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目次
第一話 当たり前の日常
暁ノ宮本家の部屋で、私は鈴音として目を覚ます。緋色の着物を身に付けて、髪をおだんごにすると外に出た。
「緋里様、おはようございます」
「おはようございます」
家臣の一人とあいさつを交わし、本邸へ向かった。
毒味を兼ねて、朝食をとる。他の人より先の食事に口をつけ、少し微笑んだ。その場にいるのは、当主である陽向様、婚約者の紬希様、その他の位の高い侍女たちなどである。今日の予定を確認し、家臣たちに呼びかける。
「緋里さん、この後お茶をしませんか?」
「分かりました。お誘いありがとうございます」
紬希様とお茶をするのは、いつもの習慣だ。
個室に入り、2人だけのことを確認すると、紬希が口をひらいた。ここでは、「陽向様」ではなく「陽向」、「紬希様」ではなく「紬希」になれる。
「陽葵、最近いそがしそうだね」
「そうなんだよね…だって、陽向が無理ばっか言うんだもん」
「まあね」
「小さいころはもっと可愛かったのに…まあでも、最近大人っぽくなったよね。背も伸びたし」
「陽葵、弟思いだね」
そんな感じで、楽しく会話を重ねた。
一時間ぐらいたって…
「そういえば、月詠ノ宮家の当主には、やさしくされてる?」
「まあね。みんな、勘違いしてるから。あ、ごめん、手紙書かなきゃ」
「そっか」
楽しい時間は終わったようだ。部屋から出た。
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あっという間に夜。夕食を済ませて、一人こっそり文を書く。「順調です」といつも通り書き、暁ノ宮家の者に見つからないよう、こっそり屋敷を抜け出した。髪をほどき、表情から暖かみを消した。
月詠ノ宮家本部の中に入り、机に手紙を置く。
「鈴音殿。ご苦労だったな。」
「ありがとうございます。当主様、近い内に戦の計画はありますか?」
「今から3ヶ月後ぐらいだな。気付かれぬよう、頼むぞ、鈴音殿。」
「おまかせください。」
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暁ノ宮家に戻る。早く寝なきゃ。今日のお茶楽しかったな。紬希、ますます可愛くなってる。陽向も、大人っぽくなったな。私の弟だとは思えない。
二人の成長は嬉しくて、それ以上にとても寂しかった。もう、届かないんだな。
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そう。私は暁ノ宮陽葵であり、
暁ノ宮緋里であり、
月詠ノ宮鈴音である。
つまり、二重スパイ。
当たり前の日常に
心からの祈りを込めて……。