神か、嘘つきか。
田菜の探究心が暴走し、四葉の幸運で現れた謎の扉。開くとそこは、能力者が神のように崇められる世界。しかし、この世界は能力を使うと何かが代償として減っていく。能力者じゃなくなったら、たちまち嘘つきとして囁かれるだろう。
※この物語には、AI・Geminiを使用しています
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目次
#1 神の降臨
「なんか大冒険がしたいっ!!」
そう言った田菜ねえの言葉を、「まーたなんか言うとるわ」と聞き流しながら、ちょっとだけ共感する。
「ほら、四葉も思わないの?みーんなでっ」
みーんな、とはいろはなメンバーと姉妹のことなんだろう。
「あー、まあ思うは思うけど」
「でしょっ、じゃあ四葉の能力でなんとかして!」
「幸運を頼りすぎやろ…」
---
「そういうわけですか」
と紅葉が言い、田菜ねえが乗り気になって「みんなお願い!!」と言う。
「まあ、この中だったら四葉の幸運か、紅葉の超能力か、ですか」
七葉がそう呟く。
「あら、姉さんの力で、世界を無限に増やすってのは無理なのかしら?」
「どうやって移動するの、三葉…」
呆れながら言う七葉。
「でも、世界を移動するっていう大規模な冒険は面白そうだねっ♪」
と、小鳥が三葉をカバーする。
「まあ、紅葉の能力ならいけそうじゃな」
「とんでもありません!そんなことしたら、やばいことになっちゃいますっ」
野薔薇と紅葉がそう言い合い、うちはふっとため息をつく。
「よし、やってみよ!」
そう立ちあがったのは紫桜。
「じゃあ紅葉、超能力をお願い。四葉は幸運をね。その力をちょうだい、その後、わたしがみんなを連れてってみせる!」
そう言い、うちは幸運を紫桜に与えた。何やら紫桜が唱えると、突然光がうちを出迎えてきた。
---
ボスッ!
レンガ造りの、中世ヨーロッパみたいな世界。
「いったぁあ…」
「無効『痛みを忘れた青い鳥』これで痛みはないでしょ♪」
そう小鳥が言った途端、「アビリティ・パーソン…?」という、美しくて滑らかな声が耳を浄化した。
見上げると、金髪のロングヘアに、水色のドレスを着た、12歳ぐらいの少女。
「あびりてぃ…?」と、椿がピンとこなさそうに言う。
「あ、失礼しました。わたくしはオルタナティヴ国の王女、ミゼラ・リーネと申しますわ。ところで、貴方たちはアビリティ・パーソンでして?」
「だから、それはなんなのじゃ」
「能力者、といった方がいいです?何かしらの能力・アビリティを持つ方々のこと。知らないの、この国では、アビリティ・パーソンが神ですわ。だから、貴方たちは神相応。まさに、神の降臨ですわ!」
#2 代償
「では、わたくしの城へご案内しますわ、アビリティ・パーソン!」
そう言って、ミゼラは城へと案内した。
シンデレラよろしく、馬車のようなもので街中を通って城へ向かう。国民からのざわめきや視線に、戸惑いすら感じる。
「着きました、ミゼラ様」
深い紫色の髪をポニーテールに束ねた人が、城の門に立っていた。
「この人は…?」
「ライト・イントゥルース。わたくしのメイドですわ」
「この人が、アビリティ・パーソンということですか」
ライトは冷静に状況判断をして、わたしたちに接待室に行くよう言った。
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接待室はいたるところに金色が散りばめられ、豪華絢爛な部屋だった。今、ミゼラはいない。ライトが説明をした。
「このオルタナティヴ国は、アビリティを持つ者が神相応の存在として崇められる。なぜなら、この国ではアビリティが全てのエネルギーだから。ここでアビリティを使うということは、体に潜むエネルギーを、このオルタナティヴ国に与えるということです。ここまで言えば、わかりますか」
「はぁ…要するに、使いすぎないようにってこと?」
「そういうことです」
「なんでそんなことがわかるのじゃ」
「…まあ、メイド、だからです。さて、紅茶の準備でもしましょうか」
ライトが接待室を出て、数十秒で戻る。「紅茶の準備ができました」、と。
「あ、ありがとう♪」
「ちょっと、この国をいろいろ歩いてみてもいいかしら?」
「どうぞ、ご自由に」
そう言われ、わたしたちは城を出た。
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「うぅ…」
さっそく、小さな女の子が泣いているのが見えた。持っている花は枯れ枯れだった。
「あ、お姉ちゃん。あびりてぃさん、だよね?」
椿に話しかけた彼女は、花を癒やすように言った。椿は躊躇したが、「仕方ないですね…」と枯れた花を元通りにした。
「わあ、さすがあびりてぃさんだね!」
そう言ってどこかへ行く女の子を眺め、椿のほうを見る。
「…痛っ…」
「椿、どうしたの?」
「痛い」
「何が?」
「頭痛がする。なんか、なんかが抜けていくみたい」
これが、能力の代償なのか。
「わかった、椿、わたしが治す」
「まってよ紫桜、紫桜まで苦しむ羽目になるよっ」
「じゃあどうすればいいの」
「医者とかに診てもらったら…」
椿の「なんか」って、なんなんだろうか。何が抜けていったんだろう。
#3 メイド
城に戻ると、ミゼラがいた。
「あら、もうお帰りになられたのです?もっと行ってくださってよかったのに…」
「すみません、医者はどこにいるのじゃ」
野薔薇が強気に出た。ミゼラは上品に微笑み、「今メイドを手配しますわ」と言った。
ライトが出てきて、「ではいきましょう」と言った。
「…やはり、代償が出たのですか」
「なにか知ってるの?」
「当然です、わたしだって、代償が積み重なってこうなったんですから」
「…は…?」
---
では、わたしのことをお話します。
数十年前、皆さんのように、昔、わたしもアビリティ・パーソンでした。身代わりを作る、というものです。モノを複製する、といった方がわかりやすいかもしれません。
「貴方のことを、国中で歓迎致しますわ!」
ミゼラ様はそう言いました。
「アビリティ・パーソンは神相応の存在ですわ。これからも、国のためにお願いしますわ!」
当時のわたしは、まだ何にも知りませんでした。色々と複製して、国のために働いてきました。少々頭痛やめまいがしましたが、異世界転移ボケとして片付けていました。
しかし、複製の質が段々と落ち、ついに複製不可となってしまいました。そのことをミゼラ様に伝えると、
「この出来損ないが。元の世界にも戻れないくせに、接待してやっているくせに、なんでそんなこと言うの?国中から差別されろ。ミゼラ・リーネの言ったことだ!」
と罵倒され、わたしは罪滅ぼしとしてメイドとなりました。
これはわたしの推測にすぎませんが、ミゼラ様はアビリティ・パーソンを使って、不老不死・絶対権力をお持ちになったんだと思われます。椿さん、でしたか?の症状も、その一環です。わたしは17歳になってからでしたが、まだ幼いでしょう。
わたしも協力します、なんとか、元の世界に戻りましょう。
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「…早くでないと」
「ほら、幸運と超能力を…」
「駄目です、成功するかもわからない、後遺症が残るかもしれないのに、そんなリスキーなことできません」
ライトの話を聞きながら、脱出方法を考える。
何も思い浮かばず、そのまま、医者のところについていた。
「これは、ちょっとした転移ボケでしょう。安静にしてたら治ります」
男性の医者の言葉を聞き、また城へ戻ろうとする。
「あんな医者の言葉、信じちゃいけません。この世界で能力を使うことは、あんな偉ぶっている姫に力を貸すのと同等です。あの症状は、何か大切な記憶が抜けたということでしょう。現にわたしも、転移前の記憶は何らありません。能力カウントダウンは、もう始まっています」
「…カウントダウンが、尽きたら?」
ライトは無表情で言った。
「わたしはまだ、初期症状のようなものです。わたしのように、ただのメイドとなる。いや、奴隷に、ロボットに。貴方達は真実を知っている」
#4 偽り
「…オルタナティヴにも、夜は来るんやな」
四葉がぼんやりと言う。あたし・田菜は相槌すらうてない。
コンコン、と軽やかなノックがする。ガチャ、とドアが開く。
「大丈夫です?椿様」
「いえ、別に…慣れないことをしたときは、ちょっと疲れますし」
そう椿が作り笑顔をした。それをミゼラはすぐ信じ、「そうですね」と微笑む。
「…ミゼラ?」
「どうしました?」
「ちょっと聞きたいことがあるの」
---
ミゼラの部屋は広く、あたしの家の2階ぐらいある。
「なんで、ここではアビリティ・パーソンが神相応の存在なの?」
「何故?…いいですわ、少々教えましょう。《《どうせ後で記憶を消せば問題ない》》」
「…は?」
どうせ後で記憶を消せば?
ミゼラは、記憶を操れるの?
「この国では、アビリティが国のエネルギーになる。わたくしのエネルギーになる。アビリティは生きる糧。アビリティ・パーソンは、わたくしたちの生きるためにいるのよ」
「なんで、国のエネルギーに…」
「あら、それは極秘の秘密よ。さ、消えなさい」
「ふう、こんな神様もいるのよね。ライト、片付けておいて」
「はい」
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「田菜ねえは?」
田菜ねえがどこかへ行ってから、もうどれぐらい経ったんだろう。うち・四葉はそう思う。
「田菜様、のことでしょうか」
ライトがいた。
「あの御方は、知りすぎたんです」
そう呟く。
「知りすぎた?どういうことなんやっ」
「ミゼラ様の能力は、『強制書換』。強制的に、物語を書き換えるもの。田菜さんは、ミゼラ様の能力によって、今、いなかったことにされています。…いえ、いなかったことになっていないかもしれませんが」
「どういうことなのじゃ」
「ミゼラ様は、貴重なアビリティ・パーソンだからといい、別のところに飛ばしている可能性もなくはありません。…四葉様のアビリティは、幸運だと言いましたよね」
ライトがうちの方を振り向く。うちがやるしかない、と言いたげだった。
「幸運を選ぶか、姉を選ぶか、です」