ある日カラフルピーチのシェアハウス前に、1人の少女が倒れていた。
少女は『さくら』と名乗り、シェアハウスでスタッフとして働き始めた。
記憶喪失と思われた少女だが、実はとんでもない存在だったようで。
夏コラメンバー達の一年に及ぶ、不思議な物語。
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目次
0 キャラクター紹介
精霊名
年齢
フルネーム
どの花の精霊か
サクラ
19歳
|春野咲良《ハルノサクラ》
|染井吉野《そめいよしの》の精霊
スミレ
22歳
|青井純恋《アオイスミレ》
|菫《すみれ》の精霊
ナズナ
22歳
|城山なずな《シロヤマナズナ》
|薺《なずな》の精霊
アヤメ
25歳
|綾小路芽衣《アヤノコウジメイ》
|菖蒲《しょうぶ》の精霊
ヒマワリ
17歳
|和田陽鞠《ワダヒマリ》
|向日葵《ひまわり》の精霊
アサガオ
21歳
|大空朝顔《オオゾラアサガオ》
|朝顔《あさがお》の精霊
ツツジ
16歳
|橙闇躑躅《トウヤミツツジ》
|躑躅《つつじ》の精霊
ツユクサ
23歳
|草詰露水《クサヅメツユミ》
|露草《つゆくさ》の精霊
ツバキ
20歳
|冬咲翼《フユサキツバサ》
|椿《つばき》の精霊
サザンカ
25歳
|茶山王花《チャヤマオウカ》
|山茶花《さざんか》の精霊
チューリップ
19歳
|中野梨風《ナカノリフ》
|鬱金香《ちゅーりっぷ》の精霊
スズラン
23歳
|蘭堂観鈴《ランドウミスズ》
|鈴蘭《すずらん》の精霊
ヒヤシンス
21歳
|新庄冷《シンジョウレイ》
|風信子《ひやしんす》の精霊
マーガレット
27歳
|曲屋莉斗《マガリヤリト》
|木春菊《まーがれっと》の精霊
コスモス
20歳
|秋原こすも《アキハラコスモ》
|秋桜《こすもす》の精霊
クローバー
21歳
|草詰よつば《クサヅメヨツバ》
|白詰草《しろつめくさ》の精霊
ホウセンカ
24歳
|鳳聖香《オオトリセイカ》
|鳳仙花《ほうせんか》の精霊
ナノハナ
24歳
|油木菜々子《ユギナナコ》
|油菜《あぶらな》の精霊
ハナミズキ
18歳
|花山瑞樹《ハナヤマミズキ》
|花水木《はなみずき》の精霊
1 始まりは突然に・・・
なおきり「ポピーちゃーん♪今日も綺麗だねぇ」
カラフルピーチシェアハウスの植物担当、なおきりは、いつものように温室にこもっていた。
なおきり「あっ、庭の水やりもしないと・・・」
一通り世話を終えて、なおきりは外に出た。お気に入りのジョウロを手に、門のそばの花壇に向かった・・・のだが。
なおきり「どわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ⁉︎」
じゃぱぱ「なお兄・・・。いやほんと何してくれちゃってるんですか」
なおきり「すいません・・・放っておけなかったんですぅ・・・」
医務室のベッドに、ベージュ色の髪の少女が寝ていた。
さっき門のそばに倒れていたのだ。なおきりはその少女に驚いて、悲鳴をあげていたというわけだった。
るな「目を覚ましました!」
じゃぱぱ「よかった!君、名前は⁉︎」
?「私の・・・名前?『さくら』です」
さくらは医務室をくるくると見渡す。見たことがないものばかりなのか、ベッドを抜け出して部屋の色んなものを見て回っていた。
じゃぱぱ「さくらさん、君はどこから来たの?」
さくら「わからない、です。自分の名前と年齢以外の記憶が、全部すっ飛んじゃってて」
じゃぱぱ「記憶喪失か・・・。よかったら、ここに住む?」
さくら「いいの?」
じゃぱぱ「まぁしょうがないからね・・・。思い出すまでここにいていいぞ」
さくら「ありがとうございます!」
そうして、さくらはシェアハウスの一室を借りて過ごすようになった。
そして数日が経ち、じゃぱぱ達にとって一番忙しい時期がやってきた。
そう、『夏コラ』だ。
カラフルピーチのスタッフとして手伝っていたさくらも、例外なく仕事に追われた。
記憶を取り戻す暇などない。
えと「さくらちゃん!ごめん、それ持ってきてもらえる⁉︎」
さくら「あ、これ?いいよ!」
たっつん「さくら!すまんこっち手伝ってくれ〜!」
さくら「はい!ちょっと待っててください!」
さくらはさまざまなメンバーに呼ばれ、せわしなく働いた。
じゃぱぱ「さくらさん、ありがとう。休んできていいよ!」
さくら「あ、はい!わかりました!」
さくらはお気に入りの場所____図書館に行った。
さくら「疲れた〜」
さくらは椅子に座るなり、大きく伸びをして机に突っ伏した。
暇だったため何か読もうと思い、机にたまたま置いてあった本を手に取った。
さくら「宇宙図鑑かぁ。なんか運命的なものを感じるな」
ぺらり、と表紙をめくり、適当にページをペラペラと選んでいると、ある星座が目に止まった。
さくら「乙女座・・・?」
無意識にそのページを開き、詳しく読んでみる。
説明には特に気になることはない。気になったのは、写真の方だった。
さくら「ヒメユリ、ちゃん・・・」
不意にその名前が口から溢れ、涙が溢れた。
さくら「あ・・・ああああああ・・・。全部、思い出した・・・。何もかも、全部・・・っ!」
忘れていた記憶は、悲しく残酷で、残虐であった。
さくらのキャラデザ
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2 忘れたかった現実
もふ「ん?なんか泣き声が・・・」
図書館の担当だったもふは、中から泣き声が聞こえるのに気がつき、そっと覗いた。
もふ「ちょっ、さくら⁉︎なんで泣いてんの⁉︎」
さくら「え?あ・・・。すみません、この本に感動しちゃって」
さくらは咄嗟に別の本を取り出し、見せた。
偶然にも、それは感動ものの小説だった。
もふ「あー、なるほどね。よかった、なんか怪我したのかと思った」
もふは特に気にせず、図書館を出て行った。
サクラ「ヒメユリちゃん!絶対助けるから!」
『いや、いい。もう私は助からない』
サクラ「そんな!みんなで生き延びようって決めたじゃん⁉︎」
『サクラ、わかってくれ。私は・・・君達をこの手で殺したくないんだ』
サクラ「いや、いやあぁぁぁぁぁぁ!ヒメユリちゃん!ヒメユリちゃぁぁぁぁん!」
?『もう無理よ!早く諦めて!』
サクラ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!嫌だ!死なないで!」
`どこにも行かないで!`
あの日起こった悲劇を、サクラは忘れていた。
受け入れたくない現実だった。
忘れていた方がよかった。
あの日、サクラが誰よりも仲良しだと思っていた親友・ヒメユリは、
サクラの目の前で、化け物になった。
そしてそのまま、名前もわからない仲間達に討伐されてしまったのだ。
さくら「ヒメユリちゃん・・・ごめんね。助けられればよかったのに・・・」
サクラは後悔するばかりだった。
そして翌日、さくらはいんくのスタッフ2人と会うことになった。
じゃぱぱ「ふうはやさん、どうも!」
ふうはや「いえいえ!こちらこそ!」
さくら「初めまして、春野咲良です」
ふうはやの後ろから出てきたスタッフを見たさくらは、息を呑んだ。
なずな「あ、えーと・・・城山なずな、です」
すみれ「青井純恋です。よろしくお願いします」
さくら「3人だけで話したいので、お二人とも外に出ててもらえますか・・・?」
じゃぱぱとふうはやが出て行った後、さくらはやっと思っていたことを口にした。
さくら「ナズナにスミレ・・・⁉︎2人ともいんくのとこにいたの⁉︎」
すみれ「それはこっちのセリフよ!スタッフは記憶を失ってるって聞いていたのよ」
なずな「やっぱりヒメユリのこと、か・・・?」
さくら「うん、思い出さない方がよかったかもしれない・・・」
すみれ「サクラ、ヒメユリには特に懐いてたものね。大切な友達をあんな形で失うなんて、記憶喪失になるのも理解できるわ」
さくら「他の仲間もいたよね。ヒマワリやアヤメ達は・・・?」
すみれ「みんなネットで見つけて、LINEも交換したわ。いつでも連絡できるわよ」
さくら「スミレすごーい!」
なずな「とりあえず、あまり長々と話をするのもまずい。聞かれる前に切り上げるぞ」
さくら「そうだね」
裏話
ヒメユリという名前は、修学旅行の行き先が沖縄であることから思いつきました。
平和学習をしたことある人なら、何が由来かわかりますよね・・・?
すみれのキャラデザ
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3 サクラの仲間
サクラ視点
スミレとナズナに仲間達のIDを教えてもらって、私も友達登録した。
すでにグループが出来てて、私も招待された。
サクラ「みんな!遅くなってごめん!」
ヒマワリ「大丈夫、事前にスミレ先輩から聞いてます」
アサガオ「記憶を失っていたんだよな・・・。ヒメユリのこともあったし」
クローバー「ヒメユリちゃんが亡くなって、もう1年が経つんですね・・・。あの時はほんとにショッキングでしたよね」
ヒヤシンス「とにかく、今わかっていることを報告するわ。私は今、新庄冷って名乗ってる。地球では、今のところ怪異症候群の影響は出ていないわ」
ハナミズキ「僕たちはすでにワクチンを飲んで対策してる。そして日本のどこかに、怪異症候群のウィルスを作った人物がいるみたいだ」
ツツジ「ハナミズキに頼まれて、そいつの場所も特定したよ。彼奴は秘密結社クラリスに所属していて、その本拠地が東京スカイツリーの真下なんだよ」
アヤメ「スカイツリーの真下・・・。すごいとこを選んだのね。報告ありがとう」
みんな普通にチャットしてる・・・。無事に逃げられたんだろうな。
さくら「これ、他のメンバーには見せないでおこ・・・」
私はチャットを非表示にして、アプリにロックをかけて、スマホの電源を切った。
ツバキ視点
僕・ツバキは、地球に逃げ出して『冬咲翼』と名乗っていた。
翼「露水、どうする?サクラに会いに行くか?」
露水「そうねえ。私達の生い立ちは言わない方がいいわね」
ともに行動しているツユクサは、草詰露水という偽名で暮らしている。クローバーと姉妹という設定だ。
もちろんクローバーと露水は仲良しだけど、姉妹じゃない。そもそも精霊に姉妹の概念があるのかも謎、だけど。
翼「スミレ達の情報では、『カラフルピーチのシェアハウス』だったはず。調べれば出てくるかな」
露水「ビンゴ。出てきたわよ。はい」
露水が見せてくれた画面には、シェアハウスの住所が書かれていた。
翼「もしかして、お得意のハッキング?」
露水「ええ、まあね。UUUMの公式サイトの詳細ページを、ちょちょいと見てきただけ」
翼「すごいな、露水」
露水「犯罪スレスレだし、褒められた特技ではないけどね」
翼「まあ確かに」
俺・サザンカは、チューリップ、スズランと合流し、チャットでも話題が出た秘密結社クラリスについて、調査を進めていた。
ちなみにこっちでは、『茶山王花』って名乗ってる。女みたいって思うかもしれないけど、これでも必死に考えた名前だ。
王花「ほんとにここで怪異症候群のウィルスが・・・?」
梨風「多分ね・・・。このまま野放しにはしておけないわ」
チューリップは中野梨風、スズランは蘭堂観鈴という名前を名乗ってる。こっちで暮らすには、名字ありの漢字名の方がいいだろう・・・と、俺が提案した名前だ。
王花「まずはサクラ達と合流しなきゃな」
観鈴「だね。アタシ、ツユクサからサクラのいる場所を聞いてる。秘密結社の場所はわかったし、早く行こ」
王花「そうだな」
なずなのキャラデザ
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4 動き出す事態
咲良視点
スミレ達との再会から、数日が経った。
最近、私は心配してることがある。
咲良「まただ・・・。」
最近、みんなが帰ってくるのが遅いんだ・・・。
咲良「部活があるとしても、9時を過ぎてまだ帰らないなんて、おかしいよ・・・」
ゆあんくん、るなちゃん、どぬくくん、えとちゃん、ヒロさん、うりさんは、学生なので部活があるのは知ってる。
でも・・・こんなに遅くなるなんて変だ。それに、全員帰ってこない、なんてことある?
偶然ならまだ納得できる。でも、それが何日も連続で・・・⁉︎
咲良「絶対おかしい。明日も帰ってこなかったら、みんなを呼ぼう!」
そうしてみんなが帰ってきたのは、10時を過ぎてからだった。
純恋視点
純恋「あら?咲良から連絡だわ」
なずな「何があったんだ?」
純恋「カラフルピーチのメンバーが、毎日夜遅くまで帰ってこない・・・ですって。明日帰らなかったら、その隙にみんなを呼びたい、だそうよ」
なずな「あたし達のとこと似てるな。いんくも最近深夜に帰ってくるよな?」
純恋「そうね。しゅうとと同じ大学に通ってるヒヤシンスとコスモスも、最近様子がおかしいって思ってたみたいだわ」
なずな「事件のにおいがプンプンするぜ。クラリスが動き出したか?」
純恋「その可能性が高いわね」
クラリス・・・。ふうはやさん達に一体何をしたの⁉︎
冷視点
私・・・ヒヤシンスは、こっちにきてから新庄冷と名乗っている。スミレ達が言っていた登山秀治(いんくってグループでしゅうとという名前でやってるらしい)や、同期生の玉木玲於奈ちゃん・・・たまちゃんと仲良くなって、時々3人で並んで帰っていた。
けど、最近彼等の様子がおかしい。部活がない日も学校に残るようになったし、精霊仲間のコスモス(今は秋原こすもって名乗ってるみたいだけど)も、学校での2人の態度がよそよそしいと思ったらしい。
冷「絶対何かあるわ・・・。あんなに仲良かったのに、突然こんなことになるなんて有り得ない」
こすも「例のクラリスかもしれないですね・・・。流石に違和感がありすぎます」
冷「やっぱりそうよね。今日、一緒に2人を尾行しましょう」
こすも「ですね。私は玲於奈さんを追います。冷さんは秀治さんをお願いします!」
冷「わかったわ。2人を見たら追跡開始よ」
こすも視点
こすも(玲於奈さんは・・・いた!)
私は玲於奈さんを見つけ、尾行を始めました。冷さんも秀治さんを見つけて追っているみたいです。
玲於奈さんは私に気づく様子もなく、キャンパス内の裏庭を抜け、裏路地に入り、そこでピタリと止まりました。
こすも(一体何を・・・?)
その途端、玲於奈さんの体は煙に包まれ、巨大な猫の化け物に変わってしまったんです!
こすも(⁉︎)
私は咄嗟に、音を立てないように写真を撮影しました。
化け物は低い鳴き声を発して、どこかに消えてしまいました。
こすも「まさか・・・怪異症候群のウィルスに感染してしまったんですか⁉︎」
怪異症候群は、恐ろしい病です。
飛沫感染はしないため、離れていれば大丈夫なのですが・・・。何かの拍子に水に溶け、それを飲んでしまえば、感染はあっという間に広がります。簡単に言えば、空気には不利で、水には有利なんです。
そうこうしているうちに、冷さんからも連絡が来ました。
こすも「やっぱり・・・!」
冷さんのLINEには、『嫌な予感はしてたけど、やっぱり怪異症候群に感染していたんだわ』『何だか人が変わったみたい・・・。一般人を追い回して笑ってる』というメッセージが来ていました。そして、秀治さんと思われる何かが映った写真もつけられています。後ろ姿だけでもわかる恐ろしさ・・・。まるで死神のようです。
こすも「早くサクラさん達に伝えなければ!」
私はこれ以上被害者を出さないために、動くことを決めたのです。
裏話
今回初めて怪異が登場しましたね。
実は、これから出てくる怪異の大半は、登場するグループの動画が元になっているんです。
誰がなんの動画に出た怪異になっているのか、考えながら見てみてください。
5 仲間達、大集合
さくら視点
翌日。
やっぱりみんな夜になっても帰ってこなかった。
咲良「みんな呼ぼう」
私はチャットに『みんな出てった。住所送るから来て』と送った。
あっという間に既読が18ついた。
アヤメ視点
私はアヤメ。今は綾小路芽衣って名前だけどね。
チャットにサクラからメッセージが来ていた。『住所送るから来て』と書いてある。
芽衣「あー。ここね」
ヒマワリ「みんなと合流したいですね。行きますか?」
芽衣「そうね。みんなも向かってるでしょうし」
私はヒマワリ・・・今の和田陽鞠と一緒に、サクラがいる場所に向かった。
アサガオ視点
朝顔「ここか・・・」
オレ・大空朝顔は、サクラがいるシェアハウスの前にたどり着いた。
サクラ「あ!アサガオ!みんな!」
サクラがオレ達に気付いて手を振ってきた。
朝顔「ここに住んでたんだな」
ホウセンカ「おっきいわねぇ」
ナノハナ「やっと合流できたなぁ!みんな久しぶりに会うわ」
ナノハナは、相変わらずの田舎訛りで呑気な発言。みんな変わっていないみたいだ。
サクラ「とにかく上がって。今のうちに話をしよう!」
ナノハナ視点
うち・ナノハナは、油木菜々子と名前を変えて過ごしてた。
田舎訛りは治せそうにないけど、まあこっちでいう関西弁みたいなもんやしなぁ。
困らんしええか。
菜々子「みんな名前変えてんねやろ?一旦言っとこ」
よつば「そうですね。私は草詰よつばです。ツユクサさんと姉妹ってことにしてます。ツユクサさんは草詰露水、ツバキくんは冬咲翼です」
咲良「私は春野咲良。スミレは青井純恋、ナズナは城山なずなだって」
芽衣「私は綾小路芽衣よ。ヒマワリは和田陽鞠って名乗ってるわ」
王花「俺は茶山王花。チューリップは中野梨風、スズランは蘭堂観鈴だ」
冷「私はチャットでも言ったけど、新庄冷。コスモス、秋原こすもと同じ大学に通ってるわ」
朝顔「オレは大空朝顔」
躑躅「ボクは橙闇躑躅。花山瑞樹ことハナミズキと、曲屋莉斗ことマーガレット、鳳聖香ことホウセンカと共に行動しています」
菜々子「うちは油木菜々子!元ナノハナや!」
咲良「みんな紹介は終わったね。それじゃ、話を始めるよ。実はね、カラフルピーチメンバー全員が、夜遅くまで帰って来ないの。純恋となずなも、いんくメンバーの様子がおかしかったみたい」
純恋「この感じじゃ、夏コラボ相手のぷちひな、たまちゃんにも被害が及んでいそうね」
冷「そのことなんだけど。私とこすもが、真相を突き止めたわ」
咲良「え⁉︎ほんと⁉︎」
冷「ええ。おそらく、夏コラ参加者は全員怪異症候群感染者よ」
菜々子「なんやて⁉︎証拠は⁉︎」
冷「私とこすもで撮った写真があるわ。これを見てちょうだい」
冷がスマホを見してくれた。その写真には、大きな化け猫と死神?っぽいやつが映っとった。
菜々子「これ・・・ヒメユリの時とまるっきり症状が一緒や!」
こすも「ヒメユリちゃんのような被害者を、これ以上増やすことはできません。私達で止めるんです」
咲良の顔が少し陰った。けど、すぐに顔を上げた。
咲良「みんな、カラフルピーチといんくとぷちひなとたまちゃんを、無事に救い出そう!」
全員「おー!」
なんや楽しそうなことが始まる予感やで!
芽衣のキャラデザ
https://firealpaca.com/get/6iH5hBWq
裏話
実は最初、ナノハナというキャラはいませんでした。さくら達に加えて生きてるヒメユリちゃんで19人の予定だったのですが、せっかくなのでこのサイトで出会った親友の名前からナノハナちゃんを作ったんです。
いつもファンレター書いてくれるあなたなら、わかってくれますよね!
6 それぞれの違和感
じゃぱぱ視点
ある時を境に、俺は夕方以降の記憶が飛ぶようになった。編集を終えておやつを食べに下に降りて・・・。気がつくとベッドで寝ている、なんてことが何日も続いた。
今回のことが関係してるのか、スタッフとしてやってくれてるさくらさんにも避けられてる気がする。
こんなことが起き始めたのは、いつからだ・・・?
そうだ、黒髪の女性にもらった、あのエナドリを飲んだ時からだ。
なんで記憶が飛ぶんだ・・・?いわゆる夢遊病・・・というやつなんだろうか。
じゃぱぱ「考えてもわからないや」
とりあえず、編集作業に集中しよう。
ふうはや視点
最近、体がすごく疲れる。
6時くらいに眠くなってうたた寝して、起きたら朝になっていて。まるで町中走ってきたみたいに身体中が痛い。
思えば、黒い髪の怪しい女の人がくれたジュースを飲んでから、こんなことが起こってる。
あのジュースに何か入ってたのか・・・?
捨てたはずのジュース缶を拾って、裏の表示を見た。特に何も入ってない。
他のメンバーもみんなもらって飲んだらしいけど、俺と同じことが起きてるのかな?
スタッフの純恋ちゃんとなずなちゃんにも、最近警戒されてるような・・・。
2人ともどうしちゃったんだろう?
ぷちぷち視点
ここ数日、体がだるい。いくら寝ても疲れが全っ然取れない。特に首の痛みがすごい。
俺そんな首使うようなことしてないんだけどな。
少し前にやってきたスタッフの朝顔くんは、俺を心配してるのかじっと見つめてくることが多くなったし。
ひなこも同じような違和感を感じていたみたい。お風呂に入ったはずなのに、いつも体が臭いって嘆いている。
そんな匂いするかな?俺はわからない。
あの時お店で買ったジュースを飲んだら、こんなことが起こってる。あの時店員だった黒髪の女は、次行ってもいなかった。
誰だったんだろ、あの人・・・。
たまちゃん視点
この頃、同期の冷ちゃんと後輩のこすもちゃんに避けられちゃってます・・・(泣)
私何かしちゃったかな?
でも、ここ最近調子が出ない。
実況してる時も高音が掠れるし、今まであまり食べなかった魚を無性に食べたくなったり・・・。
夕方5時ごろから夜10時くらいまで、記憶が途切れることもある。
あの時黒髪の女の子がくれたお茶を飲むまでは、こんなことなかったのにな・・・。
部屋に監視カメラでも置いてみようかな?
それで私に原因があったら笑えないけどね・・・。
7 ヒメユリの独白
ヒメユリ視点
私はヒメユリ。
花の国に暮らしていた、百合の精霊だ。
私は一年前に死んだ。あの時はヘマをしちまったよ・・・。
ああ、こんなこと言われても、君にはわからないよな。きちんと順を追って説明するから安心してくれ。
まず、私達の存在について、だな。
簡単に言えば、私達は宇宙人だ。つまりは、地球とは違う星___精霊の星に暮らしていた。
その星には、花の国、空の国、宝石の国、音の国、水の国があった。
そして、その国全てに面する湖、フェミニ湖が全ての元凶だったんだ。
フェミニ湖は水の国にたった1人で暮らす、アクア女王が管理していた。だが、アクア女王は何者かに暗殺され、フェミニ湖に有害物質が流された。
そう、クラリスが開発した、怪異症候群のウィルスだ。
怪異症候群のウィルスは飛沫感染はせず、水を通して感染する。これだけ聞けば「え、そんなんすぐ収まりそうじゃない?」って思うかもしれないね。でも、そうじゃないんだ。
あのウィルスは特殊でね。水に溶け込みさえすれば、爆発的に増殖しながら広がってしまうんだ。そして、それを知らずに水を飲んだ国の人々は、次々に怪異に変貌して暴れ始めた。花の国以外の国は全て滅亡してしまったんだ。
私は宝石の国、空の国、音の国の人々と関わりがあったから、一部の人は助けることができた。でも、怪異と戦っている最中に私はフェミニ湖に落ちたんだ。
多分その時に、水を飲んでしまったんだろう。それでもすぐには気づけなかった。その時私は3国の人々に頼み事をしたんだ。「私が死んでしまったら、みんなの力を私の仲間に託してくれ」とね。
そして仲間たちのところに戻った時には、私はもう手遅れだった。
すでに怪異に変わりつつあったからな。
サクラ「ヒメユリちゃん?ヒメユリちゃん⁉︎」
ヒメユリ「すまない、サクラ・・・。私、感染しちまったみたいだ」
サクラ「ヒメユリちゃん!絶対助けるから!」
ヒメユリ「いや、いい。もう私は助からない」
サクラ「そんな!みんなで生き延びようって決めたじゃん⁉︎」
ヒメユリ「サクラ、わかってくれ。私は・・・君達をこの手で殺したくないんだ」
サクラ「いや、いやあぁぁぁぁぁぁ!ヒメユリちゃん!ヒメユリちゃぁぁぁぁん!」
スミレ「もう無理よ!早く諦めて!」
サクラ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!嫌だ!死なないで!“どこにも行かないで!”」
ごめんな、サクラ。私は生きていられなかったよ。けど、そのお詫びになるかわからないが・・・。幽霊となってずっと君を見守っているよ。
幽霊の暮らしも意外といいものだ。割と自由がきくしな。
さてと、サクラの夢の中で、また会いに行こう。私が知る情報を伝えなきゃいけないしな。
おっと、かなり自分語りが長くなってしまったな。
話を聞いてくれてありがとう。
亡くなったヒメユリのキャラデザ
https://firealpaca.com/get/88vjudoV
裏話
実はヒメユリの由来は、沖縄の『ひめゆり学徒隊』から来ています。
怪異に1人立ち向かい、サクラ達を守って亡くなったという設定から、ヒメユリが妥当であると考えたんです。
この物語に込めたメッセージは、『戦争の悲惨さ』『病の恐怖』です。戦争の要素を入れつつ、怪異になる病気に立ち向かうストーリー・・・つまり、コロナ禍から立ち直りつつある今の日本を風刺した物語なんです。
8 夢に現れた親友
咲良視点
昨日、私の夢にヒメユリちゃんが現れた。
私は思わずヒメユリちゃんに抱きついちゃったけど、ヒメユリちゃんは黙って抱きしめ返してくれたんだ。それで、いろんなことを教えてくれた。
そして、今回の黒幕のことも・・・。
`この事件の黒幕は、“黒い裏切り者”だ`
`君達は、宝石の国の人々の宝石の力、空の国の人々のスカイハート、音の国の人々の浄化の音の力を使えるはずだ。それを使って敵を倒して欲しい`
黒い裏切り者って、なんなんだろう。
私にはわからなかったし、チャットでみんなに聞いてみた。
純恋「裏切り者って、多分ローズのことね」
咲良「ローズ?」
なずな「ウィザーローズの精霊のローズ。いたろ?黒髪ボッサボサのやつ」
咲良「あ、あーー!いた!紅薔薇の精霊ノバラのお姉ちゃん!」
朝顔「思い出したか。ローズは妹であるノバラを殺害し、地球では高値で取引される天然のブルーローズの種を、安く売り捌こうとしていた。花の国の掟を破った罪で、国外に追放された」
冷「まさかとは思うけど、これ逆恨みなんじゃないの?追い出された腹いせに秘密結社と手を組んで、とんでもないウィルスを作ってばら撒いた・・・」
菜々子「そんなん勝手すぎるやろ⁉︎そんな身勝手な動機で、ヒメユリや多くの人の命が奪われたってことなんか⁉︎」
梨風「でも、そうとしか考えられない。そうじゃなかったら何がある?」
咲良「そんな・・・。ローズは反省してくれるって信じてたのに」
純恋「無理もないわ。あいつ、根に持つタイプだもの」
陽鞠「どうにかして、ローズを止めなければならないんですね」
芽衣「まずは、怪異症候群にかかった人達の救出ね。各国の人々からもらった力があれば、きっと大丈夫だわ」
王花「そうだな。とりあえずいんくのしゅうとさんは冷で決定でいいよな」
冷「そうね。咲良はカラフルピーチの誰かがいいんじゃないかしら」
咲良「うん。じゃぱぱさん助けたい」
ちょうど夏コラメンバーの人数と、精霊達の人数がちょうどだったため、1人につき1人担当することにした。
咲良「みんな!絶対に怪異症候群を治そう!ヒメユリちゃんの遺志を継ぐんだ!」
全員「おー!」
彼らの決意を見届けていた幽霊ヒメユリは、微笑んで見守っていた。
ヒメユリ(君たちなら大丈夫だ。私はずっとそばにいる。最後まで見届けるからな・・・)
陽鞠のキャラデザ
https://firealpaca.com/get/uQh2ocT5
9 ローズの身勝手な主張
ローズ視点
私はローズ。
ウィザーローズの精霊で、花の国に住んでいた。
まあ追い出されちゃったけどね。
私は1人でいるのが好きだったから、1人っ子って本当に幸せだと思った。
妹のノバラが生まれるまでは。
両親はノバラにばかり構って、ノバラばかり優遇して、私のことは目にも入れてくれなかった。
両親に愛されたかったのに、全部ノバラに奪われた。
`だから殺した。`
両親の愛を受けるために、まだ5歳だったノバラをフェミニ湖に沈めた。
両親は私を見てくれるようにならなかった。
私は愛が欲しかっただけなのに、なんで誰もわかってくれないの?
愛をくれない親なんていらない。
`だから親も殺した。`
サクラ達には一人暮らししてるって言った。バレてないと思う。
とにかく存在意義が欲しい一心で、私は闇取引に手を出した。
クラリスの人たちは、私を必要としてくれた。存在意義をくれた。
最初は宇宙郵便で花の苗を取引していた。それで多くの金を手に入れた私は、もっと金が欲しくてブルーローズの種に手を出した。
それで巨額の富を築いて、国の発展に役立ててほしかった。
それなのに、掟を破ったからって国を追放された。
私を愛してくれなかったみんなが悪いんだもん。
私は絶対悪くない。
悪いのはみんななのに、追い出されるのが私なんて納得いかない。なんで私なの?なんでわかってくれないの?
なんで私が悪いの?
許せない。
特にヒメユリ。あいつだけは絶対殺してやりたかったから、勝手に死んでくれてざまぁ、って思った。
怪異症候群にかかるのは自業自得なんだって諦めればよかったのに。
なんでわかってくれないの?
ねえ、サクラ。
ねえ、みんな。
ねえねえねえねえねえねえ。
なんで?
`なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで`
みんな死んじゃえばいいんだ。
全員地獄に送ってやる。
`大事な人が死んで悲しめばいい。その後にみんな殺す。`
アサガオのキャラデザ
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ツツジのキャラデザ
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ツユクサのキャラデザ
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ローズのキャラデザ
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10 洞窟の大蛇
咲良視点
咲良「じゃぱぱさん・・・?」
とにかくじゃぱぱさんを探さなきゃ!
どこにいるんだろう・・・。
咲良「あっ!いた!」
よかった、見つけた!
じゃぱぱさんはシェアハウスの地下にいた。
何してるんだろ?
咲良「じゃぱぱさん・・・?」
じゃぱぱ「あ、さくら!」
じゃぱぱさんは嬉しそうに駆け寄ってくる。
その瞬間・・・。
じゃぱぱ「`ああああああああああああああああああああ!`」
突然苦しそうに叫びだすじゃぱぱさん。周りに黒いモヤが出てきて、じゃぱぱさんは大蛇に変わってしまった!
咲良「じゃぱぱさん!」
大蛇「`アアアアアアアアアアアアアア!`」
咲良「待ってて!今助ける!精霊変身!」
大蛇じゃぱぱの力なのか、地下室が洞窟に変わる。大蛇は地面に潜ってしまった。
咲良「どうしよう・・・そうだ!宝石の力!」
私は思い切って自分の力を使ってみることに。
咲良「私の宝石の力は・・・ピンクトルマリン?」
知ってたわけじゃない。頭の中にフッと浮かんできたのがそれだった。
咲良「とりあえず・・・『ピンクフラワートルネード!』」
花びらが舞って、大きな竜巻となって大蛇に襲いかかった!
大蛇「ギャアアアアアアアアアアアアア!」
咲良「じゃぱぱさん!元に戻って!」
『無駄だ』
咲良「⁉︎今の誰⁉︎」
『ヒメユリだよ。いいか、私は君の真横にいるんだ。話をよく聞いてくれ』
咲良「う、うん。わかった」
『怪異症候群は、感染者の“心の闇”を喰うんだ』
咲良「心の闇?」
『怪異症候群のウィルス、モンスターウィルスは、暗い過去などのそれぞれが抱える闇を喰って感染を広げる。心の闇が重いほど、体がどんどん蝕まれるんだ』
咲良「え⁉︎じゃあ早く止めないと!」
『対象がどんな闇を抱えているかは、“スカイハート”を使えば調べられる。まずは動きを止めて、彼に何があったのかを見てみるんだ』
咲良「わかった!」
大蛇はまた次の攻撃を仕掛けようとしてる!
咲良「えーと・・・“フローラルシャワー”!」
すごい数の花びらが集まって、ビームみたいになって大蛇にぶつかった。
大蛇「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」
大蛇はこうべを垂れて動かなくなった。
咲良「これでいいのかな?」
もうヒメユリちゃんの声は聞こえない。
やるしかない!
咲良「スカイハート!じゃぱぱさんの心の闇を見せて!」
大蛇の体の一部が光りだす。そこに心があるんだね!
私はじゃぱぱさんの心の中をのぞいた。
サクラ精霊態
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11 痛すぎる言葉の刃
咲良「ここがじゃぱぱさんの心の中・・・?」
私は気がつくと、廊下のような場所にいた。
それを進んでいくと、扉があった。少しだけ開けて中を覗いてみる。
カチャ・・・
咲良(あれ、じゃぱぱさん・・・?)
じゃぱぱさんは、パソコンを前に頭を抱えてる。見た感じ若いから、「長後太郎」として活動してた時かな?
こっそり中に入ってみる。明らかに見られてるのに何も言われない。
心の中だから干渉できないのかな。
パソコン画面を見てみると、TwitterとYouTubeのタブが開いていた。
ひどいアンチコメントや批判コメントがずらりと並んでいる。
『おもんな』
『声キモ・・・』
『YouTuberやめろ』
『うざい』
『嫌い』
攻撃的な言葉ばかりが表示されている。
じゃぱぱ「もうやだ・・・」
見るのも辛いのに、こんなのよく耐えてたな・・・。
部屋を出て廊下を進むと、また別の部屋の扉がある。
開けてみると、見慣れたシェアハウスのじゃぱぱさんの部屋だった。
またパソコンを覗き込むと、またしてもアンチコメントが並んでいた。
じゃぱぱさんは死んだ目でアンチコメントを消している。
慣れた手つきで、次々と。一つ残らず、全部削除していった。
咲良(もしかして、心の闇って・・・これ?)
アンチコメントに心がやられて、他のメンバーに辛い思いをさせないように全部消してた・・・?
咲良「早く助けないと!」
部屋を出て廊下をさらに進むと、突き当たりに扉があった。
扉を開けると、外に光が見える。もしかしてこれで心から出られる・・・?
私は扉の外に出た。
咲良「・・・あっ」
気がつくと、私は大蛇が横たわる洞窟に戻っていた。
咲良「これで、どうすればいいのかな・・・」
心の闇を消すことができれば、ウィルスもいなくなるのかな・・・?
咲良「あ!そういえば、ヒマワリが作ってた特効薬・・・!」
奇跡的にひと瓶残ってた!これを飲ませれば戻るかもしれない!
私は大蛇の口を無理矢理開けて、瓶の中身を流し込んだ。お願い、これで治って欲しい!
咲良「じゃぱぱさん・・・目を覚まして!アンチコメントのことは私にも相談して!辛いことも嬉しいことも、全部共有しようよ。私だって、カラフルピーチの仲間なんだよ!」
大蛇の頭を撫で続けて、私はただ待った。
どれくらい経ったのか、大蛇の体が光って、ボロボロと崩れ始めた。洞窟も消えた。そして、中からじゃぱぱさんが出てきた!
咲良「じゃぱぱさん!」
じゃぱぱ「え・・・?俺、一体何して」
咲良「詳しいことは後で話す!早く上に!」
じゃぱぱ「え、あ・・・うん」
1人救出 残り18人
12 屋敷に潜む人喰い怪異
私・スミレは、怪異に変わってしまったふうはやさんを探して、目撃情報を集めてその場所に向かった。
スミレ「 ふうはやさん!」
いた!緑髪に縞々のTシャツ・・・間違いないわ!警戒は忘れずに・・・!
ふうはや「あ・・・すみれちゃん」
スミレ「ふうはやさん・・・?」
ふうはやさんはどこか寂しげな目をしていた。
ふうはや「ごめん、近づかないで。今すぐ離れろ」
スミレ「まさか・・・知ってるの?」
ふうはや「`俺、人じゃなくなる`」
そう言った瞬間、ふうはやさんは怪異になってしまった。
あたりの風景も変わって、私は大きなお屋敷の中にいた。
スミレ「ふうはやさん⁉︎」
やっぱり感染してたのね!
サクラが送ってくれたLINEのおかげで、大体の流れはわかってる。ヒマワリが作った薬ももらってる!
スミレ「待っていて!私が絶対助けるわ!」
私の力は・・・サファイア。水の能力ね!
スミレ「精霊変身!」
この姿も久しぶりね。まずは動きを止めないと!
スミレ「『アクアティックハレーション』!」
水の輪が現れて、ふうはやさんにかかった。けど、そんなのじゃ倒れるわけもない。
異常に裂けた口を開けて襲いかかってくる!
スミレ「くっ・・・。『スプラッシュビーム』!」
手から水が噴射されて、ふうはやさんに直撃!
ふうはや「`アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!`」
ふうはやさんはしゃがれた奇声をあげて暴れ続ける。
ダメね、全く効いてないわ!
スミレ「っ⁉︎」
あぶな・・・。今咄嗟に飛ばなかったら死んでたわね。
ふうはやさんの動きは鈍い。それが幸いしてか、私を見失っているみたい。
スミレ「チャンスね!はああああああああっ!」
背中側に回って、部屋の壁を蹴って飛び上がり、そのままふうはやさんの背中を踏みつけた!
ふうはや「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
スミレ「まだ動けるの⁉︎」
流石に体力が持たないかもしれないわ・・・!
ふうはや「`縺溘☆縺代※ `」
なんか言ってる・・・?今のままじゃわからないわね。
でも、やっぱり諦めるわけにはいかない!
スミレ「『ウォータースラッシャー』!」
水の刃がふうはやさんの体にぶつかる。
ふうはや「`ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアア!`」
ふうはやさんが悲鳴をあげて倒れる。やったわ!
スミレ「スカイハート!ふうはやさんの心の闇を見せなさい!」
私の目の前が明るくなっていく・・・。
スミレ精霊態
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13 望まなかった妊娠
※暴力表現あります
スミレ「ここがふうはやさんの心の中・・・?」
泡のようなものがあちこちに浮いている。そのうちの一つに触れると、中が見える。
これがふうはやさんの過去なのかしら。
『サイアク・・・なんで2人目作っちゃったのよ。一人で良いっての』
『お前がもう子供できないって言ったんだろ』
スミレ「ふうはやさんは望まれなかった子だったのね」
他の泡にも触ってみる。
ふうはや「ねぇおかーさん!遊んで!」
『何?今お兄ちゃんの勉強見てんのわからない?』
ふうはや「え・・・?」
『邪魔すんじゃないわよ!』
バシッ
ふうはや「いっ・・・⁉︎」
『あーもう、泣かないでよ』
ドカッ ベチンッ
スミレ「なっ・・・何よこれ⁉︎」
これ、『身体的虐待』ってやつじゃない・・・⁉︎
怖いけど、他のも見てみましょうか・・・。
ふうはや「お母さん、お父さん・・・高校行かせてよ」
『は?なんであんたなんかに無駄金使わなきゃなんないのよ』
『バイトでもして家に金入れろよ。お前が|颯《はやて》くらい成績良かったら進学させてやったがな』
ふうはや「・・・っ」
『お袋!いい加減にしろよ!なんでこうも隼人につらく当たるんだよ⁉︎』
『颯は黙ってなさい!』
『隼人!もういい、こいつらに頼るな!』
ふうはや「お兄ちゃん・・・?」
『親父、お袋!俺は隼人と出ていくからな!』
バタンッ
スミレ「お兄ちゃんのおかげで家を出られたのね、よかった・・・」
その後もどんどん見ていくと、ふうはやさんの両親は事故で亡くなったみたい。
両親から完全に逃れられたのね・・・。
スミレ「あら?あれってふうはやさん・・・?」
泡を抜けると、体育座りでかがみ込むふうはやさんを見つけた。
スミレ「ふうはやさん・・・あなたの過去、見ちゃったわ。ごめんなさい」
ふうはや「いいよ別に・・・。今はもう、なんてことないし」
スミレ「そんなはずないわ。なんで私に話してくれなかったの?」
ふうはや「忘れられない俺が悪いって思ってたんだ・・・」
スミレ「帰ってきたら、話を聞いてあげる。帰りましょう」
ふうはや「すみれ・・・ちゃん、すみれちゃん・・・っ!」
ふうはやさんは子供みたいに私に抱きついて、お腹に顔を押し付けて泣いていた。
スミレ「もう泣かないで。私はあなたを傷つけたりしないわ」
そう言った瞬間、目の前が明るくなって、外にいた。
怪異になったふうはやさんは動かない。その隙に薬を飲ませた。
スミレ「これで・・・終わったの?」
怪異の体は崩れ、涙を浮かべたふうはやさんが見え始めていた。
2人救出 残り17人
14 闇夜に巣食う巨大蜘蛛
なずな視点
なずな「くっそ・・・どこにいんだよ⁉︎」
あたしの担当はシヴァさん。コラボの時に仲良くなって連絡先も交換したんだが、一切既読がつかねえぇぇぇぇぇ!
マジでどこにいんだあいつ⁉︎
なずな「手こずらせやがってぇぇぇぇ!」
マジムカつくぅぅぅ!
・・・と思ってたら、いたわ。あっさり見つかったな・・・。
なずな「シヴァさん!」
やっぱ様子がおかしい。こりゃあ感染してんな。
あたりが暗くなって、洞窟みたいなところにあたしはいた。
シヴァ「ギュイィィィィィィ!」
どんな鳴き声だよ⁉︎しかも蜘蛛て⁉︎
なずな「ツッコミどこしかねぇじゃねえかよ⁉︎」
何こいつ⁉︎デカすぎんだろこの蜘蛛⁉︎
なずな「しゃあねぇ、やってやんよ!」
あたしの宝石の力は、ペリドット!
なずな「あたしの風の力、舐めんなよ!『パワードハリケーン』!」
行けぇ!あたしの超巨大竜巻!
蜘蛛「ギャアアアアアアアアアアアアアア!」
いよっし、ヒット!蜘蛛の巣がぶっ壊れて下に落ちてきたぞ。まだまだ畳み掛けてやるぜ!
なずな「もっと行くぞ!『ウィンディスラッシャー!』」
多分これが一番使いやすい。切り裂く風が出てくるこの攻撃、かまいたちみたいでかっこいいよな!
とか考えていたら、蜘蛛はまた糸を張って逃げやがった。くそ、切っても切ってもキリがねぇわ・・・。
なずな「おわっ⁉︎あっぶね・・・」
どんだけ避けても糸があたしを追いかけてくる。これほんとに倒せんのか?
なずな「こうなったら、この糸を利用して・・・!」
糸はあたしを追って伸びる仕組みみたいだ。なら、こうやってこうやって、ここ飛び越えて、こっちをくぐって・・・!
なずな「よっしゃぁ!いっちょ上がり!」
糸をぐるぐる巻きにして絡ませてやった。蜘蛛も動けなくなってるぞ!
なずな「これで決めてやるぜ!『タイフーンアタック』!」
さっきのパワードハリケーンよりも数倍はデカい竜巻が、蜘蛛の巣を巻き込んでブンブンと振り回す。これでも終わらなかったらマジで勝てねえぞ?
蜘蛛「ギュイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
また変な鳴き声してやがる・・・。とりあえずこれで倒せたか?
うん、動かないし多分大丈夫だな。
なずな「さて、次の仕事にかかるか。スカイハート!シヴァの心の中を見せろ!」
すぐに目の前が輝いて、気づくとあたしは雷雨が吹き荒れる荒野?みたいな場所にいたんだ。
ここからが本番だからな。心の闇さえ解消すれば、元通りになるんだ!
15 隠し続けた学歴
なずな「ふーん、これが心の中ねぇ。暗いな」
とにかく暗い。あと鍵かかってる扉多すぎだろ。
とりあえずかかってないここから行くか・・・。
ガチャ
この部屋は・・・シヴァさんの実家みてーだな。
話を聞いてみるか・・・。
母「賢治、第一志望校はここにしなさい」
賢治「え⁉︎でも俺、飼育員になりたいって前にも・・・!」
母「飼育員なんて汚くて臭い職業、絶対やらないでちょうだい。我が家の恥よ」
父「医者が一番素晴らしい仕事なんだ。俺達は医者一家なんだから、お前も当然医者になってもらう」
賢治「そんな・・・。じゃあせめて、第二志望にここを入れさせてください。もちろん医者の勉強もします」
父「何言ってんだ!医者以外の仕事をしようもんなら、何回でも医大を受けさせて絶対に医者をやってもらうからな」
賢治「わかり・・・ました」
うわぁ、やべーなこの家庭。勝手に志望校変えるとかありかよ?
まぁいい、次はこっちだ。
大体展開は予想つくが・・・。一応見るか。
賢治「嘘・・・」
反応を見る限り、多分医大に落ちたんだな。
賢治「こんなこと言えない・・・。嘘ついて、この家を出るしかない!」
おいおい、そんなことできんのか・・・?
母「どうだった?受かったのよね?」
父「落ちたとかふざけたこと抜かすなら、絶対に家から出さない」
賢治「・・・受かってたよ」
母「そう。ならいいわ」
いや疑えよ⁉︎まぁシヴァさんがそれで助かったんならいいか・・・。
賢治「大学入ったら一人暮らしするよ。だから、家を買うお金をください」
父「わかった。医者になった暁には、毎月10万家に入れろ」
賢治「はい」
隠し切れたのすげーな・・・。
んで、バレないように離れたところに逃げて、じゃぱぱさんと出会ったのか。
どこにそんな根性あるんだよ。
まぁ、心の闇はわかった。あとはこいつを元に戻すだけ、だな。
なずな「よっと」
帰ってきたあたしは、動かなくなった蜘蛛に語りかける。
なずな「シヴァさん、聞こえてんだろ?まぁ何も言わずに聞いてくれや。あんたの昔の話見てきたけど、なかなかに壮絶だよな」
蜘蛛の体にヒビが入った。
なずな「自分で決めた夢を否定され、親の決めたレールを歩かなきゃいけねぇ。そんなの悔しいよな、腹立つよな。あたしはそんなこと今までなったことないが・・・自分がそうなったらって考えると、絶対許せねえ。だからよ、もっともっと有名になって親を見返してやろうぜ。あたしも協力すっからよ」
蜘蛛は消えて、代わりにシヴァさんが姿を現した。洞窟も消えた。気絶しているシヴァさんを俵みたいに抱えて、あたしは家に帰った。