけなくてもわかる甘ったるい匂い。
まだ早朝と言っても日は昇っていない。
昇らない。
*
「……」
修学旅行の班決め、今日だったよね。
どうでもいいことを、ぼーっとした頭で思い出す。
修学旅行なんて行きたくない。……また誰か、困らせちゃうだけでしょ。
「……もう、やだな」
今日起きて初めて口から出たのは、そんな言葉。
もう、やだな。
もう、やめちゃいたいな。
……もう、
*
結局、どこにも行く果てがなくなって、6時半頃には家に帰ってきた。
……でも、2時間くらいは散歩してたってことだよね。
外は少しだけ明るい。少しだけ、ちょっとだけ……日の光が覗いている。
意味もなくベランダに立った。
意味もなくラジオを流した。
意味もなく、ただ、街を眺めた。
*
「…………ぁっ、」
*
太陽が、
*
昇った。
*
「……」
早起きが苦手なわけじゃないけど、普段めったに日が丁度昇るときを見ることはない。
見よう、なんて思わないし。
でも、
でも。
……綺麗だったな、って。
あめのどうぶつえん
はい。主催者なのにどうしてこんなに出すのが遅れたのか?これには深い意味がありましてね((
違います。ただ、書き終わってなかっただけです。日曜日に塾あってそのあと塾の三者面談、月曜日に学校でプールあって屍になり、火曜日に塾の宿題に襲われてたら全然書けなかった!
静かな森の奥に、「あめのどうぶつえん」がある。
ひっそりひっそりとした静かな森の奥。小さく、「あめのどうぶつえん」と書かれた段ボールが立てかけられているところ。
「あめのどうぶつえん」は晴れの日には開かない。晴れの日にきても、「へいかんちゅう」とひらがなで書かれた段ボールが、控えめに立てかけられているだけ。
わたしは、小さな頃から「あめのどうぶつえん」にずっと通っていた。
---
「あめのどうぶつえん」に入ると、たった一人の男の人がほうきで床を掃いている。
いつも、そう。ひょろっとした男の人が、枯れ葉だらけの床を静かに掃いている。
わたしは、名前もまだわからないその人にぺこ、っとおじきをする。
すると、ちょっとだけその人は頭を下げる。
「あめのどうぶつえん」には、いつもわたしとその人しかいない。
でも、わたしたちは言葉を交わしたりしない。
……そんなんだけど、わたしは、この空間が好き。他の家とか、学校とかよりずっと居心地がいい気がするから。
---
「あめのどうぶつえん」には、動物が一匹しかいない。
ホワイトライオン。純白の毛をした、美しいオスのライオン。青い宝石がはめこまれたみたいな瞳を見ると、ちょっとだけ安心するような気がする。
ライオンは、いつも檻の中で独り、雨を眺めている。
その|瞳《め》は、宙を彷徨っていて。
わたしは近づく。
ライオンは気づかない。
ちょっと立つと、ライオンはこっちを見る。
右手を、檻になすりつけた。
「……」
今、この子はなにを考えているのかな。想像したって、わたしにはわかりゃしない。だって、わたしはこの子じゃないから。
「……ねえ、」
「あなたは、雨が好き?」
通じないのはわかってるけど。ちょっとだけ、首を傾げて。
ライオンは、まばたきする。
がし、がし。檻を引っ掻く。
「……そっか」
青い瞳を、わたしに向けた。
「どうしたの?」
右手を、また檻になすりつけて。
がし、がし。
雨はやまない。ずっと前から振り続けてたみたいに、ざー、ざーってやもうとしない。
「……」
雨はやまない。
---
次の日は晴れだった。「あめのどうぶつえん」には、「へいかんちゅう」の段ボール。
あのライオンは、今どうしているのかな。
いつものように、右手をがし、がしって檻になすりつけているのかな。
そんなことを考えながら、「あめのどうぶつえん」に背を向けて歩き出した。
……なにこれ((
はあ、明日は地獄の英語の授業がある。英語の先生無理嫌い。
夜
ファンレターもらうとめっちゃ突然投稿頻度あがるかも…?(うるせえ)
朝より、夜のほうが好き。
夜の外の匂い。湿っぽい甘い匂い。
ちょっとだけ、その匂いを嗅ぐと落ち着くような気がするから。
街のひとが夢を見ているとき、夜の外を歩くのは少し特別な気分がする。
特に、雨上がりの夜。
水溜りに映る闇は、暗くて怖いのにどこか優しくて。
闇の中で控えめに輝く月は、「そのまま」のわたしを受け入れてくれるような感じがして。
夜は、朝でも昼でも感じられないような優しさを纏っているような、気がする。
*
「……」
水溜りに揺れた闇を見つめていると、金色の瞳をした猫がすり寄ってきた。
ねえ、あなたもひとりなの?
尋ねたわけじゃないのに、猫は、返事をするようににゃお、と鳴く。
夜みたいな子だな、って思った。
本当に生きているのか、と心配になるほど体温は低い。月みたいな目に、真っ黒な体。
「……ふふっ、」
わたしは、夜の公園も好き。
*
明るさを強要されるような朝も、
取り繕うしかない昼も。
全て、居心地が悪くて。
夜が怖い。そういうひともいるのはわかってるけど。
それでも、わたしは夜が好き。
「あ……っ、」
今日は、満月だっけ。
「綺麗、だね」
にゃお。猫はわたしの足に体をまとわりつかせる。
これは、小さな、わたしだけのある夜のはなし。
応援だけでもいいから…。下の緑のボタンポチでいいから…。ください…。なんなら低評価でもぜんっぜん構わないから…。この駄作者が出直してこいでもいいから…。コメントもくださると嬉しいです…。
ブルーモーメント one
物騒なニュースが飛び交ってますね。みはなだです。ご冥福をお祈りします。
今回は自己満足ショート集の更新として、匿名さんからのリクエスト「一夏の冒険」をテーマに書いていこうと思います。ショートと言いつつ、「one」がついてるところから察するかもですがシリーズになります。そこまで長くならないと思うけど。
ネガティブな女の子がほわほわした生き物達と自殺の旅に出る話です((
生まれたときから、”負けて”いた。
……ちっちゃいときは、そんなの気にもしなかったけど。
小学生の頃の好きだった先生が、”勝っている”子に「完璧だし悪いところないよね」って言ってるところを見た瞬間に、あの子は”勝って”るんだなって。
先生といえど、所詮人だし。やっぱりそういう目で見てしまうのはしょうがないことで。でも、そのときの自分はどうしようもなくそれがショックで。
その子は、勉強も運動もできる上に性格も悪い頃が見当たらなかった。容姿も、ぱっちりとした二重に程よく筋肉がついた細い手足。……完全に、”勝ち”。
勉強もできないし。
運動もできないし。
愛想も良くないし。
特徴なんて見つからない容姿だし。
「あーあ……」
”負け”は”負け”を認めるしかないのだ。どうせ、”勝ち”になんて追いつけない。馬鹿みたいに、努力するだけ無駄。
”負け”の私に、価値なんてない。
*
『どうして上手く出来ないの?』
散々、聞き飽きた言葉。
出来ないから出来ない。ただ、それだけの単純な話。
知らないよ。だって、出来ないんだもん。勉強も運動も。上手に、生きることも。
どうやって上手く生きればいいかわからない。わからないんだ。ただ笑みを浮かべていたら上手くいく?今更無駄でしょう?
「……どこかに、消えちゃったら」
どこかに、消えちゃったら。
楽になれる?
上手く生きようと頑張らなくていい?
まだ7月の前半だというのに蝉は生き生きと荒々しい程に生命を主張している。紫陽花はいつしか枯れ、向日葵にその座を譲っていた。
*
さて、どうやって死のうかな。
財布と水を押し込んだリュックを背負って、最後の夏の冒険を始める。
あの夏が飽和する。っぽくなっちゃったけど許して。
ちなみにこれ読んで自分は”負け”やんもうだめやんって病んじゃった人ごめんなさい負けとか勝ちとかないからね本当に真に受けちゃって病まないでね(((
水縹色のリクエスト箱
こんにちは。
なんか、自己満足ショート集に「リクエスト受け付けてる」とは書いておいたけどどうせこないだろうなーとか思ってたら予想以上にきてビビってます。
ということでリクエスト箱作っときました。リクエストは遅いけど必ず消化します。
……いつも小説楽しみって方は緑のボタンをぽちっとして、一文字でもいいからなにかください。
なつのおと
こんにちはああああみはなだです。超久しぶりのショートですね。はい。
彼岸飴ちゃん主催の、「悲願花企画」の小説でございまっせ。塾の宿題に一度も手を付けずになにやってんだって話だけど、ま、まあ明日の朝もありますしねっ((
Aでやらせてもらっています。珍しくほわほわしてます。…多分。いつも私が書くと主人公が死にたがってたり世界を嫌ってたりするけど、今日は珍しく主人公が素直にかわいいです。はい。
青空の下、海をわたしは画用紙に書く。鉛筆の音と波の音が耳に心地よい。
耳にしたイヤホンからはわたしの大好きな音楽が流れている。
わたしの過ごすこの時間ほど幸せなひとときは無い。
後ろの車道からは車の音が聞こえた。
小さな頃から、いつも近くにあったのは海。
さざ波が奏でる夏の音。大好きなこの音。
わたしは、少しだけはにかみながら鉛筆を動かした。
*
ざー、ざー。
人通りが少ないこの街の海は、静かだけど確かに、夏の音を鳴らす。
ざー、ざー。
そっと、寄り添うように。
わたしは目を閉じて、その音をそっと噛み締めて。
優しい夏の音に、耳をすませて。
*
ラムネを片手に、自転車をまたぐ。
籠には、ずっと大切にしてきたスケッチブックと鉛筆。
サドルに足をかける。
力を入れる。
自転車が動く。
「……っ、」
風が頬を撫でた。
髪が顔にかかる。不快感に顔をしかめる。
でも、そんな不快感すらどこか愛おしくて。
響く、油蝉の声。夏の音。
太陽の光を海が反射させる。きらきらと輝くその光に、思わずわくわくした。
今日の天気は、一日中晴れ。夜にも星が見られそう。今日は絶好のスケッチ日和かも。
湧き上がってくる期待と興奮に、わたしは、自転車をこぐ速度を早めた。
*
「……暑い……」
腕で汗を拭う。静かに響く、夏の音。
ラムネを開ける。しゅわっ、と、気持ちいい音が鳴らされた。
この大好きな街を、海を描きたくて。そのわくわくに、胸を高鳴らせて。
スケッチブックを開いて、真っ白に鉛筆を滑らせた。
ざー、ざー。
響く夏の音。大好きな音。
ざー、ざー。
静かで優しい音。
ざー、ざー。
鳴り続ける、なつのおと。
スケッチブックに浮き上がったのは、まばゆい光を主張する海。
満足感に微笑んだ。耳に流れるのは、波が奏でる夏の音。
わたしは顔をあげた。波がよせて、ひいて。よせて、ひいて。
夏がきた。
夏の音が響いた。
「……ふふっ、」
大好きな、なつのおと。
25分で書き上げました…。最初の彼岸飴ちゃんが考えた出だしの表現とかがほんと好きすぎて。それに釣り合うような小説になれるといいな…って思いながら書いたんですけど、なんだろうな…なんていうかほんわかしててオチがないっすね。こんなんじゃこれで食べていくことを目標になんてできないレベル。まあ、許してくれ。塾の宿題終わってないんだ(塾から帰った後すぐやれ)
楽しい企画に参加させてくださって、本当にありがとうございます…!
私と友達の死に方会議録
こんにちはぱっつん編み込みツイン小豆沢こはむはむに雛人形メイドを着させた絵を描いてたら、なぜか虚しさの涙が出てきたみはなだです(遠い目)
ぱっつん編み込みツイン小豆沢氏が登場したカラフェスが初めて回したカラフェスガチャだったんですけど、まあ見事に一目惚れしまして。
まあ見事に爆死しまして(遠い目)
はい。前半の話なんだったんだ(?)
「ねえ、死にたいんだけどどうやって死のっかな?」
私の言葉に、友達は笑って答えた。
「君が死ぬならわたしも連れてってよ」
私と友達の、死に方会議録。
*
「……できるだけ、苦しくないのがいいかな」
「それは同感」
馬鹿みたいに真面目な顔で友達は頷く。
「じゃあ絞首はやめとく?」
「あ、あれはやめといたほうがいい」
首を振る友達。……試したことがある、のか?
「あれ、前3分ずっと首タオルで締めてみたんだけど全然死ねる気配なかったから。死ぬまでにはかなり時間かかると思う……」
「なるほど……?」
……なんでそれを試したのかは聞かないことにした。
「飛び降りはどう?楽しそうじゃん」
友達からの提案に、私は無言で✕印を作る。
「……高いところ、無理」
「ほお、死にたいとか言ってたくせに?」
「それとこれは別」
「……その言葉、都合いいよね」
高いところが無理以前に、学校の屋上なんて開放されてないし。山とか崖とかから飛ぶなんて嫌だし。
「飛び降りはやめようよ。もし、仮に飛んだとしてもそれで死ねなくて全身麻痺とかになったらどうすんの」
「あー、確かに……」
じゃ、別の方法にしよう。
私と友達は、再び別の方法を考えだした。
*
「薬は?」
「あれも死ねなかった場合辛いでしょ」
「全身麻痺とかも可能性あんのかな?」
「知らん。それ以前に薬とかつまらん」
友達らしい言い草。つまらんってなんだよ……とか思いつつ、また、別の方法を。
「包丁とかどう?」
「包丁……」
うわ言のように呟いて。
「……なんか、グロそう」
「充分他の方法もグロいでしょ」
呆れたような友達を無視する。
「海にでも飛び込む?」
「え、辛。怖」
「だから死にたいくせになんなの」
*
「銃!」
「どっから入手するつもりなの?」
「……メル◯リ、とか」
「メ◯カリに銃売っててたまるか」
*
「火炙り……」
「家ごと?」
「うん」
「……虚しくね?」
「虚しいとは」
*
「……いい方法、ないね」
「……ん」
友達は頷く。どこか遠いところを見つめて。
「ねえ、」
「君は、さ、」
「本当に、死にたいの?」
友達は、私を真っ直ぐに見据える。
「……ぇ、」
思わず、戸惑う。
……死にたい。
今すぐにでも。
明日がくるのが辛くて、怖くてどうしようもなくて。
死んだら、楽だろうなって。
「……うん。
死にたい」
「そっか」
「じゃあ、」
--- 「私、今から君を死なせてあげるよ」 ---
友達は、どこからともなく取り出した包丁を私に向けた。
息を呑んだ。
友達の目を、見た。
……死にたい。
そうでしょ?
私は、死にたい。
……私、は、
--- 「…………まだ、」 ---
--- 「死にたく、ない……………っ、」 ---
口から出たのは、そんな言葉。
……死にたいんじゃないの?
自分に問いかけても、でも。
出てくるのは、同じ、答え。
「……うん」
「私も、君と同じだよ」
少し笑って、包丁をしまう友達。
「……危うく私、友達が人殺しになるところだったね」
「あはは、もし死にたいって言ってても、殺してないと思うけどね」
友達は、「これは独り言なんだけど」と話を、切り出す。
「疲れたって思ってても、結局、私達って死ぬ勇気なんてないんだろうなって」
「…………うん」
「……なんで、今まで気づけなかったんだろうって。
私、何度も死のうって思って。
何度も包丁を突き立てようとして。
でも、さ。
手、震えてるんだよね。
生きててもなんの意味もないのに、
それでも、私らは死にたくないって」
カーテンの隙間から漏れる光が、いつの間にか消えていることに気づいた。
……夜だ。
「……ねえ、」
「夜が明けたら、明日がくるんだよね?」
「なにそれ、哲学的だね?」
「……明日、かあ」
弱い私達は、息をするだけで精一杯で。
明日のことなんか、考えただけで嫌になって。
投げ出そうとして。
ちょっと、考えて。
--- また、明日を迎えることを選んで。 ---
「……生きるよ。
また、死にたいって思うかもしれないけど。
でも、今君と考えた自殺方法でいいの、なさそうだし」
「……うん。じゃあ、私も、生きてみる。
うまく生きれるか、わかんないけどね」
最後の友達ちゃんのセリフ、無意識にえななんの「描いてみるよ。うまく描けるか、わかんないけどね」に似ちゃったけど許してくださいねっ(((?
クラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子がかわいい話。
とあるところに提出する用に書いたやつ。
2日で書いたので色々注意。
『クラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子がかわいい話。』
*
「うおっ……今日も供給の質高っ……しゅき」
「おはよ変態。今日もいい感じに気持ち悪い顔してるね」
「おはようっせえ黙れ変態」
「んで?今日の供給はどんな感じでして?」
「飛ぶなよ?……こちょこちょし合いっこしてたわ」
「ゑ?んんん?え?ちゃんと撮影したか?」
「流石に盗撮はしてねえよ。ほんと至高すぎ最高かよ今日も供給ごちそうさまでした」
「はああっ、字面だけでやばいたまらん……。どっちが発端でして?」
「実弥てゅあん」
「言い方まじできんもいやでも解釈一致だわてぇてぇやな」
「ほっぺぷくーってしてやり返す紀乃ちゃんとても尊き」
「愛おしい生物ですね」
「愛おしき生物です」
教室の隅できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子が今日もかわいい。
これは、私と同等に気持ち悪い友達と共にかわいいこの生物達を崇める毎日の記録。
*
1.高身長×低身長は尊いの象徴。
2.攻めと受けを決めつけてしまう行為は愚の骨頂。
3.すれ違いもいいけどやっぱり笑顔でいてほしい。まあ闇っぽいところが垣間見えるのもすごくよきなんだがでm(以下略
4.今日も尊い。
おまけ・クラスの中央できゃっきゃしてるコミュ力おばけ陽キャ女子がかわいい話。
*
1.高身長×低身長は尊いの象徴。
「高身長と低身長っていいよね」
「は?」
今日も音楽室を占領して購買のパンを無心で貪る。
思わず漏れた急すぎる私の一言に奴はそう返した。
「いやさあ?今日も身長差尊いなーって思って」
「ああ……実弥ちゃんにからかわれて紀乃ちゃんがやり返そうとするけど背伸びしても届かないの尊かった」
「てょてもわくぁある」
「お前定期的に発音がキモくなるのなんなん」
「あれ、実弥ちゃんの身長どんぐらいだっけ?」
「わからんけどクラスの女子の中で一番でかいんだから160……7とか8とかあるやろな」
「紀乃ちゃんは158の私よりも少なくとも10センチくらいはちっちゃいから140台だろうね」
「なるほど……確かに身長差って尊いの象徴かも」
内野実弥。田嶋紀乃。
クラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子2人の名前である。てか名前の相性よすぎない?字面の調和がやばい。尊。
「高身長×低身長、垂れ目×吊り目。2台萌え要素」
「それなああ……」
ちなみに、この尊い生物達はかなりのコミュ障陰キャなので、私が話しかけようとするとでっかい方(実弥ちゃん)の後ろにちっちゃい方(紀乃ちゃん)が隠れるんだけど、実弥ちゃんもたじたじになっちゃって目を伏せてぺこぺこする。ただただかわいい。
2.攻めと受けを決めつけてしまうのは愚の骨頂。
「……」
「紀乃ちゃん、わたしの背中に顔埋めてどうしたの……?もしかして昨日寝てない?」
「ん……、おやすみ……」
「うぇっ!?ちょ、紀乃ちゃん!机で寝てきなよ!」
「今のわたしの席の近くコミュ力おばけがいて怖い……実弥の背中が一番好き……、」
「……〜〜!!!!!!!」
「言葉にならない悲鳴が漏れてるけど大丈夫?」
「んんん、尊っっっ……!!!」
「てか、紀乃ちゃんの席の近くのコミュ力おばけってお前のことじゃね?」
「多分。私有能すぎ」
今日も相変わらずクラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子がかわいい。
「ねえねえ、どっちが攻めでどっちが受けだと思う?」
「えっ……?正気?」
「聞いただけやん」
「あのなあ、あの2人に攻め受けを決めつける行為なんて愚の骨頂すぎると思わない?出直してこい」
「えごめん」
君に軽い気持ちで質問すると、思ったよりキレられた。
「まあ今日のところは許してやる……次は命がないと思えよ」
「重っ」
……まあ確かに、改めて考えると愚の骨頂かもしれん。
今日のように紀乃ちゃんが甘えたり実弥ちゃんが無心で紀乃ちゃんのほっぺをむにむにしだすときもあれば、紀乃ちゃんがいつもの仕返しとばかりに反逆しだすときもある。
まあとにかく、これからもこの尊い生物を愛していこうと思った。謎のまとめ。
3.すれ違いもいいけどやっぱり笑顔でいてほしい。まあ暗い一面が垣間見えるのもすごくよきなんだがでm(以下略
「……」
「………」
「ぁぁあああぁああああ゛………」
「この世の終わりみたいなすごい顔してるぞおい」
「供給不足で死にそう……」
「いつも供給過多すぎるだろそろそろ死ぬんだけどとかほざいてるくせに」
今日もクラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子がかわいい。
……はずだった。
「いや、私らが下手に干渉したらあの2人の空間がぶっ壊されるじゃん?でもさ、昨日の放課後も一緒に帰ってなかったし朝もこんなんだし心配になるじゃん!!」
「それはわかるすごくわかる。でも我はしばらく様子見で行こかなって」
「え、こうなった理由知ってるん?」
「んーなんか……紀乃ちゃんの家庭で色々あったらしく。それを実弥ちゃんが聞いたら、紀乃ちゃんが真っ青になっちゃって」
「なるほど、なるほどぉ……ん?てかなんでお前それを知ってるの?」
その問いに奴は答えない。……え、怖。
「そうだね、様子見がいいかも……ちょっと暗い一面も見えるのも萌えだけどね!?推しが苦しんでるところ大好きだけどね!?」
「性癖かなり捻じ曲がってる奴は黙ってろ」
*
「……緊急会議です」
「うむ」
今日も今日とて誰も来ない音楽室を占領して平和な昼休みとなるはずだった。
……そりゃあ二週間も供給全く無しだったら大騒ぎとなり(二人の供給を毎日正座待機してる我らだけの)緊急会議だって開かざるを得ない。
「そろそろ精神崩壊しそうなのだが」
「我も同じだ」
「うむ」
謎の握手。
「……んで」
「緊急事態だ」
このクラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子のかわいいかわいい絡みのために生きてるといっても誇張なしで過言じゃない。
そりゃあ二週間も供給無しだったら我らは死にかけにもなるわけだ。
「……ごめん、裏切る」
「は?え?」
「いや、下手に干渉したらあの空間が壊れちゃうから大人しくしとくっていう宣言。今日紀乃ちゃんに話してみる」
「え、マジで……?紀乃ちゃんは実弥ちゃんよりも難関やぞ?あとお前自分が一応コミュ力おばけの陽キャだってこと忘れてない?」
「いや、あの二人のほわほわ空間が復活するなら腹だって切る……嫌われてもなんでもいいから私はあの笑顔をもう一度見るんだ……っ!!!」
「その台詞だけ見ると感動シーンぽいな」
「蓋を開けてみれば気持ち悪いオタクの妄言だけどな」
*
「……あっ、紀乃……ちゃん!これ落としたよ!」
基本的に私は人の名前を呼ぶとき呼び捨てだけど、実弥ちゃんと紀乃ちゃんを呼び捨てなどあまりにも無礼のため、当初は「様」をつけていた。けど、奴に「様は本格的にキモいからやめろ」と言われ、「ちゃん」と呼んでいる。
何気に紀乃ちゃんの名前を呼んだのは初めてな気がする。ちょっと迷ったけど、ちゃん付けで呼ぶことにした。
とまあ、そんなことは置いといて。
緊急会議の放課後、運よく(?)紀乃ちゃんがシャーペンを落としたのですかさず拾う。
「……ぁ、あ、り……、が、……」
教室には二人きり。語尾が消えるのコミュ障あるあるすぎかわいい。重症患者の自覚はある大丈夫。
「……ねぇ、紀乃ちゃん」
「っ!?」
まさか続けて話しかけられるとは思っていなかったのか、紀乃ちゃんの肩が大きく跳ねる。え、小動物かよかわ。
「実弥ちゃんとなにがあったの?いや、私関係ない人だから私に話してもなんのメリットもないと思うんだけどね。
でも、実弥ちゃんと話してるときの紀乃ちゃん、すっごく楽しそうだったから……私にできること、したいなって思ったんだ」
言葉って大切。言葉を選ばずに言うと同じ内容でも「みやきのの二人で話してるときの二人の笑顔が尊すぎるからなんとしてでも復活させたいから私に話してくれ頼む」である。てかなんか私の口調変わりすぎ面白。
とか呑気に考えている私の頭の中はもちろん紀乃ちゃんに見えてない。二人きりの教室なので逃げ出すわけにはいけないと思ったのか追い詰められた紀乃ちゃんは今にも泣き出しそうな顔をしつつ、私の言葉を聞くと怯えつつも真剣に考え出した。
「……あのっ、わた、し……うまく、話せないんだけど、!」
「……っっっ!!!」
何気に紀乃ちゃんが私の目を見て話してくれたのは人生初だ。とてつもなくコミュ障の彼女がたったそれだけの言葉でも私に伝えようとしてくれたという事実に思わず悶えると、「!?」と再度怯えられた。「ごめん続けてゆっくりでいいから」。
「わたし、ただ心配してくれただけの実弥に、酷いこと言っちゃって……謝りたいのに、わたしが声かけるの苦手ってだけの理由でなかなか元々に戻れなくて、」
「うん、」
声はとてつもなく小さい。けど、紀乃ちゃんなりに頑張って話そうとしてくれた。そうやって話すまでにどれだけ葛藤があったのかとか勇気を振り絞る必要があったのかとか想像するだけでおばちゃん泣いちゃいそう。
……いや、違うのかも。きっと紀乃ちゃんは、心から実弥ちゃんと過ごす時間が大好きで。今すぐにでもまた笑い合いたくて。だから、それほど迷う必要はなかったのかもしれない。
え、尊(たどり着く結論は一つ)。
「わたしが、全部悪いんだ。だから……謝りたい、のに」
「なるほどてぇてぇ」
「てぇ、てぇ……?」
「あごめんごめん間違えた。紀乃ちゃん、真面目だし優しいね」
「え、わたしは……真面目でも、優しくもないよ。弱虫で、話したいのに話すのも苦手だし、こうやって、話しかけられてもうまく話せなくて嫌がられることばっかり、だし、」
「難しく考えなくて大丈夫だよ。紀乃ちゃんはそのままが一番って、思うな。
だから、色々考える前に、紀乃ちゃんは実弥ちゃんに謝りたい。元に戻りたい。それだけ考えてみたらどうかな。大丈夫だよ、それだけで、実弥ちゃんに気持ちは案外伝わるから」
「そういう、ものかな……」
「そういうものなの!」
思ったより、紀乃ちゃんはたくさん話す。新たな一面を見ちゃった感に若干にやけつつ。
「……そう、だね。うん、そう、なのかも」
紀乃ちゃんは、そのとき初めて笑った。まだ実弥ちゃんといるときの笑顔にはかなわないけど、それでも、柔らかくてきらきらしててかわいい笑顔。たまらん好き。
「ありがと、えっと、西野……日和、ちゃん」
「……っっっっっっっっっっっっ〜〜〜〜!!!!!!!!!」
「だっ、大丈夫……っ!?えっ、すごい音したし机ちょっとへこんでるけど頭割れてない……!?」
「だいじょぶ……」
「あ、名前呼び、図々しかったかな……西野さん」
「戻して」
「早」
「名前呼びが嬉しかっただけです戻してください」
「日和、ちゃん……?」
「〜〜〜!!!」
「や、やっぱり名前呼ぶ度にぶっ倒れるなら名字にしたいんだけど……!?」
4.今日も尊い。
「おはよ」
「おはよう今日もいい朝だね!!」
「いい朝、だね……?急にどうした」
私は無言で教室の隅を指差す。
「おおおお、戻ってる……!!!!昨日、成功したん?」
「バッチリ。ついでに紀乃ちゃんに名前呼びしてもらっちゃったり……?あははでゅへへへっっ」
「相変わらずキモくて安心したわ。てか名前呼びおめでとマジで許さねえ」
「情緒不安定か」
今日教室に行ってみると、実弥ちゃんと紀乃ちゃんはひっそりと楽しそうにおしゃべりしていた。時々、静かなくすくす笑いが響く。教室の左端だけの聖地。
「てか、お前紀乃ちゃんになんて声かけたの?大変じゃなかった?」
「んーん、ぜんっぜん大したことじゃない。ほんと、なんか思ったこと言ったら思ったより響いたっぽいだけ」
「ふーん……あ、紀乃ちゃんこっち見た」
私達の視線に気づいたらしい紀乃ちゃんは、眼鏡の奥の思ったよりも大きくてまんまるの瞳を私のほうに向けて、口パクをした。
「あ」「り」「が」「と」「う」。
「……きゃゎぁ」
「灰になりかけてるけど大丈夫?」
「今日も尊い」
「それは知ってる」
というか、この話に一度も奴の名前が出てきてない気がするし先程やっと私の名前が出てきたばっかの気がするけど、いいのだ。この二人の尊さが伝わればいい。
「よし、これからも我らで愛でていくぞ」
「うむ」
謎の握手Part2。
クラスの端できゃっきゃしてるコミュ障陰キャ女子がかわいい。
〜結局なにを伝えたかったかわからん謎のお話 完〜
おまけ:クラスの中央できゃっきゃしてるコミュ力おばけ陽キャ女子がかわいい話。
「あ、紀乃ちゃん……おはよう!」
「ん、おはよう……ねえ、数学の課題写させてって日和ちゃんに頼んでる葵ちゃんの表情がかわいすぎてたまらないんだけどどうすればいい?」
「あ、ほんとだ……なにあれ、かわいいね。というか紀乃ちゃん、もうすっかり名前にちゃんづけなんだね」
「日和ちゃんが名前呼び、喜んでくれたから……日和ちゃん、コミュ力おばけだから私以外の誰かに名前で呼んでもらう機会なんていくらでもあるはずなのに、あんなに喜んでくれる素直なところかわいすぎる」
「あっ、すごくわかる。純粋すぎるよね。葵ちゃんに騙されたりとかしてるのもかわいいわ」
「わかる」
「わかる」
「今日も供給ありがたい……」
「これを糧に私達生きてるよね」
「ね」
クラスの中央できゃっきゃしてるコミュ力おばけ陽キャ女子がかわいい。
〜終〜
時間がなかったせいで全然使えなかった設定↓
内野実弥 うちのみや (高1)
身長→168cm
容姿→前髪長いからあんまり見えないけど激垂れ目。髪は肩につく感じの長さ。くせ毛じゃないけどそこまで直毛でもない。実は女子力が高いため、メイクはしてこないけど肌がマジで綺麗。そのことを知ってるのは紀乃ちゃんだけだったらかわいい。そして、ちょっと時間が経って日和と葵とも話すようになり、日和が気づいてにこにこしながら褒めるシーンあったらかわいい。
一度も生かされなかった設定→口調に母性がにじみ出てる。3姉弟の長女。真面目なので部屋がめっちゃ綺麗。オタク気質。元アニオタ。日和と葵の絡みがくそ尊いことに気づいた後は、こっそり二人の妄想をノートにひたすら書いてる結構変態っぽいところもある。好きだったアニメの絵を自給自足してたら画力が爆上がりしたため、なんならクラスで一番絵がうまい(けど影が薄いので知られてない)。
田嶋紀乃 たじまきの (高1)
身長→147cm
容姿→髪ふわふわ。高校生になってからは気にするようになってアイロンかけてくるけど、実弥ちゃんに「そのままでもかわいいよ」って言われたのでそのままでくることもある。身長は中1のときから伸びてない。色素が薄い。髪染めてないけど茶色っぽい。小学生時代は意外と気にしてた。毛量が多いのが悩み。全体的にちっこいのでリスっぽい。
一度も生かされなかった設定→一人っ子。甘やかされて育ってきた一人娘。家では比較的喋る。慣れた相手にはそこまでの量ではないけど普段からは考えられない程喋る。部屋は汚い。ドルオタ。グッズだけは綺麗に整理している。密かに量産っぽい服を着てライブに行ってみたい。後に仲良くなった日和達にそれを話して、「じゃあ着てみようよ!!」てなりきゃっきゃするアフターストーリーを考え出すとにやけが止まらない。
西野日和 にしのひより (高1)
身長→158cm
容姿→髪型はころころ変わる。基本ポニーテール。葵にお団子してもらって実弥達に「見て見て、やってもらったー!」って嬉しそうに見せて実弥と紀乃が尊さに悶えるところまでは見えた(幻覚)。私服はボーイッシュなやつが多いけど、実はなんでも似合う。万能型(?)の顔。
一度も生かされなかった設定→意外と神経質。変なところ丁寧。変なところ雑。誰とでも普通に話せる。陽の者。相部屋してるお姉ちゃんが1人いる。めっちゃ喧嘩するけど仲いいしなんだかんだ愛されてきた。実弥よりもオタク気質。ラノベになぜか超詳しい。色んな界隈になぜか詳しい。オタクに優しいギャルタイプと見せかけオタクに優しいオタク。(?)
神谷葵 かみやあおい (高1)
身長→160cm
容姿→すらってしてる。髪は長めだけどそこまででもない。めっちゃ直毛。いつも雑にくくってあるけど器用なのでやろうと思えば凝ったアレンジもできる(ただ、かなりのめんどくさがりやなのでやろうと思わない)。猫目。目がでかい。
一度も生かされなかった設定→何やらせても器用なので基本できる。ただ、料理をすると暗黒忌羅忌羅物質(厨二病臭)が生まれる。実弥と紀乃の身長差、真ん中バースデー、関係性や特徴、萌えポイント、似合うプレイ等をまとめたノートをにやにやしながら作るタイプの気持ち悪い方の人。コミュ力はそれなりにあるしクラスの真ん中にいる感じだけど、日和ほどではない。
葵が萌えポイントその他諸々をまとめたノートを作ったエピソードは、断じて私の体験談ではない。断じて10月あたりから大好きな音ゲーのキャラ達の全CP約100CPのデータをまとめたノートを絶賛作り途中ではない。断じて。
…断じてそんなことはない(大嘘)
いやはや(???)
ぺんぎんちゃん(リア友)(あいつ二ヶ月くらい浮上してないからぺんぎんちゃんって言っても誰やねんってなりそう)にあとでじっくり読ませろって言われたので今日投稿するって言ってしまい渋々あとがき書いてます。
最近は小説一覧見てなかったんですけど、ふと見てみたら好みの作品いっぱいあってびっくり。
はい。
明日か明後日にでも日記書くんで、この小説読んで「なんやこいつ」って思った人はクソ暇なときにでも読んでくださると嬉しいです。
おわり。
夜明け前
いつもより早く目が覚めた。
時計は午前4時。こういうのを夜明け前、って言うのかな。ぼーっとした頭でそんなことを考える。
朝のまだぼんやりしている時が一番楽。ちょっとだるいけど、余計なこと考えずに済むから。
窓を開けると、柔らかい風がわたしの体をくすぐる。髪がなびく。目を細めた。
外はまだ暗い。
水を一口飲むと、段々と目が覚めてくる。段々と憂鬱な気分になる。
朝起きても、夜寝るときも、変わらない憂鬱。
なにかあるわけではない。勉強も部活もそこそこ頑張ってるし、友達とも家族とも、そこそこ上手くやっている方だと思う。
ただなんとなく、漠然とした不安がいつも体につきまとってるだけ。
なんとなく居心地が悪いクラスも、なんとなく好きじゃないクラスメイトも。なにもかもがわたしを毎日すり減らしていく。
いい家庭に生まれて、いい人達に恵まれて、不自由なく生活できているのに。わたし、わがままだ。
ため息が漏れる。朝からこんな気分が落ち込むことはあんまりないから、今日はだめな日かなあなんて、思う。
外はまだ暗い。
*
課題は終わらせてあるし、特にすることもない。気分転換に、まだ暗い街を散歩することにした。
わたしはもうそろそろ受験を意識しなければいけない年で、今まで以上に勉強に力を入れなきゃいけない。本当は、やろうと思えば参考書の問題を解いたり、問題集を進めたりすることもできた。
でも今は余計に気分が沈みそうなのでやめた。
まだ薄暗い街には、誰もいない。早朝の空気を独り占めしてるみたいで、大きく息を吸ってみたりした。
小学生の頃から、勉強はできる方だった、と思う。
特別できるわけでもないけど、いつも平均より上の点数をとれるぐらいには頑張ってた。今もそう。周りの期待に応えたかったとか、ただ単純に自分が勉強が好きだからとか、色々あるけど、勉強は頑張ってる。
その甲斐があってか、志望校で合格圏をとることができた。塾の先生にもこのまま行けば第一志望も受かる、と言われたし、満足行く出来だと思う。
……なのに。
昔から褒められることが好きだった。周囲の大人から認められたくて、必死に真面目にやってきて。その成果が出て、つまずくことなく、認めてもらえるような成績も維持できるようになった。
それなのに、なにかが足りない。
なにか、欠けてる。
わたしよりも勉強のできないクラスの子のほうが、楽しそうに笑っているような気がして。
わたしの求めてたものって、なんだろう。
わかんないや。
外はまだ暗い。
*
真っ黒な野良猫が歩いているのが見えた。こんな朝早くに猫に出会うもんなんだ、とか思いながら、なんとなく追いかけてみる。
小走りでついて行くと、ふと猫がぴたりと止まった。わたしの方をまんまるな瞳で見つめてくる。
しゃがみ込む。綺麗だね、と意図せず声が漏れた。猫に言葉なんか通じるわけないのに、わたしの言葉に反応したかのように猫が綺麗な声で鳴くから、通じたのかなって少し嬉しくなってしまう。
誰かと話すことは、嫌いじゃないけど得意じゃない。
わたしが誰かの言葉を極端に気にしすぎて、勝手に傷ついちゃうから。
軽い軽口だって分かってるのに、夜寝るとき、抜けないトゲのようにその言葉がちくちくと痛みを主張するから。
そんな自分が、世界で一番だいきらいだ。
猫も傷つくことってあるのかな。生き物だから、あるか。
気づけば家から離れたところまで来てしまっていたので、猫にばいばいして、来た道を辿る。
外はまだ暗い。
*
幼い頃、よく来ていた公園に辿り着いた。周りに誰もいないことを確認してから、ブランコに座る。
……懐かしいな。友達や家族とよく来ていたその公園は、久しぶりに見るとずいぶんと小さく見えた。
あの時描いていた、無垢な夢を思い出す。
小説を書くことが好きだった。確か、初めて書いたのは小学1年生。暇さえあれば物語を綴っていたので、作文が表彰されることもよくあって。だから、自分は将来小説家になるのだと信じて疑っていなかった。
今では、自己紹介の将来の夢の欄に「小説家」なんて、絶対に書けないや。
あの時の自分も、今の自分も、変わらないブランコの上に座っている。
ブランコは変わらない。少しくすんだえんじ色も、さびの入った柱も、なにもかも。
でも、わたしは変わっている。……変わっていくしか、ない。
あの日描いていた未来の自分に、なれなくてごめんね。
隣の誰もいないブランコに、幼い自分の姿が見えた気がした。小さな脚で一生懸命ブランコを漕いで、きらきらした瞳で笑顔を浮かべる自分が。
ごめんね、あなたが期待してた自分には、なれないみたい。
……外はまだ、暗い。
*
気分転換に、と出かけた散歩だったけど、結局更に憂鬱になって終わった。いつもこんなんだよなあなんて思いつつ、部屋のベランダから外を眺める。
すると、ふと、ポケットの中の携帯が震えた。
大好きな友達の名前を見て、びっくりしながら電話に出る。
『もしもし。こんな早い時間からなにしてんの?』
「早く目が覚めちゃったから散歩してた」
『おばあちゃんじゃん。絶対電話出ないと思ってた』
「ええ……ていうか、そっちこそこんな早くからなんの用?」
『いや、特に用はないけど』
「なら尚更なんで電話したの……?」
思わず、呆れながら本音が口からこぼれる。
『んー……強いて言えば、声が聞きたかったってことかな?』
「んもう……なにそれ、彼氏みたいじゃん」
笑いながらそんなことを言うけど、内心嬉しかった。
「……外、まだ暗いね」
『そうだね。もうそろそろ明るくなってもいい時間帯だと思うけど』
「学校めんどくさいなあ」
『毎日言ってるなあそれ』
『……私も今日、早く起きちゃったんだけどさ。鬱すぎて電話かけちゃった』
「あ、わたしも。早く起きることってあんまりないから知らなかったけど、夜寝る前と同じぐらい憂鬱なんだなって」
『分かる。トイレとお風呂と朝と夜が一番鬱』
「それかなりじゃん」
そんな、最高にどうでもよくて、最高に他愛のない話。
……君とそんな話をしている時間が、一番愛おしい。
『でも、なんとかやってくしかないよ』
「……そうだね」
『うん。私もすぐ落ち込んじゃうしさ、毎日だめだめだし、もーくそ〜〜!!って思うことだらけだけど』
風に体を預けて、携帯越しに聞こえる声に耳を傾けて。
『……でも、いつか心から笑える日がくるって信じて、今日も生きるしかないよね』
「……うん」
日が少し、体を覗かせた。
……外が、明るくなる。
「……わたしね、なにかあるわけじゃないんだよ。それなりに全部上手くやってるはずなのに、なんか、毎日不安なの」
『うん』
「でも、きっと……夜明けが来ると信じて」
『……うん。いつか、夜は明けるしね』
不安も憂鬱も苦しさも、全部抱えたまま、わたし達は夜明けを待つ。
自分から朝焼けを見ようと走り出すことはできない。でも、ただ、信じて待つ。
なにも変われないままでも、なにもわからなくても、傷ついたままでも。夜明けを信じることができたら、そこには大きな意味が宿ると思うから。
まだ夜明け前で息をするわたし達が、どうか優しい朝を迎えられますように。
朝を迎えられたら、そのときはどうかあたたかい光がさしていますように。
……その時まで、どうか。
夜明け前。わたしは、君の隣で息をしたい。
君と息をしたい。
「……ねえ、今から会えない?」
『え、今から?今日学校あるのに?』
「今じゃないとだめなの」
んもう、と、今度は君が困ったように笑った。わたしも微笑む。
――夜明け前。君と、息をする。
幸せの数え方
いつも通りで愛おしい世界の、幸せを数える。
部活終わりの夕焼けを、美しいと思う。
友達とくだらないことで馬鹿みたいに騒いで、笑って。自転車を押す帰り道、ふと顔を見上げて、夕焼けの眩しさに目を細めるのだ。
隣には、同じように「綺麗だねえ」と呟く友達がいる。同じ夕暮れを見て、同じように綺麗だと感じる大切な人が、隣にはいる。
そんななんでもないことが、たまらなく愛おしく思える。
*
雨上がりの葉に乗る雫を、美しいと思う。
雨上がりの朝、葉の上で煌めく雨粒が目に入る。目に映る空は快晴で、あてもなくいい日になりそうだな、なんて思う。ペダルを踏み込んで、一緒に登校する友達のもとへ走っていく。
髪を揺らす風はどこまでも私に味方をしてくれて、このままどこまででも行けるような、そんな気がしてしまう。
そんな朝に、小さな幸せを感じるのだ。
*
ひとり、音楽に身を委ねる夜を、美しいと思う。
ちょっとだけ落ち込むことがあった日。眠れない夜のプレイリストを流して、そっと目を閉じる。
大好きな音と揺蕩って、ぬくもりと微睡む。
ああ、このままこの夜が続けばいいのに。そんな憂鬱さえも、もやもやも、なんだか愛おしい痛みに思える。
ひとりきりの夜、孤独も寂しさも埋まらない心も、全部、抱きしめる。
*
大切な友達との時間を、美しいと思う。
ふたりで好きなものの話をして、どうでもいい最近あったことの話を交わす。楽しそうな表情に、少し嬉しくなる。
日が暮れてきた頃に、ふたりで帰る。月が綺麗だね。そんなことを言う友達に、からかってやろうともしかしてそういう意味?と冗談交じりで聞いてみると、冷めた表情で違うんだけど、と返される。冷たいなあ、と私は笑った。
分かれ道でまたね、を交わして、君が機嫌がいいときによく歌っている曲の鼻歌を、私も歌ってみる。
大切な人が隣にいてくれることの幸せを、ちょっとだけ噛み締めてみる。
*
大切な家族との時間を、美しいと思う。
私の両親は、誰よりもなによりも尊敬できる人だと、私は思っている。たくさんの愛を注いでくれた、世界で一番敬愛する両親を、誇りに思う。
何気ない学校であったことも、同級生の愚痴も、どんなにくだらないことだって、笑ったり、時には真剣に聞いてくれる。寂しい日にはぎゅっと抱きしめてくれる。
そんなかげかえのない家族のことが、私は大好きだ。
*
余裕がなくなってギリギリになって、叫びだしたくなる日がある。なにもかも投げ出したくなる日がある。全部最初からやり直したい、なんてことを口にする日だってある。
でも、それでも。私は、私の生きるこの日々を、世界を、たまらなく愛おしく思っている。
そう思う心だけは、なにがあっても絶対に、私の片隅にあってほしいと思う。
美しさも愛おしさも、全部忘れてしまったら、私は私じゃなくなってしまうと思うから。
私の生きる世界を、日々を生きる自分のことを、愛していたいから。
だから私は、今日を諦めない。立ち止まっても、うずくまって歩けなくなったとしても。でも、絶対に「私」を諦めることはしたくない、と思うのだ。
世界の美しさを、優しさを、ぎゅっと抱きしめる。
そんな日々が、ずっとずっと、続きますように。
私は今日も、この美しい世界を生きる。
今日は誕生日だったので、色んなことへの感謝を込めて書いてみました。色々あるけど、毎日のちょっとした美しさは忘れたくないよねみたいな詩のようなものです。
幸せを数えながら、これからも毎日に感謝しつつ、のんひり生きていきたいな。