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目次
歪んだ世界で歪な私
この世には色々な人間がいる。背が周りより大きいもの。聡明なもの。性格がよいもの。ストレスにめっぽう弱いもの。下半身が麻痺しているもの。緊張しいや能天気。またそれらの逆もいるだろう。しかし、それだけではない。同性しか愛せないもの。リストカットがやめられないもの。腕がなく四本脚のもの。唇が塞がって開かないもの。―――目が一つしかないもの。この世界ではそれを”異形”と呼ぶ。異形はある場所に集められる。それは国に一つはある、異形用施設。この国には、異形児童引取施設、異形取締所、異形処分場の三つがある。異形児童引取施設は身体、または精神に異常があると判断された、20歳未満が収容される。収容するには保護者の許可が必要だが、基本的に保護者の方から引取願が提出されるので、その決まりも忘れられかけている。異形取締施設とは、一般住民の居住スペースに異形が入り込んでいないか、いたのならば異形を捕らえ、刑務所に収容する、職員たちがいる場所だ。異形は、親に愛されて、施設に入らされなかったとしても、一般住民とは隔絶された場所にすまなくてはならない。なので、生まれた瞬間にその”個”は、親でもない見知らぬ異形に預けられ、日の目も親の顔も二度と見ることは叶わない。そんな生活を強いられている。異形処分場に関しては……なんとなくで察していただきたい。気分が悪くなる話なのであまり話したくない。……さて、前置きが長くなってしまったが、自己紹介をしよう。私の名前はメイナ。生まれつき単眼の―――異形だ。
いつか続き書きたいけど絶対長くなる……。
ぼくのともだち
本小説にはホラーな展開が含まれています。
苦手な方も見ましょう。克服のチャンスです。
また、大部分がひらがな表記であり、読みにくいかと思いますが、それでもよろしいという方は、どうぞお楽しみくださいませ。
【ぼくのともだち】
2年3組 |飯嶋《いいじま》 |晴生《はるお》
ぼくには、おかあさんがいます。
いつもいそがしくて、
あまりかまってくれないけど、
それでもおりょうりはとっても上手だし、
テストでいい点をとると、
頭をなでてくれます。
いいおかあさんです。
おとうさんはいません。
理ゆうはわかりません。
ただ、おかあさんにおとうさんのことを聞くと
おかあさんが泣いてしまうから、
気にしないようにしています。
おかあさんは、しごとがとてもいそがしくて
あまり家にかえってきません。
だからぼくは、朝おきてからねるまでで、
おかあさんに会えることはほとんどないです。
でも、さみしくないです。
それは、ぼくに友だちがいるからです。
とってもいい子で、いつでもぼくの味方です。
でも、なんだかふしぎな子で、
へやの電気をけしてからじゃないと、
お話できません。
お外がまっくらになって、カーテンをしめて、
へやのなかが見えなくなったときに、
くらやみから
「おーい、おーい。」
と声がします。
さいしょはぶきみで、こわかったけど、
ずっとそばにいて、
ぼくがさみしくて泣いたときは、
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、ぼくがいる。
さみさしくないよ。」
そういって、ひっしにはげましてくれました。
ぼくはその子と友だちになりました。
それからしばらくしたあと、
ぼくがその子に名まえをきいたら、
「名まえ?名まえ?ぼくの?あるの?」
といって、こまっていたので、
『くらみー』
という名まえをあげました。
くらやみでしか会えないから、くらみーです。
くらみーは、
「くらみー、くらみー。ありがとう。くらみー。ぼく、くらみー。」
と、すごくよろこんでくれました。
またべつの日に、
ぼくはくらみーに聞きました。
「ねぇくらみー。電気をつけてもいい?」
そういうと、くらみーは
「だめ、だめ。だめだよ。そんなこと。だめ。ぜったいだめだよ。つけてはいけない。
きみがこわれてしまう。
それは、だめ。だめだ。」
と、あわてて言いました。
よく分からなかったけど、
ぼくは電気をつけないであげました。
理ゆうはわからないけど、
おかあさんにおとうさんのことを聞くと
だめなのとおなじで、
くらみーにもいやなこととか
きずつくことがあると思ったから、
それを分かっててするのは
良くないことだからです。
それに、ぼくもなんだかいやなよかんがしました。
くらみーのすがたは気になるけど、
でも、そんなの気にならなくなっちゃうくらい、
くらみーとのお話は楽しいです。
学校で楽しかったこととか、
おかあさんのこととか、
すきなこととかを話します。
そしていやなことがあったとき、
それをくらみーに話すと、
いっしょにどうしたらいいかを
考えてくれたり、
それはおかしいね、と言ってくれたり、
それは、君もわるいよと、言ってくれたり、
とても良い友だちです。
ぼくにはがっこうで友だちとよべる人は
ほとんどいないです。
でもくらみーのおかげでさみしくないです。
ぼくの味方でいてくれるくらみーを
ぼくは大切にします。
---
ぼくの作文を読んだ先生は、とてもこわい顔をして、
「晴生くん、先生をからかっているの?」
と、おこった。ぼくはそんなつもりがなかったから、
「ちがいます、ほんとなんです。くらみーはいます。」
といったら、もっと目がこわくなった。しんじてもらえていないみたいだった。
「せんせーどしたの?はるおがへんなの書いたの?うんちとか?」
よこからとつぜん、|裕宣《ひろのぶ》くんがはなしかけてきた。いや、裕宣くんが話しかけたのは先生だった。裕宣くんがうんちといったら、みんながわらった。クラスの女子も「やだー」といってわらった。
「裕宣くん……。いいえ、ただ……いや、なんでもないのよ。」
先生はなんだか、はっきりしないこたえ方をした。すると裕宣くんは「ふーん」とつまらなさそうに言って、先生のよこをとおってせきにもどる———-
「隙ありっ!」
「あっ!」
と見せかけて、ぼくの作文をよこどりして、みんなに聞こえるように読みはじめた。
「えーっと……『お外がまっくらになって、カーテンを閉めて、へやのなかが見えなくなったときに、くらやみから「おーい、おーい。」と声がします』……?なんだこれ。」
「や、やめてよぉ。」
裕宣くんは作文をとりかえそうとするぼくから
にげながら読みつづけて、けっきょくぼくのところに作文が戻ってきたのは、ぜんぶ読みおわったあとだった。ぼくに作文をかえしながら裕宣くんは
「なにがくらみーだよ、ただのお化けじゃん。きも。」
と言ってきた。ぼくはかちんときて、
「くらみーはおばけじゃない!ぼくの友だちだ!」
と、どなってしまった。すると裕宣くんもおこって、
「なんだよ、だってそうだろ!くらいとこにしかいなくて、しゃべり方もおかしくて、名まえもないんだろ?お化け以外のなんなんだよ!すがたも見たことないくせに、どうやってお化けじゃないって言うんだよ!」
と、どなりかえしてきた。ぼくはくやしくて、
でもなにも言いかえせなくて、泣きそうになってしまった。ぼくが何も言わないのをいいことに、
「お化けと友だちなんて、おまえきもいよ。」
とか
「おまえもお化けなんじゃねえの?」
とか
「そいつがおまえのおとうさんだよ。おまえのおとうさんはもうしんでてら今はいないんだよ。」
とか、好き勝手言ってきて、さすがに先生が怒ってた。でもそれに「ざまあみろ」と思うこともできずに、ぼくは「くらみーはお化けだ」と言われたことが、ただただかなしかった。そして、それをちがうと言い切れなかったぼくにもびっくりした。その日はかえりの会まで、いやなかんじだった。
---
家にかえってきて、ぼくは考えた。きっと今日もまた、くらみーは来てくれる。そのときに、くらみーに聞こう。そして言ってもらおう。くらみーはお化けじゃないってこと。おとうさんじゃないってこと。おとうさんはまだしんでないってこと。……あとお化けはこの世にいないってこと。そしてちょっとだけ、ちらっとだけでもすがたを見せてもらおう。そうしたらきっと、裕宣くんも自分がまちがってたってことをみとめてくれる。そう思って、くらくなるのをまった。そして、短いはりが7のあたりにきたときに、カーテンをしめた。するとへやはまっくらになって、すぐ近くすらも見えなくなった。
「おーい、おーい。」
きた。くらみーだ。
「くらみー?」
「そうだよ、くらみー。ぼく、くらみー。」
くらみーはうれしそうだった。
「まってたんだ。くらみーのこと。聞きたいことがね、いっぱいあるんだ。」
そしてぼくは、今日あったことをぜんぶ話した。くらみーはぼくが話終わるまでしずかだった。
「ってことがあったんだ。」
「裕宣はわるいやつだ。ひどいやつだ。晴生はきもくないよ。」
「ありがとう。ぼくのためにおこってくれて。」
「だって本当のこと。晴生はわるくないよ。えらいよ。えらい。手出さなかった。」
「あはは。こんなことで殴らないよ。……ねぇくらみー。いちおうなんだけどね?くらみーはお化けじゃないよね?」
「お化けじゃない。くらみーうそつかない。お化けじゃない。友だち。」
「だよね。おとうさんでもないんだもんね?」
「ちがう。おとうさんじゃない。友だち。」
「やっぱね。お化けなんていないもんね。」
「わかんないよ。いるかもしれない。」
くらみーはおどかすようにそう言った。
「や、やめてよ……。」
「こわい?こわいの?晴生、こわいの?」
「こ、こわくなんてないよ!男だし!……でもお化けはいないよ。ヒカガクテキだよ。」
「ヒカガ……?」
「うん、ヒカガクテキ。」
くらみーは「ヒカガク……ヒカガクテキ……かっこいい。」とぶつぶつ言っている。ぼくも「ヒカガクテキ」は良く分かんないけどかっこいいと思う。
「ねぇくらみー。」
「??なに?ヒカガクテキなこと?」
「ちがう。あのねくらみー。お願いがあるんだ。」
「どうしたの?」
「くらみー、のね、すがたが見たいんだ。」
くらみーがかたまった。すがたは見えないけど、なんとなくわかった。聞かれたくないことを聞かれた。そんなかんじだった。ぼくはくらみーがいる気がするところまで行って、話しかけた。目を合わせているつもりで。
「……。」
「少しで良いんだ。ちらっと、指先でも。」
くらみーが目をそらした気がする。
「……。」
「少しだけでもくらみーを見たら」
「……。」
「お化けじゃないって胸を張って言えるし」
「……。」
「きっと裕宣くんもまちがってたって謝ってくれて」
「……。」
「仲直りができると思うんだ。」
「……。」
くらみーは何も言ってくれない。だからぼくはあきらめて————-最後の方法をとった。
「……分かった。じゃあ」
「……ごめんね。」
「電気、つけるね。」
「……!!だめ!」
電気のスイッチのところにむかうぼくにくらみーはさけんだ。
「だめ!だめだよ、だめなんだ。見たら……みたらいけない!知ったら、知ってしまったら……ぼくと君もこわれる!」
「こわれないよ。」
「こわれる!!いくな!つけるな!!やめろ!
だめだだめなんだ、つけたらいけない!」
そうしている間にスイッチのまえについた。しんぞうがドクドクしていて、ぼくの体まで電気をつけるなと言っている気がしてくる。くらみーは今もだめだだめだとくりかえしている。……だが、いわかんがしてくる。なんだろう。なんなんだろう。電気のスイッチに手をのばし、
「だめだぁぁ!!」
ふといわかんに気づいた。そうだ、なぜこんなに電気をつけられるのがこわいのに、ぼくの体を止めようとしたりしなかったんだろう、と。
その理ゆうはふりかえってみて分かった。そこにいたのは————、くろちゃいろのかみをあちこちにはねさせていて、カメライダー、タートラーレッドのパジャマをきていて、へやの電気のスイッチに手をのばしている———-ぼくだった。そこにいたのは、かがみにうつったぼくだった。くらみーは、ずっとぼくだった。そういえばずっと、いわかんはあった。声だ。声がぼくとそっくりだ。僕とそっくりな声が、ぼくの頭にひびいてたのだ。
「知っちゃった。知っちゃった。ひとりぼっちって、気づいちゃった。」
|くらみー《 ぼく》の声が頭にひびく。そっか。
ぼく《《には》》、いなかったんだ。さいしょからだれも、いなかった。
「そっか。」
すとんと落ちた。
くらみーは、誰の頭にも存在するのさ。
ほら、部屋の隅を見てごらん。
声が聞こえてくるよ。
「おーい、おーい。」
…なんてね。
ひとりぼっちでないのなら、大丈夫だよ。
枝豆と東京タワー
描きたかっただけです
内容とかないです
設定とかもないです
そういうシーンの練習みたいなもんです
ギシ、とベッドが軋む。ベッド横のランプが|艶《あで》やかに女を照らす。さて、どうしてこうなったんだったか。いつもなら、クソブラックな会社から帰ってきて、飯を食う余裕もなくそのまま泥のように眠りにつく時間だ。今日だって、そうなるはずだったが……。
「…………いま、私以外のこと考えてたでしょ。」
と、ぼやっとしている俺の頭を目の前の女の声が撫でる。
「……関係ないことではないよ。」
「言い訳ばっかり。……いまは、私だけ見て、私だけ感じてて?」
そう言ってするりと、女の腕が俺の首に回る。うなじを撫でられる感覚で、理性が飛びそうになる。ゆっくり、女の頬を撫で自分の顔を近づける。
「ん……。」
唇が重なり、舌が絡み合う。|艶《なまめ》かしい音が部屋に響く。顔を離すと、女の口と俺の口とで糸を引いている。俺は優しく、女を押し倒した。琥珀色の酒と遠くで赤く光る東京タワーが重なっていた。
憎らしいあの人
私は、美人だ。目鼻立ちの整った顔をしていると思う。だって私が通るたびに、すれ違う人たちはみんなして振り向くの。だから私は、きっと凄い美少女なのよ。それでいて、そのことを他の人たちに自慢したりしないのよ。こうやって、自分の心の中におさめておくの。私ってば、完璧なのね。私は美人な私がとっても好きなのよ。……でもね。私には、嫌いなものがあるわ。それはね、醜い人よ。中身の話じゃないわ。外身……外見の話よ。だってそういう人って、美人を妬むじゃない?美人は美人を妬まない。だって、いくらその人が美人でも、自分もそうだって分かってるから。それに、妬む必要がないくらい、最高の人生を送っているからよ。でも醜い人たちって、最低な人生しか送ってないじゃない?そこはちょっと可哀想だけれど、だからって妬んで恨んで憎んでっていうのは違うじゃない?だからね?私は醜い人が嫌い。あら、何をそんなに他人事のような顔をしているの?貴方よ。貴方のことよ。私は今、遠回しだけれど、貴方の話をしているの。ねぇ?分かってるんでしょ?本当は、自分のことだって。目を見れば、分かるわよ。いいえ、目を見なくたって分かるわ。何故って?————貴方のことが、大っ嫌いだからよ。
私は、目の前の鏡を叩き割った。
好きの反対は嫌いじゃないなら、嫌いは好きな類語かもね?
Dreamer
薄暗い街中。響く歌声。行き交う人々。立ち止まる人はいない。俺は今日で、23歳になった。
中学からギターを始めて、今年でちょうど10年目。友達にギターも歌も上手いとベタ褒めされて、調子に乗って始めた駅前での弾き語り。もしかしたら、俺もスターになれるかも…!なんて思っていた。だが、周囲の人たちからの評価は散々だった。前を通る人たちには冷ややかな目をされ、酔っ払いに『耳障りだからやめろ』と言われた。それでも、続けてきた。なぜかはわからない。ちょっとした意地だったのかもしれない。目の前に置かれたギターケースにはたった32円ぽっちのおひねり。小銭入れにしてはあまりに大きすぎるそれを視界の端に捉えながら歌う。———今日で、最後にしようと思う。弾き語りもギターも。音楽を、諦めようと思う。だって、何年続けたって何にも変わらなかった。続ければ、努力すればきっと———。そう思ってた。でも、そうじゃなかった。俺が思っていたよりも、ずっとずっと高い壁だった。だから、今日を機にこれで全部———。
「————。」
ふと、視線を下に向けると、ギターケースのそばでちょこんとしゃがんでいる女性がいた。年は俺より少し上ぐらいだろうか。スーツの上に黒いコートを羽織って、ウェーブがかった髪を耳にかけていた。その女性は俺の顔をじっと見ながら、静かに聴き入っていた。少し緊張を感じながら俺はなんとか歌い終えた。女性はしゃがんだまま小さく拍手をくれた。俺は息を整えながら、
「ありがとう、ございました…!」
と言った。すると女性は微笑んだ。そして鞄に手を伸ばし、財布を取り出した。おひねりをいただけるようだ。さて、俺の歌はどれだけの値がつけられるのだろうか、なんて冗談混じりに思いつつ、見ていると、女性はギターケースの上で財布をひっくり返した。
「?!!」
唖然とする俺。放り出される小銭。出てこなかったお札をわざわざ指で引っ張りながら、女性はぽつぽつと語りだす。
「私ね、夢がないんです。やりたいこととか、なりたいものとか、そういうの。昔からなくて。だから、あなたを見た時羨ましいなって思ったんです。とってもキラキラして見えたから。……はい、これ。私の給料から家賃、光熱費、携帯代諸々引いた、自由に使うはずだった、約五万円です。大事に使ってくださいね。」
「ぇ……ぃ、いや」
「受け取ってください。私、見たくなったんです。いつかあなたが、大きな舞台に立つところ。その五万円、全部あげるので、絶対大きくなってくださいね。」
そう言って彼女は、イタズラっぽく笑った。春特有の、優しい風が吹いた。
「………………ライブのチケット、お姉さんだけタダにしてあげますよ。」
「ほんと?やった!」
嬉しそうに笑う彼女の顔に、目頭がじん…とあつくなった。俺はまた、ギターを持った。その次の日も、また次の日も。彼女の言葉は俺の中で呪いになった。絶対に大きくならなくてはいけないという呪いに。あれから8年。あの呪いは、ギターに刻まれたまま、まだ消えない。
夢を掴んだ人も昔は夢を追う人だったんだよなぁなんて思いながら描いたものです。
10年続けてダメでも、それからまた1年…2年…8年なんて続けてみたら、変わるかもしれませんね。
……まあダメなままかもしれないですケド。
でもダメでも下手でも夢を追うのって素敵なことです。
それを心から応援することも、止めてあげるのも、どちらも優しさですよね。
我ながら優しい話をかけたと思ってます。
拙文ですが、お付き合い頂きありがとうございました。