これは、私が数年間に及ぶ調査を行った■■■市に関する報告書です。本書は、同市内において、平成十六年から令和七年にかけて発生した、一連の[不可解な事象 / 住民失踪事件]について、現地での聞き取り調査、インターネット、および関係者から提供された一次資料を元に再構成したものです。
読者の理解を助けるため、記録は原則として時系列順に配置していますが、一部、プライバシー保護および二次被害防止の観点から、人名・地名の伏字化、ならびに音声データの文字起こしに修正を加えていることをあらかじめご了承ください。
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奇妙な噂が流れる■■■市について 第一章・遊園地
これは、私が数年間に及ぶ調査を行った■■■市に関する報告書です。本書は、同市内において、平成十六年から令和七年にかけて発生した、一連の[不可解な事象 / 住民失踪事件]について、現地での聞き取り調査、インターネット、および関係者から提供された一次資料を元に再構成したものです。
読者の理解を助けるため、記録は原則として時系列順に配置していますが、一部、プライバシー保護および二次被害防止の観点から、人名・地名の伏字化、ならびに音声データの文字起こしに修正を加えていることをあらかじめご了承ください。
えーっと⋯⋯何から話そう⋯⋯その日は妹の誕生日で、市内の遊園地に来ていたんです。その遊園地は、動物園と一緒になってて結構広かったんですよ。だから、自分迷子になっちゃって⋯⋯中学生のくせに迷子になるなんて、と思いましたか。でもそれが少し変だったんです。
両親と妹が観覧車に乗っている間、僕は園内のカフェで待っていました。でも急にお腹が痛くなって、トイレに行くために席を離れたんです。トイレは異常なほどに汚くて、蜚蠊やら蠅が湧いてました。当然使いたがる人は居らず、他の人達はわざわざ遠くのトイレを使っているようでした。でも僕は我慢できなくて、結局そのトイレを使用しました。便器の中を虫が這いずり回る姿に気持ち悪さを感じたのを覚えています。
ここからが変なんです。
トイレから出ると、辺りが真っ暗になっていたんです。さっきまで昼だったのに。
そして周りには、信じられないほど背の高い人間が沢山居たんです。というか、ナニカと言う方が正しいでしょうか。僕はその場で固まりました。そのとき、そのナニカが一斉にこっちを振り向いたんです。顔は⋯⋯考えただけでゾッとします。とても言葉では表せません。多分、人間が見て良いものではないと思います。だって、その顔を見た瞬間、強烈な吐き気と頭痛がしたのですから。
僕は必死で走りました。本気で殺されると思いました。全力で走っていると、そのナニカが奇声を上げているのが自然と耳に入ってくるんです。「きゅいあああああ」とか「ひゅあええええ」とか⋯⋯語彙力なくてすみません。でも本当にこんな感じでした。
明らかにこの世のものとは思えない声なんですけど、なぜか意味は分かるんです。多分、「悲運の徒を認めよ」的なことを言っていました。⋯⋯まあ言葉として理解できたとしても、意味はさっぱりなんですけどね。
意外にもそのナニカは追いかけて来なかったんですけど、それ以上にもっと怖いものがありました。
空が落ちてきたんです。
何言ってるんだ。と思うかも知れませんが、本当なんです。空を見上げても、普通の夜空にしか見えないんですが、でもこれだけは分かるんです。押し潰されるって。
本当に本当に恐怖でしかありませんでした。普通の人ならこの感覚を味わうことはないんですよね。羨ましい限りですよ。
もう死ぬなー、最後にマックの期間限定メニュー食べたかったなー、そんなことを考えている時にふと思ったんです。「これトイレに戻れば助かるんじゃね?」って。
本当に突拍子もない考えだったと思います。僕はあの汚いトイレに戻りました。でも、それだけでは元の世界に戻ることはできませんでした。焦っていると、いよいよ空が限界まで迫ってきました。僕は決死の覚悟で、水を流すレバーを引きました。今思えば、なぜこんなことをしたのか分かりません。身体が勝手に動いたように感じました。意識はそこで途切れてしまいました。
目が覚めると、そこは遊園地や汚いトイレではなく、消毒のツンとした匂いや子供の泣き声がする場所、そう病院でした。身体を起こすと、目の前では見知らぬ少女が本を読んでいました。その少女がこちらに気が付くと、医師を呼びました。そして医師は僕に、遊園地のトイレの便器で溺れていたこと、約二年昏睡状態だった事と告げました。
普通は昏睡状態だったことに驚くと思いますが、それより便器の水で溺れていたことが衝撃的で、思わず顔を袖で拭いてしまいました。
そして、見知らぬ少女は大きくなった妹だったことを知りました。
一ヶ月後、リハビリも終わり、無事に退院しました。あの時のことが何だったかは分かりません。もしかしたら、昏睡状態の時に見た奇妙な夢だったのかも知れません。でもあの時感じた恐怖は一生忘れることができないでしょう。
それよりも恐怖なのは、遊園地側が口止め料として、多額の現金を渡してきたことでした。あの事故は僕が起こしたようなものなのに。だから、あれは本当に起きたことで、遊園地が異世界への入口なんて知られてはいけない、だから口止め料を渡した。そう考えました。まあ実際は違うのかもしれませんが。とにかく、インタビューありがとうございました。で、謝礼金の方はいくらぐらいなんでしょうか。
流橋遊園地の口コミ
★★★★☆ 30代女性
遊園地という割にはアトラクションが少ないです。でも動物はたくさんいて子供も大喜びでした。広場前のトイレだけ何故かとてつもなく汚いので使用しないことをおすすめします。
★★☆☆☆ 20代男性
広場前のトイレが汚すぎて使えない 漏らしたほうがマシ 掃除しないのかな⋯⋯
★☆☆☆☆ 40代女性
小学生の娘が行方不明になってからもう一年経ちます。遊園地側はまともな対応を取らず、呆れます。星一もつけたくないです。
★★★★★
たのしいです
今でもこの遊園地は市民から愛されている
※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。