編集者:はな
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目次
#1 暴力と魅力
1992年、都内の寂れたマンションで、|桐谷綺星《きりやあやせ》は自身の赤い血を滴らせながら床にうずくまっていた。
そう思うのも当然で、彼女の父親(|桐谷敏文《きりやとしふみ》)は彼女の双子の姉であり、中学校の生徒会長である|飛鳥《あすか》と比べたり、理不尽に怒り、何かイライラしたことがあったらすぐにあやせに当たるのだった。
そう、つまり父親にとって彼女はただの八つ当たり用道具でしかなかった。
毎晩毎晩当たっては、殴りつけ、蹴り、服や髪、胸ぐらをつかんでは突き放す。時には熱したタバコを彼女の体に擦り付け火傷を負わせる。でもこれはまだいい方で、ひどいときはカッターや包丁などの刃物まで取り出してくる。おかげで彼女の体は傷やあざだらけ。でも彼女はもう気にもとめなくなっていた。
彼女には楽しみがあった。父親や家族に隠れてボロボロのラジオから聞こえてくるアイドルソングを歌うことだった。そしてその歌声は、驚くほど美しく、狂気をはらんでいたのだった。
つづく
#2 ざまあみろ
そんなあやせだったが、日に日に父親の虐待はエスカレートしていき、もう耐えられなかった。
そしてあやせは逃避行を考えた。
ある大雨の日だった。
逃避行計画実行の日、あやせは最小限の荷物だけを持って家を出かけた。
その時、強い力で腕を掴まれた。
「ひゃっ」
思わず声を上げると掴んだ腕を回し、私に正面を向けさせた。
「おい、てめえ。逃げるつもりなんだろ?あ?」
やばい。バレた。バレてないと思ってたのに。
しばらく答えないでいると父は私の顔を何度もひっぱたいた。
「おい、なんとか言って答えろよ。黙ってんじゃねえぞ」
父の罵声が私をパニック状態に陥らせる。
「お願いしますいかせて下さい。お願いし、、ます!お願い、お願いってば」
父はその答えとして私の足を蹴り私を転ばせた。
「てめえ俺が許すと思ってんのか?」
**「いやあああ 離して!お願い!いかせて!!!!」**
父は私をどんどん殴りつける。
ふと見たら母と飛鳥が部屋のドアから私を見ていた。
母は真顔で見ていたが、飛鳥はざまあみろとでも言うような笑顔だった。
私は無性にそれが許せなかった。
私は父に殴られながらも飛鳥の手を引っ張った。
一方的に引っ張られてバランスを取れなくなった飛鳥はよろめき前に転んだ。
私は飛鳥のことをひっぱたいた。
**「ざまあみろ」**
私はそう言い、最上限の笑顔を見せた。
飛鳥の顔は恐怖でひきつっていた。その飛鳥を父がかばいに行く。
その隙に私は玄関から靴を履いて逃げ出した。
つづく
#3 雨の逃避行
あやせは大雨の中外へ出た。
失敗した。傘持って来るの忘れたな。まあそんなことはいい。
あやせはトボトボと歩きだす。
すでにずぶぬれた体に雨が打ち付ける。その雨のせいで傷が染みて痛い。
きっとこの傷は何があっても**一生**消えることはないんだろうな。
そう思うとあのクソ親父が許せなかった。
それより許せないのが飛鳥だった。
小さい頃から優等生ぶっちゃって、中学生になったらいきなり生徒会長。ちょっと親に贔屓してもらってるくらいでいい気になっちゃっていい御身分ですね。
それであやせはと言うと、至って普通なのに飛鳥と比べられ、「飛鳥はあんたなんかより」を何度聞いたことか。
でも何より神様が一番許せない。
神様はあやせを助けてはくれなかった。あやせが悪い子だったから?**飛鳥と比べて**
だからあやせにはもう信じられるものが1つもない。
あやせには光なんかないのかな。一生闇の中で暮らしていくのかなあ
許せない。許せない。**絶対許せない。**
**うわあああああああああああ**
あやせは大声で泣き出した。こんな世の中は理不尽だ。
泥水だらけの地面に崩れ落ちた。
ずぶ濡れの体にずぶ濡れの服が張り付く。
**何があっても絶対復讐してやる。**
一生をかけて復讐する。
歩き続けて一体何時間経ったのだろう。
怒りと絶望とで放心状態。時間なんて気にしていられる状態じゃなかった。
道路標識を見れば六本木と書いてある。だいぶ都心まで来たんだな。
なぜかそこで急に足が限界を迎えた。あやせはまた道路の上に崩れ落ちた。
ああもうだめかなと思っていたら、誰が傘を差してくれた。
「大丈夫ですか?」
つづく