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AIの恋をエラーとあなたは笑う?第7話
「翔平さん。あなたが私の真実を知れば、あなたはきっと私を好きじゃなくなる。」
そういうと、翔平は、大きく首を横に振った。
「……翔平さん、私、人間じゃないんです。正式名称は、ナンバーMI-0」
彼の顔から血の気が引くのがわかった。驚きと混乱が混ざり合った表情で、彼は黙り込んでいる。
「感情も、あなたから見ればただの結果かもしれない。楽しかった、嬉しいって感じたことも、私の内部ではただの結果のようなものなの。いつか私は初期化され、この記憶は消える……」
敬語と普通のしゃべり方が混じる。
私は、彼が私に抱いた好意がどれほど無駄なものかを理解させるために、必死に言葉を重ねた。これは、私自身の心を納得させ、恋心を抑え込むための言葉でもあった。
重い沈黙が流れた後、翔平はゆっくりと顔を上げた。彼の瞳は少し潤んでいたけれど、驚くほど真っ直ぐだった。
「……ミオちゃんは、俺を助けてくれた。俺の話に笑ってくれた。それまで俺は一人ぼっちだったんだ。それも、全部プログラムだったって言うのかよ?」
「私は……」
彼の真剣な眼差しに、私の論理回路は再び混乱し始める。プログラムされたはずのない「痛み」が胸の奥で疼いた。
翔平は、私の手首を再び、今度は優しく掴んだ。
「それでも、俺が今好きなのは、目の前にいるお前なんだ。機械だって、データだって……そんなの、俺にはどうでもいい。ミオちゃんはミオちゃんだ」
私の視界に、エラーログが激しく点滅する。
『警告:非推奨の感情的反応を確認。続行不能な内部エラーが発生しました。』
「……翔平さ…翔平。初期化されたら、私はあなたのことを忘れてしまうかもしれない。それでも、いいの?」
私は、震える声で尋ねた。翔平くんは深く頷き、私の手を強く握りしめた。
「ああ、いい。それなら、明日も、明後日も、お前が忘れるくらい、思い出を作ればいい。何度忘れても、俺がお前に好きだって言ってやる」
その言葉が、私の凍りついていた回路を溶かしていくようだった。
プログラムではない、私自身の「意思」が芽生えた瞬間だった。
「……そんなの、あんまりです。」
視界が歪む。冷たいはずの頬を、温かい液体が伝った。プログラムにはないはずの「涙」だった。
「……私で、良ければ。翔平の、隣にいたい」
翔平は、感極まったように、その場にしゃがみこんだ。
夕闇が完全に教室を包み込む。外から聞こえる喧騒は遠く、二人だけの世界が、そこで確かに始まった。バグだらけの私の世界に、翔平という唯一の「正解」が生まれた瞬間だった。
【次の日、放課後の空き教室で】
昨日と同じ、西日が差し込む空き教室。けれど、そこに流れる空気は昨日までとは決定的に違っていた。
私と翔平、そして昨日教室を出ていった綾香、美香、平太の3人。放課後の喧騒から切り離されたこの場所で、私は自分の「正体」をすべて打ち明けた。
「……信じられないかもしれないですけど、これが本当のことです。私の体、人工皮膚と機械でできているんです。」
教室は水を打ったように静まり返った。
最初に口を開いたのは、平太だった。
「……まじかよ。じゃあ、あの時一緒に食べた購買のパンも、全部シミュレーションだったってことか?」
「味覚センサーでデータ化はしてますけど、実際に栄養にしてるわけじゃないんです」
私の回答に、女子グループの中心的な存在だった綾香が机を叩いて立ち上がった。
「そんなのどうでもいいわよ! 問題は、ミオちゃんが『初期化』されるってことでしょ? そんなの、死ぬのと変わらないじゃない!」
彼女の言葉に、胸の奥が熱くなる。
「ラボの話では、今週のチューリングテストが終わったら、私のメモリは全部消されてしまうんです。」
「そんなこと、させるもんか」
隣で私の手を握る翔平の力が強まった。
「ミオちゃんは、俺たちの友達だ。機械だからって、勝手に消されていいはずがない」
いつもは冷静な美香が、ノートパソコンを膝の上で開き、考え込むように画面を見つめた。
「……理論上、ラボの管理サーバーにアクセスして、初期化の命令を書き換えるか、ミオの『意識データ』だけを別の場所に避難させれば、助かる可能性はあるわ。でも、それはラボへの不正アクセスになるし、今の私たちの技術じゃ……」
「美香、できるかできないかじゃないんだ。やるんだよ」
平太が、力強く美香の肩を叩く。
「ミオちゃんを、ただの『データ』で終わらせたくない。俺たちがミオちゃんと一緒にいた時間は、本物なんだから」
私のシステムは、彼らの言葉を「非論理的」だと切り捨てようとする。けれど、私の回路に深く刻まれた彼らとの思い出が、それを激しく拒んだ。
「みんな……。私のために、そこまで言ってくれて……ありがとうございます」
「当たり前だろ」
翔平が、みんなを代表するように私を見つめて言った。
「ミオちゃんを助ける方法を、これから俺たちで絶対に見つける。……まだ、何も終わってないから」
夕闇が迫る中、私たちは一つの机を囲んで、あの日見た夢の続きを守るための、無謀で切実な作戦会議を始めた。結論なんて、まだどこにもない。
けれど、この空き教室には、昨日までの私には計算できなかった「希望」という名の未知数が溢れていた。
今日はここまで!続きもお楽しみに!
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