募集している自主企画用の短編集です。
異変の話、後日談、日常談など基本的には何でも書きます。
この小説は東方Projectの二次創作です。
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目次
1章 東方凶事裏 零。
1章 |東方凶事裏《とうほうきょうじり》
--- *** ---
最近、何かと不幸に陥る人々が増えた。
底が尽きない金持ちとして有名だった人里の老人も何故か金が尽きていた。
そんな私も例外ではなかった。最近、神社に迷惑で邪魔でしかない人々がよく訪れて、あんなにあったはずの食料は底をついて、少なからずあった金も底をついた。
「異変ね」
魔理沙も最近、きのこが腐ったり全く見当たらなくなったり、作った薬や道具が消えたりと災難ばかり。八卦炉も消えてしまったらしい。魔理沙には、今回の異変解決は無理だろう。
紫を頼りたいが、紫も何かを企んでいるような雰囲気があって頼るに頼れない。
「………」
「何かお悩みかな?博麗の巫女さん」
白くふわふわと靡く長いロングヘア、そして紅のリボン。
そこに現れたのは、|藤原妹紅《ふじわらの もこう》だった。
「ええ、その通りよ。アンタがこんなとこまで来るなんて珍しいじゃない」
妹紅は竹林で案内役をしていて、竹林から出てくるのなんて稀である。何か用があるのだろう。
「実は私も悩んでてな。異変に関して」
「知ってるか?最近、どんなところでも不幸が起こるんだろ?私の身にも、不幸が襲いかかってきてな。慧音の友達の|歴暦《れき こよみ》って奴も困ってるらしくてな……」
妹紅も、私も同じ悩みを抱えていた。
「異変解決しないか?」
「ええ、勿論よ。私も異変について困っていたもの」
私達はあっさり協力関係を言葉上で結んだ。そして、歴暦、こと暦を誘うために私達は人里に向かった。
--- * ---
「目処はついているのですか?霊夢さん」
茶の色でセミロングの髪が揺れ、少し釣り上がった目で、暦はこちらを見た。
人里はそこら辺で火事が起こっていたり、金が消えたり、と中々酷い状況になっていた。
だからか、藍がその処理に追われていた。紫は今でも寝てるのだろうか、と思うと藍が可哀想で仕方がない。
「まぁ、なんとなくね」
私だって無計画に異変解決に行こうなんて思ってはいない。そんな私でも野暮なことはしない。
「許せない…!あの子達をあんな目に合わせたやつを…!!」
真面目で、律儀で、子供のことが放っておかない世話焼きな人。
「ひとまず落ち着けよ、暦。で?霊夢、どこが怪しいと見てるんだ?」
暦をどうどうと落ち着かせる妹紅。その後、話題をすぐに変えて、私に話題を振ってきた。
「守矢神社よ」
「どうせ、諏訪子あたりの神々よ」
私は腰に手を置き、妖怪の山の方を向きその山のてっぺんを見上げた。
「いくわよ。ちゃんと、ついてきなさいね」
そう皆に声をかけ、私達は行動に移し始めた。
東方凶事裏 一。
〈〈side 博麗霊夢
「大分、妖怪の数が増えてきましたね」
弾幕を放ちながらそういう暦。
確かにそうだ。守矢神社に近づいていくと、妖怪の数も増えてきたし、雛や楓の歓迎も受けた。
「ちょっとー!!!」
湖挟んだ先にある守矢神社がこの目に入った。
その私達の視界の中に、|東風谷 早苗《こちや さなえ》が飛び込んできた。
「文に聞きましたよ!無差別に妖怪を倒してるらしいじゃないですか!」
あまりにうるさい声量で、一方的にそう私達に声をかけてくる。
日光が当てられて輝く鮮やかな緑の髪、蛇と蛙の髪につけたアクセサリー、光が宿った新緑のような緑色の瞳。
私の目に今映っているものは早苗のみだ。
「じゃあこの異変、誰が起こしたって言うわけ?」
私は腰に手を当てて、早苗に対してそう尋ねた。
「知りませんよ!!!私達だって異変に悩ませられててぇ……」
早苗もこの異変の内容を知っているようだ。言い草的にも、|守矢《もりや》神社も相当困っているのだろう。
「あんたんとこの神様が起こしたんじゃって思って、私達は来たのよ」
その神々を信仰している人間の言うことを素直に信頼すると思っているのか。
「誰であろうと、あの子たちを傷つけた人は許しません」
暦がスペルカードを取り出し、珍しく戦闘態勢へと移った。
「弾幕ごっこに応じろと…?」
「そういうことだ。察しが良くて助かるよ」
横に立つ妹紅が、ポッケの中に忍ばせていたのであろうスペルカードを取り出した。
「望むところです!私が勝ったら引き返して貰いますからね!!3対1だって私が勝ちます!」
早苗もスペルカードを取り出し、すぐに戦闘態勢へと移行した。
「|貴方方《あなたがた》がそういうつもりなら、わたしだって容赦しません!」
そしてスペルカードを唱えるために、スペルカードを指の間に挟み、顔の前に手を構えて、目を閉じ口を開いた。スペルカードの発動条件にこんな条件はないから、カッコつけだろう。
「秘術・一子相伝の弾幕!」
「奇跡・客星の明るすぎる夜!」
早苗が目を開いたと同時に、星形の弾幕たちと眩いレーザーが放たれた。私たちもそれに対応するように、弾幕を放った。
「不死・火の鳥 -鳳翼天翔-!」
火の鳥のような弾幕と早苗の弾幕たちがぶつかり合い、相殺され消えていく。
「霊符・夢想封印 散」
私もそれに合わせて、スペルカードを宣言した。
「時符・未来予知!」
暦が弾幕を放ち、それが何処かに消えていく。そんなことに目を向けている暇もなく、前からはおぞましい量の弾幕が飛んできているのだ。
「むむ………開海・モーゼの奇跡!!」
「準備・サモンタケミナカタ!」
レーザーで避ける範囲が阻まれ、弾幕の物量が激しい。避けきれず、被弾する人も出てきそうである。
「夢符・封魔陣!」
「滅罪・正直者の死!!」
私と妹紅の赤の弾幕が放たれて、早苗の弾幕が相殺されていくがレーザーは相殺できるものではないし、それより弾幕の物量が相殺しきれないのだ。
「大奇跡・八坂の神風!!!」
更に物量が増えていく。
だから、更に私たちが追い詰められている。早苗のスペルカードの制限時間が終わるまで待つしかないのか、はたまたこんなところで負けてしまうのか。
早苗の目の前に、先ほど暦の放っていた弾幕がどこからか現れた。
「えっ?」
そう小さく声を上げる早苗、次の瞬間には全てのスペルカードが解除され、ボロボロになり泣き顔になる早苗が居た。
「酷いじゃないですか!みなさん!」
「それが勝負よ」
私は発動しようと思っていたスペルカードをしまい、腰に手を置いた。
床に崩れ落ちるように座り込んだ早苗を見下ろした。
「うぅ……通ってください!!」
早苗はゆっくり立ち上がり、軽く怪我を負った肩に手を置いて道を開けた。
「ありがとな」
「失礼します」
そう妹紅と暦が言い、私達は本殿の方へと向かった。
戦闘シーン難しすぎて死ぬ!!!
誤字、脱字、違和感があるシーンなどありましたら申し訳ございません。
東方凶事裏 二。
〈〈side 博麗霊夢
「___で、私達が来たってわけ」
私達がここに来た経緯を説明すると、|洩矢 諏訪子《もりや すわこ》と|八坂 神奈子《やさか かなこ》は特に動揺する気配もなかった。
諏訪子と神奈子は正真正銘の神であり、それぞれ諏訪子、神奈子両者とも山の神であり、この神社と湖、早苗も含めて外の世界から来た者達だ。
色々あり、神社で3人で暮らしているというわけだ。
「ありゃりゃ早苗は負けちゃったってわけか」
目がつけられた奇妙な帽子をかぶり、薄い茶色の瞳と金髪の髪を持った子供のような姿をした諏訪子が私達と、神奈子に向けて話し始めた。
「あの子もまだまだ未熟なところはあるからな」
冠のようにした|注連縄《しめなわ》、楓と銀杏の葉の飾りを頭に着けた青紫の髪と|赤眼《あかめ》を持った神奈子も続いて話した。
「あの子の能力おかげでうちはその不幸の被害を受けずに済んだのにねぇ…」
「参拝客が減ったら責任取ってくれるわけ?」
諏訪子がわざとらしく睨むように私の瞳を見つめた。神の遊びって奴だろう。
「無理ね、うちに分けてほしいから」
私はスペルカードを取り出し、そう笑いかけながら言葉を返した。
そのスペルカードを見た神奈子が口を開いた。
「悪いが、本当にうちではないぞ」
組んでいた腕を解き、やれやれと言わんばかりにこちらの方を見る神奈子に対して私も口を開いた。
「犯人は全員そう言うの。それに、確かめてみないと」
「まぁそれはそうかもねー」
と言いながらも、諏訪子も神奈子も既に私達が|ここ《守矢神社》に訪れた時からスペルカードを出していた。
「はははっ随分と好戦的だな」
「神々に歯向かうのはあまり良くないことだと思いますが」
暦は置いておいたとしても、妹紅も好戦的な方であるのによく言ったものだ。
「じゃ、失礼しちゃうねー」
「開宴・二拝二拍一拝!」
そこに現れたのは色とりどりのレーザーと弾幕達だった。それに、相当の物量を持ったもの。
「神穀・ディバイニングクロップ」
2人の弾幕が重なって、更に避けにくく見にくくなっていく。
「夢符・二重結界!」
「時効・月のいはかさの呪い!!」
2人に向かって弾幕が広がっていったと思えば、2人の弾幕のせいで殆ど相殺となり殆ど攻撃が通らない。
「時符・未来視!」
そうスペルカードを宣言して、暦はぴたりと立ち止まってしまった。
このタイミングでの発動とか…と思いながらも、暦の前に立ち、また弾幕を放った。
「神技・八方鬼縛陣!」
私が新しくスペルカードを放つと、また神奈子人諏訪子がタイミングを合わせ相殺してくる。
「神秘・ヤマトトーラス」
「土着神・手長足長さま!」
私達を分断するようなスペルカードが多く、なんとか共に行動するのも中々厳しい。
「散霊・夢想封印 寂!!」
「虚人・ウー!!!」
私達2人の弾幕が放たれては相殺されて、このまま何もせず投降してくれたらいいのにと思ってしまう。
「見えました!2人とも、このまま続けてください!」
後ろから暦の声が聞こえ、そう指示を出された。
「夢境・二重大結界!」
「貴人・サンジェルマンの忠告!!!」
その言葉とともに、私達は更にスペルカードを宣言した。状況が変わっていないような気がしなくもないが。
「土着神・ケロちゃん風雨に負けず!」
「天竜・雨の源泉」
「風神様の神徳」
急にこちらに向かってくる弾幕の数が増えて、弾幕同士がぶつかり相殺されることが減った。
すなわち、被弾して負けるリスクが増えたということだ。
「藤原・滅罪寺院傷!!」
「神技・八方龍殺陣!」
私達も暦も、勿論スペルカードの発言や弾幕を放っているが状況はあまり変化していないように思う。
「いっくよー神奈子!」
「風神符・ミシャバシラ!」
諏訪子と神奈子は距離を縮め、今まで放っていたスペルカードを放つのを一斉にやめ、2人で一斉に弾幕を放ってきた。所謂、連携スペルカードというやつだろう。
「どちらか1人に集中砲火してください!」
また後ろから暦に指示を出され攻撃を開始した。
「霊符・夢想封印!!」
そう指示を出され、私は諏訪子の前に立つ神奈子を標的に向けて、更にスペルカードを放った。
「蓬莱・凱風快晴 -フジヤマヴォルケイノ-!!」
妹紅もそれを見て、神奈子に向かってスペルカードを宣言した。
すると突然、神奈子の放っていたレーザーが消え、レーザーが体を貫通しても攻撃を受けることがなくなった。
「これも不幸ってやつじゃないかい?神奈子」
放っていた弾幕を止め、神奈子の方に駆けつける諏訪子。それを見て私達も弾幕を止め、その場に立ったままで居た。
「嗚呼、そうだな」
「これでお前らも分かったことだろう。私達が白であると、自分に不幸を仕掛ける馬鹿はいないさ」
神奈子は腕を組んだ。そして、ゆっくりと勇ましく余裕すら感じる笑顔を作った。
「私達、守矢神社は降参する」
そして、そう宣言した。
「………誤解だったってわけですか?」
暦が前に出てきて、神奈子と諏訪子にそう尋ねた。それも、困り顔をしながら。
「うん、本当にうちは何もしてないよ」
諏訪子がひょこっと出てきて、暦にそう言葉を返した。
「あら、悪かったわ」
「謝る気ないですよね!霊夢さん!!」
後ろから声がして振り返ると、そこには早苗と|東風谷 塚沙《こちや つかさ》さんが立っていた。早苗が肩に持たれかかって、塚沙さんが重そうで大変そうに見える。
「元気そうで何よりだな」
「そう見えますかぁ!!ほんとにぃ!!!」
妹紅も振り返り、そう早苗に声をかけたら早苗がまた大声をあげた。
「早苗ちゃん、落ち着いて」
隣に早苗を支えて立つ、塚沙さんが早苗さんに向かってそう優しく声をかけていた。
「感謝する、塚沙」
神奈子がそう言葉を発したあと、組んでいた腕を解いた。
「私の目からすると、あの神霊の狐が何か情報を握っているように見える。風の噂で聞いたのだが、彼女は不幸の影響を受けてないみたいだからな」
おそらく|純狐《じゅんこ》の事だろう。
彼女らは何を考えているか分からないし、過去に異変を起こしたこともあるから、怪しい。
だが、戦力的に不安が残る。
「何か聞いてみるといい」
続けて、神奈子は私達にそう助言をくれた。
「……誤解なのにスペルカードを使ってしまい、申し訳ございませんでした」
暦が頭を深く下げて、腰を曲げた。その様子を見た諏訪子が口を開いた。
「なーに、気にする必要ないよ」
「ささっ、早く行きなー」
少し笑いながら、そう言葉を発した諏訪子。その神奈子と諏訪子の言葉通り、私達は純狐を探すため、妖怪の山を降りた。
東方凶事裏 三。
〈〈side 博麗 霊夢
神奈子と諏訪子にそう言われ、私の案内で霧の湖前まで来た。何となく勘で動いているから、こんなところに本当に神々が居るのか、と不安が募っていくのは私だけなのだろうか。
「あら、珍しい来客じゃない」
銀の髪を肩ほどまで下ろし、胸をのせるかのように腕を組む彼女。風に靡かれて、揺れるフリル。
丁寧の皮を被った棘がある言葉。
「何か用がありまして?あまり遅く帰るとレミリア様に叱られてしまうわ、手短に」
まるで、用がなかったらさっさっと帰れ、という意味が込められていて、こちらを急かすような言い方である。まぁ、早く帰ってほしいのが事実なんだろうけど。
「あんたがこっちに来たんでしょ。私達だって会いたくてあんたに会いに来たわけじゃないの、咲夜」
彼女は|十六夜 咲夜《いざよい さくや》、|紅魔館《こうまかん》のメイド長で完璧で|瀟洒《しょうしゃ》なメイド。
「|私《わたくし》だって会いたくて、出待ちしてたわけじゃないですわ」
「異変解決してるんだ、退いてくれないか?」
妹紅が前に出てきて、ナイフを取り出す咲夜。全く、クールで冷静で大人な振りして好戦的。|紅魔館《こうまかん》の誰よりも。
「それは無理な要望ね」
紅が塗られた唇をにいっと広げた。まるでその笑い方は、こちらを嘲笑うように馬鹿にしているように見えた。
「部外者は始末する。誰だろうと同じこと」
「それがここの教えなの」
青かった瞳が、端から紅へと染まっていった。まるで、その姿の彼女を例えるなら狂気だ。
「少々手荒だけど、失礼するわ」
そう言葉を発した彼女は、ナイフを指の間に挟みスペルカードを取り出した。
「奇術・幻惑ミスディレクション」
「幻幽・ジャック・ザ・ルドビレ」
くない弾とナイフが咲夜の方に見えたかと思えば、瞬きをしたような須臾の間に弾幕が目と鼻の先まできている。
「おぉ!!」
ピチュンという音を上げた妹紅はその場から消えていた。被弾してしまったということだ。
「どうせ貴方も同じ運命になるわ、恐れることなく送ってあげる」
弾幕を避けていたその|瞬間《とき》、炎が高く舞い上がった。
まるで自由に羽撃く不死鳥のように、美しく儚く。
「あはははっ、私の能力忘れてたのかい?お嬢ちゃん」
その炎の中から、無傷の妹紅がでてきた。そう、彼女の能力は老いることも死ぬこともない程度の能力、|所謂《いわゆる》不老不死というやつだ。
「お嬢ちゃんには悪いけど、時間が無いんでね」
妹紅が咲夜に対してそう言い、いくつかのスペルカードを取り出した。
そして、口を開けずに大きく口を広げて笑顔を作った。
「蓬莱・瑞江浦嶋子と五色の瑞亀!!」
「惜命・不死身の捨て身!!!」
紅に塗れた弾幕達が咲夜に向かっていく。咲夜は焦った顔を一瞬して、スペルカードを取り出した。
「買い出しした物が壊れるわ、これで全員片付ける」
「メイド秘技・殺人ドール」
止まった時と、ナイフ。時が進むと同時に、ナイフも私達も動き出す。彼女も共に。しかし、彼女を当たったものは太陽ほど眩しい炎だった。
「ふふっ、部外者は始末するんじゃなかったかしら、咲夜?」
「よく考えたら|貴方方《あなたがた》は部外者ではないことに気づいて、手加減したのよ。手加減」
ボロボロになった衣服。仕舞われたナイフたち、すっかり青に変化した紅の瞳。
「お嬢様に怒られてしまうわ……」
「お嬢ちゃん、そんなキャラだったか?」
小声でそう呟く咲夜を無視して、妹紅はそう咲夜に向かって言葉を放った。
「仕事とそれ以外のオンオフはつけてるの。至極当然のことですわ」
落ちかけたカチューシャを戻して、解けかけているリボンを外して三つ編みに結かれた髪を下ろした。
「何かお探しで?」
そして、目と口を開いてそう私達に尋ねた。
暦ちゃんの出番なくなってしまった。
東方凶事裏 四。
〈〈side 歴 暦
「この辺りでその方々を見たと…?」
咲夜さんが言うには、人里の辺りで|純狐《じゅんこ》さんを見たようだ。
「ええ、この十六夜咲夜は信頼に値しない存在と?」
敵対してきた人を信頼するほど私は人懐っこいわけではないが、彼女の言葉は何故か信頼できるような、そんな重みがある気がする。
彼女はエコバッグらしきバックを片手に持ち上げ、紅魔館へと帰っていった。
「さっさっと行きましょ。時間の無駄だし」
霊夢さんにそう言われ、私達は人里の方に向かい始めた。
--- * ---
「で、私のもとに来たと」
咲夜さんの言う通りだった。
金髪で、ウェーブのかかった長髪が風のせいで靡かれた。
「私は今、そんな気分ではないが……遥々来てくれた客人。迎え入れなくてはならない」
すると彼女は渋々、一枚のスペルカードを取り出した。
「手短に終わらせたい。一発勝負でもしないか?」
「この弾幕を60秒間避けきれたらお前らの勝ちとしよう」
甘いルールだと思った。
それと同時に、私達はそんなに舐められているのか、なんて疑問が浮かんできた。
「ここは人里なのですが……」
里の外れの方で人は少ないとは言え、完全に居ないわけではない。
人を傷つけるのはあまり、というか好まないものだ。
「さぁ、手短に始めよう」
すると彼女は、もう一枚のスペルカードを取り出した。
「地上穢の純化」
「純符・純粋な弾幕地獄」
二つのスペルカード、それによって弾幕が重なり濃くなっていく。
一歩間違えたら、直ぐに被弾してしまいそうだ。
「歴符・歴史召喚!」
目の前に武将が現れた。織田信長だ。妖夢さんのように弾幕を切れる筈だ。
それに抵抗するように、純符・純粋な弾幕地獄の方は第四形態に入っていた。
たった一人でそんな数の弾幕を切り落とせるわけもなく、殆ど私たちの方に回ってきていた。
「霊符・夢想封印 散!」
赤の札と、色鮮やかな弾幕が相殺されていく。
--- * ---
「もう負けじゃない? 」
霊夢さんが弾幕を打つのをやめ、そう純狐さんに言葉をかけた。
「そうだな」
案外あっさり食い下がった。失礼だが、意外だと思ってしまった。
「少しばかり教えてやろう」
「詳しくは知らないが、彼女が起こした異変は彼女の目に映った者に対して不幸を与える異変だ」
心底、悪趣味な異変だと思った。
自分の欲のせいで不幸になる人間がいるというのに。そのせいであの子たちは寺子屋に顔を見せなくなったのに。
「はぁ?何のためにだよ」
妹紅さんもこの異変の主犯に、怒りを抱いているのだろう。
「そこまでは私も知らない。本人に聞け」
純狐さんは冷たく、私たちにそう言い放った。
「居場所はスキマ妖怪が知っている筈だ」
そう言葉を言い残した純狐さんは足早に何処かに消えていった。
「なんだったんだあいつ…」
妹紅さんがポケットに手を入れ、純狐さんが消えていった方向をまじまじと見つめていた。
「不思議なやつだけど、まぁ…嘘はつかないと思うの。まぁ、紫を探しに行きましょ」
霊夢さんが歩き始めた次の瞬間、私たちは奈落に落とされたみたいな感覚に襲われた。
そこは気色の悪く赤い瞳が広がっていた。