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第一章 ハジメテ
(#1〜)
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目次
絶対零度 #1
#1 「拒絶と絶望」
「何あの目‥カラコンでも入れてんのか?」
「生まれつきらしいぜ?あんなでもな(笑)」
「マジで!?(笑)普通じゃねぇなアイツ!(笑)」
「性格に難ありだし、絶対友達出来ねぇよ(笑)」
「あの目の色何?遺伝?」
「遺伝じゃないと思うよ。まぁ両親見た事ないけど。」
「ハーフとかなんか?」
「んなわけ、あれでハーフな訳なくない?」
「確かに(笑)」
「あいつの目何?カラコン?」
「それだったら不良すぎな?」
「いや不良でしょ(笑)素行不良でさ(笑)」
「確かに(笑)あいつ普通じゃないもんな(笑)」
「それな?」
「ほーんと、」
--- 「気持ち悪い!」 ---
---
--- ジリリリリ‥ジリリリリ‥ ---
「ん‥」
朝6:50を差したまま鳴る目覚ましアラーム。
見過ぎて慣れた夢。変わらない現実。
拒絶というものは、俺にとって普通の事だ。
左右で色が違う瞳。中途半端な身長。無愛想な顔。
自分でもどうにかしようとしてる。
カラコン入れるのはこわ‥なんか受け付けないから無理。身長はこれから伸ばす。そして顔は‥
「にぃー‥」
鏡前で無理やり口角を上げてみるが恐喝してそうな変な顔が出来上がった。だから無理。
時間も時間になってきたから適当なTシャツを着る。俺の持ってる中で一番シンプルな真っ白のシャツ。
まだ傷がついていない新しい制服に腕を通す。着なれていない故に少し腕が動かしづらい。そしてなんだかドキドキする。
同じ制服のズボンを履く。裾が丁度よく、少し緩い腰回りもベルトをすれば丁度いい。
適当な靴下を履いて玄関に行く。履きなれたスニーカーに足を入れ、ドアに手をかける。
ドアを開ければ、最近建てられたばかりの新しいビルが目の前にある。名前はうんたらかんたらピーポーみたいな。違うけど。
近くの桜の花が咲いている。風が吹けば桜の花弁が宙に舞い、世間的に言えば凄く綺麗な風景だ。だが俺はこの景色が綺麗だとは思わない。
アパートの階段を降りればギシギシと、今にも壊れそうな音を立てる。壊れるなら降りた後に壊れて欲しいと思う。背が伸びた草だらけの地面を歩き、歩道へ出る。
歩道から外は一気に整備された世界だ。後ろを振り返った時の落差は凄い。この歩道が新古の境目のように思えてくる。
桜降る道を目を伏せながら歩く。
商店街を通らなければ目的地に辿り着けない為、嫌でも馬鹿にされなきゃいけない。目を開かなければいい事だが、目を瞑って歩ける自信は流石にない。
引っ越して来たばかりなのに一度も商店街は出なかった俺は、完全余所者だ。つまり誰にも知られていない。俺がここまで来て達成したかった目標を達成するには最高の状況だ。
だが今、今だけはそんな事どうでもいい。それ以上に解決しなければいけない問題が出て来てしまった。
「‥商店街何処だ?」
主人公・|篠原《しのはら》|真《まこと》。
彼はこの街に引っ越して来てから商店街に一度も行っていない上に、誰とも知り合いじゃない。つまり商店街まで行けないのだ。
新学期早々遅刻かと言えばそうではない。彼自身が自覚していない気持ち「新しいトコちょっとワクワクする」が無意識の内に行動に出ていた為、7:30に出れば間に合うのに7:00に出て来たのだ。
故に遅刻はしない。が、着きもしない。
絶望オブ絶望。希望の光が一ミリも見えない。
だがそんな時、
「‥アンタ、そこでさっきから何してんの?」
「は?」
救世主が現れた。
書き方よく分からなくなって来ました。
意味不明なところがいくつかありますよね。
すみません。
絶対零度 #2
#2 「星林商店街」
「‥誰だよ。」
この目を見られたら嫌だから目を瞑りながら振り返る。
「いや、それこっちの台詞なんだけど。アンタこの辺の人間じゃないでしょ。」
「‥だったらんだよ。」
「別になんでもないけど?見た事ないから聞いただけ。‥てか、なんで目瞑ってんの?」
「なんでもいいだろ、別に。」
「まぁなんでもいいけど‥もしかして目、見えない?」
「は?」
目が見えないとか思ってた返答じゃなかった事に驚いて目を開いてしまった。目の前にアイツがいるのに。人がいるのに目を見開いてしまった。
「アンタ、その目‥」
「文句とか言うんじゃ__」
「すごい綺麗じゃん!!」
「‥は、」
また驚いた。この目が綺麗なんて、言われたことが無かったから。距離がグッと近づいて鼻と鼻が近付きそうなほどの距離になる。
「〜〜ッ!!!」
「両目で色が黄色と青なの凄‥って、なんで顔赤くなってんの。」
「べべべ別に、なんだっていいだろうがよ!!」
距離が離れたがさっきから顔が熱い。絶対に真っ赤という自信だけはある。
「まぁなんでもいいけど‥あ、それであんた何してた訳?こんなところで。」
「‥商店街に行こうとした。」
「‥商店街真反対だけど?」
「は?マジ?」
「マジよ、マジ。私が来た方向に商店街あるんだから。」
「‥」
恥ずい。この三文字が俺の気持ち。
距離近づいただけで顔赤くなって商店街の方向も間違えてたとか恥ずすぎるだろ‥!
「‥まぁ、私も少しここの花に水やり来ただけだから商店街連れてこうか?」
「!本当‥か?」
「ここで嘘ついて私に何の得があんのよ。水やり終わったから連れてってあげる。ほらおいで。」
「‥」
なんか犬みたいな扱いされて腹立つ。
でも女だし手出したら問題か?いや、そんな雑魚みたいな考えがある訳じゃなくて道に迷ったら困るからって理由で‥ってこれもダセェな‥
「__グルルルル‥__」
「何犬みたいに敵意剥き出しにしてんのよ、やめて。周りに変な目で見られるから!」
「__プイッ__別にお前がどう見られようが俺には関係ない。」
「最っ悪‥商店街に連れてってあげてるのは誰だと思ってるんだか‥」
「お前。」
「わかってんじゃんアンタ‥__イライラ__」
歩幅のほぼ同じ二つの足がコンクリートを踏み歩く。アイツも俺もスニーカー、足音は平坦な音。
「‥はい、我らが《《星林商店街》》!」
上に|星林《せいりん》商店街の看板があり、その下には風鈴が吊るされている。
「‥なんで風鈴が。」
「あぁ、あれ?あれね、よぉ〜く見ると星の風鈴なのよね。」
「星?‥あぁ、確かに。」
「昔は風船飾ってたんだけど、そしたら鳥とかに壊されちゃってさ。それで他に星のやつって探したら、あの風鈴があったって話。」
商店街内に入りながらアイツが話す。風が吹き、風鈴の音が聞こえる。
「ほ〜‥いや、星なんて風鈴以外にもあるくね?」
「確かにあった。だけど量がそこまで多く作れない物ばかりだったの。この辺じゃね、店なんてこの商店街以外ないのよ。」
「‥っそ。」
「ったく、聞いて来たのアンタでしょうが‥」
やれやれと口に出しながらアイツがまた喋る。
「アンタ、まだ学校まで時間ある?」
「は?んで学生だって‥」
「いやアンタね、自分が今どんな服装してるかも覚えてないわけ?怖いんだけど。」
「あ」
「はぁ‥まぁ、学生だってわかった理由は伝わったとして。時間、あるの?」
「‥いま何時か知らねぇ。」
「今は7時10分。8時登校だから間に合う。」
「間に合うってわかってんじゃねぇか‥」
「学校には間に合うけど、アンタがその前に予定あったら困るでしょ?だからこの優しい《《ことは》》ちゃんが態々聞いてあげたというのに‥」
「‥ことはちゃん?」
「え?あぁ、ことはってのは私の名前。|鳴海《なるみ》|琴葉《ことは》!案内してあげたお礼に覚えといてよね!」
「‥」
んだこいつ。して“あげた”て。
勝手に言い出したのお前だろ‥
「‥まぁ、覚えられたらな。」
「うわ最低。そこは嘘でも『覚えとくに決まってるじゃん』って言うところじゃん!」
「そんなの知らねぇし。」
「うっわ〜‥ったく、私だけ名前教え損じゃん‥__ブツブツ‥__」
「‥」
別に、感謝とかじゃない。ただフェアじゃないのは確かになと、思っただけで。
「‥篠原真。」
「‥え?」
「俺の名前、そっちこそ覚えとけよ‥琴葉。」
「!ふふふっ、アンタ人の名前覚えれるじゃん!」
「覚えれるに決まってんだろ!馬鹿にすんな!」
「アンタが『覚えられたらな』とか言うからでしょ!」
「あ゛ー!!だからそれは___!」
「おや琴葉ちゃん‥荒々しいボーイフレンドが出来たのかな?」
「違います!こんな奴が彼氏だなんて、死んでも嫌!」
「勝手にか、かかか彼氏とか言うんじゃねぇ!」
「さっきからアンタ照れやすすぎな。もうちゃい落ち着け落ち着け。」
「〜!!!__イライラ__」
「ほっほっほ‥琴葉ちゃん、今から《《カフェ》》に戻るのかい?」
「えぇ。もう開店してるし、お客さんが注文あったら大変だから今すぐにでも。」
「じゃあ、ワシもいこうかな‥」
「カフェまで歩けます?支えましょうか?」
「年寄り扱いすんじゃないよ(笑)でもそうだねぇ‥そこの男!」
「はっ!?俺!?」
「ここにアンタ以外、何処に男がいるんさ。」
「‥」
「という事で力持ちそうな少年、ワシをカフェまで運んでおくれ。」
「絶対に嫌だ。」
琴葉ちゃん好きです。自分の好みつめつめ。
絶対零度 #3
#3 「カフェ」
「‥はい、お疲れ様。」
今さっきあの婆さんを下ろしてきたところだが、物凄く疲れた‥肩が痛ぇ‥腰折れた‥
カフェのカウンター席に一人で座る。一人なのにブロック席座る意味はねぇ。
「‥サンドイッチ?」
椅子に座って目の前に出されたのは卵サンド。
認めたくないが美味そうな見た目をしている。
「あ、嫌いだった?」
「‥いや、嫌いじゃねぇけど。」
「そう、よかった。さぁさ、食べて食べて!」
「客を急かすなよ‥」
サンドイッチを手に持ち、口元へ運ぶ。出来立てなのか、暖かくほわほわな卵が凄く美味い。パンも柔らかく、冷たくない。今まで食べたことの無いほど美味い。
「うっま‥」
「あ、そう?それならよかった!」
ニコニコと効果音がつきそうなくらい笑顔な琴葉。感想言うだけでそんな喜ぶのか?
「アンタ‥いや、真は|星蘭《せいらん》行くの?」
「星蘭?何処だそこ?」
「は?アンタ、はぁ?」
琴葉が化け物を見るような目で俺を見る。星蘭が何処か知らないって言っちゃ悪いのかよ。そんな有名なのか?星蘭とやらが?
「いや、星蘭って、アンタの制服の学校なんだけど‥」
「は?」
今度は俺が驚いた。今から行くとこ星蘭って言うのか。知らなかった。
「ちょっと待ってよちょっと待って、通う学校の名前すら知らなかったって‥え?」
「んな驚かれても知らねぇもんは知らねぇよ。」
「‥呆れた。そんなんで学校の場所わかるわけ?」
「まぁ、デカい建物いけば学校だろ。」
「まぁね‥って、アンタ本当に情報持ってないのね。」
「喧嘩が強いって事以外興味ねぇよ。馴れ合いなんかするつもりはない。」
「あっそ‥私から一つだけアドバイス。星蘭の事、舐めない方がいいわよ。」
「?」
「ここ、学校に近いからよく星蘭の生徒が来るのよ。その時話してる内容が『今日の相手は雑魚だった』とか『明日は金を集めてこい』とか、物騒なのばかり。」
「‥」
「あそこは喧嘩の強さで価値がつくのよ。真、引き返すなら今。死にたくなければやめなさい。」
「やめねぇよ。」
「‥どうして?」
「死んでも構わないからだ。弱い奴は死んでもしょうがない。負けるのは、俺が弱かったってだけだ。」
「‥そう、死んでも成仏しないのはやめてね。私呪われたくないから。」
「呪わねぇよ。」
「なら安心安心!‥あ、もう40分だ。そろそろ学校行った方がいいのかな。」
「遅刻しても平気だろ。」
「駄目駄目、初日から遅刻は絶対駄目!!」
「ほーん」
「あ、真面目に聞いてない!」
別に不良校なら周りもそんな感じだろ。全員遅刻とかあるかもしんねぇし。俺一人にどうこう言わなくてもいいだろ。
「‥しょうがない、使いたくなかったけど《《アレ》》使うしかないか‥」
‥アレ?なんだよ、他校のヤンキーでも呼ぶのか?それか‥なんか?
「‥あ、……うん、わかったから静かにしてくれる?‥あ、で本題なんだけど〜……うん、あの、話聞いてくれる?……だから聞けって。」
「‥」
琴葉が誰かと電話し始めた。相手はどうやら話を聞かない奴らしい、話し方的にそう。
電話先の相手がアレなのか?
「…だから、アンタに話したい事があってさ。……うん、だから私……あ〜、今カフェにアンタに会わせたい人いてさ。」
ん?
「だから早く来‥ごめん真。」
「あ?」
「めんどくさい事になっちゃった☆」
「は?」
絶対零度 #4
#4 「兄と真」
あの電話から少し‥4〜5分程たった頃だか。
カフェの外からドタドタ走る音が聞こえて来たと思えば、すぐにカフェの扉が勢いよく開いた。
「琴葉ぁ!彼氏とやらはどいつだぁ!!」
そう叫びながら。
は?彼氏?
「だから彼氏じゃないって言ってるでしょ‥」
「いや、じゃあ要件はなんなんだ!?」
「コイツ。」
「は?」
琴葉が俺のことを指さした。コイツ呼びすんな。
「コイツ、制服見たら分かるだろうけど青藍の新入生なの。だけど星蘭までの道がわからないらしくて‥連れてってやってくんない?」
「あー!彼氏じゃないのかぁ!なら良かったわ〜!」
「‥」
んだコイツ。
「えー‥お前、星蘭一年になんの?」
「‥だったらなんだよ。」
「いやいや、新入生が来るの楽しみだな〜と思っただけだ!」
「‥?お前、星蘭の奴なのか?」
「?あぁ、そうだけど?」
「‥強いのか?」
「まぁな?」
「ちょっと二人とも‥」
「へぇ‥強いのか。」
「強くなきゃ俺は星蘭にいないからな!舐めるんじゃないぞ?」
「‥なら、案内しろ。俺を星蘭とやらにな。」
「ちょっとアンタ生意気すぎ。一応物頼む相手なんだから少しくらい敬語使ったりさ‥」
「いやいや、愛しの琴葉よ。」
「誰が愛しのだ。私は愛してない。」
「寂しいなぁ〜!!」
「おいイチャコラすんな。」
「してないわ。兄妹でイチャコラとか有り得ない。」
「‥兄妹?」
「それは‥面倒だからあっちから聞いて。ほらほら行った行った!時間ヤバいよ!」
「おい、追い出すな!客だろ俺!!」
背中を扉の方まで押して追い出そうとしてくる。
俺客だよな?おかしくないか?
そんでもってもう一人は‥
「琴葉ってばツンデレだな〜!!」
駄目だ。頼りにならない。
「学校終わったらまたおいで!!」
バタン‥
閉められた。追い出されたぞ。‥時間ヤバいのは理解したが、遅刻してもいいだろ。
「さて!初日から遅刻は俺の顔に泥を塗る行為‥やめてくれよな?」
笑顔で圧をかけられるのはこれ程まで恐ろしい事なのか。流石に逆らう気にはならなかった。
まるで天使の皮を被った悪魔だな。
「‥」
「星蘭は商店街の入り口から反対のあっちにある。建物も〜‥頑張れば見えるんじゃないのか?」
「雑だな。」
「別にいいだろ。」
「‥お前、名前は?」
「ん?名前か?ん〜‥ま、秘密?」
「は?」
「やだよ〜どうせ後で名前分かるのに今言うの〜!」
「‥」
アホらし‥こいつも星蘭生なのかよ‥
「‥あ」
「?どうかしたか?」
「お前と琴葉って、兄妹なのか?」
「んー‥まぁ兄妹だな?」
「なんだその曖昧な返事。」
「兄妹だけど兄妹じゃないって言うか‥あ、血の繋がってない兄妹ってやつ!」
「両親が別って事か。」
「それそれ〜!俺は父さんが違うし、琴葉は母さんが違う。」
「‥なんか、聞いて悪かったな。」
「気にしなくていいぞ!血が繋がってなくても、俺達は兄妹だからな!」
「‥っそ。」
血が繋がってない兄妹、か。琴葉のあの拒絶はそれ故なのか照れ隠しなのか‥いや、どちらでもないか?
「あ‥すまない‥えー‥名前なんだっけ?」
「篠原真。」
「真か。‥すまないが学校まで案内できそうにない。」
「は?なんでだよ?」
「個人的な事情があってな。少し遅れる。」
「自分で自分の顔に泥を塗るのか?」
「いや、これは自分の威厳を保つ為の行動だ。」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ。突然何を言い出すかと思えば真面目に話しやがって。
「喧嘩か?」
「‥はぁ‥まぁそうだな。他校の奴等がちらっと見えた。多分星蘭生探してる。」
「だったら俺も行く。」
「いや、やめておけ。遅刻したら大変な事になるぞ。」
「行くっつったら行くんだよ。」
「来るな。お前がどれほど喧嘩が強いか知らないが、気を使うのが面倒だ。」
「‥」
んだよ面倒って‥あ”ーイライラする‥!!
「行くっつったら行くんだよ!連れてけ!!」
「お前いくつだよ!?本当に一年か!?」
「一年だよ悪かったな!」
ギャーギャー騒ぎ散らかす。名前も出身も学年も何も知らない目の前の人間と口論。中々におかしいな。
「だー!わかったわかった!じゃあ‥挟み撃ちにしよう!俺は右に行くからお前は前に進んでいけ!わかったな!?」
「おう、任せとけ。」
「んじゃ‥解散!!」
アイツは右へ、俺は前に突き進んでいく。桜並木を走り抜けて前へ前へと進んで行く。
だが一向に敵の姿は見えない。人もいない桜並木をただ走っているだけ。走るスピードを落として歩いて行く。‥やっぱり、
「敵がいねぇ‥?」
あるのは、目の前の落書きだらけの建物だけ。
学校らしき面影はあるが、それを学校と呼ぶには難しい。落書き落書き落書き落書き‥
校門の横にある板に何か文字が書いてある。掠れて読みにくいが、読めないほどじゃない。
【星蘭高校】
「‥は?」
待て待て待て。アイツは何処へ行った。俺は何故学校の前に?
‥アイツ、連れてく振りして学校に案内しやがったな。本当は連れてく気なんて初めから無かったってか?ふざけんじゃねぇ。次会ったら絶対ぜってぇぶっ殺す。
ここまで来てあいつを探し出すのは面倒だ。一つ舌打ちをしてから、敷地内へと足を踏み入れた。