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目次
大きい穴に入る。
どすん!と音を立てて落下した。
眼の前には大きな迷路。
穴に落ちた先が迷路なんて
玉を転がして遊ぶ迷路のようじゃないか―
迷路なんて見飽きてるよ。
広い、広い迷路。
ここは行き止まり。
こっちは…あぁ進める。
やっぱり行き止まりなのかよ。
歩いては考え。
歩いては考え。
休憩する―
ロボットにでもなった気分だ。
いや。
僕がもしもロボットなら。
とっくにここから出ているだろう。
休憩なんてものも必要ない。
不思議とお腹も空かない。
ただただ精神が削られていく。
もう気が遠くなりそうだ。
入って何時間‥いや何日なのか?
時間感覚もあやふやだ。
ここから出たい。
出口を探したい。
そんな望みを叶えるには高い壁が―
そう。
高い壁が行く手を何度も遮って居るのだ。
どうしたものか。
難しい迷路の中を転がっている玉も…
こんな事を考えているのだろうな。
まぁ違いは途中に穴がないことだな。
もし同じ迷路に入れられたとしても。
道をなんとなく覚えているから大丈夫かもしれない。
そんなことを一瞬でも考えた僕は今まで何を見てきたというのだ。
こんなにかかっても出ることのできない迷路を。
なんとなくでもいいから覚えているだと?
そんなことありやしない。
ただただ進んでいく。
何回目かわからない角を曲がったとき。
眼の前にあるのは穴―
底が見えない…
大きな動物さえ吸い込んでしまいそうだ。
ここに落ちたら…
助かるのだろうか。
家に帰れるのだろうか。
でももうこれしかないような気もする。
僕は迷った挙げ句―
アタシ
「大好き」
知ってる。私を見る目が綺麗だから
「大嫌い」
知ってる。私を見る目が冷たいから
「かわいい」
知ってる。私の事を理解してるから
「面倒」
知ってる。私と一緒に居ないから
「楽しい」
知ってる。だって私もそうだから
「怖い」
知ってる。私だってそうだから
「気持ちいい」
知ってる。私もそれを分かってるから
「気持ち悪い」
知ってる。私のことをなんでも知ってるから
「ありがとう」
知ってる。私も嬉しいから
「ごめんね」
知ってる。私なしじゃ生きられないから
「頑張って」
知ってる。これ以上やると私は壊れるから
「目障り」
知ってる。もう私はいらないから
「大丈夫」
知ってる。私は貴方のことも知っているから
「いらない」
知ってる。私は無力だから
「いい子」
知ってる。私はなんでも覚えたから
「役立たず」
知ってる。私はなんでも出来ないから
「下手くそ」
「黙れ」
「ゴミ」
「頭が高い」
「最低」
「死ね」
知ってる。アタシ知ってるから。
可哀想に
辛いときでも笑顔
それを貴方は気持ち悪いと言う
人に優しく
それを貴方は媚を売っていると言う
私のスカート
それを貴方は切れと言う
無くなる私物
それを貴方は当然だと言う
私自身
それを貴方は空気と言う
体に痣ができる
それを貴方は遊びと言う
心にヒビがはいる
それを貴方は冗談と言う
生きていればいいことがある
それを貴方達は口を揃えて死ねと言う
ネッ友は消耗品
私は最近あるサイトにハマっている。
小説投稿サイトというものだ。
元々本が好きだったのもあり、自分でも書いてみたいなと思った。
ユーザー登録をして早速小説を書いてみる。
もちろん小説なんて書いたことがなかったので中々筆が進まない。
サイトの仕組みだってよくわからない。
でも少しずつ少しずつ書き進めてやっと読めるものが出来上がった。
初めてにしては上手く書けたんじゃないかな。
完成した喜びに酔いながら公開ボタンを押す。
私の記念すべき一作目だ。
その日はドキドキして何度もサイトを開いたり閉じたりしていた。
次の日、朝一番にサイトを開くと通知が来ていた。
ファンレターが来ている‥!
心臓が飛び出てしまいそうなほど嬉しかった。
『あなたの小説とっても面白かったです!ぜひネッ友になりませんか?』
面白いと他人に認めてもらえた喜びで舞い上がっているとふと我に返った。
ネッ友‥?
ネッ友ってネットの友達ってこと?
危険じゃないのかな‥そう思いつつその人のユーザーページをタッチする。
「凄い‥こんな人に声をかけられたの?私」
その人のユーザーページにはネッ友がズラリと並んでいて日記も山のように公開されていた。
こんなに友達が多くて素敵な人に声をかけられて。
そして小説を褒めてもらえた。
これは友達になったほうがいいよね‥?
その人の一番上の日記をタップしてコメントを書いた。
『ファンレターをもらった〇〇です!ネッ友ぜひならせてください!』
これでいいかな‥
ひとまず送って自分も日記を書いてみよう。
自己紹介でもしておけばいいかな。
なるべく個人情報を出さないように。
でもちゃんと私ってわかるように。
日記を投稿して自分のページに戻るとまたコメントが来ていた。
『ネッ友になってくれてありがとう!〇〇ちゃんって呼ぶね!ユザペに名前書いて良いかな?』
凄い‥返信が早い‥こんなにネッ友がいるのに返事返せて凄いな…
「もちろんです…っと」
自己紹介を出した日からネッ友のお誘いが沢山来た。
その度に私はOKを出していった。
ネッ友のみんなは凄い。
沢山友達がいて、日記にも小説にも全部コメントをくれる。
「嬉しいなぁ…でも…」
やっぱり活動を引退してしまう人も中には居る。
そういった人達が増えるたび私は悲しい気持ちになった。
ある日ネッ友の一人が病んでしまった。
沢山辛いことを書き殴っていた。
『死にたい』と何度も書かれていた。
私は急いでコメントを書いた。
『大丈夫?辛かったね。生きてていいんだよ。私は味方だから‥』
その日のうちにネッ友の日記が投稿された。
『もうすこしがんばってみようかな』
良かった生きててくれた。
送ってよかったんだ。
何人かのネッ友は何度も何度も病んでしまっていた。
死にたくなってそのたびに慰めるコメントを送った。
でも少し疲れてしまったかもしれない。
どうしても同じような言葉ばかりになってしまうのだ。
最近小説を書いてもコメントがつかなくなった。
ネッ友達は引退なんてしていないのに。
そこで私は気付いた。
私、全然ネッ友の投稿に反応してないや。
私は急いで全部のネッ友の投稿にコメントをした。
そうすると次の日には返信や私の日記へのコメントで溢れかえった。
良かったやっぱりコメントし合わないとね!
大好きなネッ友だもん!
気づけば小説より日記のほうが沢山投稿していた。
自分の日常、嫌だったこと。
沢山共感のコメントが付く。
でもそれも段々と少なくなっていった。
「どうしてだろう‥私はちゃんと全部に反応してるのに…」
もっとネッ友を増やさないといけないのかもしれない。
もっと確実に反応してくれる人を。
そうして私は新規のユーザーに手当たり次第に声をかけた。
すると次の日にはまたコメントがちゃんと届くようになった。
日記を書いて。
ネッ友を増やして。
時々反応して。
小説を褒めてもらう。
こんな事始めた時はできるなんて思ってなかった。
でもこの世界ではこれがきっと普通。
ある日、日記を見ていたら知らない人の日記に出会った。
「…なにこれ」
このサイトで自分と最近仲のいい人をランキング付けするというのだ。
「TOP5を日記に公開します‥?どういう事?」
これはみんなも嫌がるんじゃないか。
仲良くしていたつもりがランキングが下の方だったらどんな気持ちになるのか。
きっとみんなはなにも言えないだろうから私が言ってあげなくちゃ…
『ランキング付けなんてみんなが嫌がるんじゃないですか?
仲の良さに順位なんてつけてどうするんですか?
しかもそれを公開するってどう考えても嫌がらせですよね?
ネッ友の気持ちになってみたらどうですか?』
言いたいことを書いて送信した。
でもこれが間違いだった。
なんとこのコメントが晒されていたのだ。
「私のネッ友達は楽しみにしてる‥?」
なんで私が叩かれなくちゃいけないわけ?
どうして?
その人が言うにはネッ友達は楽しみにしていて交流が増えたとか。
だからって晒される意味がわからない。
そうやってみんなで私のことを叩いて楽しい?
その日は日記もコメントも何もできなかった。
すると私に心配のコメントが来た。
私は毎日投稿をしていたからきっと心配してくれたのだろう。
この人になら事情を話しても良いかも。
『実は最近荒れているランキングの日記で…』
そうするとその人は私を庇う日記を出してくれた。
〇〇さんは悪くない!そんなに言う必要はない!と
これで一安心かと思ったが現実は甘くなかった。
名前を出したことにより私に直接批判のコメントが付くようになったのだ。
名前出すなんてどうかしてる。
勝手なことするなよ…!!
ネッ友は味方だと思っていたのに!
私は全ての感情を乗せた日記を投稿した。
私は悪くない!集団で叩く方が間違っている!
なんで私が責められなくちゃいけないの?
みんなが言えないことを言ってあげただけなのに!
どうして!!!
私はそのままそのアカウントを引退した。
勢いで出した日記も荒れてしまったからだ。
どうせ今頃逃げただのなんだの言っているんだろう。
また別のアカウント作らなきゃ…
次こそ仲良くやれるよね‥?
【ネタ帳】タイトルのみ
https://tanpen.net/novel/0fa457e7-48d9-411d-9bdc-5099ba48217d/
タイトルはこちらです。
「また、明日
僕は幼馴染のことが大好きだ。
恋愛的な意味ではなく、もっともっと大切な家族以上の関係。
男女の幼馴染なんて周りにからかわれることもあるけど僕達は違う。
一緒に水族館だって行くしお泊り会だってする。
僕も向こうも恋愛感情なんて全く無い。
小学校の時から、いや生まれたときから僕達は一生の親友的存在だったのだ。
今だって僕は中学生。思春期真っ盛りの時期。
異性のことが気になる時期だけどアイツのことは全く気にならない。
なんならアイツの気になる人へのプレゼントを選んでやったくらいだ。
男の子の意見を参考にしたいだって?
僕に真っ先に相談してくるあたり信用されてんなぁと思う。
ずっとずっとこの関係で笑い合っていたい。
時間が過ぎて僕達は高校に入った。
同じ高校というわけでもなく普通に別々の高校だ。
目指す夢が違ったから仕方のないことだけどちょっと淋しくなったのは口が裂けても言えない。
でも、遊ぶ頻度は減ったものの放課後に二人でゲーセンに行ったりした。
高校になってから行動範囲が増えたから遠くのショッピングモールに付き合ったりした。
「高校になってもあんたは変わらないね」って笑いながら言うんだ。
いやいや少しは変わったに決まってんだろ?
そういうアイツは変わりすぎだ。化粧なんかしちゃって。
僕と居る時くらいそんなのしなくてもいいのに。
高校生活は色々なイベントが起こったと思う。
だってアイツに彼氏ができたんだぜ?
あのドジですぐ怒るこわーい奴に。
一回外出してる時に遭遇しそうになったんだけど慌てて隠れた。
一応雰囲気ってのがあると思って僕なりのハイリョってやつ。
アイツ見たことない顔してた。
なんだよ。これまで生きてきてアイツのそんな顔見たことねぇよ。
ニコニコしちゃって僕とは違う笑顔。
アイツの全部を知ってると思ってた僕には少しショックだった。
大体なんでアイツに彼氏ができるのに僕には彼女ができないんだよ。
不公平だろ。その日はムシャクシャしながら帰ったのを覚えてる。
数カ月後アイツらは別れたんだ。泣きながら電話が来たよ。
一回泣かせたあの男をぶん殴ってやろうかと思ったけど辞めた。
そんな事しても怒られるって分かってるし。
アイツの好きなぶどうジュースとバニラのちょっとお高めなアイスを買って家に行った。
目真っ赤にして泣いてやんの。私が悪かったとかわんわん泣いて。
あーあ。別れたって聞いてちょっとホッとした自分を殴ってやりたい。
その日は全力で慰めた。
数ヶ月経った時、アイツから連絡が来た。またどっか行くんだろうなと思いつつスマホを見る。
やっぱりカフェかよ。最近ハマってるもんな。
そこには『今週末猫カフェに行こ(ΦωΦ)』と書いてあった。
僕達は久しぶりに二人で出かけた。
猫カフェに入って猫を愛でる。
そういえばアイツは猫に似てる。
性格とか顔?とかなんか似てる気がする。
黒の猫がお気に入りみたいだ。猫の足を持ち上げて靴下履いてるーとか言ってる。
僕は猫カフェに来たのに猫じゃなく人間ばかり見つめていたようだ。
まぁ楽しそうでなにより。
その帰り線路沿いを歩いていく。ダイエットだとか言って歩くのに付き合わされた。
十分痩せてるって言っても聞かないんだろうなどうせ。
すると踏切辺りで黒猫に出会った。靴下は履いていない完全な黒猫だ。
アイツが手を出すと擦り寄ってきた。野良なのに人懐っこいなこの猫。
ふと猫がぱっと手から離れて歩き出す。
アイツは、あー行っちゃったーって呑気そうに見つめている。
踏切がゆっくりと閉まっていく。
黒猫は線路に向かう足を止めない。
二人で「危ないぞー」とか「電車くるよー」だとか声を掛ける。
でも黒猫は線路に向かって進んでいく。
そして電車が見え始めたのに黒猫は線路の真ん中でこちらを見つめている。
これ―。
そう言って隣を見たときにはもうアイツは線路に向かって走っていた。
耳を塞ぎたくなるような音がその場にこだまする。
何かが引きずられる音。真っ赤な液体。
理解するのに時間がかかった。理解したくなかった。
その後の記憶は一切ない。
どうやって帰ったのかすら覚えていない。
「また明日」その言葉は一生お預けになった。
それから僕は毎日線路に花を置きに行く。
毎日。毎日。
明日だってここに来るのに「また明日」は言えないまま。