編集者:yu_yu
俺と彼女はきっと、思いを通わせていた。
でも、繋がれることなんてきっとない。
それがきっと、運命だから。
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目次
不思議な人だった。
ごめんなさい、めっちゃ今回痛いと思います。
自覚症状ありですが、見守ってくださると嬉しいです。
彼女は、不思議な人だった。
会う度に、濡れていた。
彼女と色んなところに行った。
でも、俺以外、誰も彼女が濡れていることに反応しなかった。
まるで、彼女が見えていないみたいに。
いや、違う。存在は理解している。
食べ物屋でも、人数を数えるとき、しっかり2人と言っているのを聞いた。
認識はしている。だが、不思議と姿が見えていない。
俺、以外。
彼女は不思議な格好をしていた。
濡れているのもそうだが、服も不思議だった。
わんぴーすというものを着ていて、りぼんが沢山付いていて、なぜだかとても女性らしいな、と思った。
世の中にいるドレスと宝石でギラギラと着飾った女性より、何倍も素敵で、とても綺麗だと思った。
なにより、彼女は美しかった。
濡れているのが気にならないほど綺麗で、手を離せば消えてしまいそうで、離れるたび、二度と会えない気がした。
でも、彼女はいるのだ。
俺には見えるし、俺には分かる。
彼女は生きていて。
確かに普通ではないのかもしれなくて、手は冷たくて、たまに彼女は既に死んでいるのではないかと思うこともあって。
でも、確かにここに居て、俺に話しかけてくれて、毎回海辺に居るのだ。
2人とも、待ち合わせなどしていないのに。
でも、何故かわかったんだ。いつ、どこに行けばいいのか。
何故か、彼女はこの世界の住民ではないんだろうと、非現実的なことを俺は知っていた。
きっと、わかったんじゃない。
知っていたんだ。
何故か彼女と俺は想いを通わせているのだと分かっていた。
でも、口には出さなかった。
出せなかった。
出したら、彼女が消えてしまうことを、俺は分かってしまったから。
彼女は、いつしか言った。
私はあなたと生きる時間が違うと。
私は未来の人間だと。
海を渡って、この時間に来ているのだと。
あなたに会うために。
いつしか、彼女は消えた。
いや、消えたのかも分からない。
会えなくなった。
いや、分からなくなった。
いつ、どこに行けばいいのか。
合図が、消えた。
俺と、彼女の。
俺の中で、彼女は過去の人だ。
いや、彼女は未来の人だ。
でも、俺にとっては過去の人だ。
未だに、不思議な人だと思う。
会いにこなくなったんじゃなくて、会いに来れなくなったことを俺は知っている。
何かが彼女にあったのだと、俺は分かる。
きっと全ては分かっていないし、
理解なんて到底できないのかもしれない。
彼女は、俺の事なんかもう忘れているのかもしれない。
もしかしたら、彼女はもう存在しないのかもしれない。
でも、それでも、俺は。
俺は、彼女を忘れることは出来ない。
それは、確かな事実だ。
珍しいNLです。
というか前回の更新から時間空いてますね、ごめんなさい。
なんか儚い女が描きたくなりました。BL小説読んでて。
時空を超えた恋っていいですよね。
不思議な人だった。彼女視点
また痛いです。ごめんなさい。
彼は不思議な人だった。
いつも濡れていて、何も話せない私を優しく受け止めてくれた。
時には街にも連れて行ってくれて。
不器用で、でも何故か全てを知っていて、何も聞かないでくれて。
そんな彼を、愛していた。
確かに、愛していたのに。
私は、実験動物だった。
この世界にある一部の人間のみが持っている能力を、私は持って生まれた。
時間を渡る能力。
海を渡れば、好きな時間に行ける。
ちょっと前にも、すごく前にも、
ちょっと後にも、すごく後にも。
どうやら周りの大人は、この能力で私を生物兵器のようにしたいらしい。
薄暗い実験室と、狭くて小さい外。
それ以外、私は知らない。
生まれた頃から、実験室に居たから。
実験の調査でしか、外に出れなかったから。
訓練の間に、泳ぎは酷く上手くなった。
私を解放してくれて、私を縛る海。
何も怖くなかった。
溺れることも、死ぬことも。
こんなに汚い世界を、愛せるわけがなかった。
でも、夕日に染まって、オレンジ色に輝いている海は、少し綺麗だと思った。
いつしか私は、実験室から逃げ出した。
反抗したのは初めてだった。
でも、何故かどうしようもなくこの実験室から出たかった。
外を、知りたかった。
海を渡った。
適当な時間に設定して。
でも、誰も私のことを知らない時間軸に。
なんにも、縛られない時間に。
周りの人は、時間軸が違う私のことは、存在を認知できても、姿は見えない。
なのに、彼だけは見えた。
何故か、彼は私に何も聞かなかった。
きっと、疑問は沢山あったのに。
彼に初めて会った時、酷くかっこいい人だと思った。
それに対して、自分のみすぼらしい格好が恥ずかしくなった。
だから、次に会う時からは周りの大人に内緒でかった可愛いお洋服を着て、精一杯のオシャレをして彼に会いに行った。
彼は会うだけで喜んでくれた。
彼は、私の狭い世界を広げてくれた。
彼のいる世界は、いつもより何故か綺麗で、何故か美しくて。
初めて、世界を愛せた。
でも、元の時間軸に戻らなければ、世界は狂ってしまう。
滞在できて、1日。
でなければ、世界の法則に反してしまう。
だから、彼とはずっと一緒にはいられない。
私と彼は違う世界の人だから。
薄暗い実験室も、周りの大人の下衆な視線も、体に流れる電気の痛みも、彼を思えば耐えられた。
でも、一つだけ怖いものができた。
死んでしまうこと。
死んでしまえば、彼の中から私の存在は消える。
その事が、酷く怖かった。
でも、わかっていた。
私はきっと早くに死んでしまう。
いつしか実験が成功して、生物兵器となった時。
戦場に出た時。
私はどこまで行っても少女で、非力で、怪我を負えば治すことも出来ない。
攻撃力だってきっと劣る。
だから、私はもう長くない。
分かっている。
でも、彼に会うのはやめられなかった。
彼に会えなければ、私は壊れてしまうと思ったから。
彼の仕草が、視線が、声が。
全て愛おしくて、安心出来たんだ。
愛していた。きっと、お互いに。
初恋だった。いや、もしかしたら恋を超えていたのかもしれない。
でも、私は近々居なくなる。
実験がそろそろ成功しそうという話を聞いた。
お互いに気持ちは伝えなかった。
何故か、きっと彼は私に想いを伝えても意味が無いことをわかっていたのだと思う。
愛していたのに、伝えられない。
結ばれは、しない。
いつしか、私は彼に言った。
私は、あなたと違う世界にいて。
海を渡ってここまで来ていて、
あなたに会う為だけに来ているんだと。
そう、伝えた。
愛を伝える代わりに。
その事を伝えた数日後、ついに実験が成功した。
彼にはもう会えない。
私は、もう人間じゃなくて、兵器だから。
もう、長くないから。
彼の中に私という存在が残らないことが酷く悲しい。
何かを送ればよかったのかもしれない。
気持ちを伝えれば?
いや、きっとダメだ。
それでは、彼に呪いを残すだけだ。
彼を苦しめたい訳ではなかった。
彼を、愛していたから。
心の底から。
戦場にでて、私が言うほど強くないことを知った。
無数のナイフを操るもの、爆発を自由に起こせるもの。
無条件で時を止めたり、操ることが出来るもの。
戦場に出て、数日で私は致命傷を負った。
ナイフを避けられなくて、胸に刺さったのだ。
死ぬ間際に見えたのは、彼の優しくて、酷く悲しそうな笑顔。
彼に、最後まで気持ちを言えなかった。
そういえば、名前だって。
隣町にだって行きたかったし、もっと平和で普通の世界なら私の世界にも連れてきたかったし。
彼のそばは、すごく息がしやすくて。
愛していた。でも、きっと私と彼は結ばれない運命だ。
何故か知っていて、何故かわかった。
いつか、もし私が彼に会えたら。
彼は、私のことを思い出してくれるだろうか。
長くなりました。
書きながら大号泣です。
黒歴史量産機ですが、これからもよろしくお願いします。
ちなみに、この話書いてる途中で一度データがぶっ飛びました。
何とか書ききれて良かったです。
不思議な人だった。あとがき
本編とわけさせていただいたのは、世界観を壊したくなかったためなので、読み終わった気分のまま終わりたい方は読まなくても大丈夫です!あとがきはあとがきでも、作者の妄想を綴ったような話なので、読まなくても支障はないと思います!
ファンレターをくださった方々、ありがとうございます!
初めてこんな量のファンレターをいただき、嬉しい限りです!
その中で、続編を書いて欲しいとの声が何件かあったのですが、私はこれ以上綺麗な終わり方を作れる気がしないため、おそらく書かないと思います…!
ただ、妄想などは自由ですので、そういった形で補完していただけますと幸いです…!!
この後は妄想や裏設定の話ですので、お好きにどうぞ!
この話で、お互いに名前や年齢を出さなかったのには一応理由があって、この2人には名前や年齢など必要なくて、関係なかったというのが一つです。
あとは、彼女の方は生まれてからずっと実験室にいたので、正確な年齢は分かっていない事などもありますね。名前も同じ。
後、彼の視点では彼女は少し大人びて見えているんですが、彼女の方ではかえって幼く見えています。
これは彼女の視点での彼も同じで、彼女視点では彼は大人びて見えますが、彼視点では彼自身が幼く見えます。
お互いがお互いに大人びていると勘違いしていたのか、それとも自分が思い込みをしているだけなのか。
それは妄想にお任せしますが、そんな書き分けもありましたよ、という感じです。
あとは、彼女の能力について。
海を渡るの定義について詳しく言っていないので、一応自分の中でのことだけ言っておこうかと。
海を渡るは、海の中から地上がよく見えないくらいに潜って、地上へ戻ると時代が変わっている、という感じです。
あと、彼女の強さですが、少女なのはありますが、普通に彼女の能力は場所を限定されることもあって、ほとんどの能力の下位互換です。なので、とてもじゃないですが強いとは言えません。
なのに何故生物兵器にするために何年も研究されていたのかと言いますと、そもそも彼女の世界では能力者自体が少なく、能力を持っているだけで研究対象となるからです。
弱い能力なため、だいぶ改造しなければまともに戦場に出せるクオリティにもならず、その結果何年もかかったわけです。ただ、そのため彼女は彼に会えた訳ですが。
あと戦いの理由。これもそもそも言っていませんでしたね。
ちなみに言っていなかった理由としては、彼女がその事に疑問を持っていなかったからですが。
そんなことは置いといて、戦いの理由は、簡単に言うと自分の国の兵器の見せびらかし、という感じです。
終わってますね。
さて、ここまで色々とほざきましたが、あくまでこれは私の解釈です。
作者の解釈が全て正解なわけないですし、例え書いた本人がそれを意図していなくてもその解釈が間違っているわけが無いです。
同じ文で同じ言葉でも違う解釈をする人なんてごまんといるわけですし、私としてはお好きに解釈して、妄想してくださると嬉しいです。
以上、作者のあとがきらしきものでした。