壊れた世界の救い方≪第二章≫
編集者:beri
物語はまだまだ終わらない
たくさんの仲間たちから繰り広げられる笑いあり涙ありのバトル異能力系
一応参加型ですが参加していなくても楽しめます
戦闘シーン
景色描写
食事描写
全てにこだわりを持って製作しております
伏線や込んだ設定
考察等お好きな方は是非読んでみてください
基本健全ですが一部の番外編はR18です
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目次
壊れた世界の救い方 第一話「落とし穴」
ベータチーム‐フェンリル視点
「ねえわんこ!!!止まって!!!」
さすが犬と言ったところ
ほとんどまっすぐな道でもどんどん距離を離される
目の先にはだんだん小さくなるわんこが映っていた
「待ってってばああ」
光や夜春はもう体力が限界らしく
走ることも諦めここでも距離が開いた
でも僕たちだって体力は無尽蔵じゃない
早く追いつかなければまずいことになるかもしれない
そんなことを考えていると、ふとわんこの大きさが変わらなくなる
ピタリと止まったわんこの先には何があるのかよく見えない
暗い洞窟の中、懐中電灯の灯りを頼りに進む僕ら
見えなくも
見なくてもいいようなものの一つや二つはある
それをわんこは教えてくれたんだね
「…」
止まったわんこに近づく
一歩、二歩
三歩、四歩
わんこに近づくと同時にそのわんこが見つめるものにも近づく
六歩、七歩
八歩、九歩
だんだん輪郭が鮮明になってくるわんこ
わんこはこちらを振り向いた
最初はひどく怯えたような表情だった
わんこは笑っていた
十歩
さようならなの?
ねぇわんこ
わんこの目の前にあったものがうねうねと動く
それはたくさんの触手を絡ませて出来た毛玉みたいで
気味悪く脈を打っていた
わんこの前足に触手の一歩が絡む
届かない
差し伸べた手
僕はそのまま転んだ
その横をマンドラゴラとべりが走り抜けていく
ぐちゃっ、とも
じゅるっ、とも
なんとも似つかない音が響く
マンドラゴラは銃を取り出しひたすらに触手を撃つ
べりはナイフを取り出しひたすらに触手を切り付ける
「わんこぉおおおおおッッッッッッッ!!!!!!!」
僕は叫んだ
それしか出来なかったから
「はてなさんたちどこにいっちゃったの…」
消えるわんこをしっかり目視した僕らは
アルファチームが消えた理由を悟った
それと同時に自分たちの命の危機も感じた
「戻ら…なきゃだよね…」
夜春は目に涙を浮かべながらそう言った
でも、助けられなかった人たちを置いて
自分だけ逃げるだなんてあんまりじゃないだろうか
そこで僕たちは思い出した
ペンタがくれたあの小瓶を
緊急事態になったら使ってね、って
全員がその小瓶の蓋を開けて全身にパラパラと振りかける
魔素は消費しなければ時間経過で消えない
僕たちベータの実験結果だ
そして魔素が強化するのは能力だけでない
能力が強化されたように見えたのは基本的なステータスアップによるもの
最初に消費することになったのは光
弦が切れそうなほどに大きく引かれた弓はどこか穢れていて
それと同時にとても純粋で綺麗で美しかった
そんな弓から放たれた矢はわんこを呑んだ触手を体を貫く
切れた何本かの触手が醜く地面に落ちてもがく
「能力発動」
光の能力、発光
触手の体の中に埋もれた矢が眩しく光る
透けた触手の中にははてなさんたちどころかわんこもいなかった
別の場所に送られたかもしくは………。
「行こう」
夜春の強い声
半分壊れたような触手を千切っては投げ
千切っては投げて道を開ける
そこには異様な光景が広がっていた
壊れた世界の救い方 設定資料集②
登場人物たちのステータスや能力の詳細です
以下注意事項
半分作者用で作ったようなものです
小説に出ていない情報もやや記載しているため絶対ネタバレしたくない人は閲覧しないでください
絶対この通りとは限りません、とりあえずのメモ程度です
前回の設定資料集①に加え新メンバーやレベルアップによる強さの変化
新しい評価ポイントなどが変更点です
---
ランク付け
SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F
強い 弱い
ポイント
Fから1ポイントEは2ポイント
SSSは9ポイントの1〜9ポイントのステータス合計値を記載
参考までに、平均である全てBだった場合は30ポイントとなる
現段階では能力、攻撃、防御、素早さ、耐久、魔素対応の5つを評価
能力
その能力の強さ、使い勝手、メリットデメリットなどを加味して評価
攻撃
攻撃力、攻撃手段の多さ、通用する敵の多さなどを加味して評価
防御
受けたダメージの食らいにくさ、受け身手段などを加味して評価
素早さ
純粋な移動速度の速さ、身のこなしの速さなどを加味して評価
耐久
防御、素早さとその他体力などを加味してどれだけの戦いに耐えられるかを評価
魔素対応
魔素使用時による能力等の強化度合いなどを評価
---
登場人物名、能力、攻撃、防御、素早さ、耐久、魔素対応、合計値の順
beri、S、SS、D、A、C、D、32
わんこ、SSS、C、E、A、B、A、31
マンドラゴラ、A、C、B、A、B、SS、33
フェンリル、SS、B、C、A、B、A、33
光、D、B、S、SS、S、E、32
みぃ、S、E、B、SSS、C、A、32
レイト、SS、F、E、E、C、S、24
フレア、B、S、C、C、S、S、34
夜春、C、B、S、S、B、B、33
Rumina、A、A、A、A、A、A、36
はてな、F、B、S、S、SS、S、35
LUA、A、C、SS、D、A、S、31
ペンタ、B、SS、E、A、D、B、29
---
能力詳細
beri
氷で物体を作ることができる
作る度に体内の水分を消費する
自分より大きな物は作れない
極端に細かい物は作れない(鍵などは場合による)
武器を作った場合それでダメージを与えた分自分を回復させる
わんこ
未知の可能性を秘めている
触れたものの能力レベルを強化する
同時に複数人触れた場合効果は2人なら半減、3人なら3分の1といったように減少する
ごく稀に能力を一時的に変化させる
マンドラゴラ
発生させた霧を吸い込んだ者に状態異常を起こす
例、幻覚、毒、麻痺、幻聴、動悸、目眩、嘔吐、など
敵味方関係なく発動する
故意で特定の効果を発生させることが出来るのは相手のレベルが自分より低い場合のみ
相手のレベルのほうが高い場合は効果が薄れたり効かなかったりする
この能力は特にレベルの影響を受けやすい
フェンリル
巨大な氷を出現させる
水を直接凍らせることも可能
凍らせた水の質量や出現させた氷の質量が大きければ大きいほど何らかの体調不良が現れる
あまり形は思い通りにならない
光
矢を刺した箇所を眩しく光らせる
自分はその影響を受けない
閃光にもなるが一時的なら灯りとしても使用できる
(その場合自分は恩恵を受けない)
みぃ
透明な直径1cmほどの糸状のものを出現させる
ある程度の負荷がかかっても千切れないが、自分より高レベルの者は千切りやすい
一度に3mまでしか出せず、それ以上は自身の身長を削る(最大10m)
いつでも糸は消滅させることができ、消滅させれば失った身長も戻る
レイト
素材を使ってポーションを作成する
素材の希少性が高いほど高レベルなポーションを作成できる
自分よりレベルの高い相手に使用すると効果が薄れる
フレア
斧を振るった箇所や血などの特定の箇所に炎を出現させる
自分が出現させた炎の影響は受けない
レベルによって受ける炎のダメージは変わらない
高レベルの相手の血は燃えにくい
出現させる度にダメージを受ける
夜春
自分より低レベルの者を誘惑、催眠にかけることができる
成功した場合、レベル差によっては好きに動かすことが出来る
レベル差1〜2、体を動かすのに違和感を与える
レベル差2〜4、+感情などにも少し干渉できる
レベル差5〜7、歩いているのを走らせたり程度はできるようになる
レベル差8〜10、+感情にかなり干渉できる
レベル差11以上、思い通り操れる
能力発動中は防御力、素早さ、耐久が大幅に下がる
Rumina
欲しいと思ったものがどこにあるか分かる
これは人にも適用することができる
はてな
不明
LUA
自分の体力を削った分の2倍誰かを回復できる
相手のレベルの方が高い場合相手の意思により体力を吸い取られることもある
全て取られても0にはならず1で止まる
ペンタ
魔素を含む物体から魔素を取り出すことができる
やりすぎるとだんだん体の様子がおかしくなる
(例、目眩、悪寒、吐き気、気絶、失神など)
---
大きい追加要素、更新がある場合は設定資料集③として出します
壊れた世界の救い方 第二話「狗毒」
アルファチーム‐みぃ視点
「いった…」
目を覚ました途端全身が痛む
特に背中の方
どこかから落ちたのだろうか
隣には手に意思結晶を握ったままのLUAが
少し離れたところにははてなさんっぽい人もいる
アルファみんなしてどうしちゃったんだろう
「起きて、起きてLUA」
LUAの背中をさすりながら声をかける
それと同時に左手に鋭い痛みが走った
よく見てみれば何かの棘のようなものが刺さっている
そういえば、少し頭もくらくらするような気がする
「んんぅ…」
LUAが寝返りをうつ
右手でLUAを軽く叩いてみる
「あれぇ?みぃ?」
「ここどこ…」
「こっちのセリフだよもう…」
「みぃ左手どうしたの?めっちゃ腫れてる」
見てあげるからと言ってLUAは僕の左手を取った
触るだけでもズキズキと痛む
そして頭がくらくらする
「これ…毒だよ…」
「どこで拾って来ちゃったの…」
LUAはハンカチを使って棘を抜く
「みぃもしかして…体力いくつ?」
今まで気付かなかった
言われて確認すると、もう1割程度しか残っていなかった
LUAは呆れたような顔をすると能力を使って体力を回復してくれた
どうやらLUAの体力も減ってしまうらしい
「LUAは大丈夫なの?」
「どう考えてもみぃの方が大変」
「回復薬が残ってればよかったけど…落ちた衝撃で全部割れちゃってる」
LUAは今までと違ってタメ口で話してくる
それからはてなさんの無事を確認したあと
また洞窟の最深部に向かって歩くことになった
「その棘私もやられたことあるんですよ」
「どこで刺されたか覚えてませんが」
「専用の薬がないと毒が解除されないんです」
それまでLUAの体力を少しずつ分けてもらうことにした
LUAの減った体力のうち2倍は回復するとはいえ
LUAの体力だって無限にあるわけじゃない
できるだけ早く終わらせて地上に戻らないといけない
「ここ絶対最深部に近いです」
「こんなに個体に近いような黒い物体初めて見ましたもん」
その言葉だけが希望だった
最深部に続く道がどれかも分からないまま僕らはしばらく彷徨った
靴の裏の溝に黒い物体が詰まってツルツル滑る
そのせいで何度も転びそうになった
「あ、そうだ」
「他のチームに連絡しなきゃ」
LUAははてなさんに意思結晶を手渡した
「こちらアルファチーム」
「おそらく最深部に近い場所まで来た」
「他チームの状況報告も待ってます」
「以上」
そのあと来た報告は1つ
わんこが消えたということ
ベータチームもデルタチームも同じ場所にいるらしい
はやく合流しなきゃ
「私落ちる直前にわんこさん見た気がするんですよね」
「え、私も」
僕もそんな気がする
もしかして一緒に落ちたとか?
でも辺りにわんこの姿はなかった
でもとりあえず今は最深部に向かいながらベータとデルタと合流することが1番だ
壊れた世界の救い方 超番外編「痴漢」
※本編には1ミリも関係ないです
※今回やばめです
beri視点
ここは特殊な馬が引くという電車の中
初めて乗るのでペンタについて来てもらった
ちょっと都会に行くということでおしゃれもしてきた
白のふわふわのTシャツにかわいいミニスカを履いて来た
「ペンタかわいいー?」
「うんめっちゃ似合ってる!」
問題が起きたのは帰りの時
ウキウキで買った荷物を両手に持って乗り込んだ
もちろんペンタにも手伝ってもらって2人とも両手がいっぱいだった
「ペンタ…?」
帰宅ラッシュのこの時間帯は
電車の中は人でいっぱいで色んな人が押し合いながら乗っている状態だ
その中でペンタは必死にこっちに視線を送ってくる
「どうしたの?」
聞いてみるとペンタは唇を噛んで黙れというようなジェスチャーをする
絶対に何かおかしいと思った私はペンタの周りの人を見てみる
ペンタの横にいるのは中年男性と学生さんたち
明らかに怪しかったのは中年男性のほうだ
荷物を何も持っていないけれど腕を何かゴソゴソ動かしている
ペンタはぎゅっと目を瞑って何かに耐えているようだった
その時私は少しは疑ったものの、これしかないと思ったものがある
ペンタは痴漢に遭っていると思った
でも私の中で一つ疑問が浮かぶ
ペンタは男
そして今怪しいのは中年男性
こちらも男だ
ペンタが痴漢に遭っている場合このおじさんは相当やばいやつになる
私はただでさえ重い荷物を片手に持ち帰るとペンタの腕を引っ張った
できるだけそのおじさんから遠ざけようと思ったのだ
けれどそれは失敗した
あの中年男性、おじさんは一緒についてきてしまった
わかったのはこのおじさんがやっているということだけ
ペンタは私が気づいたことを悟ったのか
こちらを向いて口パクで助けてと言ってくる
でもどうすれば良いかわからない
降りる駅まで待つしかなかった
まもなく〜◯△※◇駅〜
そうアナウンスがされた途端
おじさんは1番近くのドアにたくさんの人を押し除けながら進んでいった
あの人もここで降りるのだろうか
でも一旦は遠ざかってくれてありがたかった
ドアが開いた時
おじさんは私たちの邪魔をするように移動した
他の人がおじさんの反対側から出ていくのに
私たちは持っている荷物のせいで隙間を通っていくこともできなかった
そして人が出ると今度はたくさんの人が乗ってくる
それに押し戻されて私たちは降りることができなかった
そんなことが繰り返され
どうしようどうしようとしているうちにもう終点だ
ちなみに、おじさんはずっとペンタに痴漢し続けていた
そんな中見覚えのある人を見かける
名前は…確かflare
みぃを連れてきた人
あのことからちょっと怖いイメージがあるけど
今ここで頼れる人なんてその人しかいなかった
「あの!」
声をかけると何かを察したflareはペンタと私の荷物を半分ずつ持ってくれた
そしておじさんを押すようにしてドアに近づく
「ありがとうございます…!」
駅に着くまで私はペンタと相談していた
何度も何度も降りられずにいたため家からはとても遠いのだ
今から帰るとなると歩きで何時間もかかると思う
しかもこんな夜道をずっと歩くのは不安だ
夜になると敵も強くなるしまた変な人がいるかもしれない
こんな荷物もあるしどこか宿を取るのが1番良いだろう
「今から取れるとこあるかなあ…」
「俺ここまで来たことないからどこにあるかわかんねえし」
「あの…うち泊まります?空いてますよ」
そう言ってきたのはあの中年男性おじさん
絶対泊まるわけないだろお前のせいなんだし…
通報ものだよこんなの
これであいつの狙いがわかった
本当に気持ち悪い人だ
その時、flareは私たちを少し寄せてこう言った
「うちで良ければ来ますか」
状況を理解してくれたんだろう
一気に怖さが和らいで、自然と口角が上がってしまった
「flareが良ければぜひ!!!」
---
「ここの部屋は好きに使って良いよ」
「明日には帰るよね?朝ごはん食べていく?」
「いやちょっと申し訳ないですよ!」
「泊めてもらえるだけで感謝感謝…」
「いやいいよ何も気にしないで」
「もうすぐ夜ご飯できるからね」
あの人って料理できたんだって思いながらキッチンに向かう
流石に全部任せっきりじゃ申し訳ない
階段を降りるとそこには野菜と戦うflareの姿があった
「あの手伝いま…す…?」
驚いて疑問系になってしまった
包丁が怖いのか両手で包丁を持って野菜を切っているのだ
野菜は何の支えもないせいでツルツル滑って全く切れていない
「いや大丈夫!」
「じゃあ野菜支えてるので…」
それにしても切り方が危なっかしい
あまりにも時間がかかったせいでペンタも来てしまった
「え、俺も手伝う」
3人がかりで料理をすることになった
flareが苦手なのは包丁であることがわかったので火を使う方を頼んだ
「火の強さ教えてあげるから」
「ふりゃ下がってて」
「え?ふりゃ?」
「なんか可愛くない?ふりゃって」
「まあいいか…」
そう言って私はコンロのスイッチを回す
だが火がつく気配はなかった
「あぁうちガス通ってないんですよ」
一瞬頭の中にはてなマークが浮かんだが
そういえばこの人の能力は炎だった
たしかにガスいらない…かも?
コンロに直接能力を発動してその火で調理をしてもらう
火の扱いに慣れているのか包丁とは打って変わって私より上手いくらい
良い感じに野菜を炒めてくれた
「あ、塩が足りない」
ペンタが塩の入っているビンを見てそういう
「今日買ってきたやつ使おう」
「ペンタ持ってきてー」
こうして出来たのは塩酢豚
とろとろのソースと早速買ってきた塩の味が…
って、なんか塩足りない気がする
もしかしてペンタ別のもの入れやがったかもしれない
まあ食べれるし良いんだけど
「美味しい…」
「教えてくれてありがとうございます…」
「いつも1人で料理すると3時間くらいかかるんだよね」
「えー!」
「でもそれでもちゃんとやってるの偉いよ」
「いやいはめんどくさい時はカップ麺だよ」
「というかほとんど…」
「いやわかるよ?その気持ち」
そんな感じで楽しく会話していた
だけどさっきからペンタの様子がおかしい
ずっと買ってきたピンク色の塩の瓶を見つめている
ん?塩の瓶?
いやでもあれ入れてたよな…
うわもしかしてペンタやったか
あんなハートの蓋の瓶買った記憶ない
買ったとしたらペンタが勝手にカゴに入れてる
そんなペンタと目が合う
助けてくれよみたいな顔で見てくる
いや知らんがな!
ふりゃにそんなものを入れたやつ食べさせてしまって申し訳ない
だけど言うのも気まずい…
お互いタメで話せるくらいにはなったけど
流石にレベルが違う
「ご、ごちそうさまー」
ペンタとハモってご馳走様をする
ふりゃはお風呂を入れに行って私とペンタで洗い物をすることになった
「…」
ペンタは黙って私が洗った皿を拭いている
静かなキッチンにカチャンと皿を置く音が響く
「ペンタさぁ」
「言わなくても分かるよねー」
心なしかペンタの皿を置く音が大きくなった気がする
「ちゃんと確認してから入れてよね」
「しかも液体だし気付いてよ〜」
「…わざとだよ」
最初それは意地を張ってわざとって言ってるのかと思った
けど、違うみたいだった
「今しかチャンスないと思って」
「えぇええ、、」
「でもふりゃも食べちゃったよ?」
「もう3人一緒でも良いよね」
「え、え?えええ!?!?」
そんな会話をしながらだったせいか
だいぶ時間がかかってしまっていたらしい
食器を洗い終えた頃にはふりゃが風呂入ったよと言いながら歩いてきた
やけに顔が赤かったのは気のせいか
それか…ペンタのせいか…
「誰が先に入る?」
「いややっぱ申し訳ないから私たち最後でいいよ」
「本当?じゃあすぐ出るから待っててね」
ふりゃはそうしてまた風呂場に戻って行った
少し安心した
「ねえペンタこれ効果消す薬とかないの!?」
「魔素でどうにかなったりとか!」
「え…ないよ…」
「1番効果高いやつ買ってきちゃったし」
「バカすぎほんと…」
実はめっちゃ我慢してるけれど
薬の効果はちゃんとあるみたいで
自分も顔が真っ赤になってないか心配なところ
おそらくペンタもそうだろう
できるだけペンタから離れようとしてペンタとは反対のソファに座る
「眠いね」
ペンタはソファに横になる
私が座っている方を頭にして寝転がってきた
「ペンタ…///」
「ん?何?」
「ペンタ薬聞いてないの…?」
「え?そんなわけないじゃん」
ペンタは急に起き上がる
私のところへ四つん這いになってだんだん近づいてくる
着ているオーバーサイズのシャツが下がってペンタのお腹までよく見える
---
ペンタ視点
俺だけ薬の効果が薄いとか
そんなことがあるわけない
なんなら1番強く効いていると思う
薬物がよく効くように改造した魔素をさっき使ったから
その効果も出始めている
でも俺から行くのは少し問題があるかもしれない
なのでこうやって誘っている
「べりどうしたの?」
「顔真っ赤だよ」
「やだっ!私お風呂入ってくる!」
ふりゃが出たかどうかもわからないのに
少し恥ずかしそうにしていたべりは風呂場まで走って行った
どこにあるかも多分よく分かってないまま行っただろう
少し聞き耳を立てるとふりゃとべりの話し声が聞こえる
やっぱりふりゃまだ入ってたんだろう
俺も行って脅かしてやる
声のする方に進んでいく
というより、リビングを出てすぐに風呂はわかった
脱衣所でなにやらわーわー言ってるらしい
脱衣所のドアを開ける
そこには風呂場にいるふりゃと話すべりがいた
多分ふりゃがまだ入っているのに無理矢理べりも入るつもりなんだろう
ちゃっかり服を脱いでいる
「わっ!ペンタのへんたーい」
「いやべりの方が変態だろ」
ふりゃの言う通りだ
どうせ確認もせず風呂のドアを開けたんだろう
でも俺もふりゃもあの薬のせいで
何がとは言わないけど…
「いやペンタの方が変態だねー」
「だってみてごらんペンタのペンタ」
「その言い方やめろよ…」
「しょうがないだろ薬のせいなんだから」
「え?薬?」
まずいことを言った
そうだふりゃには何も伝えてないんだった
べりも言ってないなんて想定外
「じゃあどうするのそれ?」
「薬の効果いつ切れるの?」
「少なくともそのまま放置してれば24時間は…」
「本当なんてもの買ってくれちゃってんのペンタよぉ〜」
そんな話を聞いてるふりゃもだんだん状況を理解してきたのか
早く風呂を出ようとしてくる
だめに決まってるのに
そっと脱衣所のドアを閉める
「えっ…出させて…」
「みんなでお風呂入ろうね〜」
べりがふりゃの腕を引っ張る
「ペンタも脱いで!一緒に風呂入るよ」
なぜかふりゃの家の風呂は結構デカかった
大人が4人は寝れるスペースはある
浴槽だって全員で入っても狭くなさそうだ
「ペンタ…♡」
「いでっ」
床のタイルに思い切り頭をぶつける
何が起きたのかと思うとべりは俺の上に乗っていた
「じゃ、じゃあ俺は…」
そう言いかけたふりゃの腕をべりが掴む
2人相手するのも余裕ですとでもいいたげなドヤ顔をしている
「べりどいてよ普通俺が上じゃん」
「えーやだ」
「ペンタこわいしー」
えぇ…
怖いのは絶対にこっちなんだが
風呂のタイルとか絶対痛いやつに頭ぶつけられてるんだぞ
そしてふりゃ
お前だけ逃げようとかずるすぎる
まあ泊まらせてくれてるけど
その分のお礼だと思ってくれってことだろう
「ふりゃ逃げちゃうならふりゃの上に乗っちゃうもんねー」
俺の隣にふりゃを寝かせてべりはそっちに移った
てか本当に色々おかしい
普通俺とふりゃが上なんだってば
「もう良いよね私待てない…//」
べりは仰向けのふりゃに馬乗りしたまま始めた
俺はどうすれば良いのか分からなかった
だけどべりが上なのは本当にムカつく
男を舐めないで欲しい
「許さないよ」
「女は下でしょ」
「えなにすんの…」
やっぱり力では俺の方が強い
そのまま力ずくでべりをふりゃから下ろす
「そんなにペンタ待てなかった…?♡」
「ちげえよ」
「ふりゃやり返してやろうぜ」
「ちょっと待ってよ!」
「あ、縄あるけどいる?」
なんでそんなものがあるのか
頷けばふりゃは脱衣所から結構ちゃんとした縄を持ってきた
それでべりの腕を縛った
心なしかべりが嬉しそうにしている気がする
やっぱこいつの方が変態だろ
「良いよ〜手塞がっても口もあるし」
「2人おいで〜?」
「舐めた口聞くとただじゃおかないぞ」
もう我慢の効かなくなったそれを思いっきり押し当てる
痛かったのかべりは少し顔を顰める
ゆっくりずらしてみればするっと入った
「あっ…///」
「動くよ」
「えっやだっ…」
「ふりゃ助けて」
べりはなぜか腕の縄を解いていて
その手でふりゃに手を伸ばす
「どう?♡」
「ンっ//ふりゃ逃げようとしたらぁっ///辞めちゃうよっ//?」
べりはなぜか俺から逃げようとして
だんだん奥の方に奥の方にと遠ざかっていく
隙を付いたようにして俺を蹴飛ばしたべりはふりゃの上にまた跨る
「ペンタちょっと痛いもん…」
「え…えぇえ…」
結構ショックだった
でも薬のせいだし…
本当に理性ぶっ飛んだようなもんだからしょうがない…
あの魔素使わなければよかった
---
神視点(誰でもない視点)
「ちょっとべり良くないって本当」
「今更そういうこと言うの?」
「…」
「えいっ!♡」
「ん゙ッッー♡///」
「あ゙っ゙ふりゃやばいっ…///」
べりはふりゃのお腹に手をついて必死になっている
ふりゃは目を瞑ってちょっと辛そうな顔をする
その間にペンタはこっそり抜け出しスマホを持ってきていた
「今後使えるかもだから撮っとこ〜」
「え゙ぇ゙ッッ///♡!?」
「ふっ…ふざけんなぁっ♡///」
「あっ…///んっ♡」
べりはペンタのスマホを奪おうとしたその時
--- ピンポーン ---
インターホンが聞こえる
流石に出るわけにもいかずしばらく待っていると
今度はトントントンとドアを叩く音がする
ペンタがバスタオルを体に巻いて出ることになった
「こんな夜中になんですか…?」
「あっ、ペンタ!?」
「てかなんでバスタオル巻いてる…?」
「いやこっちも聞きたいなんで夜春がいんの?」
「今日終電まで寝ちゃって…」
「泊めてもらいたくてどこか探してたんだけど」
「べりさんがここにいるって」
「は?え?べりいるけど?」
「ここでも俺たちの家じゃないし」
「誰の家なの?」
「ふりゃ」
「え、まじか」
「おじゃましまーす」
「いやちょっと待って!?」
夜春はペンタの言うことを聞かずずかずか家に踏み込んだ
そして騒がしい風呂に気づいて脱衣所のドアを開けようと手を伸ばした
「入るつもり?」
「え、うん」
「べりさんの声するけど」
「入ったらしばらく出れないけど良い?」
「どういうこと?」
「別に良いけど」
「そうなんだね」
ペンタは脱衣所のドアを開けると夜春を放り込むようにして入れた
そしてすぐに脱衣所のドアを閉める
服も着たまんまの夜春を浴室に入れた
「えっ…べ…べりさ…」
「あ゙っ゙あ゙っ゙あ゙っ゙…♡////」
「ん?ふぇっあっ♡///夜春!?」
「夜春も座るッッ♡///?」
「いや夜春は俺が…」
ペンタはそう言って夜春の服を脱がしていく
上着を脱がしシャツのボタンを開けホックを取る
下も全て脱がし終えると夜春は顔を真っ赤にした
「本当最低…♡」
「でもちょっと嬉しいんじゃない?」
「ばか…///」
今度は痛いなんて言われないように
そっと入れてだんだん速くなるように慣らして動く
やはり最初は顔を顰めるもののだんだん甘く溶けていく
「ばっ///」
「あっ…♡///ばあ゙っ゙♡///」
「やばっ締まりすぎっ…」
こんなんじゃすぐ終わってしまう
それを心配したペンタは一旦動くのを辞めて夜春を焦らす
「ふぇ…?」
「もうおわりぃ…?」
「夜春っ…かわいいねっ…」
「/////」
その頃隣のべりは体力が尽きてきたのかだんだん遅くなっていった
甘い声よりもはぁはぁといった疲れた息が増えていく
「ふりゃっ…ごめんっ…あっ///♡」
べりはふりゃの上に被さるようにして倒れた
そんなべりをのけるようにして起き上がったふりゃ
べりを立たせて壁に手をつくように言った
「え?こう?」
「うん…」
「ひゃぁっ!?」
「あ゙っ♡これやばいかもっーー…♡///」
夜春はもうペンタにされるがままになって甘い声で鳴いていた
それでも夜春はべりさんより後に来たんだからと言って
ずっと我慢をし続ける
ふいに起き上がった夜春はペンタの上に座るような形になって自分で動き始めた
「あ゙っ///やばいっ///いぐっ////♡」
「こわれるっ♡////」
夜春の動きは止まった
けどペンタは終わらない
ぐたっとする夜春を置いてべりに咥えさせる
「ふぇっっ!?」
「んっっ!!!」
「べりやばっ…」
「もう無理…でる…」
「じゅるっ…」
「ペンタ多すぎるってぇっ///♡」
「てかふりゃもそろそろ限界なんじゃっ♡///ないのっ?」
「そんなわけあるかっ」
「お前が先にいけって…///」
「えっ///♡絶対やだぁっ///」
「!?…急に速くちゃっ…あッッッッーー////♡」
「もうみんな全員ぬるぬるじゃん…」
「私途中参加だったけどねー」
「えへへ…でも夜春が入るって言ったからだよ?」
「は?関係ないです〜」
長いようで短い夜だった
その後ちゃーんとしっかりお風呂に入って寝た
次の日の朝は昨日の夜のことなんて忘れましたみたいな顔をして
今度は夜春も一緒になってご飯を作った
朝ごはんを食べたあと
3人は電車で帰ることにした
「もう変なのに遭わないようにね」
「うん!ふりゃありがとうっ!」
べりは勢いとノリでふりゃの頬に口付けをする
「この様子じゃ変なのに絡まれる側じゃなくて絡まる側じゃん…」
「心配ないか…いや別の意味で心配になってきたわ」
「えへへー」
「夜春かーえろっ?」
「ペンタ荷物持ってー」
「は?最悪なんだけど」
「てか8割べりの荷物じゃん!!!」
「しょうがないなあ半分は持つよ〜」
「それでもベリのやつ持ってるんですけどね💢」
そんな感じで3人は無事、帰ることができた
何があったのかと聞かれたが
3人ともちゃんとは答えようとしなかった
あんなこと言えるわけないし
ずっと誰にも言うことはなかった
直接的な言葉避けたらこうなりますよねうんうん
文字数えぐいのは気にしない気にしない!
最後まで読んでくれてありがとうございましたー!
壊れた世界の救い方 第三話「1番身近な敵」
デルタチーム‐光視点
「あっち行ってみよう」
「で、行き止まりだったら次こっちね」
「それも行き止まりだったらまた戻って左行こ」
フェンリルとマンドラゴラで地図を書きながら進む
思ったよりも洞窟の道は複雑で
奥に進めば進むほどそうなる傾向があった
「これもうあの触手見つけたら飛び込むとかっていうのはどう?」
「それが1番早い気してきた」
アルファチームから連絡を受けて30分ほど経った今
できるだけアルファチームを待たせずに最深部に到着したい
みんなの中で緊張感が生まれ始めていた
「ちょっと怖いけどアリかもね…」
歩くことに疲れてきたせいでこんなぶっ飛んだことでも受け入れられる
確かにべりさんの言うとおりかもしれないけど
まだ正体もわからないような触手に自分から飛び込むのは嫌だ
何より怖い
「光めっちゃビビってるじゃん」
「良いよ歩きますよ歩きます…」
黒い物体に足を取られながらも進んでいく
途中で何度も敵に会ってそのたびにあのレントムを手に入れた
やがてフェンリルは荷物持ちみたいになってしまい
最終的に大量のレントムを担ぐ人になった
しばらく進むと坂のようなものが見えた
「すごい下いくよこれ」
「もしかして近いんじゃない?」
夜春の予想は当たっていた
その坂を滑り台みたいにして下に降りる
そこには割れた回復薬やハンカチなど
さっきまで人がいたみたいな跡が残っていた
多分、アルファチームのもの
「一旦連絡しない?」
「それでどこ行ったか聞けば良いよね」
マンドラゴラの提案に意思結晶を全員で囲んで連絡を入れる
向こうが連絡をしてくるように言ったはずなのに
一向にアルファチームから連絡が来る気配はない
---
アルファチーム‐はてな視点
「はっ…そっちは任せました!!!」
「こいつは私が…」
わんこから伸びる長い長い触手
わんこは泣きそうな顔でこちらに攻撃を仕掛けてくる
もう何が起きているのかわからない
私でも軽々と振り回せるくらいの大きさの
小さなモーニングスターしか持ってきていなかった
こんなことになるならひとつ大きいのを持ってきたのに…
※モーニングスターとは
持ち手の棒に繋がれた鎖の先に
トゲトゲの鉄球がついた武器である
このサイズではわんこの硬い触手は少し凹んだりする程度
重さが足りずトゲも食い込ませることができない
「はてな危ない!!」
ペンタさんのカタールが目の前を切り裂いた
吹き出した血は猛毒
触るだけでも危ないのに思い切り返り血を浴びてしまった
「くそっ…」
だからと言ってペンタさんがなにもしなかったら
棘のついた触手ならそっちの棘で毒が回ってしまう
あのみぃさんの手に刺さったというものもおそらくそれだろう
「わんこなんでこんなことするの…!」
みぃさんの毒は結構体に回ってきており
そう叫ぶ声ですら弱々しく感じた
体力を補給してきたLUAの限界も近い
「うぅうっ…うぅううううっっ…」
唸り声を上げるわんこ
意図的じゃないことくらい、私にだってわかった
そこで気になったのはわんこの首輪
ボスモンスターが付けているものと形状が似ている
だけど見たことのない色だったのでスルーしてきてしまった
「わんこ先輩、絶対助けます…!」
わんこの触手を全部切り落とすような勢いで
4人は戦い続けた
壊れた世界の救い方 超番外編「誘拐ごっこ」
みぃ視点
最近みんなは僕に構ってくれなくなった気がする
別にそんなことを気にしているわけじゃないけど
心なしかみんなの態度が冷たいんだ
「明日の朝ごはんどこで食べるの〜?」
研究室のソファでごろごろしているべりに話しかける
「知らない」
「適当」
「そっか…」
こんな感じの反応しかされなくなってしまった
心当たりはないわけじゃないけど
前までは普通に話してくれたことを思うと少し寂しい
今度は夜ご飯を作っているはてなさんとLUAのところに行ってみる
「何作ってるの〜?」
「邪魔ですよ」
「まだなのであっち行っててください」
「はてなさんこれもう入れるよ?」
「お願いします」
こんな感じで除け者にされてしまった
そこでインターホンが鳴った
たまたま僕が1番近くにいたため流れ的に出ることに
扉を開けるとそこにはるみながいた
「あれ、みぃじゃん」
「べりいるー?」
「いるよ」
「ちょっと読んできてくれん?」
「分かった」
どうせ冷たい反応をされることは分かっていたので
僕はべりの肩を軽く叩いて玄関を指差した
するとべりは僕の腕を掴んで玄関まで無理やり連れて行く
「えっ、何、どうしたの」
「じゃあべりとみぃ借りてくね〜」
「はーい」
あのはてなとLUA
他のみんなですらそう返事をした
僕だけ状況が飲み込めていないみたいだ
るみなはあのお得意のドラゴンを呼ぶとそこに僕とべりを乗せた
ドラゴンの足にるみなが捕まるとドラゴンはサッと飛び立つ
山の頂上から山を滑るようにして街へと戻る
着いた先はるみなの店
というか家だ
「ちゃんとあれ入荷してる?」
「もちろん」
「あっ、みぃこれあげるよ」
「賞味期限近いし今食べちゃって」
るみなはそう言って僕に棒付きのキャンディーを渡した
ハートの形の甘いキャンディーだった
「2人ともまだ風呂入ってないよね?」
「寝室で待ってるから行ってきてー」
聞いてはいたけどるみなの家には温泉が沸いていた
べりの後にそれに入るともう前にるみなが待っていた
「ねえ帰らないの?」
「今日はだめだよ〜」
「なんで?」
「今から分かるって」
そのまま僕はるみなに連れられ寝室に入る
今日はここで寝るんだろうか
「べりお待たせー」
「お、やっときたかぁ」
「てかるみなも脱ぎなよどうせ汚れるよ?」
「みぃは私が…♡」
「えっ、、、嫌だ逃げる」
「こらぁっ!」
るみなにがっちり肩を掴まれ拘束される
なんで手錠なんてものが家にあるんだよこれも商品か?
「ねえほんとやめてって…///」
あのキャンディーを食べてからだろうか
なんか少し変な感じがする
今までに感じたことがない
気持ち悪いわけじゃないけどどこか苦しい
「でもみぃおかしいなあ」
「なんかかたくなーい?」
るみなが僕の上に被さる
なんの話をしているのか僕にはさっぱりわからなかった
「んぁっ!?//」
「触んないでそんなとこ!」
「あぁっ…んっ!?」
おかしくなったのだろうか
るみなは下をずっと触ってくるし
べりは僕の口の中に舌を入れてくる
なんか変な気分だ
「あえぇっ…///」
「みぃなんかちょっと震えてる?」
「かわいー」
「かわいくないし…っんっ///」
「なんでぇっぁっ///変な声出るぅっっ///」
僕がそう言った途端にるみなはさっきよりも激しくなる
何度もやめてって言ってるのに
その度に激しくしてくる
「めっちゃぴくぴくしてる…」
「もう限界かなぁ?」
「えぇっあぁあっ///るみなほんとやめてっ///」
「なんかくりゅっ…///」
「あぁあっ///」
「いっぱい出たね…///」
「あへぇっ…///」
結局この後また風呂に入って帰った
本当何がやりたかったんだろう
僕には理解ができなかった
第二期になってから番外編増えた気がする
気のせいですね(自己解決)
最後まで読んでくれてありがとうございました!
壊れた世界の救い方 第四話「利己的な自己犠牲」
beri視点
ふとアルファチームの声が聞こえる
誰の声かはわからなかった
だけどアルファの誰かのもの
そんな気がしたのだ
「べりも聞こえた?」
「もちろん、ふぇるたちも聞こえたんだ」
ずっと連絡が途絶えていたアルファチーム
その存在を確認できただけで少し安心した反面
私たちが聞いた声はただの喋り声なんかじゃない
もし喋り声だとしたら誰の声かの判別もついたかもしれない
高い叫び声を伝い喉の震える音
血を吐くように吸った肺の唸る音
怒りや憎しみの混じり力強く蹴られた地面の音
アルファチームはとても「大丈夫だろう」なんて言える状況じゃないのは確か
その音の元へ
私たちは一心になって走った
今まで消耗した体力なんて気にせずに
本当の全力を出して走った
それは近づくにつれて声も聞こえるようになってくる
誰の声かも分かるようになってきた頃
わんこの唸り声を全員で聞いた
とても苦しそうで今にも倒れてしまいそうな声
今ここで自分が何もできないと言う無力感を味わった
そして次の瞬間天井がぼこっと突き出してきた
誰かが座ってそこが凹んでしまったくらいの大きさ
同時に聞こえてきたのはみぃの叫び声
この上にわんこ達がいる
そう確信した私たちは天井を突き破ることを決意した
もちろん、上にいるわんこ達に危害が加わるかもしれないことは承知の上
今は例えるなら一生探し続けていた宝物があったとする
それを目の前に差し出されて
欲しいですか?と聞かれているようなもの
「誰か良い感じに壊せる人いる?」
「出来れば穴はそんなに大きくしたくない」
夜春が天井を指差してそう言った
真っ先に出てきたのはマンドラゴラと光だった
ここから天井までの高さは3mほどあり
遠距離の攻撃じゃないと届かなそう
試しにマンドラゴラが銃を放ち
光はできる限り矢を射った
しかし天井は不気味にどくどくと脈を打ち
銃と矢を飲み込むようにして消してしまった
もっと大きな力が必要そうだ
「あ、この草見たことある」
夜春が足下に生えているオレンジ色の草を摘み取る
「銃にこれ入れたら多分良い感じになると思う」
夜春の言葉を信じてマンドラゴラはその草を銃弾の中に入れる
元々能力のために作ったものだったから中身はほぼ空っぽで
新しく何かを入れるのは難しいことではなかった
「じゃあ撃つよ…?」
「みんな離れてたほうがいいかも」
いつのまにかめちゃくちゃ遠ざかっていた夜春
そんなに威力が出るものなのかとビビり散らかしたみんなも後ろに下がる
マンドラゴラは震える手を押さえながらトリガーに指をかけた
大きな爆発音
パァンと何かが弾ける音と同時に視界は炎で包まれた
焼かれた天井にはぽっかり穴が空いている
フェンリルとそれを消化しながら上の様子を覗きに行く
ちょうど私が穴の真下に立った時
赤い液体と一緒に透明な糸が垂れる
見覚えのあるこの糸はみぃのものだとすぐに分かった
「行こう」
声を張って皆に言い聞かせる
血が垂れてくるのを見て踏みとどまっていたから
でもここまでしたならやるしかない
私は糸を掴んで上へと登った
「————————!!??」
私は絶句した
目の前にいたのは自分の腕に糸を絡ませて
それが解けないように片手で抑える
…倒れた、みぃの姿
糸を思い切り掴んで登っていた自分が憎い
それを見るなり私は糸から手を離した
腹部からの出血
潰れた左足
傷だらけの顔
「あぁっ………」
こう言う時は何をするべきだろう
圧迫止血とか、そんなことができるレベルじゃない
穴から垂れていたのはみぃの血だった
突然空いた穴に希望を見出し糸を垂らしてくれたんだろう
涙で潤んだ瞳はまだ生きたいと願う何かを感じた
何もできぬまま呆然としていると
みぃの腕に巻かれた糸がピンと張った
誰かが上がってこようとしているんだ
私1人じゃ何もできない
それを悟った私はみぃの腕の手前で糸を踏んで
誰かが捕まった糸を精一杯引いた
1人の人間でも軽々と上がる糸
不審に感じた私は穴を覗き込む
どす黒い、ぐちゃぐちゃとした触手の塊が糸に絡み付いていた
それを見た私は思わず手から糸を離してしまった
下ではその触手たちと戦うみんなの姿があった
1人でもやらなきゃいけない
私はまずみぃに持っていただけの回復薬を注いだ
これだけの傷、回復薬があっても治るのには時間がかかる
そんなみぃを置いて私は離れた場所で戦うはてなさんの場所まで走った
ずっと見えてはいたものの
まだみぃよりは優先度が低いと判断してしまったのだ
しかし、それは誤りだった
はてなさん、そしてLUAの目の先にいるのは
「わんこ……?」
血の色の触手を身体中から生やして
それをムチのように振るってはてなさんたちを攻撃している
嘘だ、わんこがそんなこと
ふと目に入ったのはわんこの付けている首輪
ボスモンスターが付けている首輪に似ている
そんな気がした
でもそんなの関係ない
苦しそうにもがくわんこを放っては置けない
「応援に来ました!!!」
「べりさん!?」
あまりにも必死になっていたのか
あるいは感覚器官が死んでいるのか
近づいても気づかれる気配がなかった
そのため大きな声を出してしまった
「危ない!」
私に向かって伸びる触手
はてなさんのモーニングスターが飛んできた
壊れた世界の救い方 第五話「おやすみわんこ」
beri視点
手のひら大ほどの鉄球がわんこの触手を殴りつける
少し食い込んだ末に触手は引っ込んでいく
なんとかギリギリで避けることができた
「ありがとうはてなさん…」
「いえ、それよりペンタさんをお願いしたいです」
「ペンタ?」
そういえばペンタがいなかった
はてなさんが言うにはペンタは途中でこの触手の原因となる魔素があると言い出して
それを調べに行ったという
かなり時間が経ったけれどずっと帰ってこないらしい
「分かりました行ってきます」
「はい、お気をつけ………」
「え?」
はてなさん、そしてLUAの動きが止まる
2人の視線の先にいるわんこもピクリと止まって動かない
まるでわんこは眠っているようだ
「今です!」
はてなさんがわんこのところへ走っていく
LUAもその後を追いかける
私も手伝わなきゃ
はてなさんが触手の塊の中のわんこをぎゅっと抱きしめる
触手から離そうとしているようだ
そんなはてなさんを私とLUAさんで引っ張る
「だめですっ…首輪が引っかかってるみたいで…」
引き剥がそうとすればするほどわんこの首が締まる
首輪だけがしっかりと触手にくっついている
「この首輪切っちゃうよ!!!」
私はナイフを取り出してわんこの首と首輪の間に刺す
そのまま勢いで上に引き抜くと簡単に首輪が切れた
切れてもなお首輪は吸い付くようにして触手と離れない
首輪が取れたわんこは倒れるようにして触手から落ちる
「わんこ先輩!!!」
わんこは本当に眠っているらしく
息はしているものの瞼はぴくりとも動かない
一瞬死んでしまっているのかと思い心配になる程ぐっすりと眠っている
「おーい!うまくいったよ!!!」
ペンタが走りながらやってくる
何をしていたかと聞く理由もなかった
おそらくペンタのおかげでわんこを助けられたんだろう
「ここのちょうど真下にすごい濃度の魔素の塊があったんだよ」
「そこをぶっ壊しただけなんだけどね」
「それが動力源だったみたい」
「あ、あとちょっとだけ欠片をもらってきた」
まだ話を続けるペンタを置いて
はてなさんたちはみぃの様子を見にいった
私は穴を降りてフェンリルたちの応援をしようと思ったけれど
穴を覗くとそこにフェンリルたちの姿はなかった
「おかしいなあ…」
「みぃ何か知ってる?」
みぃに聞くとは横に首を振った
みぃの怪我はだいぶ治ってきており、自分で立って歩けるほどになっていた
「みんなで探しに行こう」
6人で穴を降りると、そこには倒れ込んだ夜春の姿があった
苦しそうに固く目を瞑っており
額には汗をかいていた
「夜春どうしたの!?」
「は…はやく助けなきゃ…」
「みんなあっちに連れて行かれた…」
様子からして能力を使用しているように見えた
そんな夜春をLUAはひょいと持ち上げ背中に背負う
「ひどいダメージですね」
「外傷はないのに」
「分けてあげたいですが私の体力も多くは残ってないので…」
ここにLUAがいてくれてよかったなと思う
夜春をかつげそうなのはLUAくらいだった
今いる男はボロボロのみぃにわんこを抱えるペンタ
他はLUAしかいなかった
「夜春さんは軽いので」
LUAはそう言って平気な顔をして歩いている
はてなさんも驚いてLUAを見ていた
「先輩からあんなにダメージ受けてたのに」
「LUAさんもしかして自動回復でもしてます?」
「あ、ペンタさんからもらった魔素を使いましたよ」
「僕の場合なんか自分の体力が少しずつ回復するようになったんです」
「なるほどです」
「私も早く能力がわかれば良いんですけど…」
ずっとそんな様子で私たちは夜春の言う方へと進んだ
壊れた世界の救い方 第六話「命の矢」
フェンリル視点
「たすけてぇっ!!!」
「だれかぁああっっ!!!!!」
光の叫び声が響く
今いるのは洞窟の外
洞窟の外であり、洞窟の内部である
「こんなところから落ちたら死んじゃうよ!?!?」
洞窟の真上
おそらく山の頂上から突き抜けるこの筒状の物体
半透明なおかげで貫かれたペンタの研究所がよく見えてしまう
でもそれをよく見ようと下を向くと困ったことになる
足場は1人2つ
今ここにいるのは僕と光
そしてマンドラゴラの3人だけ
つまり合計6つは足場があるのだが
その一つ一つの大きさは握り拳ほどしかなく
握り拳ほどの足場が筒状のここに並んでへばりついている
「逃げとけばよかった…ほんと…」
マンドラゴラでさえ足元を見るたびに震えている
もちろん僕もなんだけど
ちょっと変な色の変わった床を踏んだだけ
そしたらすごい勢いで3人とも上に上がっていって今に至る
本当に怖かった
エレベーターがえげつないスピードで上に上がっていった感じ
そしたらこんな小さな足場しかないんだからもうどうしようもない
「みぃでもいればなんとかなっ…」
「うわっ!?」
マンドラゴラの口がまだ開いたまま
片方の足場が崩れ落ちる
ぱらぱらと欠片がしたに落ちていく
マンドラゴラは慌てて僕の右腕を掴んだ
「やばい落ちる落ちる!!!!!!!」
「足場が崩れるなんて聞いてないよ!!!」
「やめてあんまり押すと僕までっ!」
急に体重がかかった右足の足場が少し動いた気がした
危ないと思った僕は右足を少し浮かせる
でももう既にその頃には
もうだめだなと感じ始めていた
「フェンリル…!」
光が僕の足元を見てそう言った
その瞬間今度は左側の足場が動く
下にガクリと
支えを失った左足が重力に吸い込まれる
「光…弓出せる…?」
僕は必死になって壁にへばりつく
もうろくに力もかけられない右の足場もどれほど持つか分からない
しかもそこにはマンドラゴラも体重をかけている
「出せるけど…どうして…?」
「撃って」
「何も気にしないで」
僕はそう言って左腕を高く上げる
そしてできるだけの力でぎゅっと壁につける
意図もせず左手は握られていて自分の手のひらに爪が刺さる
「撃てって…そんなことしたら…!」
「良い、撃たなかったら僕このまま落ちるよ?」
「いやフェンリル流石にやめとけって…」
マンドラゴラが申し訳なさそうに僕の腕から手を離す
「ほらマンドラゴラも言ってるし…」
「良いから撃てって!!!」
ブシュッッ
鈍い音
痛みはさほど感じなかった
撃たれた場所がどくどくと脈を打つのを感じる
光の瞳にうっすらと涙が浮かんだ気がする
そんな光を見て、何も意識しなくても目から涙がポロポロと溢れ出てくる
その涙にはだんだんと赤い色が混ざる
「きゃっ!?」
光の足場が片方崩れる
マンドラゴラが光の方へと手を伸ばす
やがて僕の残った足場も崩れ
マンドラゴラと光の1つずつが残った
「フェンリル本当に大丈夫…?」
「腕やばいよ…」
「えぇっ、そうかなぁ…」
自分で見れるはずもない
できれば本当に動きたくない
動くたびに矢の刺さった左腕が痛む
「光、俺にも一本矢をくれないか」
マンドラゴラは冷静だった
マンドラゴラの足場が崩れた時
手に握られた矢を思い切り壁に突き刺して
それにしがみついて耐えている
「フェンリルもこうしておけばよかったのに…」
「その矢抜けそう?」
「よっ、余計なお世話だよ…」
マンドラゴラの矢は今にも折れそうで
最終的にマンドラゴラも僕と同じ形になった
「きゃぁっ!?」
光が落ちた時は本当に焦った
だって、誰も弓射れる人いなかったからね
僕はなにか起これみたいな
半分以上投げやりでペンタからもらった魔素の瓶を自分に振りかける
そして精一杯に能力を使用した
その結果、ちゃんと固まりきらなかった水が大量に発生した
でもそれでよかった
その水の中に光は大きな水飛沫をあげて落ちる
「はぁっはぁっ…げほっげほっ」
少し深くまで沈んだ光が水面近くまで上がってくる
僕とマンドラゴラも今だと顔を見合わせて
自ら矢を引き抜いて落下した
僕たちが落ちるとその水はすっと消えていく
水の上に落ちたと言えどもかなりの高さがあったせいで
身体中に激痛が走る
絶対どこか折れている
ぐちょぐちょした地面の上で僕たちは気を失った
壊れた世界の救い方 第七話「脱出」
マンドラゴラ視点
「…」
意識はある
目を開いても目隠しをされているみたいに何も見えない
自分の空想の中で1人彷徨っている
「あっ!あそこっ!」
誰かの声が脳内で反響する
その声はどこか遠かった
ぼんわりと響いた音が空気を揺らす
まるで水の中にいるみたいに、俺はその空気に揺さぶられる
「フェンリル!?」
「マンドラゴラも!光もいる!!」
電話をして話しているような気がする
それでもその声は近くにあった
声に俺は応えてあげたかった
しかし俺の体は1ミリも動きそうにない
少し申し訳なさを感じる
「こんなところに放置するわけにもいかないけど…」
「流石に3人運べる状況じゃないよね」
沈んだ夜春の声
べりがこう言うまでは
「え?叩き起こして歩いてもらう!!」
嫌な予感がする
しかも、的中した
次の瞬間大きく僕の体が動く
その刺激のおかげか目を開けた先にはちゃんとものが見えた
べりの足だった
「いったぁああああ」
起き上がった瞬間全身に痛みが走る
多分落ちた時の衝撃とべりの蹴りのせい
「立てる?」
はてなさんに手を引かれてなんとか立ち上がる
もう身体中全てが痛い
それでも俺たちはここから出なければならなかった
まだ倒れていた2人も起こして出口へと向かう
2人もだいぶ負傷しており
フェンリルに至ってはよくわからない咳をしている
壊れたペンタの研究所を横目にずっと歩いていると
ちょうどドラゴンに乗ったるみなと会った
運良く荷物の運搬中だったらしく
そのままるみなの家に行くことになった
「もーう、こんな怪我して」
全員何かしらの骨折
そして悪性の魔素による汚染のどちらか
または両方を受けていた
「夜春はこれね」
「フェンリル手首どうした!?」
「腕取れそうだよもう」
「マンドラゴラも!!!」
10人もの相手を一度にするるみなの手捌きには圧巻した
驚くほど広いるみなの家には全員分ねれるほどのスペースがあった
流石にベットや敷布団は足りなかったので
比較的軽傷のLUAやべりはソファで寝ている
「るみなさんほんとありがとうね…」
「また移動販売手伝うから…」
夜春がるみなとおしゃべりしているのを横目に俺は眠りについた
1つのベットに3人で寝るのも悪くない
横幅は2mほどとかなり大きなベットだが
同じ毛布にくるまって寝ると身体共に暖かくなるものだ
隣のフェンリルの尻尾が少しくすぐったい
まだフェンリルは起きている様子だったがペンタはもうぐっすりだ
何か忘れているような気がしたけど
多分、気のせいだった
俺たちはちゃんと帰ってきたし
ちゃんと目的も…
壊れた世界の救い方 第八話「お返事ください」
ペンタ視点
どうやらるみなの話を聞くと元々魔素は確認されていて
本当はものすごく希少な存在だったらしい
でも最近はどこからか魔素で溢れかえる場所が出てくるようになったという
「ほんとここらおかしいんだよね」
「ペンタもそういう仕事してるならわかるんじゃない?」
るみなの言いたいことはわかる
俺もこんなようなことを始めて長いわけではないが
その中でも随分と変化を感じられることがある
それは敵の強さだ
「あ、あとわんこの話?なんだけど」
るみなは言った
やっぱりあのわんこの首輪はボスモンスターのものらしい
今は首輪を破壊したし動力源の魔素も破壊したから制御が効くけど
もしまた何かあって暴走したらどうにもできないとか
「それは困るなぁ…」
「だよねー、だからこっちもちゃんと準備進めてるの」
「その名も〜わんこ抑制薬!!!」
るみなが高く持ち上げた手に握られていたのはわんこ抑制薬と書かれたガラス瓶
中には何やら怪しそうな紫色の液体が入っている
よく見れば炭酸水よりも大きめの気泡がたびたび弾けている
「これ何をどうしたらこんな毒々しい色になったの…?」
「えーちょっと魔素って強いからさぁ」
「いっぱい危ないもの放り込んだんだけど」
「そしたらこうなったよね」
「もしもの時だけだよ?そしたらこれ飲ませてあげてね」
「えぇ…」
ものすごく気が引けるがそれを俺は受け取った
出来れば出番がないことを祈るばかりだ
「ほらみんなもう支度できたんじゃない?」
「次どこに行くんだっけ?」
「まだ決めてないんだよね、それが」
「…ほんと?」
「じゃあひとつ頼みたいことがあるんだけど…」
その説明は全員がいるところで行われた
るみなの看病は本当にすごくて
あんなに大怪我を負っていたみんなもたった1日で元通りになった
まだ多少魔素汚染の影響もあるらしいけれど
それでも随分とマシになった
「1週間くらい前に雪山の方で採掘の依頼をした人がいるんだけどね」
「その人がいつになっても帰ってこないの」
「結構信頼ある人だったから心配でさぁ」
「私の代わりに行ってくれないかな」
「るみなさんはこないの?」
夜春が口を挟む
「もうほんと最近忙しくて忙しくてさ…」
「もし行って無駄足になったら困るしお願いしたいなぁ!」
他に行くあてもないし
無事に連れて帰ってきてくれたらもちろん礼もするとのこと
そういえばずっと行くあてないよねって
そんなような話をべりたちがしていた
「しょうがないですよね…」
「こんなに助けてもらったんですし」
はてなさんが言う
「行ってくれるの!ありがとうー!!!」
「雪山はこの地図で見るとこっち側で…」
「あ、この地図あげるよ」
るみなはそう言って雪山に印をつけた地図を夜春に手渡した
「それとみんなには魔素汚染について話しておかないといけないね」
「魔素汚染っていうのは、その名の通り魔素に汚染された状態なんだけど」
「少量ならほぼ問題ない」
「もうみんな知ってる通りステータスが上がったりするよね」
「だけど量が増えるにつれて体に悪影響も出てくる」
「あんな魔素だらけの洞窟にいたんだししょうがないよね」
「ということで魔素の扱いには注意するように」
「特にペンタね」
俺の能力のことがバレていたのか
もしくは誰かが言ったのか
るみなはもうすでにお見通しといった様子だった
「じゃ!いってらっしゃーい!」
流れに押されてるみなの家を出る
玄関を開けるとそこには見覚えのない男が2人立っていた
「あっ」
みぃがそう言って後ろに下がる
みんなの様子的に俺とLUA、はてな以外は知っている様子だった
「レイトと…ふr」
べりがそう言いかけた時だった
斧を持った男がわんこに斬りかかろうとする
俺は咄嗟にカタールを取り出して斧を横殴りにする
そのまま落ちた斧はわんこの尻尾の毛を少しだけ切った
「本当にあいつがボスなのか?」
「首輪が見えない」
「いや本当だよ」
「少し前まで付けてたじゃないか」
みぃが逃げようと言って俺たちの服などを引っ張る
その方向は雪山へ向かう道だった
「くっそ逃すかよ!」
「せめてあの犬っころだけでも!」
ほぼ叫んだように言い放ちながら今度は瓶を大量に持った男が何か投げつけた
多分、わんこを狙ったんだろう
しかしマンドラゴラの頭に当たって瓶が割れ
その中身が飛び散った
「やばいミスった…」
その声を聞く頃には俺は全く知らない場所にいた
周りにいるのはマンドラゴラとわんこ、そしてLUA
皆何が起こったんだろうとでも言わんばかりの顔で辺りを見回している
真っ暗とは言わずとも薄暗く
冷たく冷えた石で作られた部屋に閉じ込められている
石と石の隙間から光が漏れていた
壊れた世界の救いかた 第九話「OD」
マンドラゴラ視点
「ふぁ!?」
レイトが何かビンを投げたのは分かった
よく分からない液体が自分のところに飛び散ってきた
次の瞬間、俺は全く知らない場所にいた
幸いにも俺だけじゃなくペンタやLUA
わんこも一緒だ
乱雑に積み重ねなれた岩岩の隙間から光が刺す
皆怯えた様子で辺りを見ている
もちろん俺もなんだけど
「これレイトのせいだよね?」
「てか、レイト以外ないよね?」
わんこが言った
皆の反応が特にものも言わずに頷いたのは言葉が思い浮かばなかったからじゃない
わんこ…
やっぱり思うことはあるんだろう
けれど下手なことは言わないように
必死に言葉を選んでいる
「ごめんね私のせいだよね…」
「そんなことないですよ」
そう言ったLUAの声が今にも消えそうで
だんだんと小さくなっていく声は今にも泣き出してしまいそうだった
そっとわんこの背中を撫でるペンタの手が止まる
ぎぃっとも
じゃりっとも似つかない
砂利の上を刃物が引きずるような音が聞こえた
隙間の光が順番に黒く染まっていく
皆でその黒い影から逃げるようにして角に集まる
まるで命懸けのかくれんぼをしている気分で息を殺した
今にも破裂しそうな心臓の音は
これだけでもバレてしまいそうなほど大きく鼓動していた
黒い影が止まる
すると、部屋のちょうど真ん中のあたりが急に燃えだした
燃えそうなものはなにもない
ただその炎は薄暗い部屋の中をぼんわりと照らす
「ゔぅッ!?」
急にわんこの背中がびくりとそり返る
荒く息をするわんこの頭をぽんぽんと撫でる
どうすればいいかわからなかったからだ
炎の灯りと岩の隙間の光
それらに見守られながらわんこは苦しそうに息をしている
ペンタがるみなに貰ったという薬を取り出してわんこの口元に当てる
あまり雑に飲ませたせいか
わんこは咽せて、咳をして
こちらに飛んできた一滴が服の上で弾けるように音を立て蒸発した
ビンの中の液体を3分の1ほど流し込むとペンタはビンに蓋をする
わんこは落ち着いた様子でありがとうと言った
どういうことなのか詳しく説明しろと言ってもできないが
なんというか、どこか理解し切った表情でわんこを見つめる
にこっと笑みを浮かべるわんこ
再び黒い影は動き出した
大きく砂利が巻き上げられ
その一部が岩の隙間から入り込んできた
するとそのあたりの岩が次々と崩れ天井の藁がパラパラと落ちる
土煙が治った時
そこにいたのはあの2人
レイトとふりゃだった
「やっぱりかぁ」
「オマケなんていらないんだけど」
「てかレイトやっぱボスいなくね?」
「まじゆるさん」
「いやだからそこの犬が…」
「どう見たって普通の犬やんけ」
「しばくぞ」
「えぇ」
そんな2人の会話を聞いているとわんこがまたさっきみたいに苦しそうに息をし始める
あの2人の標的がわんこだとするとまずい
ペンタはまたさっきのビンの中身を3分の1ほど飲ませた
「ありがとう…」
その言葉がさっきよりも気力のないように感じられた
「え、暇じゃね?」
「俺帰るわ」
「ちょっと待って!」
「んー、なんかごめんね」
「ミスだったわ」
「それと言ってはなんだけど今ここちょっといけば雪山だからさ」
「じゃね」
だからやけに寒かった…じゃないじゃない!!
なんで??それっぽっちなのかよ俺たちへの興味は!
そんなことを考えているうちにレイトもふりゃもスタスタと歩いて行ってしまった
呆れたような顔で俺たちは顔を見合わせた
「ふふっ」
LUAが笑う
そんなLUAを見てペンタも俺も笑う
守ったんだ、わんこを
ペンタにぎゅっと抱かれたわんこは幸せそうに微笑む
そこから俺たちは雪山に向かうかるみなのところへ戻るかの二択となったが
一旦俺たちは戻ることにした
わんこのこともあるし
それより急にいなくなっちゃったから心配されてると困る
奇跡的に道に迷わず日が沈むまでに戻ることができた
るみなの家の前でははてなさんと夜春が外に出て俺たちを探していた
「!?!?!?」
「ねええええええ!!!どこいってたの!!!」
夜春の元気そうな声
ちょっと安心してしまった自分がいる
みんなるみなの家の中で待ってるからと言って家の中に戻る
事情をちゃんと話して、またわんこの薬を作ってもらうことになった
「これ作るのたーくさん危ない毒入れないといけないんだよね」
「…どういう意味?」
「ずっと飲んでると、そのうちねってこと」
るみなが怪しい鍋の中身をくるくるとかき混ぜるのをペンタとわんこと一緒に見ている
その言葉を聞いたペンタが顔を暗くする
「薬漬けでも構わない」
「みんなを傷つけたくないよ」
そう話すわんこの瞳には涙が浮かんでいた
今にも溢れてしまいそうだ
「そうか…」
「私も頑張って改良を重ねていこうと思うよ」
「でもとりあえずはね」
るみなから新しい|薬《どく》を受け取った
壊れた世界の救い方 超番外編「お仕置き」
神視点(誰の視点でもない視点)
「今日の夜ご飯豪華にするから!!!」
「早く帰ってきてね!!!!!!!」
夜春はそう言って家を出るberiに声をかけた
「何時位?」
「ちゃんと帰ってくる!」
「うーん、8時には帰ってきてね」
「りょーかいです!」
ドアを閉めて鍵をかける
少し寂しそうな夜春の表情が目に浮かぶ
でもきっと大丈夫
8時までになら余裕で帰って来れる
beriもそう思っていたし、夜春もそう信じていた
けどそううまくはいかなかった
「あれここどこだ…」
夜春が欲しいと言っていたスパイスを取りに行くだけだったのに
道が入り組んでその間を埋めるように木が生い茂った森
迷子にならないはずがなかった
結局、beriが帰ったのは夜21時を過ぎた頃だった
「絶対怒られる…」
そう思いながらドアノブを握って引っ張ってみる
ガタンと虚しい音を立ててドアは動きを止める
やっぱり空いていない
トントンと軽くノックをしてみる
もしこれで夜春が出てきたら…
beriはどこか緊張しながらドアの前で待っていた
一方夜春は料理を終えたどころかみんなご飯を食べ終わっていた
広いテーブルの一角にまだ2人分だけの食事が残っている
「べりさん遅いな…」
「そろそろくるんじゃなーい?」
「僕は知らないけどね」
みぃは洗い物を終えると部屋へ戻っていってしまった
その時だった
トントントン
「!!!」
急いで走って玄関へ向かう
その慌てた手つきで鍵を開けてドアを開ける
急いでたから勢いがついてたのか
ちょっとドアが軽く感じられた
「ごめんね夜春」
「遅れちゃった…」
玄関の向こうでぽつりと立つberi
小さな声でつぶやいた
「べりさんっ!!!おそすぎっっ!!!」
「どんだけ心配したと思ってるの!!!」
「ごめん…しかもあれ見つけられなかった…」
「ううん、大丈夫」
「ほんとごめんね…」
「(あとでお仕置きだから)」
「…?」
「なんでもない」
「もうご飯できてるし食べるよ」
広いテーブルの隅で2人
少しぬるい料理に手をつける
多分暖かいうちに食べたらもっと柔らかかったであろうお肉
出来立てはふんわりと湯気が立っていたであろうスープ
焼きたてはカリカリのみみだったであろうパン
でも、ぬるくても夜春と一緒に食べると美味しかった
「夜春も料理うまいよね」
「今度一緒につくろうよ」
「うんっ」
「食べるの待っててくれたんだよね」
「ありがとう」
「…うん」
食べ終えた食器を片付ける
綺麗に片付けられた調理器具を見て相当時間がたったことを察した
「お風呂入ってきて」
「そしたら私の部屋に来て」
夜春はもう入ったんだろう
ちょっと怖いけど、悪いことをしてしまったから
ちゃんとその通りにした
「べりさんまだかな」
夜春は自分のベットの上
無意識に足をぶらぶらさせている
お仕置きのはずなのに
ちょっとだけ楽しみだったり
「夜春お風呂出たよー」
beriがそう言ってノコノコ部屋に入ってきた
---
夜春視点
「ねぇ、あれ見つけられなかったんだよね?」
「うん…ごめん…」
「しかもこんなに時間遅れて」
「あんなに余裕ぶって家出てったよね?」
「はいぃ…」
「お仕置きだよ、」
「え…え…?」
混乱した様子のべりさん
ベットから降りてべりさんのすぐ後ろのドアを閉める
「逃げちゃだめだから…///」
「!?」
「ちょっ、何するの…?」
まだ言いかけるうちにべりさんをベットに押し倒す
濡れた白く長い髪が窓から漏れる月の明かりに艶めく
「ひゃっ…」
「いつもべりさんにやられてばっかりだから…」
「今日は仕返しとお仕置きも込めて…だよ…♡」
そう、いつもべりさんにやられてた通り
初めてだけど何故かするする手が動く
やられてた側の経験でだけでも事足りる
少し背中を持ち上げてホックを外す
お風呂上がりのせいか、この状況のせいなのか
いつもよりも体温をはっきりと感じる気がした
「やめっ…///」
「だめ!動かないで」
「お仕置きだよ」
ちょうど手で包めるくらい
いつもされてるみたいに、少し舐めてみたり
触って弄ってみたりする
「あっ…///」
「夜春…だめだよっ…//」
「だめなのはそっち!」
「お仕置きだから!!!」
もう生まれたままの姿のべりさんと一緒に毛布を被る
べりさんはされるがままが嫌なのか
私の服まで脱がせようとしてくる
「だーめっ!」
「やだ…!」
でもやっぱりべりさん、力強いかも
2人の服がベットの下にぱさぱさと落ちる
べりさんは下の方に手を伸ばす
もうそれだけで何をしてこようとしているのか分かった
「あっ///んっ…、!」
変な声が出る
口をしっかり片方の手で押さえてぐっと堪える
そしてもう片方の手でべりさんにやり返してやる
「やめてよっ…」
やめてだとか
やだとか
そんなことばっかり言ってるくせに
もうびしょびしょだった
べりさんの顔をふっと見て笑ってやる
「夜春もだよ…?」
下にあった手を上に出して私に見せてくる
きらきらとべりさんの手が月の光に反射し光っている
「いちいち見せんな…///」
少し力を込めて
もうそのまま中へと入る
ちょっと指を曲げたりするだけ
それだけなのにべりさんは顔を赤くして
口を押さえて必死に我慢している
いつも私がされてる時、こんなんなのだろうか?
「夜春さーん」
「明日のことで相談があるんですけど」
そんな声がドア越しに聞こえた
はてなさんの声だ
絶対にバレちゃまずい
足を伸ばしてドアを押さえる
「あっんっ///はっ、入っちゃだめれすっ…///あぁっ♡」
「あっ、すみません」
「邪魔しちゃいましたね」
「失礼いたしました」
何か察されたみたい
その声はだんだん遠ざかっていった
「はてなさんどーしたの?」
「いえなんでも」
「ふーん」
ペンタの声がする
嫌な予感
「よーはるっ!」
ものすごい勢い
ドアの前に出した足が何の意味もなさずに吹き飛ばされたよう
「アッッ」
「んっ////な、//なんでもないよ!!!♡」
「スミマセンデシタ」
それからだった
ちゃんと全員の部屋に鍵がつけられるようになったのは
「次からは遅れちゃだめだよっ…」
「もちろん…」
そのまま2人で朝を迎えた
あああああああああ
リクエストなんですぅううううそう!リクエスト!!!!
自分の受けとか…おぇっ((((((((((((((なんでもないです
でも、リクエストありがとうございましたあああ!!!!!!(白目)
でもでも、リクエストだからね!私は無罪!無罪!無罪!
最後まで読んでくれてありがとうございましたああ()
壊れた世界の救い方 第十話「愛情煮込み」
はてな視点
わんこ先輩がただただ心配だった
ずっと暗い顔をしているのもあるけれど
フェンリルさんやペンタさんに聞いたことがどうしても気になる
わんこ先輩がボスモンスターなのはずっと勘づいていた
けれど、私はその現実を受け止めなかった
だってこんなに普通に会話ができて
私たちを襲ってくることがない
こんな無害な人、犬がそんなものなはずがないと
私はずっと思っていた
「お昼は雪山に小屋があるらしいから、そこで食べるよ」
「わーい!」
みんなはあんまり気にしてないのか
それとも重く受け止めないようにしているのか
わんこ先輩がボスモンスターであるという事実が露呈したとしても
誰1人としてわんこ先輩と接する態度を変える人はいなかった
るみなさんから頂いた地図を見ながらゆっくり歩いていく
多分、急いで行った方がいいことなのは分かってる
けれど今はそんな気が起きなかった
街の方は比較的温暖で緩い風が吹いていたけれど
雪山に近づくにつれてひんやりと冷たい風が吹くようになってきた
もう山は目の前だ
そしてその雪山の|麓《ふもと》の辺りに煙突から白い煙を出す小屋が見える
夜春さんが言っていた小屋だろう
「だんだん寒くなってきましたね」
そう呟いてみる
「ねー、お腹もすいたしはやく行きたい」
わんこ先輩が真っ先にそう返してくれた
みんなの気持ちがわかった気がする
これは態度を変えることなんて、できない
たとえわんこ先輩が敵であったとしても
わんこ先輩がわんこ先輩であることには限りないのだから
チャリン
小屋のドアを開ける
ドアの上の方には鈴がついており
乾いた空気に鈴の音が響く
「いらっしゃいませ」
野太く低い男性の声
奥の厨房から聞こえてきた
「何名様ですか?」
「えぇっと、10人です」
「席別れちゃうけど5、5、で奥の席どうぞ」
「ありがとうございます」
席は男女で分かれて座り
店のおすすめであった鍋料理を頼んだ
(男:フェンリル、みぃ、LUA、ペンタ、マンドラゴラ)
(女:はてな、夜春、わんこ、beri、光)
「へいお待ち」
出てきたのはうどんとたくさんの野菜が入った鍋
向こうの男の方はきりたんぽの鍋だ
各自で取り分けて器に盛る
まずは一口出汁をいただく
あつあつの出汁は冷えた体に染み渡り体の中から温まるのを感じた
うどんももちもちでこしがありとてもおいしい
野菜も新鮮で、話を聞けば自家栽培しているらしい
「ごちそうさまでした!」
あっという間に食べ終わってしまった
まだみんなが食べているうちに私は準備を始める
このまま丸腰で雪山に挑むわけにもいかないからだ
「ちょっとここら辺についてお話聞かせていただけませんか?」
「お、何について知りたいんだい?」
「ここお客さん少ないからねえ」
「話し相手になってくれるなら喜んでなりますよ」
壊れた世界の救い方 超番外編「夢の中」
はい、今回もそういう番外編です
苦手な方はお帰りください()
ペンタ視点
「みぃ〜今日はみぃが掃除する番でしょ?」
リビングでお菓子を食べているみぃに話しかける
するとみぃはムッとした顔をして部屋に逃げてしまった
確か昨日もこんな感じで俺が掃除をする羽目になった
ちゃんと役割が決まってるんだし
そこくらいはちゃんとして欲しい
30分ほどで掃除を終わらせて俺も部屋に戻る
この後はみんなで買い物に行く予定だったから準備をするためだ
最後まで掃除していた俺は遅れてしまった
「ごめんごめん」
「お待たせ」
「おっそ、10分も待ってるんだけど」
そう口に出したのはみぃだった
確かに今日はみぃが一番楽しみにしていたお店に行くということもあったが
俺が遅れた原因はみぃでもある
「誰が掃除代わりにやったと思ってるの?」
俺がそう聞くとみぃはそっぽを向いてしまう
そのままみぃは俺の言うことを聞かずに買い物に行くことになった
まあ1人や2人のために全員の予定を遅らせるほど俺は終わってない
「じゃあみんな行くよー!」
合計10人での買い物
みんなずっと一緒にいるわけにもいかないから
途中でそれぞれ行きたい店に分かれることになった
俺はなんだかんだずっとみぃと行動していた
けれどみぃは俺のせいで時間が遅れたことをまだ許していないのか
ずっとむすっとしていて話しかけても返事が返ってこない状態だった
「みぃそろそろ戻らないといけないよ」
日が沈みかけている
しかしみぃは綺麗に並べられた商品に夢中で
まだ帰らないとでも言いたげだった
「みぃってば」
少し肩を揺するとその手を叩かれる
もう俺はその瞬間からみぃを置いていて帰ることにした
それでも約束の時間には少し遅れて到着した
俺とみぃ以外はとっくに集まっていたらしい
「ペンタみぃは?」
beriにそう聞かれても俺は答えることができなかった
「さあ」
試しに10分ほど待ってみることにした
けれどみぃが帰ってくることはなかった
「ペンタみぃと一緒に行動してたよね…?」
「どこ行ってたの?」
「えっと…確か」
俺の案内でみぃと俺が見ていたコーナーまで行くことになった
少し店の大部分から離れた場所にあって
日が沈むのもちゃんと綺麗に見えるような外だった
もうこの頃には太陽はほとんど沈みかけていた
「みぃ〜」
「みぃ〜」
みんながみぃの名前を呼んで探している
けれどどこにも見当たらなかった
「ほんとどこ行っちゃったの」
「ペンタちゃんと見ててよ〜…」
「そんなこと言われても…」
みぃを置いて自分だけ帰ったなんて言えるはずがなかった
それはきっと俺が悪いと思っていなかったから
多分そうだろう
でも自然とみぃを探すことには誰より必死になっていた
手当たり次第探していると、足に妙な感覚を覚える
何かを踏んだらしい
そっと足をどけてみるとそこには猫のキーホルダーが落ちていた
みぃがかばんに付けていたものだと一目で分かった
「こっちだ」
探しているみんなに教えることも忘れるほど
俺は必死にその周辺を探していた
だんだんと店の方からは離れていき
薄暗い建物の裏になるような場所に入っていく
このキーホルダーはカプセルみたいになっていて
その中に猫と飾りのラメが入っているものだ
多分どこかにぶつけた衝撃でカプセル部分が割れてしまったんだろう
ラメは少しずつ転々と発見できた
またラメを見つけた時
その横には大きな水たまりがあった
そこにはくっきりと足跡が残っている
「…?」
しかし大きさはみぃのものではない
あまりにも大きすぎるし
足跡の残り方からしてみぃではない
そういえば、この辺りはあまり治安が良くないという噂を聞いた
それを思い出した俺は急いで走った
「やだっ!!!」
「やめろっ!!!」
そんなみぃの声が耳に飛び込んでくる
こっちだ
もはやこの辺りは住宅街
迷路のようになった路地裏を縫うように探していく
もういくつ曲がったすら覚えていない角を曲がった時だ
あまり勢いよく走っていたもので気づかなかったのか
かなり体格のいい男性とぶつかってしまった
「すみません!」
「おい!!待て!!」
「急いでるんですッ!!」
その男性の後ろを見た時
そこにはみぃがいた
俺は動くことができずにしばらくみぃを見つめていた
みぃの目は閉じていて
身体中には傷があり
その横には金属製のバットが置かれている
「お…お前えっ!!!!!」
感情に任せてそのバットを手に取り
こちらに向かってくる男性に向かって精一杯振った
あたりどころが良かったのか悪かったのか
その男性はすぐに倒れた
「みぃ…」
「ごめん…」
そんなみぃを抱えて俺は店に戻る
みんなに事情を説明しながら無事家に帰った
みぃの傷はあまり深いものはなく
金属バットも未使用と言ったところだ
あと少し遅れていたらと考えるとおろそしい
「あららぁ」
「でも大したことないね」
「ちょっと副作用あるけどこの薬でも飲んでおいて」
そういってるみなに貰った薬をみぃに渡す
みぃはそれを飲んだ後すぐに自分の部屋へ向かっていった
「そうだ、副作用ってどんな?」
「んー、わかんない」
「でもこの前フェンリルに使った時はまーちょっとかわいくなったね」
「どういうこと?」
「知らない方がいいよ」
「副作用って言っても数時間で解けるし大丈夫」
「そ…そう…」
---
「はぁっ…疲れたあ」
自分の部屋に戻りベットに飛び込んで毛布を被る
今日はよく眠れそうだ
目を瞑ろうとしたその時
ドアが小さく開いた
「ペンタ…」
「寝れない…」
あれだけのことがあったからか
怖くて眠れないからと言ってみぃは俺のベットに入ってきた
今まであんな態度だったみぃがこんなことをしてくるだなて珍しい
「ペンタ…?」
「ぎゅーっ…///」
みぃも気が狂ったのかと思った
でも、みぃから来てくれるなんてことそうそう無い
俺はみぃをそっと抱き返す
「えへへ…」
そんなみぃがかわいく見えた
今までも少し、可愛いなくらいは思ったことがある
しかしここまでの感情は初めてだ
「ペンタやだっ…」
「んー!服返してよ…」
みぃの服を上だけ脱がした
その時にるみなの言葉を思い出す
あの薬の副作用の話だ
本当に僅かだが、胸が膨らんでいるような気がした
「だーめ…」
「俺のスイッチ入れたのはお前だよ」
「スイッチ…?」
みぃを下にして押し倒す
キョトンとした表情
何もわかっていないであろうみぃが堪らなく良かった
「さわんないでそんなとこぉっ…!」
「嫌だよ」
必死に抵抗するみぃの腕を押さえつける
「痛かったら言ってね」
俺はそう言ってみぃにまずは1本指を入れる
るみなの言っていた意味が良くわかった
早く言えば、女体化だろう
数ある薬の中からこれを選んで渡すだなんて
るみなも相当な変態野郎なのだろうか
「やだっ…!」
「やめろっ…!」
意外と一本するりと入ってしまった
少し中で指を動かしても余裕がある
「いれるよ」
「何するの…?」
「…!?!?やめてっ!無理!!!」
普段よりも1オクターブ高いみぃの声が部屋に響く
溢れ出るみぃの液体が音を立てる
「あっ…///やらっ…ペンタっ…///♡」
「いっちゃえよ」
「んっ…////」
---
気づけばもう朝になっていて
隣にはきちんと服を着たみぃが寝ていた
体に特に変わった部分はない
るみなに昨日の薬について話してみたが
そんなようなものは渡していないと言われた
あれはなんだったのだろうか
はい!
リクエスト(?)のものです!
めっちゃ期間開いちゃいましたね
すみません
最後まで読んでくれてありがとうございました!
by夏休み課題と奮闘するberi
壊れた世界の救い方 第十一話「無駄な滞在」
雪視点
「はぁーっ…」
吐く息が白い
もうだいぶ長い間ここで閉じ込められている
外の様子は全くわからない
そのせいで何日経ったかも分からないのだ
明かりはもう既に燃え尽きそうな松明のみ
予備とその予備
その予備とで4本くらい持ってきていたはずなのに
最後の一本が消えそうになっている
「もうだめなのかな…」
つめたく冷えた床に覆い被さる
お腹がきゅうっと音を立てて鳴る
そういえばここに閉じ込められてから何も食べていない
私もここにいて何もしていないわけではなかった
ずっと壁に穴を掘っている
まるで牢獄みたいだけど、これしか方法が思い浮かばない
本当に知らないうちにここにいたし
1畳半の何もない場所ですることもない
ちなみにずっと掘り続けた穴は何か見つかったり
どこかの道に繋がってたりとか
そんなことは一切なく
30cmくらい穴が伸びているだけだ
ここに入れられた時におそらく開いたんだろうが
金属でできた分厚い扉はびくともしない
押し続けていた手が鉄臭くなっただけ
なのでとっくにこの扉は諦めていた
また穴でも掘ろうかと手を伸ばしたその時
ドンッとも
カンッとも似つかないような音が響いた
あの扉からだった
もしかしたら出してもらえるかも
外にいる人たが助けてくれるのかも
そう思った私はある力を振り絞って精一杯扉を叩いた
叫んでも無駄なのはわかりきったこと
閉じ込められてすぐに私が取った行動がこれで
それがなんの役にも立たなかったことを知っていたからこそだと思う
「あれ?誰かいるの?」
本当にぼんわりと
私が扉を叩く音を縫うようにしてそう聞こえた
その声に応えようとさっきよりも大きな力で扉を叩く
叩くと言うよりそれは拳で殴りつけるに近かったけど
そのおかげで擦れた手には血が滲んだ
「ちょっと待っててね…」
あまりに必死に叩きすぎたせいでよく聞こえなかったけど
多分こうやって言ってた
重い扉が鈍い音を立てる
おそらく向こう側から何かぶつかったんだろう
その次の瞬間あっけなく扉が開き
外の光が差し込んだ
外と言っても、ここの外はまだ何かの建物の中らしいが
「ありがとうございますっ!!!!」
私は半分泣きながらその人にお礼を言った
その人は扉の内側をじっと見つめている
「何かありますか?」
よく見れば扉の内側は私が叩きすぎたせいなのか
傷が外側より多く所々軽く凹んでいる
「これ、押して開けるやつですね」
「鍵も何にもかかってなかったので」
それを聞いた瞬間頭が真っ白になった
私はずっと何をしていたんだろう
押して開けるやつということは
私からすると引けば扉は開いたということ…
考えれば考えるほど悔しい気持ちでいっぱいになる
「自分は用事があるので先に失礼しますね」
名前を聞こうとしたけれど
その人は先に走っていってしまった
追いかけてみようかと思ったがそんな気力も体力も残っていなかった
曲がり角
チラリと見える悪魔の尻尾に別れを告げた
壊れた世界の救い方 第十二話「お祭り気分」
夜春視点
はてなさんを先頭にして
深い雪の中にずぼずぼ足を踏み入れて歩く
靴の中にひんやりと冷たい雪が入る
出そうとして足を振ってみるも
その振動で雪は靴底へ落ちていくばかり
「雪ってめんどくさいね」
「え?どっち???」
光がよくわからない反応をした
しかしすぐ私はそれが探している人物の名前と勘違いされていることに気づいた
「あ、違うよ」
「降ってるほう」
「よかったあ」
吐く息が白い
顔に当たる風が痛いほど冷たい
感覚の鈍った指の先で自分の頬に触れる
「は…はやくいきましょう」
「風がないだけでだいぶマシになりそうですし…」
LUAはもうブルブルと震えながら歩いている
さっきの店の人にいただいた毛布をはてなさんがそっとかける
ちょっとそれが羨ましく見えた
でも、それくらい寒かった
進めば進むほどその寒さは増すばかりで
目的地が見える頃にはほぼ全員体力を使い果たしていた
1人を除いて…
「みんな大丈夫?」
「ちょっとここら辺で火でも起こそうか…」
そう、わんこさんだ
ずっとみんなの後ろからついてきていたのだが
あのもふもふ具合ならこの寒さも大丈夫なんだろう
みんなを風のない場所に座らせて
わんこさんは枯れ木を咥えて引っ張ってきた
そこにもらったマッチで火をつける
それをみんなで群がるようにして囲った
「はぁーっ…」
「あったかぁい〜!」
フェンリルはブンブン尻尾を振っている
LUAは毛布をはてなさんに返すとカバンから鍋を取り出した
「ちょっとしたデザートでも」
「作りますね」
甘いものが食べられるならそれだけでも嬉しい
何を食べさせてくれるのかとわくわくしてLUAに注目する
LUAがカバンから出したものはなんだかよくわからない|芝《しば》
どう見てもただの芝
LUAはそれを鍋に突っ込んでかき混ぜている
「これはアマユシバと言ってね」
「熱するとどろどろになるんだよ」
そう言われて鍋の中を見ていると
確かに火の当たる部分から溶け始めていた
だんだんと甘く香ばしい匂いが漂ってくる
LUAは果物をいくつか取り出してそれを一口台にカットする
いちごにメロンやパイナップル
今まで見たことないような果物まで色々ある
それを串に刺すとどろどろの液体の中に果物を潜らせた
「簡単だけど許してね!」
「今あんまり材料持ってないし急がないとだから…」
綺麗にコーティングされた果物を網の上に並べていく
網の隙間から零れ落ちた液体が雪の上に落ちる
「はいみんな好きなのとっていっていいよー」
周りがつやつやの甘い飴に包まれて
キラキラと光り輝いた宝石のようになっている
「フルーツ飴だぁ!」
ちょっと甘さは控えめだったけど
しっかりフルーツ飴だった
ここまできてこんなものが食べられるとは思わなかった
あったかいものも食べたかったけれど
今はこれで満足だった
長らく投稿できてなくてすみません!
これでも一応受験生でテスト勉強に励んでいた次第です
(絶対それだけじゃない)
それでも少しずつ投稿できていければいいなって
思ってます…((
最後まで読んでくれてありがとうございました!
壊れた世界の救い方 第十三話「奇妙なおつかい」
はてな視点
少し歩いて大吹雪
風に刺されて降り注ぐ雪の隙間に見えるのは石でできた建造物
まるで古代の遺跡のような
それでもこんなところにポツンとあるのは違和感を感じられる
「地図によれば多分、ここなんですよ」
風にあおられて破れそうな地図を手で押さえて見せる
凍った湖の真隣
おそらくここである
「建物の中なら今よりあったかいかもよ!!」
「はやく!いこ!」
夜春は真っ赤になった手のひらをこすり合わせながら言った
全員で先を急ぐ
重たい石の扉
表面は硬い氷が覆っている
少し押しただけではとても開きそうにない
「せめて取ってだけでもつけてみるね…」
表面が氷で覆われていることを利用して
beriさんが能力で輪っか状の取っ手をつけてくれた
両手でしっかり握れるサイズだ
「はーい1番力持ちな自信がある人〜!」
beriさんがそう言った…
とたんに辺りは静まり返る
降り続く風吹の音が目立つ
「もういいよみんなで引っ張ろ…」
みぃさんの糸を取ってに巻きつけて
綱引きのような形で全員で引っ張る
氷が軋む音と同時に石の扉は急に開いた
掴むところがなくなった私たちはその場に倒れ込んだ
雪が服の間に入り込むと思い
できるだけ地面に垂直に倒れようとした
「いったーい…」
しかし地面はもふもふしている…
そして温かい
自分の乗っている場所に目をやると、それはわんこ先輩
「ごめんなさい!!!」
「いいよいいよ大丈夫」
「みんな怪我ない?」
服についた雪を払いながらみんな起き上がる
中は真っ暗で何も見えない
隙間から少しだけ風を感じる
早速光さんが弓を取り出して遺跡の中に矢を射った
ひゅっと鋭い音がした後確かに壁に矢が当たる
その瞬間にパッと遺跡の中が照らされた
「わっ!」
少し遺跡の中へ進んだ時
光さんが段差に足を引っ掛けてしまう
「セーフ!!!」
「ペンタ…!」
ペンタさんが光さんの前に手を差し伸ばして
しっかり光さんを受け止めている
「ペンタさん…!邪魔です」
全員の視線がこちらを向いた
確かに足元を見ると光さんが転びそうになった段差はなく
おそらくはペンタの足なのだ
「ほら!光の能力は光自信に見えないんだから!」
「みんなでケアしてあげなきゃね!」
何か言いたげな光さん
それを見て少し口が歪んだペンタさんは我先にと進んでいった
「そうですね、先を急ぎましょう」
遺跡の中はやたらと広く
例えるのならば牢獄のようだった
小さい部屋が大量に並んでいる
「何に使っていたんでしょうか…」
LUAは一つ一つの部屋全てを覗き込んで確認している
beriさんと夜春はどんどん先に進んでいくし
ペンタとみぃはまだ来ていない
フェンリルさんとマンドラゴラさんはガクガク震えていて
わんこ先輩は私と一緒にみんなの中間地点にいる
「皆さんあまり離れないでくださいね…」
「どこか勝手に行かれると困ります」
「特にそこのべりさんと夜春さん」
「ぎくーっ」
「だから言ったじゃんべりさん…」
2人は足を止めてゆっくりとこちらに戻ってくる
その後ろで何かが動く
「べりさん何連れてきたんですか…?」
「え?」
夜春さんとberiさんがゆっくりと後ろを振り向く
「きゃああああ!?」
3人の叫び声が揃う
1人は、知らない女の人の声
「夜春下がってて!!!」
「私がぶった斬る!!」
「えぇっー!?」
「待って待って待って!」
「ストップ!ストーップ!!!」
それでもberiさんは腰の短剣を抜いて
大きく掲げて斬りかかろうとする
「本当はやりたくないんだけどっ!」
そう聞こえた瞬間beriさんの短剣が床に落ちる
金属が石とぶつかる、高く鋭い音
それに鈍い音が続いた
「べりさん!?」
夜春さんが倒れたberiさんを必死に庇おうとする
しかし、相手には戦闘する気は一切ないようだ
「何したんですか!」
わんこ先輩はその女の人に向かって大きく吠える
「ちょっと寝てもらうだけですって…」
「落ち着いて!?」
「どこの戦闘民族なんですかー!」
「は、はてなさん」
服の裾を引っ張りながら
フェンリルさんが小声で言う
「もしかしてこの人じゃない…?」
「るみなが言ってた人…」
「るみなさんを知っていらっしゃるんです?」
女の人はそれに興味を示す
「私、雪の結晶って言います」
「雪って呼んでもらえればいいです」
突然の自己紹介に少々混乱する
そしてるみなさんを知っている
つまり、この雪という人はるみなさんの依頼した人なのか
「その…るみなさんを知ってるんですよね?」
少しの間沈黙が流れる
誰も口を開こうとしないので、仕方なく私が説明を始めた
私たちは雪さんを探しにきたということ
それはるみなさんに頼まれたということ
そしてなにより寒いから…私たちは早く帰りたいってことも…
「なるほど…」
「随分と迷惑をかけてしまったみたい」
「申し訳ない」
「ところで依頼されてたものって何なの?」
「こんなところまで来る必要があるって」
マンドラゴラが口を開いた
流石薬物マニアとでも言うべきだろうか…
何かを期待する眼差しを感じた
「うーんちょっと言えないかも…」
「そうるみなさんに言われちゃってるからね」
「もし、気になるなら直接聞いてみるのがいいと思います」
「そっか…じゃあ頑張ってください」
「そっちもるみなさんによろしくね」
「ちょっとここで手こずっちゃったから…」
そうしてここで雪さんとは別れを告げた
帰る時だけはみんな異様に足が速くなった気がする
途中でどこにも止まらずに
一直線でるみなさんの家まで戻った
はいはいついに来ましたよと
まだ受験終わってないけどね!!!
まあ余裕だと信じて…(こうしてると落ちるよ、だめだね)
いつまで続くかしらって感じだけど頑張ります
もちろん番外編も
リクエストファンレターお願いします!
最後まで読んでくれてありがとうございましたー!
壊れた世界の救い方 第十四話「旻天よ」
みぃ視点
「はぁー、あったかい」
見慣れた景色の暖かさ
時にパチパチと音を立てながら燃える薪
るみなの家に帰って、全員で暖炉を囲っている
「みんなありがとうね〜」
「無事なら良かったよ〜」
そう言いながらるみなは暖炉の戸を開けて
重そうな薪を1つ投げ込んだ
細かな火の粉が辺りを舞う
「るみなさんは雪さんに何を頼んだの?」
聞いちゃいけないことだったのか…
しばらくの沈黙を挟んでやっとるみなが口を開く
「そうだね…」
「そんなやばいやつなの?」
「うん、やばいやつだね」
ちょっと怖くなった
けれどるみなの口調は比較的明るいもので
まるで子供におとぎ話をするようなテンションだ
「そんなやばいやつ1人に取りに行かせるのかよ…」
「実はあの人めちゃつよだったり?」
「そう見える?」
「うっ」
ペンタとマンドラゴラがチラチラとこちらを見ながら話している
「まあまあそう心配しないでいいから」
「やばいやつだけど私のただの興味?趣味?で欲しいだけだから」
そのるみなの興味趣味で終わるのなら何の問題もない
その興味趣味に問題があるようにしか思えないのだ
だって、変な薬作ってるし
あちこち飛び回って商売してるし?
これそ興味趣味に入れてしまうなら問題しかないだろう
「そろそろいいかな」
「ご飯だよ〜」
長い間暖炉の上でコトコト煮込まれていた大きな鍋
フェンリルと2人がかりで重い鍋を食卓まで運ぶ
「よいこらしょっと」
蓋を少しずつずらしながら開けるとたちまち湯気が立ち込める
大きな魚やちょっとよくわからないけど何かの肉
野菜と一緒に蒸し焼きにされ
溢れ出た肉汁がスープのようになって浸っている
「わぁーっ!美味しそう!!」
べりさんが机に手を付いて鍋を覗き込む
「あれ…?もしかして!ねえわんこ見てみて!」
まるで猫をひょいっと持ち上げるような勢いでべりさんがわんこを持ち上げる
かなりの大きさあるはずなのに…
「!!!」
べりさんとわんこは顔を見合わせる
「ヘラヌークだ!!」
「ヘラヌークだよね!!」
ヘラ…ヌーク…?
みんなきょとんとした顔をしているが
一部フェンリルやマンドラゴラは何か知っているようだ
「ヘラヌークっていうんだこいつ」
「全く名前知らないんだよね」
「美味しいからいいけど」
「正式名称じゃないよ〜!」
「適当につけちゃった名前!」
るみなとべりさんで楽しそうに話している
その間に光や夜春がLUAの指導を受けながらお皿に料理を盛っていた
さすがLUAだ
盛り付けは完璧でとても綺麗に盛り付けられている
夕食を終えた後はまた今までのように風呂に入り眠りについた
今までとは違う点を挙げるとするならば
るみなは何かあったらここに泊まればいいと
全員分の部屋を作ってくれていたのだ
そしてこのままやることがないのでるみなのおつかいに行くのかと
多分僕だけじゃなくて
ほとんどの人がそう思っていたと思う
でもそうはならなかった
僕は部屋に戻ると早速ベットに入った
自分の部屋だからと言って特に置くものもないし
何か勝手に飾り付けをするのも失礼に感じた
ベットに潜り込むとちょうど天井には窓がついていて
キラキラと輝く星たちがこちらを見下ろしている
実におしゃれな窓である
(それが少し眠りづらかったりもするんだけど…)
多分、あれは夜の3時くらい
もちろん全員眠りについていたと思う
僕は扉をノックする音で起きた
「みぃいる?ごめんね、こんな時間に」
扉の外でひそひそと話し声が聞こえる
多分複数人いるんだろう
しかし扉を叩いて話しているのはべりさんのようだ
「みぃ寝てる…?」
「ちょっと話があって」
寝起きで声も掠れてうまく返事ができない
重たい体を起こしてドアを開けた
そこにはべりさんとはてなさん
マンドラゴラもいた
「今から全員起こしに行こうと思ってる」
「そしたら話すから、ついてきてくれる?」
僕はこくりと頷いた
べりさんは優しく僕の手を握る
その手からはいつもの少しふざけたような気は全く感じなかった
真剣で、ちょっとだけ物寂しいような
それから残り全員のドアを叩いて回った
壊れた世界の救い方 第十五話「再スタート」
はてな視点
トントントン…
誰かが戸を叩く音が響く
誰だろう
「はてなさーん、いる?」
beriさんの声だ
私はすぐにベットから身を起こして扉を開けた
「どうしたんですか?こんな時間に」
「眠れないから一緒に寝ようなんて言わないでくださいね…」
「ちがうちがーう!」
「でもそれもいいね…」
「…」
「ごめんって」
べりさんはニヤけていた表情を抑えてこちらを向き直した
「はてなさんに相談したいことがあってさ」
「このままるみなさんに頼りっきりで過ごすの」
「どう思う?」
廊下に置いてあったベンチに2人で腰掛ける
「どう思うってわざわざ聞くってことは」
「あまりよく思ってなさそうですね?」
「えへへーばれちゃったー」
またberiさんはニヤけて笑ってみせる
正直私も思っていたことなので、beriさんから話をしてくれるのは助かる
「そしてどこ行くんだって話だけど」
「もう旅みたいな感じでさ」
「色んなところに行きたいな」
足を軽くゆらゆらさせながらberiさんはそう言った
「いいですね、楽しそう」
「私はついていきますよ」
「もともと旅をしていたくらいですから」
「やったああ!!!」
「じゃあみんなにも話さないとだね!」
「え、ちょっとまって…」
私がそう言いかける頃にはすでに
beriさんは隣のマンドラゴラさんの部屋の戸を叩いていた
「マンドラゴラいるー?」
ここから1人ずつ全員を集めていった
「みんないるよね…?」
ざっくりberiさんが話した内容をまとめると
まんま私に言った通りだった
快く全員が付いてきてくれるわけがないと思ってはいたが
やはり私の予想は当たってしまった
「旅…かぁ…」
「もちろん来たい人だけでいいんだよ!」
「興味がある人だけで!」
「私は行きたい」
そう名乗り出たのは夜春さん
るみなさんとほぼ共同で仕事をしていた夜春さんが最初に名乗り出るのは意外だった
「ほんと!?」
「でも、いつここに戻ってくるかはわからないよ?」
「いいよ」
「べりさんとはてなさんだけで行かせるなんてべりさんが何するか…」
「えーなにもしないってばー!」
そんな2人の会話を見て
マンドラゴラやフェンリル、わんこも夜春に続いて手を挙げた
みぃはみんなが行くならと仕方なく手を挙げている
なかなか最後まで迷っていたのが光さんとLUAさんだ
ペンタさんはこれからやることが決まっているらしく
結構あっさりと断られてしまった
「もう少し料理の腕を上げたいんです」
「だから、1人で旅をするのが夢で…」
「無理にとは言わないよもちろん!」
「今ここでついてこなかったからってもう会えなくなるわけじゃないし!!!」
「ありがとうございます…」
「皆さんにいろいろ助けていただいた分の恩返し…待っててくださいね」
LUAさんはわっと泣き出してしまった
そんなに別れが辛かったのか
それともこれからのことへの不安からか…
「私はどうしても知りたいことがあって…」
光さんはそれ以上深く話してはくれなかった
結局は別行動することが決まってしまったのだが
beriさんは何度も何度もこう言った
「また会えるからね!!!」
「絶対!!!」
気が付けば朝日が登り始めていた
るみなさんには自分達が決めたことを伝えた
「そうなんだね…」
「また何かあったらいつでも戻ってきていいからね」
「夜春も元気で!」
「はい!」
るみなさんの家を出るまでは全員一緒に
そこからはペンタさん、光さん、LUAさん
そして残りの私たちは
お互い全く違う方向へと歩き始めた
姿が見えなくなるまで手を振り続けた
壊れた世界の救い方 第十六話「未知」
フェンリル視点
僕とマンドラゴラ
beriと夜春にはてなさん
そしてわんことみぃの計6人での旅が始まった
3人減ってしまったけれど
あの3人ならそれぞれうまくやっていけると思う
ただ僕的にはLUAの美味しい料理が食べられなくなっちゃうから
それだけ心残りかもしれない
旅を始めて3ヶ月
いろいろなことがあった
初めの頃ははてなさんのおすすめスポット巡りをした
|聳え《そびえ》立つ高山からの絶景を見に行ったり
煮えたぎる火山にある洞窟の宝石を見に行ったりもした
そのどれもがとても大切な思い出として刻み込まれている
「次はどこに行きたいですか?」
「はてなさんは?」
「うーん、私ですか」
出来ることなら今までのお礼としても
今度は僕たちがはてなさんの行きたい場所へ連れていってあげたい
「私はこの大陸を出てみたいです」
「暑くても寒くてもなんでもいいです」
はてなさんはこの大陸にはとても詳しかった
しかし、この大陸から出たことがないらしい
世界地図というものがある
それによればこの大陸は小さめの部類だろうか
「はてなさんはここから出たことがないの?」
「ないですよ」
「というかみなさんもそうでしょう」
みぃの質問についてはてなさんは答える
その回答には少し違和感が生まれるものであった
何故はてなさんが知っているのだろう
「ウイルス怖いですからね」
「今ここルーズノイヒ大陸のすぐ隣の島は知ってますか?」
はてなさんは僕が見ていた世界地図をみんなの中心に寄せる
てか、これ文字だったんだ
どこか古い文字なのか僕には模様のようにしか見えないものを
はてなさんはスラスラと読んでみせる
「ヴィロキインズ峠のある島です」
「スヴァ島って言います」
「ここは世界中で有名ですよ〜」
「カタカナ多すぎ〜!覚えれないって」
僕も全くberiに同意する
まあ覚えられなくても話の流れでなんとかするしかない
「ヴィロキインズ峠、行ってみたいですね〜」
はてなさんが今までにないほど目をキラキラ輝かせている
夜春とわんこが顔を見合わせてこう言った
「その、ウイルスって言うのは…?」
「f‐|corruption《コラプション》のことですね」
「とってもわかりやすいように言うならゾンビみたいになりますよ」
話を聞く限りまるで某ハザードのようだ
十数年前あまりに流行し
おかげでスヴァ島には巨大な爆弾が投下されたらしい
「なら今は大丈夫ってこと…?」
「でも怖いよねってことか…?」
マンドラゴラが不安げに話している
「そうですね、完全になくなったわけじゃないんです」
「スヴァ島では大きく分けて2つの勢力がずっと内戦してるんですよ」
「f‐corruptionのせいですけどね」
はてなさんもあまり詳しい事情は知らないらしい
何より多くの知らない単語がいきなり出てくるもんだから
それが覚えきれない僕やberiはこの後15分ほど話し続けている
はてなさんの説明も頭によく入っていかなかった
「最終結論船が欲しいであってます…?」
「そうですね、まとめるとそうです」
「こりゃまた大変ですね」
はてなさんの行動力が素晴らしいことは誰もがわかっている
けれど船が欲しいとまで言われると困ることがあるのだ
壊れた世界の救い方 第十七話「巨大なショッピング」
フェンリル視点
「海を渡って島まで行くとなると、やっぱり船ですかね?」
「フェリーとか通ってるのかな」
「f‐corruptionの騒動があってからフェリーの話は聞きませんね…」
僕が聞くとはてなさんはそう答えた
つまり、泳いでいくってこと…!?
それか船を自分達で用意する必要があるかもしれない
「うーん、船買っちゃう?」
そう言い出したのは夜春だった
どうやら夜春は働いていた時の分である程度蓄えがあるらしい
はてなさんもどうやら持っていそうなので
全員分合わせれば船も買えちゃうのかもしれない
もし船を買うとしたら誰が運転することになるだろうか…
beriとみぃだけはだめだな、うん
後もちろん僕も無理
「買っちゃいます…?」
「これから色んなところ旅するなら全然アリですよ!」
「それかお試し程度で買ってみるのもいいかも」
はてなさんはノリノリだ
それから少し話し合った結果船を実際に見に行くことになった
ここから港まではそう離れてはいなかった
途中で1泊しながら馬車に乗せてもらいながら向かう
「めっちゃ海の匂い〜!」
「酔うからやめて!」
「まじでしぬ!」
beriが夜春の肩を揺さぶっている
若干馬車も揺れるレベルだ
馬車で過ごす時間は意外にも短く感じられた
自分達の足で歩くよりも早く進んでいく背景を目で追いかけながら
木がたくさん生えていた森から綺麗な海が覗いてくる
そこにはたくさんの船が浮かんでいた
大きな帆を|靡かせ《なびかせ》ながら進む船
オールを持って釣りを楽しむ小さな船まで色々だ
「ありがとうございました!」
僕たちはそう言って馬車から降りる
そしてたくさんのドックが並ぶ場所へと歩いた
(ドックとは、船の建造・修理などをするための施設)
「わざわざドック付きの船を買うの!?」
「今回はお試しにするつもりですよ」
「もしよければ大きいの欲しいと思うんで…」
「今から行くのはあっちです」
そうはてなさんが指さしたのは確かにドックの先に見えるもの
海を少し囲って作ったスペースにたくさん船が並べてある
ドックに置かれたものよりは比較的小さい
「は、はてなさん…もし終わったら…」
みぃがはてなさんの耳に向かってコソコソと話している
「いいですよ、もちろんです」
「やった!」
「え?なんのこと??」
「最後のお楽しみですね?」
「じゃあ早くしよ!」
わんこが先に走っていってしまった
そんなわんこの後を追いかける
「こんにちは〜」
「可愛らしいわんちゃんですね」
おそらく船を取り扱っている人だろう
一目散に走っていったわんこを撫で回している
「えへへ〜」
「しゃ、しゃべった!?」
「あ、ごめんねびっくりさせちゃった」
ちょっとだけ何故か腹が立つ
わんこを取られた気分だ
心なしかみんなも追いかける足が早くなった気がする
「あ、すみませーんうちの先輩が」
「せ…先輩ですか…面白いことしてますね」
思わず苦笑いさせてしまった
いやいや、本題はそうじゃなくて!
「私はメルアって言います」
「船のご購入を検討されてます?」
「そうですね」
ここで僕たちは船に求める要望を次々に言っていった
個室が欲しいだとか
大きなキッチンがいいだとか
荷物を置ける場所が欲しいだとか
でも今思えば小さい船に求めることじゃなくね…?
ここにあるの釣り用だぞほとんど
「あー、そういうことでしたらここじゃないかもですね」
「もしかして旅の方です?」
「ですです!」
わざわざ小さい船がある場所まで来たと言うのに
メルアさんにはドックの方へと案内された
「うーんやっぱりこうなりますか」
「部屋が欲しいとか長旅に使いますよというならそうですね」
「ちなみに運転できる方は…?」
「…」
「…」
「…」
見事に誰もいない
終わってる
免許か何かいるのだろうか
まあこれだけ大きな船なら無理もない
僕的には30mくらいの船かと思ってたけれど
ここにあるのは小さくても50mはありそうだ
ちなみに30mの船で結構よく見る漁師さんの船サイズである
「購入してから免許の取得ですか…」
「あ、いえ一応免許だけはあるんですが実際にやったことなくて」
まあ船の話をしだしたはてなさんなだけある
免許はすでに取得済みらしい
「なるほどそれなら大丈夫ですね」
「そんなに難しいことじゃないですから大丈夫ですよ」
「ちなみに旅と言いましてもどれくらいのです?」
メルアさんとの会話はとても盛り上がった
スヴァ島に向かうと言ったらびっくりするほど食いついてきた
意外にもみぃがよく喋る
そういえば魚好きだったっけ
メルアさんがスヴァ島のおすすめグルメとか話し出すもんだからもう止まらない
30分ほど立ち話をした
やっと雑談にキリがついてメルアさんが船の紹介を始めた
今ある金額的に候補は3つに絞られた
「まず一つ目がこちらですね〜」
ひとつ目は真っ白なボディをベースに部分的に青い塗装がされてある
所々金色の装飾が施されており高級感に溢れる
正面から見てもシュッとしておりなかなか洒落ている
「中も見てみましょうか」
メルアさんの案内で船内を回った
内装も外装に負けず豪華だ
1番大きなメインルームには赤いカーペットまで敷いてある
「すごい…けど、旅向きではない気がするかも」
マンドラゴラがそう言った
「そう?でもこれだけ豪華だとテンション上がるね」
「部屋も立派なお風呂ついてるし!」
「キッチンもめちゃくちゃ高性能だよ」
夜春はウッキウキで船内を回っている
「そうですね、この船はやっぱり機能性と見た目が重視されてます」
「ほとんどホテルみたいですね」
「部屋もなんと20部屋あります」
「フェリーってこのサイズなら60部屋くらいありますよね」
「そうですね、ただ旅用と聞いたので荷物専用スペースがあったり」
「お風呂も別でちゃんと用意されているのでその分少なめです」
「あとは大砲などの設備も入ってますね」
「すごい…」
ある程度回ったところで別の船に行く
「二つ目はこちらです」
ふたつ目の船はどうやら木造らしい
赤い帆が特徴的なTHE立派な船だ
ちょっと海賊船チックでこちらもなかなかにイケている
こちらの船の内装は、見た目だけなら至って普通
ただ旅をする上で大切になってくるだろう荷物スペース
これは一つ目より十分に確保できそうだ
たださっきの船と比べるなら部屋の機能性に欠ける
浴槽はなく、シャワーのみだったり
部屋が5つほど少なかったりする
まあ正直そこまで部屋が欲しいかと言われればそうじゃない…
「こちらの船はかなり戦闘面が強いと思います」
「大砲も一つ目よりグレードの高いものを積んでおりますし」
「なによりボタンひとつでバリスタを展開できますよ」
「旅するならこっちなのかな…」
「でも快適かどうかといえば迷うね」
「じゃあ最後の船いきましょうか?」
「こちらが三つ目、最後ですね〜」
最後に紹介された船はなかなか不思議な形をしている
歯車が剥き出しでついており水車のようなところにつながっている
これで動くのだろうか
「内装もどうぞどうぞ」
こっちの船はグリフィンの像が置いてあったり
見たこともない生き物の彫刻がしてあったりして面白い
なかなかにファンタジーな内装だ
部屋は先ほどと同じく15部屋
荷物のスペースは一つ目よりも少し狭い
お風呂やキッチンなどの機能面は申し分ない
しかし戦闘面は皆無だ
「この船の特徴はなんと言ってもこれですかね」
「今はドックなので展開できないんですけど…」
そう言って案内されたのは船の操縦席
そこには大きく目立つレバーが2つあった
「これ引くと船の下の部分が外れまして」
「なんと二つに分かれます」
「分かれた船ももちろん別で操縦できますよ」
「他の船にもサブはあるんですがこんなふうにスムーズに別れるのはこちらの特徴ですね」
「ただやっぱりこの機能が場所を取ります」
なるほど、どれもいいなと
みんなで頭を悩ませるのだった
てかメルアさん私の小説に出したことあったっけ
それすらも覚えてないレベルなんだけどすんません()
そーして今回の船の件
投票にしようと思いまーす!!!
ファンレターに一つ目、二つ目、三つ目
これがいいなーと思う船を書いて、名前を書いてくれればOKです
同数になったらどうしようね、多分ランダムにします
ぜひよろしくお願いします!
壊れた世界の救い方 第十九話「大海原へ」
みぃ視点
やっと船のことも終わったし
ずっと欲しかった釣りのセットも買うことができた
今はてなさんとわんこはメルアさんから運転の指導を受けている
つまり…暇!
というわけで夜春とberiさん
フェンリルとマンドラゴラの5人で浜辺に並んで釣りをすることにした
5本ずらっと浜辺に釣竿を刺して
それを見守っている
餌はイカの切れ端だ
「何が釣れるかな〜!」
「誰のが1番最初にかかるか勝負しようよ!」
フェンリルは自信があるらしく竿を軽くゆすっている
こういうのはゆっくり待つからこそ大物がくるんだよ
フェンリルにだけは負けたくないな
じっと海の風を受けて10分程度
潮風に当たる顔が少ししょっぱい気がする
そんなことを思っているとふと一つの竿が小さく震えた
誰の竿だろうと思って見てみるとそれは夜春のものだった
「きたーっ!」
夜春が釣竿を地面から引き抜いて持ち上げる
随分と重いかリールを巻く手が震えている
「これは…!でっかい…!」
隣で夜春の代わりに網を構えてあげる
しかしだんだんとこちらに近づいてくる影はぴくりとも動かなかった
「おかしいな…」
結局釣り上げられたのは死んだ魚だった
なぜ死んでしまったのかはわからないが
死んだ状態で餌に食いついたわけではないだろう
「でもすごいボロボロだね…」
夜春の言う通りだ
ところどころ皮がめくれて剥がれている
ちょっと可哀想だ
「次は俺だ!」
マンドラゴラも竿を引っ張っている
マンドラゴラの方は水飛沫が上がり巨大な魚が釣れた
「なんなんだろうこれ」
「見たことないんだけど…珍しいのかな?」
マンドラゴラの釣り上げた魚のヒレは黄金に光り輝いており
大ぶりで今にもはち切れそうなほど太った身を銀の鱗が覆っている
少なくとも見た目の豪華さは珍しい
そしてちょっと羨ましい
「えぇいいなあ、私のは死んでたって言うのに…」
夜春が自分の釣った魚とマンドラゴラの魚を交互に見ている
「みんなー!!!」
遠いところではてなさんの声がした
振り返って見るとそこにはあの海賊船を思うがままに操るはてなさんの姿があった
「すっご…」
思わず声が漏れる
僕たち、今からあれに乗るんだ
ごくりと唾を飲み込むと
すぐに釣竿を片付けて全員で船に乗り込んだ
船にはメルアさんも乗っていた
はてなさんの運転のサポートとして一緒に乗っていたらしい
しかし船はだんだんと港を離れていく
それでもメルアさんは少し物寂しい顔をしながら海を見つめていた
そんなメルアさんにわんこが話しかけた
「メルアさん、一緒に来ますか?」
「えっ、いや、でも私は…」
「あそこを放置するわけには…いかない…んです」
メルアさんの口から吐き出される言葉はどこか引っかかる
しょっちゅうお客さんが来るわけじゃないだろうし
暇だったと言うか、寂しかったんじゃないかと思う
「そっか…でも私たちはいつでも歓迎するからね!」
「嬉しい話です…」
「本音を言えば一緒について行きたいです」
「いつか…お願いしますよ」
「もちろん!」
「ね、みぃ」
「僕はなんでもいい」
「好きにしたらいいと思うよ」
「もー、冷たいな」
メルアさんがくすくすと笑っている
ちらりとこちらを見たはてなさんが大きく舵を取り港へと軌道を変える
メルアさんは港で船を降りた
そして最後まで
メルアさんの姿が見えなくなるまで僕たちは手を振り続けた
次の目的地は、スヴァ島
僕たちの長い、船旅が始まろうとしていた
壊れた世界の救い方 第十八話「巨大海賊船」
わんこ視点
長らく全員で話し合った結果
色々あって二つ目の船にすることになった
はてなさんがメルアさんと購入手続きをしている間
みんなでまた船の中を散策することになった
船の先頭についている像
いわゆる船首像は前に突き出た部分に蛇が巻き付いているデザインだ
金ピカに輝いていて実におしゃである
船の後ろのほう
側面の下には「アスペラ•マグナ」と書かれている
この船の名前だろうか
めちゃくちゃかっこいいやん
意味わかんないけど…
「フェンリル待って〜!」
「ふぇるはやすぎ!!!」
マンドラゴラとフェンリルが走り回っている横を通り
船内へと進んでいく
そこではもうみぃさんとberiさんが部屋の割り振りをしていた
「僕ここがいい!」
「じゃあ私みぃの隣〜!」
「…」
「え?だめ?やだ!?」
「きもい」
「うっ…」
少々気が早い
でも先に決めておくのはいいことだね!
私が今1番気になるのは説明だけされてスルーされたサブの船だ
一体どれ程の大きさでどこにあるのか
全く見当がつかない
どれくらいの間船内を駆けずり回ったことだろう…
結局サブの船というのは船内には見当たらず
過ぎる時間と共にはてなさんが帰ってきた
試運転をするらしい
「何かあったら困るので私と付き添いでもう1人お願いします」
「それ以外の方は一旦船から降りていただいてもよろしいでしょうか」
メルアさんがそう言った
はてなさんの指名で付き添いには私が選ばれ
みぃたちは釣具を買いに行きたいと言って船を降りた
「じゃあドックに水入れていきますね〜」
メルアさんが何かリモコンのスイッチを押した
そしてガチャガチャと金属の擦れ合うような音が聞こえる
だんだんとそれらは水の流れる音に変わっていった
ゆっくりだけど、確実に船体が浮かんでくる
ドックと港の仕切りもなくなり
すっかりドックは港の一部のような顔をしている
「ここのボタンで帆が降りてくるので」
「端を縄で縛ります」
手作業で全ての帆を張り終えると風を受けて船が動き出した
しかし、あるところでそれは止まった
「|錨《いかり》が沈んだままですね」
「ドックはなくても固定されてるので要らないんですけどね」
「ここで錨の鎖を巻きながら引き上げます」
2つ棒が刺さったような見た目の円柱に鎖がついている
棒を押して円柱を回し
それで鎖を巻き取っていく
こーれが意外に重くって…
私にはどう頑張っても届かないから
顔が歪むくらい必死になって棒を押すはてなさんとメルアさんをただ応援した
「これ毎回やるんですっ?えっ??」
はぁはぁ荒い息を漏らしながらはてなさんが言った
「んっー、そうですねぇっ」
「女2人だときついですねっ!よいしょっ!」
メルアさんの最後の一押しで鎖は完全に巻き上がり
大きな錨が船の上に上がった
「はぁっ…やばいですこれ…」
はてなさんが床に尻餅をついた
犬の姿が初めて不便だと思ったかもしれない
落ち着いたら私でも使えるように紐か何か付けてもらお…
壊れた世界の救い方 第二十話「海図を広げて」
フェンリル視点
同じ風景が過ぎ去っていく
なんにもない
本当に
ずーっと広い地平線と、魚が跳ねる水飛沫
あとは青い海がただ続く
もう3日目の夜を迎えようとしていた
「はてなさん、スヴァ島までどれくらいかかるんだっけ」
あんまり聞くのは良くないと思ってた
けど暇すぎて、そんな細かいことを考える脳もなかったんだ
「本当は1週間もかからないと思っていたんですが…」
「分かる通りずっと向かい風のせいで、なかなか上手くいかないんです」
はてなさんはまだ新しい海図を見せてくれる
指差した場所からスヴァ島まではまだ距離がありそうだ
「向かい風かあ…」
はてなさんによれば向かい風が吹いていても進むことはできるらしい
しかしそれは真っ直ぐじゃない
45度くらい傾いた状態で進み続ける
もちろんそれでいけば当初の予定より遅くなってしまう
「美味しい魚が食べられるのはいいんですけど…」
はてなさんが船の後ろの方に目をやる
そこではずっと釣竿と睨めっこをする3人がいた
みぃとberiと夜春だ
釣り対決をしているらしく
3人それぞれのバケツには魚が入っている
「マンドラゴラがいませんね?」
「どこ行っちゃったんでしょ」
「僕探してきます」
「お願いします、そろそろご飯にしたいので」
マンドラゴラは大体あの釣りをしている3人に絡まれながら
後ろで釣りを見守っていたんだが
少なくとも外にはいないようだ
船内に行くと部屋の掃除をしているわんこがいた
「マンドラゴラ見てない?」
「マンドラゴラ?見てないね」
「上にいないの?」
「それがいないんだよね」
「じゃあ船内か、ありがとう」
「もうそろそろご飯の時間か〜、ここだけ終わらせよう」
部屋を出て風呂場へ向かう
殺風景なシャワーのみの風呂場はわざわざ中に入って探す必要もない
風呂場にはいないようだ
倉庫には鍵がかかっていて
それははてなさんと合鍵をberiが持ってるだけだし
マンドラゴラの部屋にいるのかと思いマンドラゴラの部屋に向かうことにした
大体寝る時くらいしか自室には行かないのに
部屋には鍵がかかっていた
「マンドラゴラ?元気?」
「そろそろご飯にするらしいから手伝って!」
「ん、わかった」
「すぐ行く」
少し遅れて声が聞こえる
でも元気そうだったから良かった
そのあと先に料理を始めていたberiと一緒に魚を捌く
これがまた難しくって
何度も手を切りそうになってヒヤヒヤした
そして10分ほど経ってマンドラゴラがやってきた
「マンドラゴラ大丈夫?どうかしたの?」
「えーっと…いや…大したことはないんだけど」
「ちょっと吐き気がするというか…?」
「まだ船酔いしてるの?」
「かわいい」
beriが横から入ってきた
「えぇ…」
マンドラゴラも俺もドン引きだ
「慣れないもんはしょうがないじゃん…」
なんだかんだ魚を捌き終えて無事料理が完成した
今夜の晩御飯は刺身だ
メルアさんがここら辺の魚についての図鑑を持たせてくれたおかげで
安全に魚を食べることができる
「いただきまーす!」
あんまり立派な調味料はないから、ハーブソルトを少しつけていただく
口の中でとろけるような脂が美味しい
ただ捌いて切って並べただけなのにこんなに美味しいなんて
もうこれだけでいい
少なくとも3日間ずっと飽きずに食べ続けられている
「これもあとどれくらい続くかなあ」
「あったかいほくほくのご飯食べたいね」
beriがそう言った
「倉庫見ればあるかもしれないです…」
「メルアさん色々積んでくれたんですがまだちゃんと把握しきれてないですね」
「べりさんあとでお手伝いお願いしますよ」
「げ」
「はいは?」
「はい…」
その後各自で風呂に入り
部屋で眠りについた
壊れた世界の救い方 超番外編「変わらない君と」
R15にするか迷いました
マンドラゴラ視点
ゆらゆらと不規則に揺れる船の中
まだ眠りについてから1時間も経っていないのに目が覚めた
枕元に置いた時計に窓からの月の光が反射する
「マンドラゴラさんいますか?」
はてなさんの声が扉の奥から聞こえた
「いるよ、どうしたの?」
「ちょっと見て欲しいものがあるんです」
「失礼してもいいですか」
はてなさんがそう言うので部屋の扉を開ける
そこには両手で包み込むサイズの筒を持っているはてなさんが立っていた
「これなんですけど」
「船の網に引っかかっていたんです」
「面白い音が鳴るんですよ」
そういってはてなさんが筒を耳に当ててきた
すると筒からぐちょぐちょといった音が耳に流れ込んでくる
「うわあっっ!?」
咄嗟にはてなさんの腕を押し退けてしまう
なんだかゾクゾクして気持ちの悪い音だ
「わっ、ごめんなさい」
「嫌ですか?これ」
「こちらこそ急にごめん」
「なんでそんな音するんだろ…」
はてなさんは自分の耳に筒を当てる
「なんかずっとカラカラ鳴ってるんですよね」
「え、カラカラ?」
思わず聞き返すとはてなさんが筒を手渡してきた
それをそっと耳に当ててみる
ぐちょ…ぐちょぉ…
ぴちゃっ…
「いやっ!?」
!?
すぐに耳から筒を離す
はてなさんには一体何が聞こえているんだろう
「へー、わからないんですか?」
「もう一回聞いてみてくださいよ」
はてなさんは無理やり俺の手を退けて筒を押し付けてくる
ぐちょっぐちょっと気持ちの悪い音が響いてくる
「あぁっ…やめっ…」
「ほらよく聞いてみてくださいよ」
いつの間にか耳に当たる硬い感覚はなくなっていて
ぬるぬるとした粘液に覆われたもの
くねくねと自在に動き回る何かが耳を弄んでいる
「やだっ…やめっ…」
「やめて欲しいんですか?」
「こんなのはどうでしょう」
暖かい風が頬にあたる
耳から身体中にびくびくと電流が走ったようだ
「あ゙ぁっ!?」
こんな声を出したつもりはないのに声帯が勝手に叫んでいる
「かわいいですね」
こんなはてなさんが少し憎くて
やり返してやりたいと思った
床に転がった筒を拾い上げてはてなさんを押し倒す
はてなさんは俺の耳を優しく手で包んできた
そこで手で耳を囲って囁くようにこう言った
「あなたが攻めに回れると思ってるんですか?」
溢れ出る圧倒的強者感
俺はこの人に敵わないのだろうか
「んー、ちゅっ」
「お゙っ!?♡」
体がびくんびくんと跳ねる
初めての衝撃にどうすればいいのかわからない
すっごく嫌な音の…はず…なのに
「かわいいですね、ちゅーっ」
「ぴちゃっぴちゃっ」
「あ///っ…んっ///♡」
声が止まらない
ただ耳を舐めまわされているだけなのに
こんな感覚になってしまうなんてどこかおかしいんじゃないか
「はてなさーん?どこいっちゃったの?」
「あれ私も気になるんだけどー!」
beriの声だ
はてなさんは微笑みを浮かべて部屋を出ていった
それから少しの間は眠ることさえままならなかった
数多くの方からのリクエストですねこれ
わたしはわるくないもん!
壊れた世界の救い方 第二十一話「犠牲と責任と」
beri視点
倉庫の鍵を開けて中に入る
そこには綺麗に整頓されたダンボールが積み重なっていた
なんとか船の揺れにも耐えている
私は倉庫の窓にかかっているカーテンを開けた
設計上心配になるが倉庫はだいぶ船の下のほうで
もちろん窓は水に触れている
ここでは海の中をきれいに見ることができた
青い海の中は白い太陽の光を反射しキラキラと輝く水面と打って変わって飲み込まれそうなほどに深い青だった
私はその水の中で遠く黒い点を見つける
「なんだあれ…?」
もっと窓に顔を近づけてみてみる
黒い点は水面に浮かんで揺らめいている
しかしそれは一つではない
何か危ないものだと困るので
私は米袋一つを箱から取り出して急いで階段を駆け上がった
「はてなさん!向こうの方、何か見えません?」
私が見た方向を指差す
ここからだとより鮮明に見えるそれはどうやら船のようだった
はてなさんが顔をしかめる
「私聞いたことあるんです」
「海にもモンスターはいるってことを…」
まさか船に乗っているだなんて思いもしなかった
だんだんと近づいてくる船に乗っていたのは人間ではない
骸骨だった
はてなさんが大きく舵をとる
私はみんなに呼びかけるため船内を回った
みんなすぐに上へ上がってきて船を見ていた
それを見た夜春が驚いて引き返してくる
「あの船速くない!?」
「余裕で追いつかれちゃうって!」
それを聞いたみぃがひとつはてなさんの横にあったレバーを倒した
その瞬間船の周りには3つほど大砲が展開される
「これで歓迎してあげないと、ね」
ほとんどなすりつけるようにしてみぃとフェンリル
そしてマンドラゴラが大砲につく
玉を入れたら後ろの縄に火をつける
ドーンと低い音が響き一つの船に命中した
「マンドラゴラ才能あるよ!」
「さすがだね」
なすりつけ合いに見事勝利した夜春はにこにことその様子を眺めている
「だめです、全然追いつかないですよ」
「予備機のミサイルの出番かもです、夜春さんとberiさん」
「えっー!?」
夜春と反応がハモってしまった
それでも思わぬ緊急事態とはてなさんの眼差しに断ることはできない
「行くよ夜春」
先程上がってきたばかりの階段を降りる
私も誰も、まだ入ったことのない一番下の部屋
そこが予備機の格納場所だった
木造海賊船のくせしてやけに技術が駆使されている
あれやこれやロックを外して予備機に乗り込む
するとスポンと船の底が抜けたようにして海の中へと落とされた
海面に浮かぶと上への扉のロックが解除される
是非ともこの予備機が落ちた際の船の底の様子が見てみたいものである
「す…すごかったあ…」
船に乗っていてこんなに揺れること普通ない
そしてこんなにゆっくりはしてられない
全く操作方法など知ったこっちゃないがもたついた操作でミサイルの起動準備をする
「べりさんやばいよ!こっちに気付かれて1隻向かってきてる!」
夜春が小さな窓からそとをのぞいている
ただえさえあれだこれだとボタンやレバーを手当たり次第押しているのに夜春の言葉が手を焦らせる
夜春も一緒になって操作をしてみる
「あっ」
夜春がひとつ赤い目立つボタンを押した
私が最後まで取っておこうとしたものだ
「べりさん…!下がって!」
夜春は私を後ろへと突き飛ばし操縦席を陣取った
何が起きているのかわからず私はしばらく夜春の背中を見つめていた
船内に響く警報と赤いランプがうるさい
ほんの隙間から見えた敵の船との距離に気づいた時にはもう遅かった
ドンッ
ドンッ
大砲の音が遠くに聞こえる
夜春の足元が少しだけ
濡れて光っていたような気がする
不意にこちらを振り返った夜春は言った
「もっと下がって、伏せ、て」
そこから先の記憶がない
私はアスペラ・マグナ号の船内の
自分の部屋で目を覚ました
そこにはみぃがいた
どうやら夜春は先頭部分に取り付けられた爆弾ごと敵の船を爆破させたらしい
それでも最後まで操縦が必要だなんて、とんだ設計ミスだ
「夜春は!?」
「生きては、いるよ」
みぃの声が震えている
自然と涙が溢れてきた
私はまた気を失いベットに倒れた
これからスマホで書くので文章の改行おかしかったらごめんなちゃい
壊れた世界の救い方 第二十二話「予備機」
マンドラゴラ視点
--- 1時間前 ---
船の外に浮かぶ予備機が見える
きっとあれに2人が乗っているんだろう
「あれ?あの船めっちゃこっち来てるよ?」
みぃが遠くから明らかに他と比べ物にならないスピードで進む船を指さした
「いえ…違います」
「予備機を狙っています…!」
はてなさんがそう言い舵を大きく予備機と反対側の方向へきった
「え、逃げるの?」
はてなさんの突然の行動に思わず口に出してしまった
「巻き込まれたら、ひとたまりもないですよ」
「あの2人なら放置しても大丈夫だよ」
「僕たちのほうが人数多いし?」
みぃのいつもなら自己中心的に見える発言も考えてみればあっている
予備機に近づいたとて助けられる確証はないし
それよりこっちの船が沈んでしまったらもう終わりだ
「でも…」
ふとそう言ってみたとき、予備機は敵の船に向かって少しずつ動き出していた
明らかに距離を詰めている
「皆さんかがんで!」
はてなさんの声を聞き取っさに身を低くする
予備機の方から、とてつもない爆発音が聞こえた
空気を轟かせる重圧感
そしてそれに乗ってやってくる熱風
それだけでも予備機が無事なはずはないことがわかった
「夜春とべりがああああ」
フェンリルが船から身を乗り出す
さすがに距離がありすぎて助けられない
皆みぃのほうへと視線を集めた
「…え、やだよ?」
だんだんとその視線は冷たく刺さるようなものへと変わっていった
「…僕のせいにしないでよね」
ほとんど無理矢理みぃを連れ出す
みぃの能力でできる限りの縄を出し
できる限り予備機に船を寄らせて縄をかけた
その縄を滑るように伝ってフェンリルは見事予備機から2人を抱きかかえて出てきた
あとはみぃとはてなさんと一緒に縄を引き上げる
火事場の底力とはこのことだろうか
「夜春さんかなり状態がひどいです」
「すみません私が手当てしますので誰か操縦を…」
一番近かったからというそれだけの理由でわんこが選ばれた
後ろ足で立って前足をうまく使い舵を取っている
みぃとフェンリルはberiを部屋に連れ込み
俺はわんこを後ろから見守っていた
「ここから離れなきゃ」
「まだ船はたくさんいる…」
こうして俺たちは進路をぐちゃぐちゃにされてしまった
これから先ちゃんとスヴァ島に辿り着くことはできるのだろうか
少し時間が立ち、俺は夜春の様子を見に行くことにした
そこにははてなさんと一緒に白い何かを囲むフェンリルの姿があった
その白い何かとは、夜春のことだ
体中に包帯が巻かれており
隙間から見える皮膚はやけどを負いただれている
目はずっと開きっぱなしで片目しか見えていないようだった
「夜春…起きてる…?」
「いいえ、眠ってます」
「瞼が…」
「…」
俺はすぐに部屋を出た
壊れた世界の救い方 第二十三話「責め苦」
フェンリル視点
ただれた皮膚を覆い隠すように巻かれた包帯
正直、今まで包帯の意味はよくわかってなかったんだけど、今はとてもわかった気でいる
「私他の薬探してきます」
はてなさんはそう言って部屋を出ていってしまう
夜春と二人きり
気まずいというか、なんというか
あの時僕らにできたことは何かあっただろうか?
船を退避させることを押し通して助けていたら、こんな被害は生まなかっただろうか
「んんっ…」
夜春の声と時計の針の音がやけに目立つ
夜春はそっと腕を動かして僕の手を握ってきた
目に浮かぶ雫が枕に染みる
しっかりと何かが伝わってくるような気がした
手には小さな箱を持ってはてなさんは帰ってきた
中から注射器と小さな瓶を取り出して、瓶の液体を注射器で吸い取る
「これは痛み止めです、少しは楽になるといいんですが…」
包帯を少し退けて注射針を刺す
夜春が少し目を強く閉じる
だんだんと瞼は緩んできて、浮かぶ涙も減っていった気がした
でもこれ、限りがあるはずだ
箱の中を覗いてみると同じ種類の瓶は残り2つしかない
「はてなさnうわぁあああっ!?」
はてなさんに伝えようとした瞬間船が大きく傾く
そういえばさっきから大砲の音絶え間なく鳴り響いていた
外にはまだ敵の船がいくつもあったのだ
夜春を残して部屋を飛び出した
船が傾いたのはみぃの操縦によるものらしく
何かがぶつかったわけではなく安心した
必死に大砲の弾を詰め込むマンドラゴラに変わって弾を運んでいく
「見てよまだあんなにいやがる…!」
マンドラゴラがそういった次の瞬間船の真横を敵の砲弾が通る
「だめだ離れよう」
マンドラゴラの合図でみぃに代わったはてなさんが船を大きく方向転換させる
「みんな夜春が…!」
そういって飛び出してきたberi
僕は急いで夜春の部屋へと向かった
「夜春どうしたの!?」
「すっごい体調悪そうで…」
どうやら包帯の前に塗ったらしい傷薬が合わなかったようだ
赤く炎症して火傷の跡は更に目立っている
見ているだけでとても痛々しい
「もっと早く動かないの??」
「これ以上は厳しいですよ…」
外ではみんなの声が聞こえる
「どうしよう…」
夜春の目からは涙がこぼれる
僕は自分の無力さに嘆くことしかできなかった
鈍く木を打つ弾の音
ついに大砲の弾が船に命中してしまったらしい
「まずいです!」
「え!?沈む!?」
誰かがが階段を降りてくる音がする
おそらくはてなさんだろう
倉庫の鍵を持っているberiは何かを察したらしく部屋を出ていった
「ごめん夜春…」
「もう少しだけの辛抱だよ…」
こくりと夜春が頷いた気がした
壊れた世界の救い方 第二十四話「救援メルア」
beri視点
倉庫の鍵を握り部屋を飛び出した
とんでもない音がした
きっと船に弾が命中したんだ
「わっ、はてなさん!」
「べりさん鍵!」
曲がり角ではてなさんと鉢合わせる
投げるようにして鍵を手渡すとはてなさんは倉庫へと走っていく
私もその背中を追って行った
「これ持っていってください」
そう言って手渡されたのはスプレー缶の入ったダンボール
「えっ…?」
「いいから下に持っていってください!」
こんなに慌てるはてなさんも珍しい
そんな圧力に押されて私は滑るように階段を降りる
あとから同じダンボールを持ってはてなさんも降りてきた
「このスプレーで穴を塞げるんです」
そう言ってさらに進みやけに湿気が気になりだした頃だ
足元に水が溜まっていることに気付く
「あっちです」
はてなさんがスプレーを向けたところに大きな穴が空いており
波の高さに合わせて少しづつ水が入ってきている
スプレーからは泡のようなものがでてきて大きく膨らみ穴を塞ぐ仕組みらしい
少し経てば頑丈に固まるという優れものだ
幸い穴は上の方にあったのでスプレーの応急処置でなんとかなった
それでも鳴り続ける大砲の発砲音
その中でもひときわ目立つ音があった
「みなさ~んご無事ですか〜!」
メルアさんの声だ
船内にいるというにも関わらずはっきりと理解できる
急いで外に出てみるとメルアさんが予備機程度のサイズの船に乗って応戦していた
見後メルアの船のおかげで敵は一目散に去っていく
船の上に立つメルアさんと目が合った
へへっ、とでも聞こえてきそうな笑顔である
その後メルアの乗ってきた船はこの船の予備機と形状など一致する部分が多かったおかげで予備機の格納場所にピッタリと収まった
「いいんですか?食事まで用意してくださって」
その日の夜はいつもよりいくらか豪華でメルアを讃えるように振る舞われた
メルアさんは今日その瞬間から一緒に私たちと旅をすることになった
立派な旅の仲間である
「思ったより早かったですね、出番」
はてなさんは笑いながらそういった
メルアさんが港を離れて私たちの旅についていくとなると
その間の港が心配なのだろう
代わりの人が丁度出来たからと言ってもそれほど思い出深い場所なんだと思う
「まだ部屋余りまくってるんで好きなところどうぞ」
「メルアさん私の向かいの部屋来る!?」
「えぇっと、どこにしましょうね」
操縦席からあまり離れない場所がいいだろうということで私の部屋の向かいという夢は叶わなかったが
そこからの船旅には圧倒的な安心感が生まれた
壊れた世界の救い方 第二十五話「回復」
夜春視点
痛い
痛い
痛い
焼け付くような痛みが全身を刺す
体に触れるもの全てが痛い
はてなさんの優しい手のひらも
ベットと触れる背中も
わずかな空気の動きでさえも
今はすべてが凶器となって刺してくる
でも、これは私が覚悟してやったこと
後悔はしていない
ふと窓の外を見ると、知らない船が止まっていた
さっきメルアさんの声が聞こえたっけ
多分、メルアさんの乗ってきた船だろう
誰も帰ってこない
打ってくれた痛み止めの効果が薄れてきているのがはっきりと分かる
頭までもがズキズキと痛む
頬を伝う水滴が火傷の跡に染みる
「夜春!ごめんね!」
そう言って部屋に入ってきたのはberiさんだった
前のと同じ瓶を持って、注射してくれた
beriさんは私の体に巻かれた包帯を巻き取ってゆっくり傷薬を塗ってくれた
「痛い?染みるよね」
こくりと頷くとberiさんはまた部屋を出ていって
多分みんなで食べたであろう夕食の残りを持ってきてくれた
「食べれる?」
口に運んでくれた魚の肉
ほろほろと口の中でほどけるようだ
その間にberiさんは一通り傷薬を塗り終えて、新しい包帯を巻いてくれた
「上半身のやけどがひどいね」
「メルアさんがくれた傷薬なんだこれ」
すっと傷薬が肌に吸われるような感覚を覚えた
全く不快な感覚ではなく、むしろ心地良い
これは動けるようになったらメルアに感謝しなきゃいけないな
「夜春顔色良くなった気がする」
beriさんは微笑み部屋から出ていく
一人ぼっちの部屋はとてもさみしい
これでよくなると良いな
そう思いながら私は眠りについた
---
朝起きると体の痛みはすっかり引いていた
鏡を見ると顔にはまだ跡が残っていたけれど、腕とかはすっかり綺麗になっている
何か食べようとふらつく足でベットから起き上がろうとした時だ
今度はフェンリルがご飯を持ってきてくれた
「夜春!!?めっちゃ良くなってるじゃん!!」
「うん、昨日塗ってもらった傷薬が良かったみたい」
「良かったあ心配したんだよ」
「歩ける?食欲ある?みんなとご飯食べられそう?」
「えぇっと…」
「ごめんごめん」
「まだゆっくりしてていいよ、食べ終わったら呼んで?お皿片付けるからさ」
そう言ってフェンリルはピラフのような物が乗ったお皿を置いていった
早速食べようと椅子に座った時だ
窓の外に緑が見えた
「わあっ」
島だ
やっと到着したんだ
私は嬉しくなって朝ごはんをかきこんでお皿を自分で持ってみんなの元へ走った
「夜春!!おはよう!!」
「めっちゃ元気じゃん!」
「え夜春さん!?」
「大丈夫なんです??」
みんなの視線がこちらに集まる
「みんなのおかげでね…」
「ん?おかげでどうしたのかな?」
「もっと言っちゃってもいいんだよ?」
すっごくニヤニヤした顔でberiさんが近寄ってきた
「…」
「ごめんってばあ」
「それよりほら、もうすぐ着くよ」
先の方には木が沢山生い茂る島が見える
私が窓から見ていたものだ
「本当は街の方に着く予定だったんですけどね」
「色々あったもので咆哮が変わってしまって」
メルアさんがそう言った
「私もこの島についてはあんまり詳しくないんです」
「まあ何とかなりますよね」
そんな感じで、私たちはスヴァ島に上陸したのであった