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目次
足音
あの音、今でも忘れられないんですよね。
って言っても、大した話じゃないんですよ。幽霊を見たとか……そんな派手なものではないんです。
私の部屋は2階にあるんですが、家自体はちょっと古くて少しの音でも響くんです。
それで…いつものように夜中までテレビを見ながら、スマホをいじってたんですよね。時間は…2時過ぎてたかな。
急に、ミシ……って天井から音がしたんです。猫か何かの動物が屋根に乗ったんだろうなと、最初は思いました。
でもその音はミシ、ミシって、規則的に動いてたんです。屋根を歩いてる、みたいな感じ。
よく考えたら、私の家の屋根って斜めになってて、普通歩けないんです。それに、気づいたんです。この音は屋根からじゃない、天井の内側からだって。
その瞬間、ゾワってしました。
誰かが、天井裏を歩いている音なんです。明らかに重みがある。猫とかじゃない、人間の足音。
その音は、私の部屋の真上で止まりました。
動かなくなったと思ったら、コツン、コツンと何か硬いものを落としているみたいな音が聞こえてきました。
もう、その時点で怖くて動けませんでした。
5分ほどそうしていたと思います。
音はいつの間にか消えてて、朝になって親に連絡しても「ネズミだ」と言われて終わりました。
次の日の夜、また同じ時間に、今度は私の部屋のクローゼットの中から音がしたんです。
ミシ、ミシって。
天井裏から、下に降りてきてるって、そう思いました。
それからは物音は聞こえていません。
でも、クローゼットは怖くてずっと開けられません。中、空っぽのはずなのに、夜になると時々揺れてるから。
視線
いつもどこかから視線を感じるんです。
振り替えっても、そこには誰もいません。
最初は気のせいだと思っていました。でも、日に日にその視線は強く、はっきりとしたものになってきて……。
学校にいても、まるで誰かがじっと見ているような、背筋が凍るような感覚がするんです。
ある晩、電気を消してベットに入ったとき、窓の外に人影が見えました。
私の部屋は2階なので、外に誰かが立っているなんてことはあり得ません。でも、立ってたんです。
ただそこに立って、こちらを見ている……そんな気がしたんです。
慌ててカーテンを閉めて布団にくるまりました。でも、あの視線は消えませんでした。
むしろ、もっと近くに来ているような気がするんです。
その数日後、今度は夢の中でも視線を感じるようになりました。
……夢の中で、私は知らない場所に立っていました。灰色の霧が辺りを包んでいて、足元すら見えなかったんです。
ただ、あの視線だけははっきりと感じられました。背後にあると確信しても、振り向けません。
何か、振り向いてはいけない気がして。
でもその日だけは違いました。気づくと、目の前にそれが立っていたんです。
顔はぼやけていて、輪郭も曖昧なのに、目だけが見えていました。
その"視線"は、何かを話していましたがはっきりとは覚えていません。
ただ、朝になって鏡を見ると、自分の影がわずかに遅れて動くようになりました。
視線の主が、私の中に入ってきたのかもしれません。
もう、私自身ではなくなっているのかも。
それに気づいたのは、昨晩でした。
鏡の中の私が笑ったんです。私は笑っていないのに。
今も、この部屋の奥から視線を感じます。
通知
中二の頃だったと思います。
当時、私はスマホを買ってもらったばかりで、夜になると布団の中で親にバレないようにLINEやYoutubeを見ていました。
通知音が鳴るとバレてしまうので、全てオフ。バイブも切っています。でも、何故かその日だけは通知音が鳴ったんです。
夜中の3時でした。もう親も寝ている時間です。
布団の中で寝落ちしかけていた時、いきなりLINEの通知が鳴りました。
おかしいと思い、設定を見てもオフのまま。
画面には誰かからメッセージが来たという表示はありませんでした。
なんだろうって思いながらスマホを閉じると、また通知が鳴ったんです。今度はすぐ近くの部屋からでした。
誰も使っていない部屋。少し前まで物置として使われていましたが、今はもう誰も入っていません。
怖くなって布団に潜ったら、また通知音。
間隔を開けず、どんどん近付いてくる感じがしました。
ついに、耳元で直接鳴った時、私はもう泣きそうになって電気をつけました。
でも何も起きていませんでした。スマホも通知ゼロ。
その日は徹夜して、朝になってから家族に話してみましたが「夢でも見たんでしょ」と言われてしまいました。
でも、1週間後に、私が使っていたスマホに1件だけLINEの通知が届きました。
通知に表示されていた名前は、私の名前でした。
自分のLINEに自分の名前が出ることなんて殆どないと思います。友達に同じ名前の人もいません。
それ以降、自分からの通知は来ませんでした。
そしてあの通知音だけは、今でも絶対に設定しないようにしています。