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目次
四大精霊戦記【Prologue】&【1】
木の焦げた野原と錆びるような血の匂いが漂う戦場。
足元には死体があるが、明らかに人間のものではない。
明らかな特徴として耳が尖っていたり、背中に昆虫のような羽が生えていたりする。
ここは「Dream Fairies.」平和な世界だ。いや平和な世界だった。と言うべきか。
何故なら「Dream Fairies.」ではとても大きな戦争が起きているのから。
サラマンダー、シルフ、ノーム、ウィンディーネ。
四種族の精霊は、かつては友好関係を築いていた。
物資を分け合い、商店キャラバンや色々な種族の旅人が何人も通っていた。
違う種族でも皆が笑い合える世界だった。
だが、それも長くは続かなかった。
領地問題で、四種族は争い合い、傷つけ合った
のだ。
焦げた木々、枯れた大地、そしてそこらに散らばる精霊たちの死体。
しかし、どれだけ戦争を終わらせようとしても戦争は終わらない。
戦争は何何、何十年、何百年と続き、いつしか戦争の理由も忘れ去られた。
しかし、それでも戦うことをやめようとしなかった。
---
《シルフ陣営》
「うーん…」
椅子に座って、戦場の図面らしき地図を見て唸っているのはシルフ隊隊長の風雅だった。
身長は低く、肩出しの服と短パンを身につけている。瞳の色は深い紺色に染まっていて、一目で誰でも美人ということがわかる外見だ。
「ここに第3シルフ隊を突撃されればいけるか…?いや、ここだと出てきたサラマンダーに挟み撃ちにされそうだな…うーん…」
図面と睨み合いを続けていると、不意に目の前に人影が現れた。
「シルク。どうしたの?」
シルフ隊副隊長のシルクだ。黒に近い紺色の膝ほどもあるフードパーカーを着ていて、その上真っ黒の髪。髪型はフードでよく見えないが、その中に紺色と空色の目がこちらを覗いている
「あまりに唸っているので休憩に茶菓子です。甘いものは苦手でしょうか?」
少しだけ目尻を下げて聞いてくる様子に微笑みながら風雅は否定した。
「ううん、お菓子は大好き!」
「それはよかったです。では。」
そそくさと出て行こうとするシルクの長いフードパーカーの端をパシッと掴んで引き留める。
目線でどうしました?と聞いてくるシルクに、問いかける。
「何か聞こえた気がするんだけど、気のせいかな?」
「そうですねぇ…」
しばらく2人とも耳をすませて音を聞き取ろうとしたが、何も聞こえなかった。
「僕の気のせいかも。ごめんね、シルク。」
「いえ、大丈夫ですよ。」
そういうとシルクはシルフ隊隊長室を後にした
四大精霊戦記【2】
「よっ…」
キィと耳障りになる椅子に心の中で舌打ちをしながらヴィレナ・ドライスは立ち上がった。
濃い青の髪はポニーテールに纏められ、すこし癖毛が混ざっている。目は吊り目で口は八重歯が生えているため、ドラキュラにどこか似ている。
ただ、決定的に違うのは服だ。チャイナ服のようなものを着ており、一層綺麗な顔を際立たせる。しかし、彼女は冷静である。
椅子は戦争中で古い木しか手に入らずに作った椅子だしょうがない。と自分の心の中で言い聞かせつつ、ヴィレナは立ち上がり、襲撃野営地サラマンダー隊隊長室から出た。
「…いい天気だ。」
朝の4時30分。あと30分もすれば隊員に起床の笛を吹かせなければ。
しかし、久しぶりの気持ちの良い朝の為、椅子のことも忘れて伸びをしていると、背後から足音がした。
「ヴィレナ様。」
振り返ると、サラマンダー隊副隊長のテオ・カルストスだった。
「はやいね。カルストス。」
「まあ、襲撃日ですから。寝たくても起きますよ。」
にっこり笑って返すカルストスに一言。
「へえ。でも、起床の笛を1回目聞き逃していなかった?」
「なっ…!」
ニヤニヤを隠そうともせずそう聞くと、カルストスは顔を青くしたと思うと赤くして、まるでリトマス試験紙のようだ。
1人でリトマス試験紙になっているカルストスは放っておくことにして、襲撃のことを考える。この襲撃は絶対に成功する。そうわかっているのだが、どうしても不安を感じてしまうのだ。まるで、頭の隅で成功しない。と悪魔が囁いているように。
杞憂のことを信じて、ヴィレナは隊員に起床の笛を吹かせに歩き出した。
キャラ等違ったら遠慮なくお申し付け下さい…
四大精霊戦記【3】
コンコンコン。
「ルーサ・セイレーン様!」
ウィンディーネ部隊の1人がウィンディーネ部隊隊長室の前で声を張る。
ルーサ・セイレーンは夏の空を思い浮かばせる様な水色の腰まで達する長いロングヘアーに深海のような深い瞳。
そしてエメラルドグリーンのワンピースに、透き通ったロングカーディガンにおとぎばなしの天女がつけている様な羽衣を付けている。
見た目はまさに天女で、一目惚れしてしまう男性も多いのではないだろうか。
「はい、どうしたの?」
ルーサが出てくると、少し水が体から滴り落ちた。
ウィンディーネ隊長室は、というかウィンディーネの領地はだいたい水の中にある。これは、ルーサなどのウィンディーネが水を好むからである。
他にもサラマンダーの領地は火山噴火口近くが多いし、シルフの領地は風が強い林、ノームは洞窟近くなどの個性がある。
ルーサが発言を急かすように頷くと、部隊の1人は衝撃的な言葉を発した。
「はっ、南の方角からおそらくノームであろう精霊の集団が近づいてきています!」
「…えっ?」
ノームはあまり好戦的ではない連中だ。ノームリーダーとも一度会ったことはあるが、戦いを嫌う傾向だった記憶がある。
「…わかった。第一部隊をノーム集団の目の前に置き、敵意があるようだったら第二、三部隊も出陣させて。そして、ユズ・ウォーマイも呼んできて。」
「はっ!」
そういうと部隊の1人は副隊長室の方に駆けて行った。
「…なぜ、何のために…?」
ルーサは首を傾げながら、どうしても背中に悪寒が走るのだった